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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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友達八人できるかな

「ちょっと危なげない青年がいてですね。その子に稽古をつけてもらいながら冒険者としての知恵を叩き込んであげてほしいんですよ。旅先も決まっていないそうですし、バレルさんの故郷に寄るくらい許容してくれるはずです。バレルさんも一人で行動するより、他の者と一緒の方が安全だと思います」


「なるほど……。とりあえず、その青年に会ってみないことには判断出来かねますね」


 バレルさんは剣の鞘を左手で握った。チンッという音が鳴ると、私の後方にいた毒虫が切られる。私を襲おうとしていたわけじゃないがバレルさんの視界に入ってしまったのが運の尽きだ。


 ――にしても、剣身が見えないし。いつ、剣を抜いて振ったんだよ。


 私は全身冷や汗が止まらなかった。すでにバレルさんの剣の間合いに入っており、首が飛んでいてもおかしくない。バレルさんの位置は変わっていないのに私を透かしながら、後方にいる毒虫を切る技術ってなに?

 私は頭の中に大量の情報が入ってきて困惑していた。


「ああ、すみません、キララさん。驚かせてしまいましたね。後方に危険な毒虫がいたので、切らせていただきました」


「あ、ありがとうございます……」


 ――ベスパ、バレルさんの周りをビーの状態で飛んだら切られるから注意しな。


「そのくらいわかっていますよ。他の虫達にも伝えていますが、おバカな個体は忘れちゃうんですよね」


 ベスパは魔力体の状態で、バレルさんの周りを飛ぶ。おちょくっているように見える……。魔力体の状態なら切られないだろうという自信でもあったのだろうか。


「ふっ!」


 バレルさんの剣がベスパの体を切り刻んだ。正確な斬撃。見えていないはずなのに……。

 ベスパは身震いして体を切られたような感覚に陥り、ショック死した。

 ベスパがバカなのか、バレルさんがすごすぎるのか……。


「じゃあ、バレルさん。村に戻ったら、青年と会ってください。青年の方は私が連れて行きます」


「わかりました」


 バレルさんは頭を下げ、私の話を理解してくれた。


 私はバレルさんから離れ、ライトの元に戻る。


「ライト、仕事が落ち着いたら休憩するんだよ。働きすぎは体に毒だからね~」


「は~い」


 ライトは手を振って返事をした。こういうところを見るとまだまだ幼い九歳児なのだが……。


「グルルルルル……」

「モォオオオオ……」


 ウォーウルフの子供とモークルの子供がいがみ合っていた。すでに仲間意識が湧いているのか骨肉の争いになることは無いが、モークルの方が不利なのは明らかだ。


「はい、そこ。喧嘩しない」


 ライトは指先をウォーウルフとモークルの子供に向ける。両者は空中に浮かび、クルクルと高速回転した。眼が回ったのかどちらも戦意喪失し、地面にぱたりと倒れ込む。

 普通の魔法使いなら『フロウ』を使って物体を浮かせ『ウィンド』で回転させると言う流れだが、ライトは無詠唱で行い、短縮している。熟練魔法使いと同じくらいの練度をほこっていた。


「まったく、喧嘩は駄目って言ってるんだけどな」


 ライトは腰に手を置き、ご立腹だ。


「意見が食い違うと喧嘩するのも仕方ないよ。そもそもモークルとウォーウルフが共存していること事態、自然界ではおかしな話なんだから」


「まあ、それもそうか……」


 ライトは腑に落ちたのか、仕事に戻る。


 私はブレーブ平原の方の牧場を見回りながら昼を迎えた。働いている者のもとにビー達が昼食を運んでくる。宅配サービスのようで物凄く便利だ。どこにいても食事がとれるので時短になるし、好きな場所で食べようと思えばお盆を持って移動すればいい。


「キララ様の分もありますよ」


 ベスパは復活しており、お皿が乗ったお盆を持って来た。


「ありがとう。えっと、今日の昼食は……。おお、コロッケだ!」


 私が誕生日に作り、多くの者の心を掴んだ干し肉入りトゥーベルのコロッケが皿に乗っていた。お母さんが作ってくれたようだ。手間がかかるのに、ありがたい。私が帰って来たから奮発したのかな。

 お盆に乗っていた品はコロッケ二個、山菜とエッグルのスープ、牛乳瓶一本、白パン一個と言うあまりにも給食すぎる昼食だった。


「こんな、昼食を出されたら仕事を頑張らないわけにはいかないよな」


 私は景色がいい場所を探し、歩いていた。ウォーウルフの親子たちのもとに魔物や動物の死骸が運ばれており、皆で仲良く食していた。とってもグロテスクなので見ていると食欲を削がれるため、別の場所を探そう。


 色々探し回ったが、結局どこも見えるのは森の木なので、どこでもいいやと言う結果に落ち着き、その場でしゃがむ。お盆を切り株に置き、両手を合わせて神様に祈ってから『クリーン』で手を綺麗にした。


「じゃあ、いただきます」


 私は白パンを両手で持ち『ヒート』を使って暖かくした後、半分に割る。コロッケを挟みコロッケパンにして、パクリと一口。サクッと軽いあげたパン粉の触感と熱々の中身が白パンに吸収され、美味いの一言しか出なかった。

 ハグハグハグっと食べ進め、頬をリスのようにパンパンに膨らませながら咀嚼。口の中がじんありと甘くなっていく。幸せな気分を堪能し、飲み込んだ。


「プはぁ……。うっまぁ……。やっぱり、素材が良いと違うね」


 私は身震いさせ、素材の良さを存分に味わう。素材の良さで調味料を陵駕しているのがとても嬉しかった。とりあえず塩、とりあえず醤油、とりあえずソース。そんなどこの亭主関白の夫だって言うのが良くありがちだ。

 王都でも、味が悪ければソウルやソースを掛けて無理やり食べていた者もいる。どこの世界でも味が悪ければ濃い味付けにして誤魔化そうとするのだろう。素材の味その物を堪能すれば、健康的で美味しい料理が味わえるのに。


「あれ……、私、ベジタリアンみたいな考えになってる?」


 私は自分の考えに疑問を持ちながらも、美味しい昼食を堪能した。


「ング、ンッグ、ング、ンぐ……っぷはぁあ~! 牛乳最高!」


 私は最後の一杯を牛乳で締めくくり、最高の気分で昼食を終える。


「では、失礼します」


 ベスパはお盆を持ち、木製の皿や牛乳瓶を回収していった。

 ゴミが散らばることはなく、全て回収される。食べ残った品はブラットディアやビー達が処理するので、残るゴミはゼロ。排出される牛乳瓶はズミちゃんに食べられ、土の養分となるので、全て炭素に戻っていた。なんてエコなサイクル……。


「ほんと便利だ虫達だな……」


 私はすることが無くなり、ぶーんぶーんと飛んでいるビー達を遠目で見ていた。遠くから見る分には気分を介さないほどに成長した。まあ、嫌いなものは嫌いだけど。彼らの仕事ぶりは尊重し、尊敬できるので無下に殺さない。


「はぁ……、昼から何をしようか……。勉強って言っても、受験は終わったし……、ガツガツする必要もないんだよな。このまま寝てしまおうか……」


 私は牧草地帯で寝転がり、真っ青な空を見上げる。空島が雲と共に流れ、今にも落ちて来そうで怖いが、滅多に落ちてこない。と言うか、落ちたところを見た覚えが無い。


「あの空島ってどうやって浮いているんだろう。誰かがわざわざ浮かせているわけじゃあるまいし……。不思議だな……」


 私はこの世界についてまだほとんど知らない。魔法が使えてビーが年から年中飛び交っているくらいの知識しかない。


「学園に行ったら楽しいかな。そりゃあ、楽しいか。同年代の子達と一緒に入れるんだもんな。遊んで勉強して鍛錬して、残り少ない子供生活を堪能しようじゃないか。一五歳になったら結婚か、仕事か、はたまた冒険者か……。はぁ、そもそも世界が残っているかすらわからないし」


 私はブツブツと呟き、独り言で場を持たせる。友達がいなさ過ぎて変な癖が付いちゃったよ。学園に行ったら友達一〇〇人出来るかな……。

 い、いや、一〇〇人も要らないな。八人くらいで十分。多すぎても疲れるだけだし、何なら、今後大人になって疎遠になるかもしれないから親友が一人か二人いれば十分。本当に信頼できる仲間が数人出来たら学園に行っただけで儲けものだ。


「私に友達出来るかな……。まあ、ミーナはもう友達だって言ってくれたし、他にも友達になってくれそうな子達はいたから、大丈夫かな。でも、その子達が全員受かっているとは思えないし……」


 私はブツブツと将来に対しての不安を言葉にしていた。


「姉さん、こんなところで寝ていたら風邪をひくよ」


 私のもとにライトがやって来た。私の体を浮かせ、氷の上を滑らせるように滑らかな移動をさせてくる。いつの間にか牧場近くの施設に移動しており、ベッドの中に潜り込まされた。


「昼寝をするならベッドの上で、お願い」


 ライトは窓から顔を出し、笑って仕事に行く。


「……過保護だなぁ」


 私は自然を楽しんでいただけなのだが、ライトに勘違いされてしまった。まあ、どうせならこのまま眠ってしまおう。

 私はシーツを手繰り寄せ、みのむしのようにくるみながら眠る。


 ☆☆☆☆


 二〇分ほどの仮眠を行ったあと。私はふと起き上がり、外を見た。


「うーん。どう見ても二〇分じゃないね」


 外の景色はオレンジ色になっており、完全に夕方だ。

 私は昼から四時間ほど眠っていたらしい。体内時計が狂っているのかな。


 建物から出てウォーウルフの親玉の背中に乗り、村の牧場に移動。すでに子供達が帰っている途中で就業時刻の午後五時を回ったようだ。


 私は親玉から降りて、レイニーを探した。どうせ、バートン場の方だろうと思い、歩いていくと案の定、バートン場にいた。


「ふっ! はっ! そらっ!」


 レイニーは姉さんに乗りながら剣を振っていた。体幹がしっかりしており、落ちそうもない。姉さんも楽しそうに走っており、足と体が一体化しているように見えた。もう、ケンタウロスと言ってもいいような戦いぶりで、神々しく、見惚れる。


「ん、キララ。どうかしたのか?」


 レイニーは私の存在に気づき、視線を向けてきた。

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