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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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ビービー弾

 私は『クリア』という詠唱を言っても魔法陣を発動させられない。だから、威力はライトが描いた魔法陣の『クリア・改』の効果だけが発射される。


「はは……。姉さん、光に当たった岩が散り散りになって消滅しちゃったね……。お、おっかしいなぁ。限界まで剥離されちゃっているよ……」


 ライトは苦笑いを浮かべていた。そりゃそうだろう。先ほどまであったボロボロの岩が私が放った光の玉に当たった瞬間に泡のごとく消滅したのだ。訳がわからない……。


「ら、ライト……。魔方陣に何を組み込んだの……」


「えっと『クリア』は悪質な物質を消す魔法なんだけど、アンデッドの体は瘴気や肉、骨とかあるから、悪質な物質だけじゃなくて出来る限り消せるように『クリア・改』で改良した。人の体に当たっても散り散りに消しちゃうから人に向けて放ったら駄目だね……」


 ライトは相手を原子レベルにまで分解する魔法を編み出した。というか、作ってしまった。


「この光を食らって生きていられる魔物はいるかな……」


「うーん、凄く強いように見えるけど、魔力を大量に消費するはずだし、速度も魔力が多いせいで遅い。当てるのは難しいかも。あと、あの光は魔力で防げるからさ。初見で当てないと倒すのは難しいかも。賢い魔物に出会ったら、すぐに使わない方がいいかもね」


 ライトは一撃必殺の凄い魔法を作ったが、とても使い勝手の悪い魔法にもなっていると説明してくれた。まあ、あんな攻撃が連射出来たら危険すぎる。


「ライト。『クリア・改』だけじゃなくて『クリア』の魔法陣も描いてくれる。こんな危険な魔法。普段使い出来ない」


「そうだね。でも、姉さんくらい魔力量が無いと使えないから他の者に悪用される可能性はないと思う。というか、解読するのに時間が掛かるからその間に姉さんが奪えると思うし」


 ライトの私に対する信頼が大きすぎて困る……。そんな、信頼されていると信頼に答えなければならないじゃないか。

 でも、悪魔に対抗する策が増えるのはいい結果だ。ライトの頭がさえまくってくれてよかった。


 私はライトに危険な目に合ってほしくない。だから、研究をひた隠しにする必要がある。この武器が世界に広がるのを私が食い止めればいい。

 ライトと私が寿命で死んだとき、どっかの研究者が資料を見つけて解読するっていう流れになれば、まあ、世界のために使われるかもしれない。

 あれ……、私って滅茶苦茶ブラコンなのでは。


「キララ様、今さら気づいたんですか……」


 ベスパは私の頭上に飛んできた。


「はは……。そうだね。まあ、元から弟妹が大好きだし、そう言う気質はあるかな」


「キララ様。キララ様。私もその武器の一部に加われないですかね?」


 ベスパは私が持っている魔道具を指刺しながら訊いてきた。


「どういうこと?」


「私達もキララ様の役に立ちたいのですよ! 私達を攻撃の手段として使えたら凄く強いと思いませんか!」


 ベスパは両手を振り回し、翅をブンブン鳴らしている。


「えぇ……。ベスパ達を使うって……。さすがに厳しいんじゃ……」


「キララ様の魔力で作った魔力体がそこら中に飛んでいますし、あれを魔法陣に溜めるような形を作れませんかね?」


 ベスパはミツバチ形の魔力体を指さす。毎日毎日作っていたら魔力体が魔力体を産み、ドンドン増えていた。


「つ、作れないことはないと思うけど……」


 私は弾倉を頭に思い浮かべる。ベスパは私が思い浮かべた弾倉を理解し、目を輝かせていた。


「こ、これは何ともビーの巣に似ていますね!」


 ベスパは幼虫が包まれている姿を想像しているのか、弾倉に詰まっている弾丸の姿をビーに置き換える。

 ベスパはすぐに弾倉を作って来た。加えて弾倉の中に入る魔力体の大きさに合わせ、魔道具の発射口が丸く広げられ、完全に拳銃に近い形となる。


「はぁ……。いやだぁなぁ」


 私は弾倉を持っていた。するとベスパが体を縮め、弾倉の中に入る。

 どうやって発射されるつもりなのだろうか。

 その後、周りを飛んでいた魔力体が弾倉の中にカチャ、カチャ、カチャっと入って行く。一匹一匹が私の一日分の魔力量をほこっており、弾倉が眩しいくらいに光っていた。


「な、なんか、姉さんがとんでもないことをしようとしている……」


 ライトは私の姿を見ながら呟いた。後方に下がり、危機感を覚えている様子。


「ベスパ。どうやって飛び出す気?」


「引き金を引いていただいて溜めた魔力で押し出す形をとっていただければ構いません!」


 ベスパはガスガンの要領で飛んで行くようだ。それじゃあもうビービー弾ではないか……。まあ、ビーが弾になっているのだからビービー弾で何ら問題ないな。


「じゃあ、行くよ」


 私は引き金を引いた。内臓された魔法陣から魔力が銃口に向って広がり、魔力体が銃口から勢いよく飛ぶ。高速回転しており、新しく生み出した岩を容易く打ち抜いた。

 魔力体の密度と速度が高すぎて岩が完全に押し負けている。

 普通の銃弾なら岩の密度や質量に負けて拉げたり潰れたり、破裂したりするのだが、私の魔力体は無傷で岩を貫通した後、ブーンと飛んでいた。

 つまり、あのビービー弾はもう一度使えると言うことだ。案の定、私のもとに戻って来て、なにをしたらいいのかわからない魔力体は八の字にブンブンと飛ぶだけだった。


「反動が無いのが良いね。威力も申し分なさそう」


「では『加速アクセル』の魔法陣を貫通して飛ばしてみてください」


 ベスパはさらなる威力を求め、魔法陣の展開を望んだ。


「わかった『アクセル』」


 私は魔法陣を銃口に展開し、引き金を引く。風を切る音が鳴り、展開された魔法陣の中を通った魔力体が岩を砕きながら、やすやすと貫通していた。


「威力が上がった……。魔力体が魔力だから、嫌な反動が無いね。普通の魔法と何ら変わらない」


 私は自分の魔法を高威力で簡単に発射できる魔道具を手に入れた。これは使い勝手が良くて楽だが……魔法と言えるのか?

 私は何発がビービー弾を打ち、岩を貫通させる。どこまで飛ばせるのかや使い勝手などを考慮した。すると、普通に魔法を使ったほうが効率がいいと言う結果に陥る……。

 無詠唱魔法や簡単な詠唱で発動できる魔法なら、両手が開くから剣が使える。その方が戦闘面では役に立つのではないかと……。でも、一つ大きな利点があった。


「姉さん、姉さん。その魔力体ってさ。姉さんの膨大な魔力なんでしょ。なら、この魔法陣が書かれた魔道具でその魔力体を使ったらどうなるのか、試してみてよ」


 ライトは私に『クリア・改』の魔法陣が書かれた板を手渡してきた。


「なるほど……」


 私は『クリア・改』が書かれた板を手に取り、魔道具の隙間に嵌めこむ。どうやら、ベスパが収納場所を意図的に作ってくれていたようだ。用意が良いこって。


「『クリア・改』」


 私は魔力体を魔力で押し出す。その間に『クリア・改』の効果を受けた。銃口から発射された光の塊が岩を消し飛ばし、そのまま森に向かっていく。


「は……」


 八〇メートル先の、森が大きく消滅した……。

 ビー達に頼んでその場に誰もいないことは確認済みだったので死者はいないが、完全に威力が狂っている。


「は、はは……。ど、どうしよう。特級魔法じゃなくて極大魔法になってる……」


「きょ、極大魔法……。なんて言う嫌な響き……。あんなの食らったら人間じゃひとたまりもない……」


「姉さんの魔力量が多い一撃が放たれているわけだからね。『ファイア』とか『ウォーター』みたいな初級魔法も今の魔力量で放ったら極大魔法になるのかも……」


 特級魔法は凄く難しい魔法で、極大魔法は威力が高い魔法と言うニュアンスでいいのだろうか。ま、まあ。今はそんなことどうでもいい……。


「も、森を元に戻さないと!」


 私はベスパ一匹を弾倉に残し、消し飛んだ森の一部に走る。


「…………私だけ取り残されてしまった」


 ベスパは弾倉の中で捻くれ、出てこようと思えば出て来れるのに、一向に出てこない。

 森の消失した部分に土を運び、木や種を植えて私の魔力で急激に成長させる。魔力を大量に使う作業だったが、お母さんに激怒されるよりはマシだ。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……。な、治った……」


 私はある程度周りとそん色ないくらいに森を再生させた。もう、妖精のような仕事ぶりだ。


「土地の妖精さん、すみません。ちゃんと治したので許してください……」


 私は森に棲んでいる妖精に頭を下げるようにして謝った。見えないが、いるような気がするのでちゃんと謝っておく。もし、怒らせたらと思うと謝らないわけにはいかない。


「僕、頭悪いみたいだ……。なんで、もっと先を考えられるようにならないんだろう……」


 ライトは自分の行いを反省していた。魔道具作りに没頭し、先が見えていなかったと言う。


「私も悪いよ。あんな威力が出るって考えればわかるはずだったのに、興味本位で止められなかった。ほんと頭が悪い……」


 私とライトは共に反省しながら、魔道具の整理を行っていた。どれもこれもさっき作ったばかりの品だが、なぜか愛着が生まれている。


「うぅ……。私の魔道具……。残しておいてよぉ……」


 シャインは身を引きづり、私達のもとにやってきた。今は疲れているはずなのに、魔法が使えたことがよっぽど嬉しかったのだろう。


「わかってるよ。でも、これは公に出来ない品だからね。そのことをしっかりと覚えておいて。魔物と戦う時とか、危険な時は使ってもいいけど、普通は今まで通りの戦い方で頑張るんだよ」


「うぅ……。せっかく、魔法の打ち合いでも勝てると思ったのに……」


 シャインは負けず嫌いなので、何でもかんでも勝ちたがる。

 それはライトと魔法を打ち合っても勝ちたいと思うほど。

 ライトが相手なら戦う前から降参するほどの差があるので戦いたいとすら思わないが、シャインは違うらしい。たまに魔法の早打ち対決をこなしている。まあ、負けるのは当たり前。

 おそらく、先に生まれた双子のお姉ちゃんと言うプライドが、弟のライトに負けたくないのだろう。逆もしかり、ライトは剣が嫌いで、苦手だがシャインとたまに打ち合っている。

 ライトは身体強化の影響で剣を振るうことは出来る。ただ、シャインに勝てるわけもなく、いつも剣を吹き飛ばされるのが落ちだ。男だから女に負けたくないと言うプライドがあるのかもしれない。そんな二人を見ると、やはり双子なんだなとわかってしまう。


「ライトが作ったこの魔道具の名前は何にしようか?」


 私は拳銃に似た品を持ちながらライトに聞く。ライトが作った品なのだから、ライトが決めるべきだ。


「うーん、なにがいいかな……。僕、姉さんと同じで名前を付けるのが下手だからなぁ。『魔法撃てるん』とか『連射魔道具』とかありきたりな名前しか付けられない……」


 ――『魔法撃てるん』はちょっと可愛いかも……。


「キララ様、さすがにダサすぎますよ……。そんな名前にされたら、魔道具の方が可哀そうです」


 ベスパは弾倉の中から話し掛けて来た。まだ、不貞腐れているようだ。

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