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おじさんはウシ君が怖い

「あれ…おじさんどうしたの? なにかゴミでもついてる…、普通の格好だと思うんだけど…」


キララはこの時、所々ほつれたオーバーオールと継ぎはぎだらけの長そでシャツを着ていた…。


「おいおいおい…。なんつーもんを街に連れてきてんだ! お前は酪農スキルでも持ってるのか! このモークル…オスじゃねえか!」


「え? 何をそんなに怒ってるんですか…。何かダメでした…おとなしいですよ、この子」


「いや…ダメとかそう言う問題ではなく…モークルのオスに荷物を運ばせるって…。どんな神経してるんだ…」


――何でそんなに警戒しているんだろうか…。私からするとウシ君よりもレクーの方が怖いと思うんだけど…。


「モークルのオスはな…バケモンなんだよ。バートンなんか目じゃねえ…しかもこのデカさ…。もしこんなモークルが街で暴れ出したら…、いったいどれだけの被害が出るか…」


兵士のおじさんの顔はドンドン青くなっていく。


「いやいや…待て…。普通こんな、大きく成長するものなのかモークルは…。しかもオスだろ、危険すぎて誰もここまで大きくしようとしないだろ…。子供の頃に殺して肉にするか…ギリギリ大人になる前に殺すかのどっちかだろ…。よく料理屋の仕入れたモークルを見ている俺でも…、ここまでデカいのは見たことないぞ…。確かに…繁殖用に大人しい性格の奴を選ぶだろうが…それこそ比較的小さいモークルを選ぶはずだ…」


おじさんはブツブツと独り言を続け、私達をほったらかしにしていた…。


「おじさん…私たち中に入れないの…。こんなに大人しいのに…。お願いしますよ~街に入れてください」


上目遣いで私のキラキラした眼をおじさんに見せながら、お願いしてみる。


「ダメだ…、危険すぎる」


「そこを何とか…ね、いいでしょ」


その後も幾度となく子供の特権を最大限利用し、街に入れないか試してみるが…。


「ダメだ…。このモークルが…おとなしいってどう説明する…。それが出来ないのなら街に入れてやる事は出来ない」


「はぁ…仕方ないな…。ウシ君、おじさんの鎧を尻尾で叩いてみて…」


「お前…な…何を言って…」


[ぺシぺシ…]


鎧にウシ君の尻尾が当たる。


「グ…偶然だろ…そんな馬鹿なことが…」


おじさんは位置を移動し、壁際に立つ。


「ウシ君、もう一回おじさんに近づいて同じことをしてみて」


ウシ君はゆっくりとおじさんに近づいていき、尻尾で鎧を叩く。


おじさんはその場に崩れ、変な汗を掻きまくっている様子だ。


「これでおとなしいって証明できたよね。それじゃあねおじさん、私達急いでるから」


私達は、おじさんの横をウシ君と共に走り抜けていく。


「何なんだ…あいつ…、死ぬかと思った…。モークルを目の前にしたとき…。このまま突っ込まれたら俺は壁との間に挟まれ一瞬で死ぬと…直感した…。あんな化け物に命令するって…どうなってるんだ」


街中にようやく入れた私達は、道幅の広い道を移動していた。


「キララさん…街の人達…。みんな私達を避けまくっていますけど…」


「そうだね…でも進みやすくて逆に、いいんじゃないかな。この前、街に来たときはすっごい人込みで全然進まなかったんだよ。これぐらい人幅が空いてくれるとウシ君も移動しやすいと思うし」


「は…はぁ」


「キララ様、あまり目立つ行動は避けたほうがよろしいのではないでしょうか。やはり目立つと後で色々面倒になりかねませんので」


「ん~、そう言われても…私たちを運ぶためには荷台が必要だし…そもそもウシ君をどうやって目立たないようにするって言うの?」


「私に少し考えがあります」


「え…また、何かくだらないことを考えてるの…」


「キララ様は私たちの能力を甘く見過ぎですよ。いいですか、見ててください」


ベスパはウシ君へ飛んで行き、その後を追うようにビーたちはドンドン群がっていく…。


「なに! なに! なに! 私の目の前でこんなに集まられても困るんだけど!!」


ウシ君に群がるビーから目を背け、キララは真下を向く。


ビーの羽音を何とか鼓膜で拾わないよう、キララは両手で耳を塞いだ。


「キララさん…キララさん…」


デイジーはキララの肩をトントンと叩き、大きな声で話しかけている。


「な…なに…デイジーちゃん…私…震えが止まらないんだけど…」


「キララさん見てください…。ウシ君…どっかに行っちゃいました…」


「へ? そんな馬鹿な…。だって手綱はここに…て…え!」


キララは手元の手綱を見ながら、スーッと前を向くと…ウシ君がいなくなっていることに気づいた。


前に伸びる手綱はなぜか空中に浮いている状態で停止していた…。


――訳が分からない、いったいどうなっているの…。


「ウシ君! ウシ君! どこに行ったの!」


「ここに居るよ…今も。それに、なんかすっごい数のビーたちが体に纏わり付いてるんだけど…。ちょっと熱いし…」


「え…ビーってどこに」


「キララ様! ここです、ここ!」


ベスパはいきなり現れた。


現れた場所は、私の手元から伸びている手綱の上辺り…。


つまりウシ君の頭に、ベスパは乗っていると思われる。


「ベスパ…これどうなってるの。…なんでウシ君は見えなくなっちゃったの…、消えてるわけじゃないんだよね…」


「それはですね…私達の背中に付いている羽のお陰です!」


ベスパは後ろを向き4枚の羽を広げたり閉じたりしながら、私に見せてくる…。


「羽? …その気持ち悪い羽がどうしたって言うの…」


「き…気持ち悪い…。ま…まぁ、いいでしょう…。私達の羽は光を捻じ曲げる性質があるんです。ですから、これだけのビーが集まれば、ウシ君に反射する光をすべて捻じ曲げることが可能です。つまり、ウシ君は居るのに、光が当たらないから人の眼に見えない。どうです! 凄いでしょ!」


「いや…逆に目立つ気がする…。だって、見えない何かに荷台が引かれてるんでしょ…。逆に怖いよ…」


「そうですか…なら、これならどうです!」


ベスパはいきなり、私達の目の前で光だし一気に発光し始めた。


そして…しだいに光は弱まっていき、私達の眼の前によく知る姿が現れたのだ。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


もし少しでも、面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、差支えなければブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


毎日更新できるように頑張っていきます。


よろしければ、他の作品も読んでいただけると嬉しいです。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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