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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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待ち時間のゲリラライブ

 私は半自動運転の荷台に乗り、街の昔と変わっている景色を見ながら故郷の良さに触れる。別にこの街が故郷なわけじゃないが、何回も来た覚えがある場所なので第二の故郷と言っても問題ない。


「あれ……、教会までの道が広がってる……」


 レクーは通りなれた道を歩いていた。


「本当だ。レクーと荷台が通っても余裕があるね。前はギリギリだったのに……」


 以前は前方から他の荷台が来ることもなく、ほっそい一本の道で十分事足りたが今は多くの者が利用するからか道幅が広げられていた。

 荷台がざっと二台分の広さがあり、圧迫感がなくなっている。


 私達が通っていたどんよりとした空気感のある場所ではなくなり、神聖な場所に続く空気が澄んだ場所になっていた。本当にこの先にボロボロの教会があるのだろうか。


 私は少々疑いながら移動すると、多くの者とすれ違った。皆が教会を利用している。その光景が私の視界にありありと写り込んだ。


「おお……。き、綺麗になってる」


 私の視界に映る教会は真っ白でひび割れが一切無かった。以前、直した時よりも綺麗な塗装を施されている。街に住むドワーフたちが色を塗りなおりしてくれたのかもしれない。

 右手側にある広場に作られた舞台は二年前よりも確実に綺麗になっていた。

 なんなら、三カ月前に行われたキラキラ・キララの妹アイドルイベントの影響がまだまだ残っており、多くの子供達が歌って踊っている。その顔に暗い表情はなく皆、キラキラしていた。その姿を見ただけで三カ月前のライブが成功していたんだなと優に想像できた。


 後方に墓地があり、どんよりした空気を放っているかと思えば多くの者が手入れをしており、とても神聖な場所に変わっていた。邪気は一切無く、子供達の重苦しい魂も鎮魂したのか明るく見える。


「はは……、本当に見違えてる。三カ月で変わるもんだね……」


 私は教会の前にレクーと荷台を置き、地面に降りた。鉄格子は取り払われ、そのまま教会に行けるようになっている。その方が見栄えがいいし、神聖だった。鉄格子があるとちょっと監獄っぽかったのでいい判断だと思う。つけようと思えばまた付けられる。


「よ、よし……」


 私は綺麗な茶色に塗装された教会の扉に手を当てる。出入り自由になっているので取っ手を持って、そっと引いた。


「おお……。人がいる……」


 教会の中に置かれている長椅子に人々が座り、ステンドグラスの方向に祈っていた。換気も随時されており、光がしっかりと差し込んでいるため清潔感が半端ではない。


「こんにちは。どうぞ、お好きな席にお座りください」


 子供達が子供用の司祭服を着て私を招き入れた。元からこの教会に住んでいた孤児で、顔を知っている。


「あ、ありがとうございます」


 ――いや、変わりすぎじゃない? ライト……。


 私はとある少年の名前を頭の上に思い浮かべた。教会を利用する者が増えたから子供に仕事をさせる良い機会だと思ったのだろう。的を得ており、負けた気がして悔しい。


 私は開いている席に座り、手を握り合わせて祈った。


「女神様、私を見守ってくれてありがとうございます。精一杯生きています……」


 私は駄女神に感謝の気持ちを伝えた。両手を握り合わせている手前、『クリーン』で綺麗にした後、紙袋に手を入れ、パンを食べる。別に飲食禁止と書かれていないので問題ない。周りの方に迷惑を掛けなければいいのだ。


「ハム……。うぅんっまああああああ!」


 私は回りの人に迷惑が掛かるくらいの大声を出してしまった。仕方ないじゃない。パンが美味しすぎたのだ。


「す、すみません、すみません」


 私は周りに頭を下げながら椅子に座り直す。ゴンリパンを手でちぎる。パンの繊維がもちーっと伸び、ゆっくりと千切れた。


「くれ」


 フルーファが私の前に現れ、口を開けている。


「おねだりしなさい」


「ください、キララ女王様、ください」


 フルーファはお座りしながら前足を合わせ、上下に動かしながら祈って来た。器用なやつだ。


「よろしい」


 私はフルーファの口に千切ったゴンリパンを放る。


「うっま、うっま、うっま!」


 フルーファは口を閉じながら尻尾を振り、ゴンリパンを食べた。私はもう一度パンを千切り、口に放る。噛むと餅かと思うほどの柔らかい弾力、でも唾液と混ざると雪のようにふんわりと溶けてゴンリの甘味と酸味、バターのうま味がじんわりと溢れ出てくる。

 飲み込んだあと、鼻から抜ける小麦の良い香りがたまらない。


「うめぇ……」


 私はメークルのような声をだしながら、ゴンリパンを八分も掛からずに食べきった。美味しすぎてバチームパンにも手が伸びる。バチームパンに入っているのはレーズンのようなバチームと言う果実。


「キララ様、私にもください!」


 ベスパは手足をブンブン振り、またせかして来た。


「はいはい。今度は外に出て食べよう」


 私はベスパと共に外に出た。バチームパンを空に投げ、ビーとベスパがパンに突っ込む。パンの欠片すら残さず全て食切った。


「ハム……。あぁ……、うぇええ……」


 私はバチームパンを口にする。じゅわっと広がるバターのうま味。ブルーベリーに似た味のバチームが口の中で酸味と甘みを醸し出す。太るとか知らん! 私は食う! って言いたくなるくらい美味しいパンだ。


「ああ……。もう、無くなっちゃった……。最後の一個はメンロパンか。これは分けようね」


 私は回りを見渡した。すると、広場にベンチが置かれており、休憩できるようになっている。


「あそこで、食べよう」


 私はベンチに座り、子供達が楽しく遊んでいるところを見ながらパンを食べることにする。メンロパンを三等分にしてベスパとフルーファに与えた。


「ハグハグハグハグハグっ!」


 ベスパとフルーファは勢いよくメンロパンを食し、あっと言う間に完食してしまった。相当美味しいらしい。


「では……。クッキー生地が付いたメンロパンの実力を見せてもらおうか」


 私はメンロパンの匂いを嗅ぐ。


「うおっ!」


 声が出るくらいのバターの匂いが出ている。加えて匂いで原産地がわかるほど、香り高いネード村産小麦が使用されている。


「こ、これは凄い……」


 私はモチモチとした生地をしっかりと持ち、食いつく。

 外のクッキー生地がサクッと砕け、中身はもっちりとしたパン。

 食い千切ると口の中にバターと小麦の香りがガツンと殴りかかってくる。ウトサは入っていないが、牛乳の甘味が舌に伝わり、パン本来の美味さを得る。


「あぁぁぁぁ……、生きててよかったぁ……」


 私は泣きそうになりながらメンロパンを食す。一度食べ出したら止まらない。こんな大きなパンを一人で食べたら確実に太る。もう、人を太らせるパンだよ。


「はぁ……、もう、食べ終わっちゃった。私、大きめのパンを二個と三分の一を食べきっちゃったの? 大食いすぎ……。まあ、パンが美味しすぎたのが悪い」


 私はパンを食べすぎてしまい、太るのが怖かった。まあ、私は太らない体質だとベスパに言われたが、本当かどうかわからないので運動しよう。どうせ、レイニーを待たないといけないし。


 私は未だに取り壊されていない舞台に上った。自由に登れるし、多くの子供達が歌って踊っているので問題ないだろう。


「みんなー、こんにちわーっ! 私も歌って踊っていいかな?」


「うん! 一緒に歌って踊ろう!」


 小さな女の子たちは私を快く受け入れてくれた。


 私はゲリラライブを開催する。歌って踊ってを繰り返していると子供達が集まって来た。


「お姉ちゃん、すごいっ! キラキラしてる!」

「聖典式の時に歌って踊っていたお姉ちゃんたちみたいっ!」

「私にも教えて教えて!」


 女の子達は私の歌と踊りに見せられて瞳を輝かせていた。夢と希望を持った眼差しで、どんな宝石よりも輝いて見える。


「いいよいいよー。教えてあげる!」


 私は天にピースを突き刺して決めポーズを取った。天が光り、天然のスポットライトが差す。ゲリラだと言うのに女神様も物好きだね。


 準備も何もしないないのでアカペラで歌う。ビーを使えば音楽を醸し出せるが丁度音楽家たちが広場で演奏をしていたのを見つけ、巻き込んでやる。


「皆さん、私が歌って踊るので好きに楽器を演奏してください」


「え……、いきなり言われても……」


「適当でいいんです、適当で。それなりに聞こえますから」


 私はジャズっぽい軽快なリズムの音楽に合わせ、コミカルに踊る。曲調に一番あっている歌を選曲し、アカペラで歌った。


「おお……。す、すごい。手が勝手に動く……」


 音楽家たちは演奏が生き生きし始める。私の歌と踊りに当てられ、心から楽器を楽しく引いているのだ。


「さあ、もっと心熱く音を響かせて! かっこいい音楽家の皆さん!」


 私は音楽家たちの前に立ち、満面の笑みを浮かべる。


「うおおおおおおおおおおおおおっ!」


 音楽家たちの顔はやる気に満ち溢れ、その身に神が舞い降りたかのような演奏を披露する。本当に神がかるとはこのことだ。

 私は多くの者達から熱い眼差しを向けられ、手拍子や掛け声、応援が送られる。


 ――ゲリラライブでここまで盛りあげられるなんて、流石私。これだけの人をあっという間に虜にしてしまった。可愛いって罪だなぁー。


「キララ様、それを自分で言うのはどうかと思いますよ」


 ベスパは手足を振り、オタ芸をしながら私に呟く。


 ――可愛いのは本当なんだから別にいいでしょ。


「はぁ……、自信過剰ですね……。まあ、女王様ならそれくらい堂々としてくれないと困りますけどね」


 ベスパは両手をブンブン振り回し、オタ芸を加速させる。あまりにも早いので、もう、何をしているのかはっきりわからない。


「はぁ、はぁ、はぁ……。ありがとうございました」


 私は集まってくれた者に頭を下げ、感謝を口にする。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 広間にいた多くの者が私の感謝する姿を見て大きな声をあげた。私の歌や踊りが多くの者の心を熱くさせたのだと思うと、私の方も無性に熱くなる。


「お姉ちゃん凄い凄いっ! もっともっと! もっと見せてっ! もっと聞かせて!」


 小さな少女からのアンコールを私は受けた。


「俺も見たいっ! 君の輝かし姿をもっと見せてくれ!」

「私もっ! こんな楽しい思いは聖典式いらいだわっ!」


 大きなお兄さん、大きなお姉さんからのアンコールもいただいた。その方達を皮切りに、多くの者が手を叩き出し、もう一度見たい聞きたいと口々に言い出した。


「ありがとうございます、ありがとうございます。では……、もう少し、歌って踊らせてもらいます!」


 私はピースサインを天に突き刺し、やる気をみなぎらせる。

 長い髪をひもで結んでポニーテールにした後、羽織っていたローブを脱ぎ、腰に巻く。これだけでもあっという間に踊り子風のファッションに大変身。

 私の小さな体だと村娘感が強いかもしれないが、歌と踊りで大人っぽさを醸し出せばいい。

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― 新着の感想 ―
以前は涙の出るパンですらバターは使われていなかったはず。 それなのに銅貨で買えるパンですら牛乳もバターもネード小麦も使われてたら破産してしまうのでは…
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