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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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仕事のし過ぎ

 私は不安に駆られながらも笑顔を絶やさず、イーリスさんに頭を下げる。


「キララさん、また来てくださいね! 私、もっともっと頑張って! お母さんとルイを幸せにします!」


 デイジーちゃんは外が暗いのに顔の笑顔だけで輝いて見える。もう、妖精に愛されているのか、顔の周りにチラチラと輝く魔力が見えた。


「うん。デイジーちゃんなら出来るよ。その体力と笑顔でイーリスさんをもっと幸せにしてあげてね」


「はいっ!」


 デイジーちゃんは満面の笑みを浮かべ、元気よく返事してきた。これだけ元気がいいと心地よすぎる。胸も、まだ許せる程度なので今後もしっかりと面倒を見よう。


「デイジーさん、今日はありがとうございました。街で楽しい思い出が沢山出来てとても良かったです」


 ライトはデイジーちゃんの前に出て頭を軽く下げる。


「私もライト君と沢山お話しできて楽しかった。また、街で沢山おしゃべりしようねっ! 約束だよ!」


 デイジーちゃんはライトの手を握り、笑顔を振りまく。


「は、はい! 約束です!」


 ライトは生きていてよかったと言いたそうなくらい幸せそうな笑顔で返事した。


「もちろん、ガンマ君とシャインちゃんも一緒ね!」


 デイジーちゃんはライトの顔からガンマ君とシャインの方に視線を向ける。


「あ、あはは……。そ、そうですねぇ……」


 ライトは軽く泣き、笑顔で乗り切っていた。よく耐えたな弟よ。そう、それでいいのだ。


「ガンマ君、今日も手伝ってくれてありがとう……。その、また手伝ってくれるかな……」


 デイジーちゃんはガンマ君の前に来ると、もじもじしはじめ、いきなり乙女の表情を浮かべた。視線が安定せず、言葉もどこかなよなよしい。先ほどの元気っ子はどこに行ってしまったのか。


「もちろんです。デイジーさんが困っているのであれば、いくらでもお手伝いします。じゃあ、今日はもう遅いですから、しっかりと食事と睡眠をとって休んでくださいね」


 ガンマ君はデイジーちゃんのツルツルのおでこに、ちゅっとキスした。


「疲れが飛ぶおまじないを掛けました。これで、明日も元気に過ごせますよ」


 ガンマ君は満面の笑みを浮かべ、デイジーちゃんに伝える。


「ほけぇー」


 デイジーちゃんはおでこに手を当て、顔を真っ赤にしている。


 ――が、ガンマ君。あんたはホストか何か? そんな手腕、どこで手に入れたんだ! お姉ちゃんは知らないぞ!


 私はガンマ君も弟だと思っているので、弟が女友達を篭絡しようとしている姿に驚いてしまった。まあ、天使の妹、テリアちゃんにしているおまじないをデイジーちゃんにもしたんだろうな。というか、無垢って怖い……。


 ライトは完全に泣いていた。夜じゃなかったら涙の滝が見えていただろう。


「で、デイジーちゃん! 私もキスするね!」


 シャインはデイジーちゃんのおでこにキスした。

 何と、何と、シャインはガンマ君がキスした位置と全く同じ位置にキスしたではないか。それは狙ったのか、はたまた偶然か。わからないが、シャインはガンマ君とデイジーちゃんの額で間接キッスしたことになる。きゃー、もうそのまま口と口でやっちゃえよ~!


 私は一人だけ興奮が止まらない。ほんと、こんなおばさんになっちゃ駄目だよ。


「も、もう、シャインちゃんまで。じゃあ、私も」


 デイジーちゃんはガンマ君のおでことシャインのおでこにチュっとキスして微笑み合っていた。


「……」


 ライトは少しだけ泣き止み、おでこを『クリア』で綺麗にしていた。ライトしか使えない高位の魔法でデイジーちゃんに対するエチケットがしっかりとしている。ただのでこキスのためにそこまでする必要があるかわからないけど。


「ライト君はキスしてくれてないからキスは無しだね」


 デイジーちゃんはライトの前に来るも、くるりと身をひるがえし、帰ろうとした。


「ちょっ……」


 ライトはデイジーちゃんの手を掴み、呼び止めた。そのまま、手の甲に唇を当てる。いや、それは貴族の挨拶だよ。ライトのヘタレ。


「ふふっ、ライト君のヘタレ」


 デイジーちゃんはライトのデコにキスして少し離れた。


「なっ……」


 ライトは自分でヘタレじゃないと言っておきながら最後の最後で本性を現し、デイジーちゃんにしっかりと知られた。だが、デイジーちゃんもまんざらではなさそうな表情で、仲は悪くなさそうだ。


「…………」

 ――私は?


 私はデイジーちゃんにキスされていない。まあ、別にいらないが、皆が貰っているのに私だけもらっていないと言うのもなんかなぁ……。気にしなくていいか。


「じゃあ、もう暗いし、四人で帰るよ。なにが出るかわからないからね」


「はーい」


 ライトとシャイン、ガンマ君は返事して手をあげる。その返事だけはいつまでたっても子供っぽい。


 私はレクーが引く荷台の前座席に座り、ガンマ君とライト、シャインは荷台に乗った。


「ベスパ、夜道だからレクーの視界をしっかりと照らしてあげてね」


「もちろんです。危機察知も常に発動しますから、敵は見逃しません」


 ベスパは胸に手を当ててレクーの前に飛ぶ。そのまま、ハイビーム並みの光量を放ち、辺りを光らせた。


「ほんと、姉さんの明りって明るいよね。もう、普通の『ライト』じゃないもん」


 ライトは自分の魔法と同じ詠唱を呟きながら手の平に明りを出す。ベスパから放たれる光量の方が多く、完全にかき消されていた。


「まあ、魔力量の違いだから仕方ないよ」


 私達は明るい道を走りながら、村に戻る。


 ☆☆☆☆


 村に着いた時刻は午後八時。夜道なので少し警戒して進んだ結果だ。


「良し、到着。ガンマ君の家まで送って行こうか?」


「いえ、僕は一人で帰れますから、気にしないでください」


 ガンマ君は荷台から降り、軽く走って家まで帰って行った。


「ライトとシャインは先に家に帰っておいて。私はレクーと荷台を牧場に戻してくる」


「わかった」


 ライトとシャインは双子らしく同時に頷き、言葉を放った。ほんと顏だけなら見分けがつかないので、男女で分かれてくれて本当によかった。

 ライトとシャインを家の前でおろし、私は牧場に向かう。


「レクー。今日はお疲れ様」


 私はレクーの餌箱に干し草を入れ、キャロータと言う人参そっくりな野菜を置く。私が誕生日にお爺ちゃんから貰った種から作った品で村を出発する前に育った品が残っていた。ライトが保存してくれていたらしく、まだ食べられる。もう、レクーの大好物だ。


「ありがとうございますっ!」


 レクーはキャロータに齧り付き、大変幸せそうに鳴いていた。


「あぁ~ん、レイニー、待ってくれよぉ~。離れたくなーい。今日も一緒に寝ようよ~」


「…………」


 レクーの食事が止まり、私も無言になる。


「もう、仕方ないな。厩舎で寝ると俺が風邪を引くからメリーに止められているんだよ」


「もーう、メリー、メリーって、他の女の話しばーっかりして。レイニーの浮気者ー」


「何言ってんだよビオタイト。バートンで一番綺麗なのはビオタイトに決まってるだろ。メリーは人間だから気にするなって」


 姉さんとレイニーのバカップルみたいな会話が夜中の厩舎の外で繰り広げられていた。


「キララさん……。僕、早く出ていきたいです……。お母さんのあんな姿を見るのは耐えられません……」


 実の息子であるレクーもさすがに姉さんの激甘姿は見たくないようだ。


「な……。れ、レク」


 姉さんは外から厩舎に入ってくると、レクーと視線が合った。


「お、お母さん……。こんばんわ……」


 レクーはさらっと挨拶して食事を続けた。


「あ、いや、その、これはだな、あー、何というかぁ」


 姉さんはびっくりするくらい慌てていた。足を小刻みに動かし、大きな体を震わせている。


「なんだ、レクー。俺とビオタイトがラブラブで羨ましいのか~。お前の母さんは俺の相棒になったんだ。甘えられるだけ甘えておけよ~」


 レイニーはビオタイトにキッスして、頭をポンポンと叩き、厩舎のバートン房に入れる。


「べ、別に甘えたいわけじゃないです! ち、違いますからね!」


 レクーはレイニーに図星を突かれたようで声を荒げる。姉さんを取られてちょっと寂しかったようだ。


「レクー。バートンの家族はいつ引き裂かれるかわからない。だから、甘えられるときに甘えておいても良いと思うよ」


 私は相棒のレクーの頭を撫でた。


「うぅ……」


 レクーは姉さんのバートン房を見ながら少々頷いた。

 私はレクーを厩舎に置き、荷台を洗ってビー達に倉庫に入れてもらった。


「ふぅー。休日なのにどっと疲れたような気がするのはなぜ……」


「キララ様も仕事の虫だからですよ」


 ベスパはふっふっふっと笑い、翅をブンブンと鳴らしていた。


「うぅ、否定できない……。確かに、仕事のし過ぎなのかも。でも気が付いたら仕事しちゃっているんだよ……」


「キララ様が仕事の虫ですから、仕事がしたくてしたくてたまらないんですよ。もう、その性格は変わらないと思いますから、普通に楽しんだらいいんじゃないですか?」


 ベスパは微笑みながら、私の周りをブンブン飛ぶ。

 私は仕事に流されて生きてきた人間だ。そんな人間に、またしても仕事しろと言うのか。まあ、仕事するのは嫌いじゃないんだけどさぁ……。このままではワーカホリック(家庭や自分の健康をなおざりにしてまで、仕事をやりすぎる状態。また、その人。働きすぎの人。仕事中毒)になってしまう。


「はぁ、仕事が楽しいから仕方がないか。楽しいのなら、仕事だろうが、遊びだろうが一緒だよね。辛いと言う感情が無ければ仕事が充実する。やっぱり、ホワイト企業勤めは勝ち組なんだな」


 私は荷台を返したあと、夜の村を歩いて家に帰る。


「ただいまー」


 私は玄関を開け、家の中に入った。


「お帰りなさい。今日はちゃんと帰ってこれたみたいね」


 私を出迎えてくれたのはお母さんだった。温かい料理を作って家で待っている存在がいると言うのはやはりいいものだな。

 私は家に帰っても誰もおらず、静かな部屋で夕食を得ていた過去がある。それを思えば、今の生活も悪くない。なんなら、良いかもしれない……。でも、あと半月でこの家を出なければならないと思うと少々寂しいと言う気持ちが胸の中に生まれる。

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