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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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甘ったるいのろけ現場

「が、ガンマ君! わ、私も、と、友達!」


 シャインはライトと違い、しっかりと勢いよく伝える。顔が赤いが、気絶していないので強い子だ。


「そうですね。僕とシャインさんは友達です」


 ガンマ君はそれだけ言って特に何もしなかった。シャインの顔がずーんと暗くなる。


 ――が、ガンマ君。さっき挨拶したからもうする必要ないよね、みたいな雰囲気やめてあげて。


「が、ガンマ君。シャインに挨拶したの?」


 私はすかさず助け船を出す。


「え? さっき、村で挨拶しましたよ」


「シャイン、ガンマ君に挨拶された?」


「さ、されてない、されてない。私、ガンマ君に挨拶されてない!」


 シャインは頭をブンブン横に振り、大きな声を出して伝えていた。


「えぇ……。おはようございますって言ったじゃないですか」


「そ、そうかもしれないけど、私は聞こえなかった!」


 シャインは子供らしく我を押しとおす。


「そ、そうなんですか……。じゃあ、もう一度。おはようございます」


 ガンマ君は頭を下げてシャインに挨拶した。


「そ、そうじゃなくてっ!」


 シャインはキスが欲しい訳だが、ガンマ君に伝わらない。


「えぇ……。なにが違うんですか?」


 ガンマ君は首を傾げ、理解していない。


 ――も、もう、わざと知らないふりをしているんじゃなかろうか。


「キスしてもらってない!」シャインは堂々と口に出してガンマ君に言う。


「あぁ。そのことですか。シャインさん、僕にキスしてほしかったんですね」


 ガンマ君は少々微笑み、シャインの前に出る。どこか、キザっぽい言葉に身がゾクゾクした。別にキザ野郎が好きなわけではない。でも、天然物は貴重だ。

 ガンマ君はシャインの顎に人差し指を沿え、軽く上を向けたあとゆっくりと顔を近づけていく。


 ――うおおおおおおおおおっ~っ!


 私は鼻血が出そうなほど興奮しながら心の中で、そのまま口に行っちゃえ~と叫ぶ。なんなら、口に出したい。だが、ぐっと抑えて口を閉じていた。


「うわぁあああああああああ~っ!」


 シャインは渾身の右ストレートをガンマ君の顔に打ち込み、吹っ飛ばした。

 ガンマ君はゴム玉のように地面を跳ね、木材の中に突っ込み大破。


「はぁ、はぁ、はぁ……。ば、バカっ! 何する気だったのっ!」


「う、うぅ……。ちょっと大人っぽいキスをしようとしただけなんですけど……」


 ガンマ君は何事もなかったように頬を摩りながら立ち上がった。


 ――いや、あの攻撃を受けてなんで普通にいられるの? 耐久力が上がりまくってるよ。


 私は突っ込みどころ満載すぎてネード村に来てからずっと突っ込んでる気がする。突っ込み過ぎて疲れちゃった。


「シャインさん。さっきはすみません。シャインさんにキスしてほしいって言われて嬉しくなってしまって」


「……ば、バカじゃないの。べ、別にキスしてほしい訳じゃないし。皆にしてるから私もって思っただけだし」


 シャインは視線を反らし、ブツブツと呟く。なんて典型的なツンデレだろうか。まあ、それはそれで可愛いからいいか。


「キララさん。学園の試験は終わったんですか?」


 デイジーちゃんは未だに倒れているライトを摩りながら私に訊いてきた。


「うん、終わったよ。だからネード村に来れたの。今日は収穫した品を街に売りに行くんだってね」


「はい。最近、評判がすごくよくていつも買ってくれる方が沢山いるんです」


 デイジーちゃんは両手を上げ、元気に答える。どうやら、販売は上手く行っているようだ。

 私は倒れているライトのもとに移動し、頬を軽く叩く。


「あ……。ぼ、僕はいったい……」


「ライト、早く立って。そのまま、隣にいるデイジーちゃんにキスしなさい」


「へ? ね、姉さん、なにをいきなり……」


 ライトは顔を赤くし、隣に座っているデイジーちゃんの顔を見た。


「私、挨拶したのに……」


 デイジーちゃんは少々不貞腐れており、頬を膨らませている。挨拶したのに返って来なかったら、デイジーちゃんもむすっとしてしまうようだ。


「ご、ゴクリ……」


 ライトは生唾を飲み、体を持ち上げる。体を『クリーン』で清潔にした後、顔をバシバシと叩いて気合い注入。


「すぅ、はぁ、すぅ、はぁ……」


 口臭の確認まで徹底的に行い。ただ、挨拶するだけでどれだけのエチケットを守ろうとしているのだろうか。まあ、最低限のマナーと言うか、この世界ではそこまで重要視されていないけど、相手が嫌がるような点は完璧に排除している。

 ただ、デイジーちゃんはライトの徹底的な姿を見て若干引いていた。徹底しすぎるのも大概にしないとね。

 ライトは潔癖の部類に入るので、デイジーちゃんにとっては近寄りがたい人物に映っているだろう。


「よ、良し! じゃあ、するよ!」


 ライトは目をギンギンにしながら、ガチガチになってデイジーちゃんのもとに歩いていく。肩に手を置き、タコかと思うほど口をすぼませ、頬に当てようとするも、頬と唇の間に無限でもあるのだろうか。そう思うほど長い長い距離がある。


 ――はぁ、手間のかかる弟だこと。ベスパ、軽く押してあげて。


「了解しました」


 ベスパはライトの後頭部に移動し、周りを見渡した。


「うわーっい」


 ベスパは子供が遊ぶ声を発し、ライトの頭にぶつかる。


「んっ!」


 ライトの唇がようやくデイジーちゃんの頬に当たり、挨拶を終えた。


「じゃあ、ライト君。今日もよろしくね」


 デイジーちゃんのお日様スマイルがライトをより一層輝かせる。


「う、うん! 任せておいてっ!」


 ライトは満面の笑みを浮かべ、元気が八〇〇倍になった。


「じゃ、じゃあ、するわよ……」


 シャインはガンマ君の顔をがっしりと掴み、なにをするのだろうか。


「え、えっと……。何する気なんですか?」


 ガンマ君も私と同じことを思っていた。


「な、なにって。挨拶よ、挨拶……。おはようの挨拶っ!」


 シャインはガンマ君に頭突きを食らわせた。


 ――な、なにしてるの。シャイン……、それは喧嘩の挨拶だよ。


 私はシャインの行動がヤンキーのようで少々引く。恥ずかしいからと言って頭突きするのはツンデレを超えているだろう。


「うぅ……。シャインさんの挨拶は効きますね……。じゃあ、お返しに」


 ガンマ君はシャインの顔をぐっと持ち、頭を引く。どうやらガンマ君も頭突きするようだ。


「ぐっ……」


 シャインは目を閉じ、痛みをこらえようとする。だが「チュっ」と言う湿ったリップ音が一度鳴る。ガンマ君が彼女のおでこにキスしていた。彼女は「へ……」とつぶやきながら目を丸くし、おでこに手を当てる。


「シャインさんを傷つけるわけにはいきません。これで勘弁してください」


 ガンマ君は微笑みかける。あまりのイケメンスマイルにシャインの心臓目掛けてショットガンが放たれたような光景が見えた。

 もともとガンマ君が好きなのに、さらに心惹かれるシチュエーション。超カッコいい男にデコキスされて唐辛子ですら一瞬で甘くなりそうな笑顔を見せられたらどんな女も落ちてしまう。

 私だって同じ年齢(精神)の相手なら心臓を打ち抜かれていてもおかしくない。


 どんな攻撃を受けても滅多に倒れないシャインがガンマ君の笑顔を見て後方にぶっ倒れた。だが、後頭部を打たないようにガンマ君が支えに入り、しっかりと受け止める。まぎれもなく紳士だ。


「しゃ、シャインさんっ、シャインさん! しっかりしてください!」


「あ、あぁぁ……。し、心臓が、心臓がぁぁ……、心臓が破裂しちゃうっ!」


 シャインは心臓を押さえ、ガンマくんの色気に悶えていた。


「はぁ……。朝から騒がしい……」


 私はこの者達ののろけ現場を目撃しながら朝には胃もたれする甘々具合だったので、さっさと仕事に行きたかった。

 二組がのろけていると、家の中から美人な女性が出て来た。


「あら、キララさん。お久しぶりです。王都から帰って来たんですか?」


 デイジーちゃんを大人らしくしてそのまま成長したような女性、イーリスさんが私の前に歩いて来た。服装は作業着っぽい。でも、汚れている部分は無く綺麗な服だ。


「イーリスさん。お久しぶりです。今日はいい天気で仕事日和ですね」


「はい。天気がいい日は野菜や穀物が良く売れるので稼ぎ時です」


 イーリスさんは腕を上げ、仕事のやる気を見せた。

 彼女の夫はすでに他界しており女手一つでデイジーちゃんとルイ君を育てている。まあ、野菜や穀物が順調に売れているようで、家計は安定しているから大きな心配はいらない。


「じゃあ、私はルイを父の家に預けてきます。デイジー、キララさんたちを倉庫まで案内して」


「はーいっ!」


 デイジーちゃんは手を挙げて、私達を倉庫に案内する。

 イーリスさんはルイ君を彼女の父、デイジーちゃんやルイ君からすればお爺ちゃんの元に連れて行く。街までルイ君を連れて行くのは危険と判断したのだろう。まあ、街は安全だが、街に入るまでが危険なので正しい判断だ。


 私達は倉庫に到着した。大きすぎず、小さすぎない倉庫。蔵と言ったほうがわかりやすいか。乾燥させた稲を使って米俵のような編み込まれた籠の中に小麦が沢山入っているそうだ。一俵で六〇キログラムほどあり、大手の相手に売るのだそう。

 逆に量り売りのように、小麦を袋に入れて石の重さと同じ量で料金を決めると言った方式も取られていた。重さを一瞬で計測できるベスパがいれば物凄く作業が楽になりそうな仕事だ。


 デイジーちゃんは大きな俵を荷台に乗せていく。あまりの怪力に引いた……。まあ、魔力を使っているので子供でも大きな荷物を持つことは可能だ。でも若干九歳の少女が大きな俵を持つと言うのは衝撃映像だった。


 荷台に沢山の小麦や大麦を乗せ、トゥーベルやビーンズなどの野菜も積んでいく。ライトが商品を売ってイーリスさん達が育てた品のようだ。どれも質が良い。


 ――『鑑定(野菜のみ)』でいい品を見つければあとは木の根状に良い品が生まれるって生産職からすれば物凄く良いスキルだよな。でも、使えば使うだけ能力が上がるなら見れる個数が増えたり、情報が増えたりしないのだろうか。


 私はイーリスさんのスキルが強化されたらもっと便利なのにと思っていた。まあ、そう簡単に強化されないと思うけど、一応言っておく。

 毎日一〇回スキルを使えば完了するのだ。一回でも増えれば、一年で三六〇回の選択肢が増える。そう考えるとちょっと強くなるだけで今までよりだいぶ差が出てくるだろう。

 デイジーちゃんが荷物を積み終わったころ、怪力で荷台を引き始めた。

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― 新着の感想 ―
スキルの発動してる時間だから1回が短時間で終わっちゃう鑑定スキルは難しそう。 発動しっぱなしで生活出来たりしたら化けそうだけど出来るかな。
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