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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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天才児ではなく、問題児

「はは……。キララ様の頭に血が上ると、かーっとなってしまいまして」


 ベスパは私の分身なので、怒りが出やすいと言う部分も似ている。そのため、暴走すると言うのが今の仮設だ。


「冷静に物事を判断しないと駄目だね。頭に血が上っている状態じゃ、物事もうまくいかないし」


 私は体をグーッと伸ばし、ベッドに倒れ込む。


「ふぅ~、やっと眠れる……。この瞬間だけは私の至福の時なんだよ……。フルーファ、おいで~」


 私はベッドの隣をパンパンと叩き、フルーファを呼んだ。


「はぁ、抱き枕なら勘弁な……」


 フルーファは何をされるのか、もうわかっているようだ。


「フルーファは私のペットなんだから拒否権は無いのー」


 私はフルーファに抱き着き、モフモフの暖かい感覚を得ながら安らかに眠りに落ちるのが最近のマイブームになっている。


「あぁ~。フルーファが日の匂いになってる……。日向ぼっこしてたでしょ……」


「してた……」


 フルーファは行動を当てられ、恥ずかしそうに呟いた。

 背中の黒い毛が高級な毛布のようにふわふわで大変心地よい。すでに私の魔力になってしまっているため、抜毛も魔力に変わる。犬アレルギーがあっても魔力なので何ら問題ない。


「すぅー、はぁ……。すぅー、はぁ……」


 私は眠りに落ち、意識が途切れる。


 ☆☆☆☆


 次の日……。


「姉さん、姉さん! 昨日さ、姉さんに言われてボーっとしながら体を拭いてたらさ、色々思いついちゃった!」


 大天才のライトは私の助言を受けてから実行し、たった一日で何か思いついたらしい。扉をこじ開けるほど凄いのだろうか……。


「二種類思いついたんだけどさ、姉さんの魔法と魔法をぶつけ合って爆発させる固有の魔法があるじゃん! あれって、ものすごく不思議な現象なんだよ。普通は魔法と魔法が打ち付けあったら強い方または相性がいい属性魔法が残るか、打ち付け合って消えるかなんだ。なのに、爆発している。つまり、何かしらの力が生まれているんだ!」


 ライトは大変興奮しながら寝起きの私に、マシンガンのごとく話し掛けていた。


「えっと……。簡単に言ってくれると助かる……。今、寝起きでボーっとしているの……」


「簡単に言うと、同じ魔力同士をぶつけ合わせたら物凄い力が生まれるんじゃないかと思ってさ!」


 ライトは目を輝かせ、意気揚々と笑っていた。


「へぇ……」


「で、もう一個考え付いたのが、その法則が正しければこんな武器も作れそうだなって……。別に魔法だけじゃなくて火薬と鉄があれば可能だと思うんだけど。こんな形の武器があったら魔法も使いやすそうじゃない?」


 ライトは私に絵を見せてきた。なぜその形になるのかわからない。手で持ちやすいようにしたのか、やはりその形が理想なのか。

 見た目が完全に拳銃だった……。いや、あんたが作るんかいっ!


 私はライトの考えている武器がいかに多くの者を殺して来たか知っている。もう、戦争でその武器を使わないと言うことはないくらい大量に生産され、多くの者の命を奪ってきた。まあ、守って来たと言えば聞こえはいいが……。


「ら、ライト……。そ、それは駄目だよ。さすがにそれは駄目……」


「え? なんで。もしかしたら誰でも二つの魔法を一気に使えるようになるかもしれないよ。あと、無詠唱で威力が高い攻撃が放てるかも」


 ライトの頭は、いつも以上にさえまくっていた。


「ら、ライト。いったん落ち着いて。ライトは何でもかんでも生み出しているけど、その武器が作れた時、この世界はどうなるか想像した方がいい。もし、新しい技術が出来て皆が幸せになるのはいいけど、多くの者が苦しむ結果になったら、ライトは人を殺しているのと同じだよ」


 私はライトに人殺しになってほしくなかった。この世界で悪人を殺しても咎められることはない。でも「人を殺せば地獄に落ちる」と言う何とも子供の心に残っているお婆ちゃんの言葉が頭に木霊していた。人を殺せば何があっても阿鼻地獄に落ちる。まあ、仏教の世界だけど。


「姉さん、なんでそんな必死な顔をしているの? 別に売るわけじゃないし、僕は調べたいだけだよ」


 ライトは探求心の塊なので、首をかしげながら訊いてくる。


「はぁ……。わかった。じゃあ、売らずにただ作るだけね」


「うんっ!」


 ライトは大きく頷き、私に設計図を渡してきた。とりあえず、木で出来る限り作ってみる。

 本物の拳銃の構造は知っているが、ライトが考えている構造はまた違った。

 薬きょうが出る部分が無く、弾倉を込める場所も無い。なんなら引き金すらない。ただのレプリカのような形でブーメランじゃないけど、拳銃っぽい何かだった。


「ベスパ、ライトの設計図通りに木で作ってくれる」


「了解しました」


 ベスパはライトの設計図を手に取り、ぶーんと森の方に飛んで行く。

 そのまま、戻ってくるとベスパは木製の拳銃を持って来た。大きさは片手で握れるほど。デザートイーグルよりは小さいかな。まあ、あそこまでカッコいい品じゃないけど。

 なんで、女の私が拳銃に詳しいかと言えば、私の性格が男っぽいからFPSファーストパーソンシューティングのゲームなんかも普通にやっていたわけで……。まあ、そんな話しはどうでもいい。


「はい、ライト。一応作ったけど、その形ならただの杖でよくない?」


「杖は杖先に魔法陣を出して魔力を込めるでしょ。これは、魔法陣の代わり。もう一個魔法陣を出せば重ねられるんだ」


 ライトは木で作った拳銃の持ち手に魔法陣を描いた。


「こうすれば、詠唱で魔法陣が現れる時、魔力と魔力がぶつけ合わさる」


 ライトはベスパが入って来た窓に向けて木製の拳銃の銃口を向けた。


「『ウォーター』」


 ライトが詠唱を呟くと木製の拳銃が光り、銃口に魔法陣が展開された。魔法を魔法陣に打ち込んだら。


「ぐっ!」


 ライトの右腕が後方に吹っ飛んだ。千切れていないが、肩が完全に外れている。


「ライト!」


 私はライトの手を見た。火傷……のような傷が痛々しく残っており血まみれだ。


「バカ! 安全性が皆無じゃない!」


 私はライトの手に魔力をそそぐ。回復魔法ではないけれど、体の回復力を向上させて治癒できる。


「は、はは……。お、思ってたより威力が出たね……」


 ライトは苦笑いを浮かべながら右肩を押さえていた。そのまま、魔力操作で肩を嵌める。いや、なんで嵌めれるの……。


「ふう~、戻った戻った。いやあ、爆発することはよくあるからさ。何度も肩が外れてもう、治すのに慣れちゃった~」


 ライトは満面の笑みを浮かべ、後頭部を掻いていた。


 私は笑っているライトの前に立ち、思いっきり平手打ちしてやった。先ほどの爆発音よりも甲高く、小さかったが重たい一撃だ。

 この人生で初めてライトに手をあげた。


「……ね、姉さん?」


「バカ! 何が慣れたよ! もっと自分の体は大切にしなさい! どれだけ心配したと思ってるの!」


 私はライトの頬を両手で掴み、目を見て話す。

 もう、言い聞かせなければこの天才問題児は変わってくれなそうだ。最悪、実験の失敗で命を落とすかもしれない。そうなったら私がこの場で怒らなかったことを後悔すると思い、激怒する。


「ね、姉さん、ご、ごめん……。怖い思いさせて……」


「そうじゃない。ライトが危険な行動を危険だとわかっていてやっていることを怒っているの! ライトの体は一つしかないし、失明したり、手足がもげてたり、動かなくなっていたどうするの! 安全性に配慮してって毒の研究の時にも言ったでしょ!」


「は、はい……」


 ライトは私に怒られ、身を小さくした。

 学校はこういう危険な子を安全に生活できるように設置されたのかもしれない。

 天才を凡人に変えるなと言う話しはよくあるが、天才がゆえに死ぬ者だって多くいるだろう。ライトみたく危険な実験であの世に逝った研究者も少なくないはずだ。

 私は他人がどうなろうとどうでもいい。でも、親族である弟のライトに実験で死んでほしいわけない。

だから、本当に叱った。お母さんの血が流れているので相当な恐怖だっただろうが、仕方ない。怒らざるを得なかったのだ。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……。ライト、研究をするのなら安全に考慮するように……」


「うぅぅ……。はぃ……」


 ライトはほぼ泣き、正座をしながら怯えていた。

 フルーファがライトに寄り添い、少々慰めるように頬を舐める。


「フルーファ。姉さんがお母さんになったみたいに怖かったぁ……」


「安心しろ、ライト。キララが本気で怒ったらこのくらいじゃすまないからな……」


 ライトはフルーファに抱き着き、フルーファはライトを慰めていた。


「ライト、また危険なことしたの……。懲りないなぁ~」


 隣の部屋からやって来たのはシャインだった。私がライトに怒っていたのを聞いたのか、扉の隙間から顔を少しだけのぞかせている。


「あっ! 魔力が濃いシャインならうまくいくかも!」


 ライトは私の話しを聞いていなかったのか、すぐに元気になり破裂した木製の拳銃と同じ品をベスパに要求した。


「ライト……。私の話し、聞いていなかったの?」


「いや、聞いていたよ。ずっと聞いてた。その間、なんで暴発したのか考えていたんだ。考えたら手書きの魔法陣が僕の魔力量に耐えられなかったのかなと思ってさ。魔力が濃くて少量でも問題ないシャインならうまくいくかも」


 ライトは目を輝かせ、完全にやる気になっていた。天才児じゃなくて問題児と言ったほうがいいかもしれない……。


「はぁ、じゃあ。安全に配慮して実験してください……」


 私はライトの探求心に負け、ベスパに同じ品を作らせた。その際、魔力の暴走が起きにくいようにネアちゃんの糸で大量の魔力が放出されるように改良した。

 木製の拳銃に半透明の光る糸が入り込んでおり、魔方陣が要領を超えた場合はその糸から魔力が放出される。まあ、一種の安全装置を取り付けた。

 家の中だと危険なので、家の外に移動し、人がいないか確認してから実験を行う。


「これなら、まだ安全だね」


「じゃあ、一回やってみる」


 シャインはグローブを手に付け、右手だけではなく両手で木製の拳銃を握った。


「『ウォーター』」


 シャインは詠唱を言い放った。すると、手に持っている木製の拳銃が光り、魔力を魔法に変える。加えて銃口の先に表れた魔法陣に伝わった。


 バシュンっ! と勢いよく放たれた水の弾が岩を穿つ。シャインの放つ魔法の威力とはかけ離れており、威力が大きく増していた。『ウォーターショット』と同等かそれ以上の威力になっている。初級魔法を中級魔法程度の威力で放てているわけだ。


「す、すごい! 私、魔法が使えた!」

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