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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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メリーさんの努力

 ショウさんはお菓子を広げるために多くの菓子職人を雇い、自分の技術を教え、お店を出そうとしている。でも、オリーザさんは王都に通用するパンを作ると言う目標の為、今もなお修行していた。どちらがいいか悪いかなんて決められないが、疲れが溜まるなら、仕事を改善した方がいいと思う。


「王都のパンを食べてきましたけど、オリーザさんのパンの方が断然美味しいですよ。安いですし、王都に行っても全然勝負できます。まあ、そうなったら街の方達はオリーザさんのパンが食べられずに悲しい思いをするでしょうね」


「う……。そ、そうだな。だが、俺は王都でパンを作っておっと言わせるのが夢で……」


「オリーザさんのパンが好きな人は沢山います。心を込めて作ったパンが美味しいのは当たり前です。でも、好きなパン屋さんが無くなるのも悲しいものですよ。ここにオリーザさんじゃないけど、オリーザさんのパンと同じ味がする品が並んでいるだけで街の者は満足するはずです。ああ、オリーザさんは王都で頑張っているんだな。私もこのパンを食べて仕事を頑張ろうって思う者が必ずいます」


「う、うぅ……」


 オリーザさんに私の心の声を届ける。今のオリーザさんになら、突き刺さる言葉が多いのではないだろうか。


「オリーザさんが倒れたら元も子もありませんからね。しっかりと教えて自分の味が広がると言うのも嬉しいと思いますよ。自分の子供がさらにパンの美味しさを昇華させるかもしれません。悔しいからもっと美味いパンを作ろうと言ってさらにさらに昇華する。そんな世界も生きていたら楽しいと思いますよ」


「はぁ……。なぜ、嬢ちゃんの話しはこうも心を揺さぶられるんだ。パンの作り方を誰かに教えたくなってきちまったじゃねえか……」


 オリーザさんは苦笑いを浮かべながら、パン生地をこねる。

 木製の大きなテーブルにまぶされた強力粉の上に生地をボンッと叩き落とし、また練り込んでいく。もこもこの生地は発酵している証拠だ。

 金属製の型に生地を入れ、石窯の中に入れる。とても、素早い手つきでさすがに長年パンを作って来ただけのことはあるなと思った。


「キララ様、私、パン作りを覚えました」


 ベスパはオリーザさんの姿を見てパンの作り方を覚えていた。ほんと、私みたく、見て盗むのが上手いスキルだ。


 ――一八年以上パンを作り続けているオリーザさんの真似をすればそりゃあ美味しいパンが焼けるようになるだろう。でも、真似事だけでは面白味が無い。ベスパ、覚えた動きを昇華させるのが人間の凄いところなんだよ。


「なるほど……。ただ覚えただけでは本物を超えることは不可能ですからね。やはり、虫にも限界があります」


 ベスパはウンウンと頷きながら考え込んでいた。


「じゃあ、私達は帰ろうか」


「そうですね」


 私とベスパはオリーザさんのパン屋さんの裏口から出る。踵を返し、オリーザさんとトルン君を抱くコロネさんのほうを向いた。


「オリーザさん、コロネさん。今日のところは失礼します。長期休みに入ったら、また見に来ますね」


「ああ、楽しみに待っている」


 オリーザさんは口角をうっすらと微笑み、珍しく優しい顏を浮かべていた。何か決心したのだろうか。


「トルンのために沢山働かないとねっ!」


 コロネさんは意気込み、トルン君の手を持ってやる気をみなぎらせている。


 私は二名に頭を下げてレクーが待っている道端に向かった。レクーが引く荷台の前座席に座り、暗くなる前に村に帰る。


「おじさん、今日もお疲れ様です」


 私は東門で門番している兵士のおじさんに話し掛けた。


「おお、嬢ちゃんか。お疲れ様。仕事の方は順調そうだな」


「はい。もう、順調そのものですよ。これから、街で美味しい飲み物が飲めるようになりますから、楽しみにしておいてください」


「なにか良い話のように聞こえるな。じゃあ、楽しみにしておこうか」


 兵士のおじさんは私の荷物を確認することもなく、いつも通り見送ってくれた。普通なら仕事しろよとなるが、私が引く荷台に何も乗っていないとすでに知っているのだ。だから、問題ない。


「さて、すぐに村に帰りますか」


 私は寄り道することなく、村にまっすぐ帰る。


「今度街に行くときは仕事と移動を兼ね備えないといけないから案外大変だな。まあ、速度を上げればいいだけだから、あまり追い詰められる必要もない」


 私は荷台に座りながら今度の三月三〇日にある仕事について考えながら、帰路を通る。


 ☆☆☆☆


「ふっ! はっ! せいやっ!」


 私が村に帰っている途中、レイニーがブレーブ平原の方にある牧場付近で剣を振っていた。相手はバレルさんで剣の稽古をつけてもらっているようだ。その近くに、ぜえぜえ、はあはあ、と息苦しそうに走っているメリーさんがいる。


 ――レイニーとメリーさんも頑張ってるなぁ。メリーさんの乳が揺れすぎてレイニーの意識が削がれちゃってるけど……。


「甘いっ!」


 バレルさんはレイニーの不注意を容易に突き、吹っ飛ばす。


「ぐはっ!」


 レイニーは地面を転がり、距離ができる。すぐに体勢を立て直し、靴裏で滑るようにして停止。


「敵から気を反らすなんて何を考えている。今の一撃が即死攻撃だったら死んでいるぞ」


 バレルさんは木剣を持ちながら、執事のように姿勢をピシッと正す。


「す、すみません!」


 レイニーは再度集中し直し、バレルさんに攻撃を繰り返す。


「はぁ、はぁ、はぁ……。んぁ、んあ、はぁ、はぁ、はぁ……。も、もぅ、むりぃ……。はぁ、はぁ、はぁ……。こ、こんなの、た、耐えられないよぉ……。んあぁ……、んぁ……、んぁあっ!」


 メリーさんが走っている時に発する声があまりにも卑猥で、レイニーの体が硬直する。その隙を狙われ、バレルさんの蹴りがレイニーの腹に直撃した。容赦が全くない……。


「ぐふっ!」


 レイニーは完全に腰が引けた状態だったのでたやすく吹っ飛ばされ、地面に勢いよく転がり、立ち上がれない。


「レイニー、魔物が幻覚を使って色仕掛けしてくる場合もある。あの程度で気を散らしていたら魔物に食われて終わりだ」


 バレルさんはメリーさんの淫猥さを使ってレイニーの精神を鍛えているようだった。なんて言う鬼畜な修行。メリーさんの姿を無理やり見える範囲にさせてレイニーと剣を交わすなんて。普通の男なら、まともに戦うのは不可能に近いだろう。


「はぁ、はぁ、はぁ……。こ、こんな修行、初めてだ……」


 レイニーは嬉しいのか辛いのかわからないが、口角を上げて立ち上がる。


「ふっ、まだ立てるところがさすがだな。では、続きと行こうか」


 バレルさんは剣を持ち、レイニーと剣を交わす。

 私の肉眼で二名の剣戟を追うことは出来ず、苦笑いしかできない。

 メリーさんは二名の戦いを見る余裕はなく、ただただ走り続けている。あんな大きな乳を揺らしながら走るのも辛いだろう。


「ベスパ。少し作ってほしい品があるんだけど」


「かしこまりました」


 ベスパは私の思考を読み、私が作ってほしかったスポーツブラを作成してきた。ネアちゃんの糸で作られた伸縮性と吸水性、発汗に優れた良い生地で作られている。

 私は胸をバルンバルンと動かしているメリーさんのもとに向かう。


「はぁ、はぁ、はぁ……。あぁ、も、もぅ、だめぇ。もう、むりぃい~」


 メリーさんは泣き言を言いながらもちゃんと走っていた。止めたいけど、心が止めさせてくれないと言う縛りが見える。メリーさんも変わりたいんだろうな。


「メリーさん、走るのが少し楽になる品を持ってきました。今、着けているブラジャーよりも動きが少なくてしっかりと支えてくれます」


「え、ほんと!」


 メリーさんは周りを気にすることなく上着を脱ぎ、ブラジャー姿になった。ばるんぶるん……、私の目の前にこの世のものとは思えないエベレスト級の双丘が現れる。


「「ぐはっ!」」


 近くでお爺さんと青年の吹っ飛んだ時に起こる吐息が聞こえた。メリーさんの爆弾ボディーを見て攻撃を食らったらしい。


 ――バレルさんまで……。メリーさんの体が厭らしすぎるのが悪いのかな。


「えっと、メリーさん。森の中だからって簡単に脱がないでください」


「あ……。ごめん、昔の癖でつい。でも、見ている人なんていないでしょ。バレルさんとレイニーは剣を振るのに夢中だし」


「ふんっ! ふんっ! ふんっ!」


 バレルさんとレイニーはメリーさんの方をしっかりと見ながら剣を振っていた。どう見てもメリーさんの体に興味津々の様子。


「メリーさん、もう少し自重しましょうよ……」


 私はローブをメリーさんの周りに纏わせ、外側から見えないようにする。巻き巻きタオルのような役割だ。メリーさんがスポーツブラを付け終わると、目が輝いていた。


「お、おおお~。凄い、凄い! しっかりと止まる!」


 メリーさんが飛び跳ねても普通のブラジャーより胸は跳ねず、動かなかった。


「これなら、もっと走りやすくなるよ。ありがとう、キララちゃん!」


 メリーさんは私に抱き着き胸を顏に押し当ててくる。ものすごい圧力で私の顔が潰れそうだ。このままだと私の心から嫉妬の炎が燃え上がりそうなので、さっと離れる。


「はぁ……。メリーさん、しっかりと走って体力をつけてくださいね。私も走るのは苦手ですけど、走るのと走らないのとでは全然違いますから」


「うん。キララちゃんの言う通り、走り出してから体が良く動くようになったと言うか、前よりも運動が出来るようになった気がするの。これからも続けられるように頑張る」


 メリーさんは微笑み、スポーツブラだけの状態で走り出した。へそ出しのランナーみたいで、別に不自然じゃないが、体型が体型なので目のやり場に困る。


「あとは靴だけだな。ベスパ、私が作ってほしい靴を持って来てくれる。靴床が出来るだけ軽くて厚めの靴」


「了解しました」


 ベスパはブーンと飛んで行き、私が思っていた通りの靴を持って来た。

 靴の先端が少し薄く、踵の部分が厚めのランニングシューズだ。靴が違うだけで走りは劇的に改善される。膝への負担も減らせるので、走って体力をつけたいメリーさんにうってつけの品だ。

 通気性が良いニットの布地に柔らかい靴裏。でもしっかりと反発があって衝撃を吸収してくれる。靴の大きさはメリーさんに完璧に合うはずなので、早速履いてもらおう。


「メリーさん。靴も変えましょう。この靴を履いてもらったほうが走りやすくなりますから」


「靴も……」


 メリーさんは靴を脱いだ。すると靴下が破れ、足が擦れている。これ以上、革靴で走っていたら靴擦れを起こしていたかもしれない。私は新しい靴下と靴を履いてもらう。


「おおーっ! か、軽い! すごいすごい!」


 メリーさんはムチムチの太ももを上げ、微笑みながら走り出した。


「勝手に前に進むよ~! 風になったみたい!」


 メリーさんは腕をしっかりと振り、足を上げて良いフォームで走れていた。高校時代陸上部だった私が見ても形は悪くない。あのまま走り続けられれば、体は自然と必要のない油と筋肉を落として行くだろう。


「メリーがすごく機敏に動くようになったな……。これで剣に集中できる」


「う、うむ……。あれほど淫猥な攻撃をしてくるとは。今日はもう十分だな。通常の剣の鍛錬に移る」

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