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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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再婚

「ね、姉さん……」


 ライトはすぐに泣きそうになり、綺麗な瞳を潤わせる。


「ライト君、デイジーをお願いね。この子、そそっかしくて危なっかしいから……」


「もう、お母さん。私はもう九歳なんだよ。元気モリモリで怪我なんてへっちゃらなんだから!」


 デイジーちゃんは怪我を負っても大抵すぐに治る。物理的に怪我なんてへっちゃらな珍しい女の子だ。そんな女の子、普通はいないんだけどね。まあ、私とシャインもそうか……。


「ライト君、行こう! 私、お腹空いた!」


 デイジーちゃんはライトの手を握り、強引に移動しようとしていた。


「う、うん! 大盛り料理が食べられる場所を知っているから、そこに行こう!」


 ライトはデイジーちゃんと共に道を走って行った。


「午後四時までに東門に集合だからね~。忘れちゃ駄目だよ~」


「はーいっ!」


 デイジーちゃんとライトの元気はつらつな声が街の中に響く。すでにとても楽しそうだ。街の中で子供達が遊べるようになるほど街の治安が良くなっていると思うと感慨深い。昔はもっと危険な場所だったんだよな……。


「キララさん。ありがとうございました。一年前はこんなに儲かるなんて思いもしませんでした。全部キララさんのおかげです」


 イーリスさんは私に何度も頭を下げてきた。そのたびに、大きな胸が主張を強める。


「いえいえ、イーリスさんの努力の結果ですよ。私はちょっと手助けしただけです。デイジーちゃんの学費だけではなくてルイ君の学費も貯められるくらいに儲かっているんじゃないですか?」


「はい。もう、大繁盛ですよ。今の状況を夫にも見せてあげたいくらいです……」


 イーリスさんは瞳に涙を浮かべ、亡き夫の姿を思い浮かべていた。


「……イーリスさん、再婚は考えていないんですか?」


「はは……。子持ちの二〇代……、なんなら三〇代に近い女に需要なんてありませんよ。多くの男性は若くて子供がいない女を好みます。私なんて他の男性からしたらゴミみたいなものですよ……」


 ――そ、そこまで言うか。さすがに言い過ぎではなかろうか。


「イーリスさん、って何歳でしたっけ?」


「え……。今年で二八歳ですけど」


「じゃあ、一八歳か一九歳くらいの時にデイジーちゃんを産んだわけですか?」


「そうなりますね……」


「二八歳なんてまだまだ若いですよっ! 今が幸せなら結婚する必要なんてありませんけど、将来的にデイジーちゃんやルイ君はイーリスさんの元から去っていくかもしれません。一人は寂しいですし、友達や新しい旦那さんを見つけるのも悪くないと思いますよ」


「そ、そう言われても……。私に需要が無いので結婚するのは難しいですよ。あと、前の夫に申し訳が立ちませんし……」


 イーリスさんは胸の前で手を握り、顔をしかめている。


 ――好きな人を失った悲しみはそう簡単に無くならないか……。


「イーリスさん、心の傷は時間と共に癒えていくのが普通です。辛い気持ちも全ての痛みは時間が解決してくれます。だからこそ、一歩動いてみることも大切ですよ。動き出しが速い方が成功率は上がりますからね。あと、二八歳二児の子持ち未亡人なんて結婚するのはまだ簡単な方ですよ。多分……」


 私は自信が無かったので視線を反らした。まあ、イーリスさんは超絶美人なので、日本なら確実に結婚出来る。ただ、この場は日本じゃない。異世界の全く違う文化がある国だ。

 一五歳で成人だとすると二八歳は日本でいう三〇代後半くらいだろうか。まあ、三〇代後半の二児の子を持つ未亡人は少々厳しいかもしれないが、美人に加えてお金を稼ぐ力がある。

 私なら結婚してもいいかなって思えるが、男性はどう思うのだろう。美人で性格が良い相手ならオールオッケーって言う方が何人いるか。子供のことをしっかりと面倒を見てくれる相手じゃないといけないよな。


「キララ様。なぜ、キララ様がそこまでしてイーリスさんの幸せのために努力するのですか? 普通はイーリスさん自ら動くべきだと思うのですが?」


 ベスパは私の行動が理解できないのか、不思議そうに訊いてきた。


 ――理由は特に無い。でも、イーリスさんに相手がいないのはもったいないなと思って。


「そう思っているのはキララ様だけかもしれませんよ。イーリスさんは余計なお世話だと考えているかもしれません」


 ――そ、そうかもしれないけどさ……。一人は辛いって何となくわかる。イーリスさんが一人になったら可哀そうだと思ったんだよ。


「イーリスさん、私のお節介な性格がイーリスさんにとって有難迷惑だったらすみません。もう、本当にうざいと思っているのなら正直に言ってください。私は止めます」


「……い、いえ、うざいなんて思っていませんよ。ただ、女よりも男の方が強いですし、子供達も父がいないのは寂しいはずです。デイジーやルイも父親について何度も聞いてきました」


 イーリスさんの一番はデイジーちゃんとルイ君だ。自分は二の次、三の次なので、自分を認めてくれるような相手なら誰でもいいと言う考えを持っている。それじゃあ、意味がない。


「確かにデイジーちゃんとルイ君の幸せが一番です。でも、自分をないがしろにしていい訳じゃありませんよ。イーリスさんも幸せにならないといけないんです。それが、デイジーちゃんとルイ君の幸せにつながるんですからね」


「……ほんと、キララさんは大人のような発言をしますね。私よりも年上みたい」


 イーリスさんは私の精神年齢が三〇代になっていることに感づいてきていた。まあ、昔から大人っぽいと言われていたが、イーリスさんはどことなく私に違和感を持っている。


「えっと……。私が言いたいのはイーリスさんも幸せになってほしいと言うことです。辛い思いをして来たのなら、幸せになってもいいじゃないですか」


「……私、今でも幸せですよ。これ以上の幸せを願うなんておこがましすぎます」


 イーリスさんは私から視線を反らし、仕事の後片付けをはじめた。


 ――今以上の幸せを受け取ってもいいと思うんだけどな。幸せは質と量で決まる。今は質のいい幸せを得ている状態だ。あとは量。小さな幸せを沢山受け取ればもっと幸せになれるのに。


 私は自分のことよりも他人のことばかり気にしてしまうお節介な性格なので、幸せなのになぜか辛そうなイーリスさんを放っておけなかった。

 私とイーリスさんは仕事場を片付けて大手の取引先に素材を運ぶ。

 一番に向かったのはウロトさんのお店だった。


「こんにちわ。ネード村から来ました」


「ああっ! イーリスさん! い、いらっしゃい!」


 料理人のウロトさんは私と会った時より完全に決めている。髪の毛や服装が整っており、顔もいつもより潤って見えた。


「こんにちは、ウロトさん。昨日に引き続き、やってきました」


 私は昨日会ったウロトさんに頭を下げる。


「き、キララ……」


 バツが悪そうな顔をするウロトさん。その姿を見て、ピンときた。


「えっと、今回もこんなに買っていただいてよろしいんでしょうか……」


 イーリスさんはウロトさんの注文を見て訊いていた。


「も、もちろんです。イーリスさんが作っている品は多くのお客さんに評判が物凄くよくて俺も物凄く好きなんです! 心が込められていると言うか、一口目から全然違うっていうか、もう、言い表せないくらい好きなんです!」


 ウロトさんは告白ですか? と突っ込みたくなるくらい、饒舌にイーリスさんに素材の良さを伝えていた。どこか、イーリスさんに言っているような気がしなくもない。


「そ、そこまで言っていただけるなんて光栄です。毎度毎度、沢山購入していただきありがとうございます」


 イーリスさんはウロトさんの発言に微笑みを浮かべ、深く頭を下げた。ふわりと大人の女性の潤わしい香りが春風に乗って広がる。レモネを運んでいたから爽やか、小麦や大麦も混ざった美味しそうな香ばしい匂いで……。

 そんな優しさと色気全開のイーリスさんを見るウロトさんの顔が完全に落ちている男の表情になっていた。顔が赤く、瞳が潤い瞳孔が少々開いている。


「じゃあ、私はこの辺で……」


「き、キララ! ちょっと試作の試作を作ったんだが! 食っていかないか!」


 ウロトさんは私の方を見て大きめの声を出した。


 私は親指を立て、ウロトさんのお願いを快く受ける。ここで引き留められたウロトさんのやる気に免じて私も手を貸そうじゃないか。


「え、えっと……。仕事が……」


 イーリスさんはこの後も仕事があった。だが、ほんの少しと言うウロトさんの頼みを聞き入れ、私と共にお店の中に入る。


「私、お金を払わなくてもいいんですか?」


 イーリスさんは私に訊いてきた。


「はい。ウロトさんが料理を作るので、その感想を言えばいいんです。今は試作品の試作品なので、たいして美味しい料理は出てこないと思いますけど」


「言ってくれるじゃないか。舐めてもらっちゃ困るな」


 ウロトさんは額に布を巻き、やる気をあげていた。超絶美人な未亡人と八億年に一人の美少女が並んでいるのだからやる気が上がるのも当然か。


「……キララ様、年数が伸びている気がするのですが?」


 ベスパは私に突っ込んでくる。


「いいのいいの。ただ言ってるだけだから。年代が長い方が可愛いって思われるでしょ」


「八億年前に人間なんていたのでしょうか……」


「そう、現実的なことを言わない。そんなこと言うから面白味が無いんだよ」


 私は一人でブツブツ呟き、イーリスさんに軽く引かれる。


 ウロトさんは見える厨房で、料理を始めた。大麦を使った品と魚、肉などを使った三品ほどの試作を出してくれると言う。

 彼の料理の腕は確かなのに加え、相手は一定の権力を持ったお偉いさんに出す品だ。お金は国持ちだろうし、美味しいければ高くても問題ない。だが、バカみたいに高い品でも困る。しっかりとウロトさんの味を出さなければ料理人の意味がない。そこのところをしっかりと判断させていただこう。

 私が待っていると、厨房から香る匂いですでにお腹が空いてきた。昼食を抜いていたので丁度お腹が減っている時間だったのが幸いする。


「あぁ……。す、すっごく良い匂いがしてきました」


 イーリスさんもお腹が減っていたのか、顔が蕩けている。お腹が空いた時に美味しい焼き肉屋の匂いを嗅いだ時の顔だ。


「あぁ……。待ち遠しい……」


 私はウロトさんの料理を食べたくて口から涎があふれ出てくる。昔一度食したウロトさんの王食はとても美味だった。本場の王都で食した料理よりも美味しいのではないかと思うほどで、味が濃いのだが味わい深いと言うか……、また食べたくなる味だったのだ。

 王都の品はもういいかなと言う感覚だったので、ウロトさんの味付け具合がいかに繊細かわかる。

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