街での移動中
「え…レクー、どうしてここにレクーがいるの?」
「違いますよ、キララ様、ここに居るのはレクーさんではなくウシ君です。キララ様の魔力を使用すれば、光を実像に変えることも可能なんですよ!」
意気揚々としゃべるベスパに少しイラっとしながらも、実際にすごい…実際にレクーがいるみたい…。
キララは荷台から降り、レクーの体に触ろうとした…。
「キララ様! ストップです!」
ベスパの忠告は遅れてしまい、キララの右手はレクーの体に触れる…。
『ぞわぞわぞわ』
掌をのたうち回るような…感覚…
「…何この感触…もしかして…」
そう…目に見えているのはレクーの姿だが、実際に存在しているのはウシ君なのだ。
ウシ君の体には今現在…無数のビーがくっついている。
キララは映像のリアルさに、ビー達の存在をすっかりと忘れ、うかつにも触ってしまった。
恐怖と憎悪、気持ち悪さ、色々な感情が混ざり合い、キララは…失神した。
数分後…
「う…うう」
「あ、キララさん、大丈夫ですか?」
「う…うん、大丈夫…大丈夫…ちょっとトラウマが蘇っちゃって…。あれ、ウシ君は」
「ウシ君はここですよ、キララ様」
「ふ!」
キララは指を刺し、魔法を放つ準備をする
「す、ストップです。キララ様、先ほどは私の忠告が遅れてしまい、大変申し訳ありませんでした。今回は完璧ですので…どうかお許しを…」
ウシ君の頭には目元だけくり抜かれた紙袋がかぶせられている。
「まぁ…確かに…モークルって分かる人は少ないかも…」
「それじゃあ…今回は、お仕置き無しですね!」
「分かった…許してあげる…」
「あ、ありがとうございます!…あ…」
ベスパを許したとたん…、私の着ていた服の長そで部分がボロボロと崩れ落ちていく…。
「え?…私の服…なんかボロボロなんだけど…」
「いや…その…私の友達がですね…。ど~してもキララ様に服従したいらしくて…えっと、そのあ~え~と… あ! 私やらなければいけない仕事を思い出しました! それではキララ様、私は少しこの場を離れさせていただきます!」
ベスパは弁明も無しに、キララの元から逃げ出した。
「逃げるなら仕方ない」
キララは、スーッと逃げていくベスパに指先を向ける。
『ファイア!』
呪文と共に指先へ小さな魔法陣が展開し、火の塊が飛び出した。
「ぎゃ~ッツ!」
『ファイア』は見事直撃し、ベスパの体は燃えカスとなって地面へ落ちていく。
そして…そよ風に巻かれて消え去った…。
「すみませんでした…」
ベスパはつむじを見せながら、キララに頭を下げる。
「最初っからそう言ってればいいの、逃げようとするから…」
「キララ様はことあるごとに、私を燃やそうとするじゃないですか。私だって痛みを感じないわけじゃないんですからね」
「え? ベスパ、痛み感じてたの? ずっと無痛だと思ってた…」
「え、いや…その、キララ様のダメージを私も受ける訳でして、ただ燃えてるだけのときは、それほど痛みを感じませんけど…。まぁ…精神的ダメージは相当蓄積されていますよ」
「――ベスパって虚言癖なの? もしかしていつも嘘ついてた? あの叫び声も…わざわざ…痛くも無いのに叫んでたなんて…」
「いえいえ、決してそんなことは無いですけど、ケースバイケースですよ。嘘をつきたくて、ついてる分けじゃないんですから」
――まぁ、かく言う私もよく嘘ついてるし…アイドルの頃はほぼ毎日嘘バッカりついてたな。…性格が似てると言うか…私の魔力から生まれてるんだから性格も似てるよねそりゃ。あ、そうか…同族嫌悪ってやつかこのベスパにイラッてするやつ…。なるほど…やっと合点がいったよ。
「私たち、似た者同士だったんだね」
「……………」
「何で黙ってるの?」
「私は断固拒否します! 私とキララ様は全く似ておりませんよ! キララ様には私のような聡明な頭脳を持っておりませんし、友達だって少ないですよね、私が居なければ魔法だって『ファイア』程度しかできないのですから」
――カッチ―ン…。
この後もベスパと色々言い合いになったが…
「まあ…いろいろベスパに助けられているのは事実なんだよな~…そこのところは感謝してる」
「私こそ、キララ様のようなお方の傍にいられて幸せです…」
――『喧嘩するほど仲がいい』という言葉がある。あれはまやかしだ、実際に使うのならば『喧嘩しても仲直りするから仲がいい』だと私は思う。
私達は病院よりも先にオリーザさんのパン屋へ向かった。
「ん~ん!キララさん、スッゴク美味しそうなパンの匂いがします! こんな香ばしくて…うっとりするような匂い…嗅いだことありません!」
デイジーちゃんはパンの匂いを嗅いだだけで、満点の笑顔になった。
――確かに…この匂いは脳に直接語りかけてくる。食べる前から美味しいと分かってしまうのだ。
「キララさんは、このパン屋さんへ何しに来たんですか? まさか…あの白パンを買う気なんですか! そう言えば…初めてあったときも白パンを持ってましたよね。私の村でみんなに配ったやつ! もしかして…キララさん…本当はお金持ちの人…」
「違う違う、確かにここで白パンを数個買ったけど、あれは貰い物だから。えっと…デイジーちゃんはちょっと待っててね、パン屋のおじさんに話をしてくる」
「はい!」
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