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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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デイジーちゃん流の挨拶

「もちろん行くよ。久しぶりにデイジーちゃんに会いたいし」


「よかった。ネード村の品を運ぶのが結構大変だからさ。姉さんにも手伝ってほしかったんだよ」


 ライトはほっと一息つき、パンをむしゃむしゃと食べる。


「ライト、デイジーちゃんとどれくらい仲良くなれた?」


「…………」


 ライトはぴたりと止まり、思考がフリーズした。天才少年ライトも恋愛のこととなると一気に頭脳指数が下がる。


「え、えっと、どれくらい仲良くなれたと言われてもど、どれくらいかなぁ~。まあ、八日に一回は合ってるかな~。っていうくらい」


 ライトは以前と変わらない状況を結構いい感じだよ~という嘘をつきながら私に教えてくる。


「ライト、嘘をつくのは良くないよ。手を繋げるようになったとか。帰り際にチュって出来るようになったとか。具体例が無いと」


「うぅ……。そ、そんなの、僕の妄想の中だけの世界だよ……」


 ライトは瞳に涙をため、握り拳を作っていた。好きな子を妄想するのは、誰でもよくある。恥ずかしいことではないが、妄想の世界に浸っているだけでは発展しない。


「うぅ……。ライト、そんな瞳にならないで……。私も泣きそうになる……」


 ライトが泣きそうになっていると、シャインの方も瞳を潤わせていた。


「えっと、どういう状況?」


 私は三カ月の間に何かあったのかと疑問に思った。まあ、明日行けばわかるかと考え、深くは聞かなかった。

 夕食を終えたあと、暖かいお湯に浸した布で汗っぽい体を拭き、綺麗にする。


「ほんと、肌艶は完璧なのに、胸とお尻がぺったんこ……。無駄毛は生えてこないのがありがたいのだけど、子供っぽ過ぎるよなぁ……」


 私は自分の情けない姿に落胆し、さっさと椅子に座って勉強を進めた。体が駄目なら頭でどうにかするしかない。武器を何個も持っていれば運よく嵌るかもしれないじゃないか。

 頭が良くて童顔で小柄体型な少女が好みって言う素敵な男性がいるかもしれない……。もちろん、ロリコンは論外だ。そんな淡い希望を胸に、勉強を続ける。実際はドラグニティ魔法学園で着いていけなくなるのが怖いだけだ。


「ふぅ……。終わり」


 私は日課の勉強と魔法陣を書くと言う行為を終え、ベッドに寝ころぶ。ランニングしたからか、体の疲れが丁度よく溜まっており眠気がグッと押し寄せて来た。ベッドに入って八分もしないうちに眠りにつき、そのまま朝までぐっすりだった。


「姉さん、姉さん、起きて~。もうネード村に行く時間だよ」


 扉を叩かれ、私は目を覚ます。


「う、うぅん……。今なんじ……」


 私は近くに置いてある懐中時計を開く。朝の四時……。


「ふわぁ~。休みの日なんだからもう少し寝ていっても……」


「ダメダメ~。ネード村に早く行って仕事をしないと」


 ライトの声が扉の奥から聞こえた。どれだけ、早くデイジーちゃんに会いたいのか。


「ネード村に行って仕事……。今日は休みじゃないの?」


「デイジーさん達は仕事があるでしょ。僕達はその仕事を手伝うんだよ」


「あぁ~、なるほどね……」


 私はベッドから降りて布団を直し、服を着る。

 午前四時八分ごろに部屋を出てライトと共に牧場に移動。シャインとガンマ君はすでに走ってネード村に向かったようだ。

 私とライトはレクーが引く荷台の前座席に座り、一時間ほどかけてネード村に移動した。

 ネード村に着く頃、日が昇り始め、少しずつ明るくなってくる。


「ふ~、やっと朝だぁ……。あんまり早く起きすぎても疲れちゃうよな……」


「皆、四時くらいに起きてるよ。姉さんが王都の生活に慣れちゃったんじゃない?」


「そうかも……。いやぁ、王都にいた時は七時とか八時起きだったからな~」


「遅すぎでしょ……」


 ライトからお叱りの言葉を受けた。まあ、試験が始まる前はちゃんと早起きしていたので許してもらう。


「姉さんって王都で何してたの?」


「仕事していたよ。王都ってね、ものすごく儲かるんだよ」


 私はライトに仕事の話をした。


「え、姉さん。王都で会社を作って一日金貨一〇〇〇枚も儲けているの?」


 ライトは目を丸くし、私の発言を半信半疑で聞いていた。


「でも、ウルフィリアギルドに来た雑用の仕事を代わりにやっているだけだからね。ウルフィリアギルドに二割収めているし、税金も引かれちゃうから手取りは金貨四〇〇枚くらいかな」


「金貨四〇〇枚でもすごいよっ! さすが姉さん!」


 ライトは私の話しを聞き、目を輝かせていた。王都は危険だが、ビジネスチャンスはそこら中に転がっている。


「ライトなら、王都で沢山の仕事を作れちゃうだろうね。私でも作れちゃったんだから」


「僕は姉さんほど要領が良くないから、難しいよ。でも、凄く楽しそう。僕も王都に行って仕事してみたくなった!」


 ライトは手を握り、輝く瞳が日に当てられてさらに光度を強める。


「はは……。ライトは今でも仕事が出来ているし、何も心配いらないよ。自分がしたいことをする人生を歩めばいい」


「僕がしたいことをする人生か……。で、デイジーさんと……」


 ライトは頬を赤らめ、何か考えていた。若干九歳にしてもう破廉恥な妄想でもしているのだろうか。私はライトとデイジーちゃんが何か不手際を起こし、超若年結婚みたいな未来を想像してしまう。


「ら、ライト。子作りは大人になってからね!」


「な、なにを言ってるの姉さん。子供の作り方って?」


 ライトは純粋無垢な視線を私に向けて来た。


 ――滅茶苦茶頭がいいのに子供の作り方を知らないんですか? ま、まあ、子供が子供を作ろうなんて、考えに至らないか。


 訊いた私の方が恥ずかしくなり、顔や髪を弄りながら誤魔化す。


「な、何でもない。ただ、デイジーちゃんが嫌がるようなことはしちゃ駄目だからね」


「も、もちろん。デイジーさんが嫌がるようなことはしないよ。ただ……手を握りながら一緒に帰ってみたいななんて……」


 ライトは指先を突き合わせながら可愛すぎる恥じらい顔を見せた。自分の弟じゃなかったら確実に心臓を打ち抜かれている。


「ライト、気持ちは相手に伝えないと伝わらないよ。思っているだけじゃ、伝えられない。言葉にしなきゃ」


「で、でも……。言葉にするなんて……。僕には出来ないよ~!」


 ライトは頭を横に振り、女々しい姿を見せる。いつもは頼もしいのに、なんて頼りない姿。デイジーちゃんの前ではどう頑張っても情けない姿しか見せられないのだろうか。


 私達はネード村に到着し、デイジーちゃんの家に向かう。


「ガンマ君、おはよう~。今日も来てくれてありがとう。すっごく嬉しい~」


 デイジーちゃんは先に到着していたガンマ君にぎゅっと抱き着く。それだけにとどまらず、頬にキッスまでしていた。さすがに仲が深まりすぎなのでは……。


「ちょ、デイジーさん。キスは恥ずかしいですよ」


「えぇ~。でもでも、仲がいい友達同士はするってお母さんが言っていたよ」


「そうなんですか? じゃあ、お返しに」


 ガンマ君はデイジーちゃんの額にキスした。何ともさりげなく。いつもしているかのようなデコキスにデイジーちゃんの方が頬の褐色がよくなり、顔から火を出しそうなほど赤くなっている。


「あ、あぁぁ……」


 ライトの顔が大変恐ろしくなっており、不の感情に飲まれていた。

 ガンマ君の近くにいるシャインも瞳が黒くなり、光が見えない。


「ん、んんんっ!」


 私は大きく大きく咳払いをしてデイジーちゃんに私の存在を知らせる。


「あ、キララさんっ! お久しぶりです!」


 デイジーちゃんは私に気づき、手を振った。

 昔はボロボロの服を着ていたのに今ではボロボロのボの字も無いような綺麗な服を着ている。と言ってもオーバーオールに長袖と言う作業服だ。以前よりも少し背が伸びたかな。

 あと、髪も伸びて後頭部で結び、ポニーテールにしている。

 デイジーちゃんのお母さんにますます似てきており、胸も少々膨らんでいた。さすがの巨乳遺伝子。イーリスさんの良質な遺伝子を貰っているデイジーちゃんもさぞかし美人に育つだろうと容易に想像できた。


「デイジーちゃん、久しぶり~っ!」


 私は荷台を下り、デイジーちゃんに向って歩く。そのまま、ギュッと抱き着き、頬に軽くキスした。


「キララさん、元気そうで何よりです~」


 デイジーちゃんも私に抱き着き、頬に軽くキスしてくる。海外の挨拶のようにあまりにも自然に行う。


 ――私もデイジーちゃんにキスしたんだ。さあ、ライト、これでデイジーちゃんに挨拶のキスをしろ! 


 私はライトのために道を作った。加えて、彼に男を見せろと言わんばかりの眼力を飛ばす。


「う、う、う、う……」


 ライトは私の意図に気づいたのか、ガッチガチに緊張し、手と脚が同時に出る。


 ロボットのようなガチガチ歩きがデイジーちゃんの眼を丸くさせた。


「えっと、ライト君、大丈夫? 怪我でもしちゃったの?」


「ううううううう」


 ライトは頭を横に高速で振る。壊れているのかな?


「そうなんだ。よかった~。ライト君、今日も来てくれてありがとう。凄く嬉しいよ」


 デイジーちゃんはライトにぎゅっと抱き着き、自ら頬にキスした。


「あぁ…………」


 ライトは放心状態になり、デイジーちゃんにキスする前に跪いて気絶した。


「ら、ライト君。ライト君っ! き、キララさん。どうしましょう! ライト君がっ!」


 デイジーちゃんはライトの体をゆすり、私の方を見て来た。


 ――あの大天才のライトを頬キス一回で気絶させるなんて。なんて強さなんだ。


「キララ様、そこですか……」


 ベスパは私の頭上で停止飛行ホバリングしながら突っ込んできた。

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