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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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無駄なこと

「さ、キララ。さっさと料理を食べちゃって。そうしないとお皿が片付かないからね」


 お母さんは私の顔を見た後、料理場に戻っていく。私は靴を脱ぎ、お母さんの背中に抱き着いた。むっちりとしたお尻に張りがあり、まだまだ若い。


「あら、キララ。どうしたの、珍しい」


「ちょっとね……。何とも言えない焦燥感に駆られているのですよ……」


「もう、変なこと言って」


 お母さんは私の方を向き、ギュッと抱きしめてきた。

 そのまま、背中を撫でられるとやはり私はこの人の娘なのだなと心が温まる。大きな胸が苦しいと言うのが少々イラっとする。お母さんだから許せた。

 私はお母さんでストレスを三八パーセントほど解消した後、手洗いうがいを終わらせテーブルの上に置かれている料理を食す。温かく、出来立てのようだった。ライトが温めてくれたのかな。


 料理を食べ終わったら、歯を磨き、寝る準備。自分の部屋で服を脱いで真っ裸になった後、体を塗れた布で丁寧に拭いていった。

 もう、人形のようなすべすべの肌で、自分で触っても心地よい。胸とお尻が大きければ完璧だったのだが、そうなったらもう神になってしまうので、出来が悪い部分があった方が人は可愛げがある。完璧超人は案外魅力がない。


「ふぅー。さっぱりしたー」


 私はキャミソールとショーツを着て、湿った髪を乾いた布で拭く。すると、扉がガチャリと開いた。


「魔法を使って体を洗えばすぐに済むのに、なんで姉さんは無駄な時間を過ごすの?」


 私の部屋に入って来たのはライトだった。


「ちょ、ライト。いきなり開けないでよ。エッチー」


 私は隠す必要も無いのに右手で胸を、左手で股を隠した。


「別に姉さんの体を見ても何とも思わないよ」


 ライトは真顔で言い放った。まあ、確かに私もライトの下半身を見ても何とも思わないけどさぁ。そこはもうちょっと恥じらいを……。


「はぁー。ライト、何でもかんでも正直に言えば良いってものじゃないよ。たまにはお世辞を言って相手を喜ばせてあげることも社会を生きていく中で大切な会話技術だから、覚えておきなさい」


「お世辞って。姉さんになんて言えばいいのさ。大きくて大人らしいね言えばいいの?」


「相手が嘘ってわかるようなお世辞は駄目。そうだなぁー。お姉ちゃんは思っていたよりも大人っぽいねとか、お姉ちゃんは可愛いだけじゃないんだねとか」


「へぇー。別に姉さんにお世辞を言う必要もないかなと思うけど……」


「へいへい、そうですかい。で、さっきの質問の答えだけど、面倒臭いことの中にもいいことはあるんだよ。何でもかんでも省略したらつまらないでしょ」


「面倒臭いことの中にもいいことがある? なんでもかんでも省略したらつまらない? ちょっと何を言っているかよくわからないよ」


「そうだなぁ。私は布を使って体を拭いていた。多分八分くらいかな。魔法なら八秒くらいか。八分間で私は体を拭いていると見せかけて頭の片隅で色々考えていたんだよ。このボーってしている感覚の時、思いもよらない発見が舞い降りてくることが時たまあるの」


「え……。そうなの?」


 ライトは私の話しを興味津々に聞いてくる。


「トイレしている時とか、体を拭いている時にパッと頭の中で何かが降ってくるの。特に何も考えていない時にね。この自然にパッと出てくる想像がどれだけ凄いかライトは知らないと思うけど、大天才だったらこのパッとしたひらめきで世界を変えちゃえるんだよ」


 有名な物理学者や数学者たちもお風呂やトイレ、昼寝など本来とは全く違うことをしている時に物凄いひらめきを得ていた。どれだけひらめこうと考えてもひらめかなかったのに、どうでもいいことをしていたらひらめいたのだ。


「私はどうでもいいことをしているようで実は頭の中で沢山沢山考え事しているの。もしかしたらすごい発見や知識がぱっと出てくるかもしれない。ライトもたまには魔法を使わずに体を拭いてみたら?」


「なるほどねー。ちょっと興味が出て来たよ」


 ライトは私の話しを試したそうに微笑んだ。


「ライトは私の部屋に何しに来たの?」


「え? ああ、懐中時計の調子はどうかなと思ってさ。姉さんの魔力量なら問題ないと思うけど、壊れている部分があったり、動きが悪い部分があるかもしれないから、点検しておこうと思って」


「なるほど。わかった」


 私はライトに懐中時計を手渡した。


「じゃあ、点検しておくよ」


 ライトは私の懐中時計を持って部屋を出て行った。懐中時計の点検が出来るなんてなかなかの天才児だなぁ。


 私は寝間着を羽織り、椅子に座って机で勉強を始めた。

 ドラグニティ魔法学園に行ってから追いつけなくなる前に基礎をガッチガチに固めておこうと思う。あの学園でも基礎を学ぶと思うが、最初だけ。あとはほぼ応用なので、基礎が無ければ年が上がるにつれて崩れていく未来が見える。

 地盤は恐ろしく硬い方が崩れにくい。まあ、ある程度柔らかい方がいきなりの地震に耐性があるのだけど……。


「ふぅー。なかなか溜まったなー」


 私は魔法陣を書いた紙を箱に入れた。もう、パンパンで凄い量だ。

 約二年分の魔法陣が書かれた紙が保管されており、昔の文字を見比べても……あんまりうまくなってねえな。

 どうも、私は文字を書くのが下手くそなようだ。二年も文字や魔法陣を書いているのにどうしてなのだろうか……。漢字などの難しい書き方はない。ローマ字のような形の字が多いので、難しい訳じゃないんだけどな。


「羽根ペンがやっぱり合わないんだろうな」


 私は過去、ボールペン、シャープペンシルなどといった高性能の筆記用具を使って来た。でも、この世界にそんないい品はない。

 羽根の先端に尖った金属を付け、黒いインクで文字を書くと言うのが主流なわけだが、私は筆を使って家で勉強している。筆だと綺麗に書けるのはやはり日本人の癖なのだろうか。


「もう一二年もたっているのにまだ抜けないか……。ほんと染みついているんだなぁ」


 私は過去の記憶が濃いからか、魂の干渉も濃いようで体にしっかりと影響されている。二〇年間の中で染みついた癖は中々取れないと言うことが良くわかった。


「ベスパ、この魔法陣を子供達用の魔導書に加工できる?」


「可能です。初級魔法から特級魔法までに分けて魔導書にしますね」


 ベスパは八〇〇〇枚近い紙が入った木箱を持ち、ブーンと家から出て行った。


「ふわぁー。キララ……。だっこぉ……」


 寝ぼけたフルーファが私のもとにやって来て太ももに顎を乗せてくる。


「はいはい。甘えん坊なわんこでちゅね~」


 私はフルーファを優しく撫で、ギュッと抱きしめる。その行為だけでフルーファは尻尾を振り、大変喜んでいた。

 中型犬程度の大きさになっているが、本来は親玉くらい大きくなれるのでもう、大人なのに甘えん坊と言うのはいいか悪いか。

 まあ、大人になっても甘えん坊な者は多いので、気にしすぎる必要もない。フルーファの体をブラッシングしてあげていると、ベスパが戻って来た。


「キララ様、完成しました」


 ベスパはいかにも魔導書って言う感じの本を持って来た。木製の板に魔物の革を使ったカバーが縫い付けられており、とてもしっかりとしている。もう、本物にしか見えない。

 ネアちゃんの卓越した裁縫技術によって典型的な魔法陣が表紙に光る糸で縫い込まれている。初級魔法は丸、中級魔法は二重丸、上級魔法は三重丸、特級魔法は四重丸。


「自作ですし、お金を取るわけじゃありませんから何ら犯罪ではありませんね」


「そうだね。正教会に最悪見つかってもお金儲けしていなければ問題ないはず」


 魔法の教育は酒税のように特定の場所にお金を払わないで行うと犯罪になるので、注意しなければならない。でも、一名や数名に教えたくらいじゃ簡単に捕まらない。まあ、お酒を造って一人や二人に渡したところで誰も気付けないのと同じだ。何十人、何百人と増えると捕まるけどね。


「良し。これで多くの者が自主勉強ができるようになった。無断で複製本を作ったら犯罪だし、教会に置いておかないとな。牧場の休憩室にも置いておくか……」


「ですがキララ様、特級などの魔法は危険だと思われます。あまり子供達の近くに置いておかない方がいいのでは?」


 ベスパは安全面を私に訊いてきた。


「確かにね……。子供達がもし発動出来ちゃったら危険すぎる。魔法は刃物と同じくらい危険だからなぁ。子供が面白半分で使ったら危ないから無暗に教えられないのかも。じゃあ、刃物の取り扱いもお金を取れよって話しだけどさー」


 この世界に銃刀法違反なんて言う法律があるわけない。剣を持つのは当たり前。銃を見た覚えはないが、大砲類はあると思われる。なら、銃が作られるのも時間の問題か……。でも、魔法の方が斬段数が多くて連射でき、音速の鉄の塊を防ぐ地面の壁を張れる私からすれば銃どころじゃ止まらなそうだ。まあ、身体能力がぶっ飛んでいて魔法が使えない獣族が、重火器を持ち始めたらやばいけど。


「まあ、どこぞの天才が現れない限り、あんな武器は出てこないはずだ。大丈夫大丈夫」


 私は日本生まれ日本育ち。危機なんて近くにいた犬か、ちょっと怖いヤンキーくらい。拳銃を持ったヤクザの方達と知り合いでもなければ、紛争が行われている地域の者でもない。

 でも、そんな私は法律も価値観も全く違う世界に生まれ変わって一二年間生きてきた。森に出れば銃や大砲でも死ななそうな化け物がいて、剣を一振りで五〇メートルを超える化け物をぶった切る男がいる世界を見てきてからは、銃と言う武器に恐怖を覚えていたころが可愛いななんて思っていた。

 原爆ほどの威力を放つ魔法もあるだろうか……。まあ、私が放つ魔法はその威力に近しくなれる可能性があると考えるだけで恐ろしい。


「武器や力は使いよう。どうやって使うかで相手を傷つけたり生かしたり出来る。ベスパ、私達は世のため人のため、自分のために使おう。誰も傷つけずに活かせるように努力する」


「キララ様がそう言うのなら、私はその判断に従います。もし、キララ様が破壊したいと思うのなら私もその遺志にしたがいます」


 ベスパは私に頭をペコリと下げた。


「暴走していうことを聞かなくならないでよ。ああなったら面倒だからさ」


 ベスパは一度だけ命令を無視して行動をとったことがあった。スキルの暴走だと思っているが、どんな時に起こるのかまだはっきりとわかっていない。

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