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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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大盛況

「正教会は国がギリギリ滅びないくらいの嫌がらせをしてくると考えた方がいいですかね。いずれ、世界を取りに行くためにお金を稼ぎ、勇者たちが成人するまで時間を経過させようとしている気がします」


「ああ……。スキルや力は成人するまでよく伸びるからな。魔王の討伐も勇者が成人してから行われるだろう。まあ、力が今でもあれば弱い魔王を先に打っておくと言うのも考えられるか」


「ともかく、面倒事が起こる可能性が高いと言うことですね」


「そう言うことだ。キララは学園に行くんだろ。首を絶対突っ込むなよ。突っ込んだら最後抜け出せなくなるぞ」


「もうすでに全身突っ込んでるので今更抜け出すことはできませんよ。スグルさんもボロを出さないように気を付けてくださいね」


「はぁ……。なんで、俺がこんな面倒なことに巻き込まれているんだ……。どれもこれも、この仕事を選んだ俺のせいだ……」


 スグルさんは何もかも嫌になったのか、机に突っ伏す。


「今、スグルさんがここで仕事していてくれたから、特効薬が作れましたし、世界を救えてます。まあ、スグルさんは知らないと思いますけど、ものすごく活躍しているんですよ」


 私はスグルさんが考案した特効薬で多くの危機を突破して来た。つまり、スグルさんが間接的に救ってきたも同然だ。何なら、今もどこかで救っている。


「スグルさん、あなたは世界を救っている英雄です! 女神様もしっかりと見てくれています。老いて亡くなった時、超絶美人のお姉さんによしよししてもらえるかもしれませんよ!」


 私はスグルさんのやる気を出させるために、どれだけ頑張っているかを知らせた。


「お姉さんによしよし……。そ、そんなことされたら喜んじゃうなぁ……」


 スグルさんもいっぱしの男性。世界一綺麗な女神によしよしされれば、今まで頑張ってきてよかったと思えるだろう。


「良し、お姉さんのよしよしのために、もう少し頑張るか」


 スグルさんは頭をもたげ、やる気を出した。やる気の出し方が不純だが、それでもやる気が出せるだけ流石秀才と言うべきか。


「じゃあ、スグルさん。長期休みにでもまた来ますし、また何かわかったら教えてください。あと、新しい仕事をお願いするかもしれないので覚悟しておいてくださいね。最後まで一緒に抗いましょう!」


 私は正教会について知っているスグルさんにお願いした。


「はぁ……。嫌だと言いたい……」


「頑張ったら、この私がほっぺたにチュッてしてあげますから」


「俺に少女趣味はないんだがな……」


「む……。へぇー、やっぱりスグルさんはおっぱいとお尻がデカい方が好きなんですね~」


「子供が大人をからかうんじゃない」


 スグルさんは溜息をつきながら、呟く。


 私は子供ではなく大人だが、まあ見た目は子供なので言い返せない。


「じゃあ、スグルさん。また今度」


 私はスグルさんの研究室を出た。


「また今度な。ライト君にもよろしく伝えておいてくれ。仕事の手伝いも……」


 スグルさんは今後の仕事についてすでに悩んでいた。今日、私が終わらせたと言うのに。


「はは……、わかりました。伝えておきます。スグルさんは自分の体が壊れないくらいで仕事してくださいね。では、失礼します」


 私は頭を下げ、スグルさんの研究室をあとにする。

 スグルさんはやっぱり優秀だ。優秀だからこそ、大変なんだろうけど、なんか昔の私に似てる気がして親近感がわく。


「さて、次はショウさんのお店だ」


 私は騎士団を出てレクーが引く荷台の前座席に座る。


「じゃあ、レクー。このままショウさんのお店に向ってくれる」


「わかりました」


 レクーは頷き、地面の上を力強く歩きだした。

 ショウさんのお店がある大通りに移動し、やってくるとお店の前が大繁盛していた。あまりにも長い行列が出来ていたので、お祭りかと思うほど。


「な、なんじゃこりゃ……。こ、この数は魔造ウトサが使われていた時とほぼ同じ……。もしかして魔造ウトサがまたつかわれてるんじゃ……」


 私は過去の光景を知っているので、もしかしたらと考えた。だが、しっかりと見て見ると明らかに違うのが客たちの顔だった。


「はぁー、残ってるかな。残っててほしいなぁ~。でも、これだけ沢山の人が並んでいたら残ってないだろうなぁ。じゃあじゃあ、別のお菓子にしちゃおうかな~」

「あぁ~、ショウのケーキが食べたい……。でもでも、別のケーキも食べたい……。迷うなぁ。お店に入ってないのにこんなに待ち遠しいなんて。あぁ、これが恋か……」

「お母さん、お母さん。ケーキ食べたいっ!」

「お母さんだって食べたいわよ。だから、しっかりと並んで待ちましょう」

「はーいっ!」


 客たちの顔は皆笑顔。お菓子を買う前の待ち遠しい気持ちが顔に出てしまっている。もう、食べた気でいるのか、皆、幸せそうだ。ここまで顔を朗らかにするなんて……。


 私はレクーをショウさんのお店の近くにある広場に移動させた。そのあと、荷台の前座席から降りてショウさんのお店の裏に移動する。


「すみませーん、牛乳を配達しに来ました」


 私は扉を三回叩きながら声をかける。


「はーい」


 扉を開けたのは菓子職人の女性だった。ショウさんのアシスタントかな? 


「こんにちは。牛乳の配達に来ました」


「えっと……。牛乳の配達はいつも超カッコいい少年が来てたんだけど」


 どうやら、この女性は私がいない間にショウさんのお店に入った従業員らしい。


「ああ、その子はライト・マンダリニアと言う私の弟です。私はキララ・マンダリニアと言います。よろしくお願いします」


 私は女性に頭を下げた。


「ちょ、ちょっと店長に話を通してきます」


 女性はいったん戻った。だが、八〇秒もしない内に、扉が再度開かれる。


「し、新人がすみません。まさか、キララさんの方が来てくれるとは。ささ、中に」


 疲れが見て取れる菓子職人のショウさんが扉を開けて私に挨拶してきた。そのまま、中に招き入れられる。


 私は遠慮なくお店の中に入らせてもらった。すぐに厨房に案内される。以前にもまして従業員の数が増えており、もう、厨房の広さが人の数に合っていないようだ。


「ショウさん、もうそろそろお店を新しく作ってもいいんじゃないですか?」


「はい、ちょっと考えています。長蛇の列になるほど人気が出てくれたのは嬉しいですけど、やっぱり待たせるのは申し訳ないですからね」


 ショウさんはとうとう支店を出す考えを持っていた。すでに成功しているお菓子屋さんなのだから支店が出来れば多くの者に受け入れてもらえるのはほぼ確実。この街の中に二店舗、三店舗と作っても問題ないくらいお客さんが多い。


「だから、これだけの数の従業員さんを働かせて仕事を覚えさせているんですね」


「そうなります。ただ、これでも手が回らなくて……」


 ショウさんは私の方を見て手を合わせていた。どうやら、休憩時間が欲しいらしい。


 私はビー達に仕事を変わってもらった。ちゃっちゃかちゃっちゃかとビー達は働き、完璧な動きでお菓子を作っていった。あまりにも正確なので菓子職人さん達が嫉妬するくらい上手に出来ている。まあ、ビー達にとってはただの作業でしかないので何も感じていないだろう。

 とりあえず、菓子職人の方達にしっかりと休んでもらい、私とショウさんは応接室に移動した。


「ショウさん、もの凄い反響ですね。何か作戦を変えたんですか?」


「えっと、ライト君の考えでして……。ウトサの値段が超高騰し、街にほとんど流れてこなくなりました。以前の八倍以上の値が付くようになってしまって結果的にお菓子の値段も八倍となり、買える方がごく一部に……。そうなったらお菓子が買われなくなってしまうと言うことでウトサを抜いたお菓子を作ったらどうかと」


「そうしたら大盛況だったと……」


「はい……。もう、ライト君に頭が上がりません。以前の聖誕祭の時に行ったカロネさんとの飲み物とお菓子を組み合わせた販売以上の利益が出ています。ここまで来るとさすがに恐怖です……。ウトサと言う最も高い調味料を最小限の購入で押さえ、キララさんが住む村で取れた品を大量に購入し、使用しています。もう、素材の味だけで勝負できるのがすごすぎて……」


 ショウさんは両手を握り合わせて私を女神の化身と言うくらい祈って来た。


「ショウさん、これは流れです。いい流れが来ているんですよ。でも、毎回この流れが来るとは限りません。荒波や弱い波なんかも来ますからその都度対応する必要があります。まあ、ライトに聞けばある程度予想がつくと思いますけど、ライトはいつまでもいるわけじゃないですからね。自分の頭で考えて経営をするようにしてください。ライトの言いなりじゃ、ショウさんのお店を守れませんよ」


 私はショウさんの頭で考えられるようになってほしいと思い、はっきりと伝えた。


「そ、そうですね。ライト君がずっといてくれるわけじゃないですよね……」


 ショウさんは自分の力に自信がないのか視線を下げ、見るからに落ち込んでいた。

 まあ、昔に罪を犯してしまったことも未だに根に持っているのかもしれない。その罪を償うためにお店を続けているのだから、心が休まる時なんて無いだろう。でも、多くの人を幸せにしていることもまた事実。だから、ショウさんはお菓子を作り続けなければならないのだ。


「ショウさん、ライトは頭がおかしいので比べる必要はないです。確信的なひらめきや思いつきなんてそう何個も出てきません。なので、ショウさんがしたいようにすればいいんです。軌道に乗っているので多少落ちたとしても元に戻すことは案外簡単ですから怖がらず、自分の意思を貫いてください」


「うう……。キララさん……」


 ショウさんは瞳に涙を浮かべ、口をもごもごさせていた。


「ショウさんのケーキを先ほど食べました。ものすごく美味しかったです。素材の味をしっかりと引き出していたので、ウトサが無くても余裕で食べられました。あのケーキで銀貨二枚は安いですよ」


 私は小さなケーキを思い出し、もう一度脳内で味わう。


「キララさんの牧場から得られる品々のおかげです。本当に感謝しています」


 ショウさんは私に頭を何度も下げた。

 私は特に頑張っていないので複雑な気持ちだ。まあ、ウトサが入っていないケーキが街でこれだけうけたのはもともとウトサが使われていない食事に慣れていたからだと考える。王都でも同じように流行ると思えない。なんせ、あっちは甘党ばかりなのだ。

 でも、味で勝負できることはわかった。商品も売れるだろう。問題は作り手かな。

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