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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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ライトより頭がいい……

「え、えっと……。デイジーちゃん。まさかとは思うけど、ここから街までその状態で行くの?」


 私は大きな荷台を引く小さなデイジーちゃんに話し掛ける。


「はい、そうですよ。でも、シャインちゃんも一緒なので全然辛くありません」


 デイジーちゃんは満面の笑みを浮かべる。荷台が見るからに重そうなのだけど。まあ、デイジーちゃんとシャインが一緒に押せば問題ないか。


 私はデイジーちゃんの手伝いをしようと荷台を引いてみる。だが、びくともしない。大岩を引っ張っている感覚に近く、私の力だけでは不可能だ。


「はぁ、はぁ、はぁ……。む、無理だ……」


「お姉ちゃんは力が無いんだから、私達に任せておいて」


 シャインはデイジーちゃんの横に立ち、荷台を引っ張る。すると、軽々と動いた。少女二名によって重い荷台はあっという間にネード村の入口に到着する。


「いはやは、驚かされるなぁ……」


 私はレクーが引く荷台の前座席に乗り、後方に着いた。


「はは……。ほんとだよね」


 ライトは私の隣に座り、苦笑いを浮かべている。


「イーリスさん、どちらに乗っていただいても構いませんよ」


 ガンマ君はシャインとデイジーちゃんが引く荷台の前座席に乗っていた。交代しながら行くのだろう。


「そ、そうね……」


 イーリスさんは私達の荷台に乗って来た。


「イーリスさん、こっちでよかったんですか?」


「え、ええ。あっちは行くだけで疲れちゃうから……」


 イーリスさんは苦笑いを浮かべながら荷台に乗る。


「じゃあ、出発しまーすっ!」


 シャインは元気溌剌に大きな声を出した。


「レクー、気合いを入れてよ。じゃないと置いていかれちゃう」


「は、はい!」


 レクーは足を少し動かし、体に血を巡らせる。


「ベスパ、衝突しないようにシャインたちの方も見ておいて」


「了解です」


 ベスパは八匹のビーをシャインたちが引っ張る荷台の前に設置した。車の衝突事故を防ぐ多くのカメラやセンサーのような役割を果たしてくれる。


「ふっ!」


 シャインとデイジーちゃんは走り出した。もう、ロケットスタートと言ってもいいぐらいの速度で、後方の貨物が軽いのではないかと錯覚する。


「よし、レクーも一定距離を保ちながら走って」


 私は手綱を弛ませて引く。


「はい!」


 レクーも足を大きく動かし、シャインとデイジーちゃんが引く荷台を追った。さすがレクー。シャインたちに引き離されず、しっかりとついて行っている。


「この荷台、揺れが少なくて乗り心地が物凄く良いですね」


 イーリスさんは荷台の乗り心地に感銘を受けていた。普通の荷台は木の車輪を使っており、振動が荷台に乗っている者に直に来る。だが、この荷台の車輪にネアちゃんの糸が使われており、弾力性を生かした特注品だ。なので、振動が比較的少ない。


「寝ていてもらってもいいですよ」


「そうもいきませんよ。寝るのは夜だけで充分です。えっと、ライト君。ビースト語の勉強を教えてもらってもいいかしら?」


 イーリスさんは自前で持って来たのか、木の板と少し大きめの鉄の針を取り出した。木版に傷をつけながら書き。書き終わったら削ると言うふうにして再度書き直せる黒板のような品だ。消耗品の紙やインクを使う羽根ペンよりも経済的に勉強できる。


「もちろんです!」


 ライトは八カ国語を完璧に書いて話せる天才児なので、イーリスさんにも勉強を教えられる。もともとイーリスさんは勉強なんてしていなかったはずだ。なのに、なぜビースト語の勉強を……。


「イーリスさん。ビースト語の勉強を始めたんですか?」


「はい。その、街に獣族さんが多くいるじゃないですか。その方達と話が出来たら商品がもっと売れるのになと思って……。ライト君ほどじゃないですけどデイジーもビースト語が少し話せるのでいつも助かっていて。親の私も頑張らないとなって」


 ――イーリスさん、良い人すぎる。これでいてまだまだ若いんだよなぁ。弱冠二八歳くらい。美魔女と言うには早いか。もう、丁度熟してきたいい女なのに未亡人なんてもったいないよな。はぁ、だれか良い人を見つけてあげたい。


 私はイーリスさんの夫に良い相手がいないか考えた。まあ、イーリスさんにとってはいい迷惑かもしれないが、今後の人生で夫がいた方がいいなって思う機会は多いはずだ。


「イーリスさん、覚えが速いですね。さすがデイジーさんのお母さんですね」


 ライトはイーリスさんを褒める。


「あ、ありがとう。にしても、ライト君はまだ九歳なのに凄い頭がいいのね。羨ましいわ」


「いやいや~。僕は頭がいいと言うより、覚えが良いだけですよ。本当に頭がいいのは姉さんの方です。姉さんの方が僕なんかよりも頭の回転は数倍速いですし、賢いです」


 ライトは私の方に尊敬の視線を向けながらこたえた。


 ――んなわけあるか! 私の方がライトの数段階頭の回転がおそいっつーのっ! ベスパの演算を使ってギリギリトントンって感じだっつーの!


「キララ様、落ちついてください。ライトさんは本当にそう思っているんですから、仕方がないじゃないですか。たとえキララ様がスキルを使ってずるしているとしてもライトさんはわかりません」


 ベスパは私の前にやってきてイライラを止めてくる。


 ――ず、ずるじゃないし。スキルの使い方は私の力量だし……。その力を使ってもライトとトントンなの。なのに、ライトは私に数段階上の頭脳の持ち主なんて言うとんでもない誤解を持っている。とっても気分が悪い! 嫌すぎて困る。本当は違うのに。


 私は頭を振りながら、ライトの方を見る。


「ライト、私は頭が良くないよ。ライトの方が何倍も頭が良いんだから」


「いや~。姉さんには負けるよ。僕が出来ることなんて覚えて試行錯誤するくらいなんだ。姉さんは無い物を作る天才だし、僕が考えもつかない行動をとるし。凄いとしか言いようがないよ」


 ライトは私に向って心から尊敬するような眼差しを向けてくる。


「うう……。ライト、頭が良いの定義は頭脳指数で測るんだよ。ライトは私の何段階も上だと思う。考える領域が違うだけなんだよ」


 ――私は元から知っている知識を使っているからほぼずるしているような者だし、ライトの方が何倍も頭がいいのは確実。


「え、えっと……。私からすれば、両者共に賢いと思うんですけど……」


 イーリスさんは私とライトを見渡し、言い合いの仲裁に入る。


「はぁ……。まあ、姉さんがなぜ、僕の方が上だと言いたいのかわからないけど、僕は姉さんの方が頭がいいと思っているのは変わらないよ」


「うう……。わかった。じゃあ、そう思っていてもいいから、周りで言いふらさないでよ。僕の姉さんは僕より頭が良いんだ。なんて言われたらどんな風に思われるか……」


「えぇ~。僕、学園に行って姉さんを自慢したかったのに……。姉さんは国宝みたいな人だよっ! って」


 ライトは不貞腐れた。自分の姉は国宝なんて言い始める弟がどこにいる。


「そ、そんなことを言ったらライトの方が赤っ恥を書くよ……」


 私とライトは三歳離れている。つまり、私が順調に卒業した後、ライトが入学するのだ。私のことは先生たちが覚えている可能性が高い。

 もし、学園でへっぽこな成績しか残せなかったらライトが恥を書く。なんなら、ライトに姉さんってその程度の人間だったのか~、と落胆されてしまう……。


「キララ様、三年後の話なんて考えても、その頃に今生きている働きビーは死滅していますよ」


 ベスパは何を言っているのかよくわからない発言をした。


「ど、どういう意味?」


「通常、寿命が一年しかない働きビーが三年後について考えていても、三年後はすでに死んでいますと言う意味です。まあ、簡単に言うと、今考えても三年後に今の考えは通用しないと言うことですね」


「な、なるほど。案外深いね……」


 私はベスパに納得させられ、悩むことがばかばかしくなった。とりあえず、ライトに忠告したので問題ないだろう。まあ、三年後、三大学園のすべての試験で満点(未解決問題まですべて解く)を叩きだし、特待生を取ってしまったライトが「僕の姉さんもこれくらい簡単に出来るよ」なんて発言するのはまた別の話し。


「はぁ、はぁ、はぁ……。ガンマ君、交代」


「わかりました」


 前方の速度が言ったん落ちた。だが、数秒後にすぐ元に戻る。前の三名はバートン並の体力と走力があった。もう、人間の域を超えている。


「レクーは大丈夫?」


「はい。まだまだ走れます。今日引いている荷台は軽いですし、何も問題ありません」


「よかった。じゃあ、安全走行でね」


「はい」


 レクーは他のバートンよりも確実に体力が多いので、長時間でも走れる。

 ネード村を出発してからざっと四時間後。私達は街に到着した。


「おじさん、おはようございますっ!」


 デイジーちゃんは一度も交代せず、ずっと走り続けていたのに、大きな声で挨拶できるほどの元気の良さ。元気過ぎて東門で門番している兵士のおじさんも、たじろいでいた。


「お、おはよう。今日も元気がいいな」


「はい! 元気がいいことが私の取り得なので! 荷台の確認をお願いします!」


「ああ、わかった」


 兵士のおじさんは荷台の中身を確認し、危険な品が無いとわかると門を通す。


「おはようございます」


「おお、嬢ちゃんか。今日は姉妹弟揃い組なんだな」


 兵士のおじさんは私を見て微笑む。


「はい、今日は皆で街に来ました。皆でお仕事するんです」


「へえ~。そりゃあ仲がいい姉妹弟だな。羨ましい。元気な嬢ちゃんと今日も綺麗な奥さんが見れて俺も一日頑張れそうだ。はははっ!」


 兵士のおじさんはイーリスさんの顔を見て元気になっていた。やはり美人な女性を見ると男性は元気になる。どこがとは言わないが。

 美人やイケメンを見ると良いことが起こったように感じ、運が良くなった気になる。

 きっとイーリスさんが美人だから販売もうまく行っているんだろうな。でも、イーリスさんが普通の顔でも品がいいから売れていたか……。そこはわからない。


 私は美人効果をひしひしと感じながら、東門を抜ける。

 会社の受付所やバスガイド、CAの方達なんかも美人が多いのは美人の方が、運が良く思われがちだからだ。いや、自分に自信があって信用できるからと言ってもいい。

 別に不細工が悪い訳じゃない。自信の無さとその暗い雰囲気が全身から出てしまっている。

 自信が出過ぎてもいけないが、負のオーラを出している者に近づきたいとは思わないだろう。それと同じだ。

 イーリスさんは自分を美人だと思っていないから、内側から溢れ出る色気によって多くの男を惑わしている。きっと悪い男に引っかかってしまう人間だろう。まあ、良い人すぎるところに悪は寄り付きにくい。なんせ、周りが良い人ばかりなので、悪いやつから守ってくれるのだ。私も全力で守ります!


 私達は午前八時頃、街で人が一番集まる市場に到着した。

 市場は大人気で多くのお客さんが行列に並んでいるのかと思うほどずらーっと歩いている。

 朝食や武器の手入れ道具を買うを冒険者や料理の素材を買う主婦、取ってきた品と金品を交換している獣族など、多種多様。

 まあ、朝で一番人気なのはパンの屋台かな。皆、朝食を手軽に取りたいと思っている者ばかりなので、美味しいパンを屋台で買って仕事に向かう。

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