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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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おだて上手

「体の触れ合いは心に響く。少しずつ心の距離が縮まって行ってそのまま、むふふな展開に……」


 私の頭の中は淫猥なお花畑でいっぱいになっていた。


「キララ様、無駄な情報を頭の中に流さないでください」


 ベスパは私の頭上を飛びながら言う。


「無駄な情報って……。まあ、ものすごく無駄か。ごめんごめん」


 私は頭を振ってレイニーとメリーさんの淫猥な想像をもみ消した。


 私は沢山動いたメリーさんに干し肉をおすそ分けした。


「あぁ、お肉……」


 メリーさんは肉の匂いを嗅ぎ、パクリと食いついた。犬かと突っ込みたくなったが、美味しそうにモグモグ食べている。手を出せばお手しそうだ。


「干し肉、おいひぃ……」


 メリーさんの顔が緩むだけで色っぽく、レイニーが唾を飲んでいる。


「もう、暗くなってきた。三月中はメリーの体作り、四月になるころ出発しよう」


「そうですね。俺もバレルさんから出来る限り安全な場所で教えてもらいたいので助かります」


 レイニーは頷き、バレルさんの発言にしたがう。


「うぅ……。私の体、もってぇ……」


 メリーさんは体を動かしすぎて、すでに疲労困憊。泣きそうになりながら腕を摩る。


 三名はブレーブ平原側の牧場に作られた施設に泊まった。私は実家に帰る。ウォーウルフの親玉に運んでもらい、疲れることはなかった。


 ☆☆☆☆


「はぁー、帰ってきました」


 私は扉を開き、家の中に入る。夕食の準備がされていた。手洗いうがいを終え、お母さんの手伝いをする。


「ただいま……」


 私の後にシャインが帰って来た。手洗いうがいをして席に着く。


「ただいま~」


 ライトが寝不足を解消したいい顏で戻って来た。


「ただいま」


 ライトと一緒にお父さんが帰って来た。皆、席に着き、お母さんが作った料理をありがたくいただく。


「お母さんの料理は今日も美味しいね~」


 私はお母さんの料理を食べながら言う。家族の皆に、この味がいつまでも食べられるんじゃないんだぞと言う意味も込めて語りかけた。


「お母さんが作る料理が美味しいのは当たり前だろ。昔よりも料理の腕が上がって一段の美味くなったな」


 お父さんはお母さんが悦びそうなことを沢山言った。食べる品々、どれも美味しい美味しいと食し、お母さんを嬉しがらせている。


「お母さんの料理は美味しいよ。でも、そんなに大げさに言うことなの……?」


 シャインはぼそぼそと呟く。料理が美味しいと言われて嬉しくない者がいるかい? まあ、実際に体験してみないとわからないか。


「シャインも誰かに料理を作って美味しいと言ってもらえたら、きっとわかる時が来るわ」


 母さんはシャインの発言に正しい反応を返し、ギクシャクした空気になることはなかった。


「お母さん。料理をいつも作ってくれてありがとう。お母さんの料理が無かったら僕達はここまで大きくなれなかったよ」


 ライトはこれまた嬉しい発言を放った。お母さんは軽く泣いており、ライトに肉を渡していた。ライトの口がはにかんでおり、おだてればいいことが起こると理解しているようだ。

 まあ、シャインの方が普通の子の反応でライトが頭が切れる子の反応だ。


 シャインは悔しそうな顔を浮かべながらライトを見る。ライトは何も感じていなさそうに肉を食べる。


「シャイン、私の肉をあげるよ。お腹が空いているでしょ」


 私はシャインの皿に自分用のお肉を移した。


「え……。良いの? お姉ちゃんもお腹が空いてるでしょ。私だけもらうのは悪いよ」


「ライトはお母さんから貰っているし、私はシャインにあげたいと思ったからあげたの。だから、シャインが食べてくれたら私は凄く嬉しいんだよ。どちらも嬉しいんだから、シャインはお肉を食べていいんだよ」


 私はシャインがお肉を食べてくれる理由を作った。すると、シャインは微笑みながら肉を食べる。どうも、ライトと自分を比べているらしい。双子だからかな。

 顔は似ているのに能力は全然違う。ライトは知的、シャインは脳筋。どちらも個性があって良いと思うのだが、頭がいい方が良いと言う子もいるし、強い方がいいと言う子もいる。多種多様な子供がいていいじゃないとシャインに言ってあげたいが、そんなことを言ったらまた怒られるので今は潔く夕食を得る。


「じゃあ、キララにはお父さんからお肉をあげよう」


 お父さんは肉を私の皿に移す。


「うわぁ~い、やったやった~。ありがとう、お父さん。大好き~」


「あははは~、そうかそうか。もっとあげちゃうぞ~」


 お父さんは私におだてられ、皿に乗っていたお肉を私の皿にもう一枚乗せる。


「凄い凄い。お父さん太っ腹ぁ~。さすが一家の主だね。もう、お父さん無しじゃ家計が回らないよ~」


「なぁ~はははっ! そうだろうそうだろうっ!」


 お父さんは胸を突き出しながらふんぞり返り、とても嬉しそうに語る。お父さんがいなくても家計は回るが、そう言っておけば勝手に嬉しがってくれる。

 私の肉は最初の二倍に増えた。


「さ、さすがお姉ちゃん……」


「姉さんには敵わないな」


「はぁ、あなた、キララに良いようにおだてられちゃって……」


「私はおだててないよ~。本心を言って入るまで。お父さん、いつもありがとう~。いつまでも元気でいてね。ちゅっ」


 私は投げキッス紛いなことをしてお父さんを吹っ飛ばす。


「ぐはっ!」


 お父さんは私の投げキッスを食らい、目を回しながら床に倒れ込んでいた。


「あ、あなたっ!」


 お母さんはお父さんのもとに走り、鼻から血を流しているお父さんを抱き上げた。


「お、お母さん、キララに物凄く利いたと伝えてくれ……」


 お父さんはばたりと倒れた。


「お父さーんっ!」


 私とシャイン、ライトがお父さんの周りに駆け寄り、お父さんの無事を祈る。まあ、こんな茶番は日常だ。


 夕食を得た私は自分の部屋に戻る。桶に溜めたお湯を使って布を湿らせ、体を拭く。

 魔法で洗うよりも気持ちがいい。

 フルーファも綺麗にしてあげると物凄く喜んだ。

 体を布で拭いた後はブラッシングしてあげるともっと喜ぶ。それだけでフルーファは満足していた。


 私はフルーファの歯を磨き、口臭予防をする。生肉を食すと臭い時が多々あるので歯磨きは必須だ。私も歯磨きを欠かさない。

 寝る準備を終えたら勉強する。いつもしているので慣れたものだ。慣れてからは勉強を行うのがとても楽になった。

 地球にいた頃もこれだけ本気で勉強していればいい学校に行けたんだろうなと思うと何でしなかったのか疑問に思う。まあ、当時は出来なかったのだから仕方がない。

 昔のことをくよくよ言っても今更だ。

 だから、今がんばっていればそれでいい。そう考えて生きて行けば案外辛い思いをせずに過ごせる。

 これから良くなるかどうかは自分次第なんだと言い聞かせていい方に一ミリメートルでも傾ければ、未来は物凄く良い方向に傾くのだ。


「ふふん、ふふん、ふふふんっ」


 私は魔法陣を掻きながら鼻歌を奏でていた。すると、扉が叩かれる。


「はい」


「お姉ちゃん……」


 目元が赤く、何かにおびえているようなシャインが私の部屋を訪ねて来た。


「どうしたのシャイン。何か怖い夢でも見た?」


「うん……。ものすごく怖い夢を見たの……。最近、毎回毎回同じような夢を見て、怖くて怖くて……」


 シャインは体を摩りながら私のもとに寄って来た。


「どんな夢を見るの?」


「私以外の皆が学園に受かっているのに私だけ受からない夢……」


 シャインは泣きそうになりながら呟く。


 ――あ、ありえそう……。いや、でもシャインの強さがわかれば学園側もシャインを合格させるはずだ。


「えっと、シャインだけ受からないと言うことはないと思うよ。だって、学園は沢山ある。だから、お金さえあれば、どこかの学園に入れてもらえるよ」


「わ、私は皆と同じ学園に入りたいの……。ライトとガンマ君、デイジーはドラグニティ魔法学園に入れるのに私だけは入れない夢を何度も何度も見るの。それが怖くて怖くて……」


 シャインは勉強ができないと言うストレスから夢の中で皆が出来て自分が出来ないと言う夢を見てしまっていると思われる。

 でも、夢を見て危機感を覚えると言うのは悪い話じゃない。その夢のようにならないよう努力するきっかけだととらえればいいのだ。


「シャイン、何も怖がらなくていいよ。シャインの夢はシャインに今努力しないとこんな未来がやってくるよって言う最悪の状況を見せてくれているの。でも、今、頑張れば未来は確実に変わるんだよ。真っ直ぐ投げた石は地面に並んで飛ぶけど、少し上を向けて投げた石は斜めに向かって飛ぶ。逆に真下に投げた石は地面にぶつかってしまう。方向を変えるだけで行き先は全然違うんだ」


「うぅ……。じゃ、じゃあ、私が全然努力していないって言うこと? 毎日勉強しているのに、こんな夢を見るってことは私の努力は全然足りないってこと……」


「毎日どれだけ勉強しているの?」


「…………一〇分くらい」


 シャインはぼそっと言った。でも、シャインにとっては努力していると思っているのだろう。はたから見たら一〇分なんて努力の内に入らないと言う者もいるかもしれないが、努力は人それぞれだ。


「じゃあ、シャイン、剣の鍛錬は一日最低どれくらいしているの?」


「最低四時間くらいかな。休みの日は一〇時間以上する」


 シャインは腕を組みながら堂々と答える。


「なるほどね」


 私からしたら剣の鍛錬を四時間なんて出来ない。精々一〇分くらいかな。でも、勉強なら四時間出来た。シャインからしてみたら剣の鍛錬が一〇分なんて雑魚と思うだろう。それが他の者から見た努力の面白いところだ。


「シャイン、一〇分の努力でドラグニティ魔法学園に受かる生徒は天才かスキルが強い者だけだよ。凡人は毎日長い時間勉強して鍛錬もするの。でも、一〇分の勉強が悪いと言っているわけじゃないよ。一〇分の勉強が辛いと思っている時は一〇分の勉強でも構わない」


「で、でも、それじゃあ、全然頭が良くならないよ……」


 シャインは自分の頭に手を当てて、視線を下げる。

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