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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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恋人関係に程遠い

「うわぁ~。凄い、果物がいっぱい乗ってる。ありがとうございます」


 デイジーちゃんは純粋無垢な女の子。果実ジュースを見て目をキラキラと輝かせていた。


「な、なな、ななななな……」


 ライトは少々ませた美少年だ。果実ジュースが一杯のグラスにしか入れられておらず、飲み口が二カ所ある。もう、一緒に飲んでね。と言わんばかりのカロネさんの援助が見え見えだ。ライトがいつもカロネさんに助言しているそうなのであの程度のサービスは店にとって余裕なのだろう。


「これ、パンケーキだよね! 家で作ってもらった品より綺麗になってる~!」


 デイジーちゃんは生クリームがたっぷり乗ったパンケーキを注文していた。もう、パクパク食し、頬を赤らめて身を震わせるほど美味しそうにしている。


「ぼぉ……」


 ライトはそんなデイジーちゃんの甘い顏をおかずに、いつもは飲めない珈琲を苦い顔しながら無理やり飲みこんでいた。


「えへへ、えへへー。早く飲め、早く飲めー。二人で早くジュースを飲めー」


 私はにやにやした顔でライトとデイジーちゃんを凝視していた。もう、気づかれているわけだし、別にいいよね。


「キララ様。顔が大変醜いですよ」


 ベスパは花粉をめしべに受粉させながら、私に話しかけてくる。


「えぇ~。まあ、今はいいかなぁ~」


「はぁ、はぁ、はぁ……。『ミラージュ』」


 ライトは苦い珈琲を飲み切った後、私達の方に鏡のような一枚の板を出現させ、姿を隠した。


「あ……。照れちゃった……」


 シャインはライトの心情を読み取り、自分でもああしたくなると思ったのか、私の方を見てきた。


「お姉ちゃん、ライトにあんな視線を送っちゃ駄目だよ。ライトは恥ずかしがり屋なんだから。デイジーちゃんと手を握ることも出来ないヘタレなんだよ」


「な、なにを! 僕はヘタレじゃないぞ!」


 ライトはシャインの声に反応し、立ち上がった。


「なによ! 手もつながず、鏡で隠しちゃって、ヘタレじゃない!」


 美少年と美少女がお店の中で言い合いをし始める。はあ、やっぱりまだまだ子供だなぁ。


「二人共、お店の中では静かにしようね」


 私は微笑む。するとお店の中で受粉していたビー達が大きな音を立たせ、辺り一帯を威圧する。

ライトとシャインの表情が悪くなると静かに椅子に座った。せっかくの甘い雰囲気が少々壊れてしまい、ため息が出るような気持ちで一杯だ。


「全部キララ様のせいですけどね」


 ベスパは私のもとに降りてきて呟いた。


「なにを言っているのか全然わからなーい」


 私はベスパの声を聞こえないふりをした。悪い女の子だ。


「ごめん、デイジーさん。大きな声を出して……」


「ううん。私は気にしてないよ。そもそも、ヘタレってどういうこと?」


「へ、ヘタレっていうのは……。こ、こういうジュースを飲めない者のことかな……」


「えぇ~、こんなジュース。ライト君とならすぐに飲めちゃうよ。だから、ライト君はヘタレじゃない。ほら、一緒に飲もう。このフキの枝で飲めばいいのかな?」


 デイジーちゃんは茶髪を耳に掛け、前にのめり出す。

 そのままストローのような枝を持ち、唇を少し尖らせる。その仕草がとても色っぽく、さすがイーリスさんの娘なだけある。あの美貌の少女ともう、鼻でキスしてしまいそうな位置にまで近づかなければならないライトの心境を察するよ。


「よ、よし。僕はヘタレじゃない。僕はヘタレじゃない……」


 ライトはガッチガチに緊張した状態でストローを持ち、デイジーちゃんと一緒にジュースを飲む。


 ――きゃぁ~! 激写、激写! ベスパ、全方位からちゃんとビーディオに記録しておいてね! ライトの結婚式に流してあげないと。妻と初めて一緒に飲んだジュースです。もう、共同作業は済ませていました。なんつって~!


「キララ様、興奮しすぎですよ。というか、反対方向から『視覚共有』で覗き見るなんて何とも姉がする行為ではないと思うのですが……」


 ベスパは私と真反対の位置に立っており、ライトとデイジーちゃんが共にジュースを飲んでいる場面をはっきりと見ていた。

 ライトでも魔力体のベスパを認識することは出来ず、鏡でさえぎられても私の視界にライトとデイジーちゃんのラブラブな姿がありありと映っている。


「ぷはぁ~。おいしいぃ~っ! ライト君、この果実汁美味しいねっ!」


「う、うん……。お、美味しいね……」


 ライトは緊張しすぎて味がわからないのか、どぎまぎとした返事を返した。

 私はライトとデイジーちゃんが恋人らしい思い出を作れてよかったよかったなんて一人で喜んでいた。


「シャインさん。あーん」


 ガンマ君は運ばれてきたパンケーキをナイフで切り、フォークを使ってシャインの口元に運ぶ。


「あ、あーん」


 シャインが乙女の顔になって口を開けていた。


 ――あ、あんたら、いつの間にそんな仲に。も、もう、食べさせ合いっこなんて恋人じゃないですかぁあ~っ!


 私の頬は熱り、血圧が上昇しているのがわかる。そのたび、魔力の量がどんどん溢れ出てビー達が乱舞。もう、多くの花々を受粉させまくっていた。本来の仕事を命令なしにこなしてしまうほど大量の活力が溢れてきているのだろう。


「キララ様、落ちついてください。そうしないと体が魔力量に耐えられません」


 ベスパは私の元に戻って来て手足を動かし、ブーンブーンと警戒音を鳴らす。


「はっ……。や、やばいやばい。興奮しすぎて爆発するところだった。深呼吸、深呼吸」


 私はいったん呼吸して心臓を静める。


「しゃ、シャイン。ガンマ君ともう、そんな仲になったの?」


「え、ち、違うよ。私だと一瞬で食べ終わっちゃうからガンマ君に取り分けてもらってるだけ……だよ」


 シャインは視線を反らし、何とも可愛らしい嘘をついていた。そんなふうに言ってガンマ君に食べさせてもらう口実を作るなんて、やるようになったじゃないか。


「シャインさん、力を入れ過ぎてフォークやナイフを折り曲げちゃうかもしれませんもんね。お店の人に悪いですし、僕が食べさせればいいだけなので、別に気にしないでください」


 ガンマ君はシャインを恋人だと一切思っていないのか、手のかかる赤子のような認識と考えられた。


 ――あ、あれ? これじゃあ、親子やきょうだいのような関係なのでは……。


 私はキャッキャウフフじゃなくて、アギャアギャギャ~と泣く赤子をあやしている兄にしか見えなくなってしまった。


「はぁ……。先はどちらも長そうだなぁ……」


 私はライトとシャインの恋路が今後見れないと言うちょっとした心残りを抱えながら皆でお店を出た。


「あ、ありがとうございました~」


 店員さんやカロネさん達は私達を見送ってくれた。ただ、多くの者達が、私達の姿を見て目を輝かせている。別に何もしてないが、その瞳は憧れの者に向けるまなざしそのものだった。


「ぼ、僕……。今、倒れても良いやぁ」


 ライトは夢心地な気分になっており、顔がとっても破廉恥だ。お酒に酔ったようなおバカな表情に似ている。お尻を叩いてシャキッとさせる。


「ほらほら、家に帰るまでが仕事だよ。そんな腑抜けた顔をしない」


「は、はいっ!」


 ライトは背筋をピシッと伸ばし、大きな声を出した。


「ふふふっ、ライト君。キララさんが相手だと絶対にしたがっちゃうんだね」


 デイジーちゃんは元気よく返事したライトを見て笑っていた。その笑顔は凛と咲くひまわりの如く、私達を照らす。


 ライトはデイジーちゃんの顔を見ただけで顔をソラルムのように赤く実らせ、湯気を立たせるのだから、天才すらも可愛い子には敵わないのだ。


「シャインさん、美味しかったですね」


 ガンマ君はシャインの手を握りながら、微笑む。


「う、うん……。お、美味しかった……」


 シャインは視線を背けながら、ガンマ君の手は離さずにしっかりと握っていた。握ってない右手は優しく握り拳を作り、鼓動が止まらない胸に置かれている。

 こちらもまた、顔が赤く、風邪をひいてしまっているのではないかと思うほどだ。

 瞳はうるうるで熱を帯び、日の光りを反射してキラキラと光って見える。まだ薄く色気が無い子供の桜色の唇も生クリームによって脂身が増し、ぷるっぷるに潤い、少しだけ大人びて見える。

 ガンマ君の無垢な笑顔でシャインの心は満たされているのだろう。だが、その笑顔を我が物にした時の嬉しさは私すらもわからない。世界で一番満たされた人物に成れるに違いない。


「ライト、シャイン。頑張ってね」


 私はライトとシャインを見つめながら小さく呟いた。


「じゃあ、皆。帰りましょうか」


 イーリスさんは年長者と言うことでイチャイチャしあっている子供達に声をかけ、荷台に移動する。私とライト、イーリスさんはレクーが引く荷台に乗り、シャインとガンマ君、デイジーちゃんは軽くなった荷台を交代して引っ張る。


 東門に来ると、丁度午後四時だった。


「おじさん、こんにちは」


 私は東門の門番をしている兵士のおじさんに話し掛けた。


「おう、嬢ちゃん。こんにちは。今、帰りかい?」


「はい。遅くなると危険なので、帰ります」


「そうかい。じゃ、気を付けて帰りな。もう春だからな、危険な生き物も冬眠から目を覚ます時期だ」


 兵士のおじさんは私達をいつも気遣ってくれる。ものすごくいい方だ。


「わかりました。気を付けて帰ります」


 私達は兵士のおじさんに頭を下げ、街を出た。

 楽しい休日を過ごした私達はネード村に一直線に帰る。まあ、寄り道する遊び場なんてないし、そのまま帰るしかない。


 帰りは荷物が軽かったので行きよりも早く到着した。でも、ネード村に着いた時間は午後七時。すでに日が沈み、辺りは暗くなっている。


「キララさん、今日はありがとうございました。久々に元気な姿が見れてとても嬉しかったです。また、ご教授お願いいたします」


 イーリスさんは私に頭を下げ、微笑みを浮かべた。


「私もイーリスさんと一緒に喋れて楽しかったです。また、夏野菜が出来かけるころにやってきます。今度は夏野菜を街で売りまくりましょうっ!」


「ははっ、良いですね。今度はキララさんに負けないくらい上手に売れるように頑張ります!」


 イーリスさんは両手を握りしめ、大きな乳をバルンと跳ねさせながら意気込んだ。その一回の跳躍は必要だったか? ぁあ?


 私は一瞬切れそうになったが、いけないいけないと頭を振り、宥める。魔力量が多いからか、切れやすくなっているのだろうか。はたまた生理の影響か……。って、私はまだ来てないんだよな。やばいよなぁ……。体の成長があまりにも遅くて困っているんですが。

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