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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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待ち合わせ

「キララが作ってくれた歯ブラシ、すごく気持ちいい……。ずっとシャカシャカしていたくなる……」


 ミーナは私が作ってあげた歯ブラシを手に持ち、歯を優しく磨いていた。

 まあ、私が作ったと言うよりか、ベスパ達に作ってもらったと言った方が正しい。プラスチックなんて言う化学素材はないので、全て木製だ。

 木を物凄く細く伸ばしブラシ状にして先端部分に取り付けられている。

 この世界にここまで毛密なブラシはないだろう。そう思えるほど柔らかく弾力があり、歯垢を削ぎ落してくれる。そのため、私も愛用している品だ。まあ、面倒な時は魔法で全て行うが、歯肉炎予防や歯茎の弾力を保つためには常日頃から刺激してあげた方がいい。


「ミーナは歯を多用すると思うからしっかりと手入れしてあげた方がいいよ。こういう糸で歯の間の汚れまでしっかりと落とすと口臭も防げるし歯の劣化も遅らせることができる」


 私はネアちゃんの糸を伸ばし、ミーナに見せた。まあ、ピアノ線を歯茎の間に入れたら切れて危ないので、何本も重ねてちょっと太くした歯間ブラシを見せる。


「こ、こんな品どこに売ってるの……。この歯ブラシもそうだけど、キララは何でも生み出せる錬金術師なの?」


 ミーナは私の品々を見て毎回驚く。杖や武器、服なんかも自分で作ったと言うと、ひっくり返りそうなくらいいいリアクションをしてくれる。そのため、とても面白い。


「私は錬金術師じゃないよ。こういう品が作れる便利なスキルなの」


「ええ……。キララのスキル……、訳が分からないよ」


「ミーナのスキルだって超巨大なワイルドボワを倒せるだけの威力が出るなんて訳が分からない。その腕のどこにあんな力があるのー」


 私はミーナの女の子らしい細腕を揉む。


「えへへー、私もどこにあんな力があるのかわからないよ」


 ミーナは腕に力を入れた。すると、柔らかかった肉がガチっと鋼のように硬くなり、指が沈みこまない。この拳で殴られたら吹っ飛んじゃうな。


「キララ、その細い糸を頂戴。村のお爺ちゃんとかお婆ちゃんにもあげたい。お爺ちゃんお婆ちゃん、息が臭いんだよね」


 ミーナは苦笑いを浮かべながら言う。


 ――まあ、老犬の口は臭うし、歯茎が弱ってくるから丁度良いか。


「いいよ。たくさん作れるから、持っていきな」


 私はネアちゃんの糸を丸い木に巻き付け、ミーナに渡した。


「ありがとう。獣族にとって歯は凄く大事だからさ、すごく助かる」


「肉とか、骨とか砕かないといけないもんね。あと、攻撃に使ったりもするんでしょ」


「うん、骨を食べると骨が強くなるし、肉を食べると筋肉が付く。急所に噛みつけば致命傷に出来るし、私達に無くてはならない武器なんだよ。もう、剣士の剣と同じくらい大切なの」


 ミーナは笑顔になりながら歯をみせてきた。綺麗な歯並びで、犬歯が人よりも鋭いため、恐ろしい。ミーナの顎の力は骨を用意に砕く。首に噛みつかれたら人間は終わりだ。首の骨を折られて即死。そこまで近づく必要はあるものの、人に対して中々強い。


 ミーナは歯間ブラシを使って歯を綺麗に磨いた。凝り出すと止まらないのか、綺麗になっている歯を見て物凄く喜んでいる。


「はぁー、すっきりした。歯の間に挟まっていた肉の繊維が物凄くうっとおしかったんだよ。すっごく良い商品だね!」


 ミーナは満面の笑みを浮かべ、私の手を握ってブンブンと振る。


「そんなに喜んでもらえてよかった。マドロフ商会に置いてもらえるように話しを通してみる。もし、需要があればマドロフ商会のお店で買ってね」


「おおおおっ! すごい! 獣族が一番好きな商会に売ってくれるの!」


 ミーナはマドロフ商会を知っていた。一年ほど前から他国に目を向けて商品を販売していたのが良い宣伝になっていたようだ。


「マドロフ商会は獣族の中で一番人気なの?」


「そうだよ。だって、とにかく安いし、初心者でも入りやすいのが良い。ビースト語の翻訳か書いているなんてマドロフ商会くらいだもん。私はルークス語が話せて読めるから問題ないけど、普通の獣族は出稼ぎに来ているだけだから話せないし読めない。そんな中、誰にも迷惑を掛けず買い物ができるんだから人気になるよ!」


 ミーナはマドロフ商会について熱く掛かっていた。ルークス王国内で冷ややかな目を浴びていたマドロフ商会だが、他国の者にここまで愛されている商会だったとは。まだまだ息が長そうだ。


「石鹸は最高! もう、超最高! あれを作った人は天才だよ!」


 ミーナのマドロフ商会愛は止まらず、石鹸の話しを始めた。


「獣族は石鹸が好きなの?」


「えっと、獣族は魔法がほぼ使えないから病気にかかりやすいんだよ。石鹸で手を洗ったらお腹を下すことが無くなったし、体を洗ったらさっぱりして汗臭くなくなるの。もう、一度買ったら手放せないよっ!」


 ミーナの持ち物は数少ないが、石鹸は持参していた。


「へぇー、ビースト共和国で売ったらバク売れする?」


「するする! 絶対にする!」


 ミーナは勢いよく頭を縦に振った。


「なるほど、じゃあ、ビースト共和国に支店を出させるのもありだな……」


「えっ! マドロフ商会の支店がビースト共和国に来るの! いつ! どこに! どれくらいの大きさで!」


 ミーナの食いつきは肉の時と同じくらいだった。そこまでマドロフ商会が好きなんだな……。ルドラさんが訊いたら泣きそうだ。


「落ち着いて。まだ目途はたっていないけど、昔、そう言う話をしていた時があるんだよ。だから、不可能じゃない。ビースト共和国に許可を取ってマドロフ商会のお店が出せるようになるまで一年以上はかかるから、焦ってもすぐに来ないよ」


「でも、来たら絶対に使う! 石鹸も買えるし、食べ物も美味しいし! 服も良い品しかない! あんな安くていい品が買えるお店はビースト共和国にないもん!」


 ミーナは飛び跳ねながら喜んでいた。よくよく見れば、ミーナが着ている服や靴はどれもマドロフ商会の品だった。質が良くて安いなんて最高の品だ。私もそう言う商品を売りたいと思っている。


 ――さすがルドラさんとマルチスさん。顔が広いからいろんな場所から良い品を安く買って売り出せるんだな。ビースト共和国にこれだけ愛されているなら、正教会に潰されても問題なさそうだ。ビースト共和国に逃げて出店すればすぐに儲けられる。


 私は逃げ道の確保を頭の中で考え、出来うる対策を事前に予測する。


「キララ、マドロフ商会で歯ブラシと歯間ブラシを売ってほしい。そう、お願いしておいて!」


「わかった。獣族の声として伝えておくよ。何か気になったことがあったら何でも言って」


「うん!」


 ミーナはその後もマドロフ商会について話してくれた。他の国の通貨も使えるようにしてほしいとか、大量に買えるようにしてほしいとか、融通が利く商会になればビースト共和国の者がもっと利用してくれると言う。

 私は良い話を聞き、しっかりとメモしておいた。考える者より、実際に使っているものの方が問題点を考えやすい。なので、ミーナの指摘はとても参考になったのだ。


「ありがとう、ミーナ。凄く助かった。これでマドロフ商会はもっと大きな商会になれるかもしれない。たとえ大きくなってもお客さん第一優先な販売は変えないから安心して使って」


「キララとマドロフ商会にどんなつながりがあるのかわからないけど、キララなら安心して任せられるよ。これが大人の余裕ってやつなの?」


「さ、さぁ……。どうなんだろうね。多分、経験の差かな。私の方がミーナよりも仕事している時間が長いから、頼りに見えるんだよ思う。ミーナも仕事をしたり、誰かのやくに立っていれば自然と大人っぽくなっていくから安心して」


「ほんと! なら、私もたくさん仕事をしてたくさん誰かの役に立つ! それでそれで、超大人っぽくなってハンスさんを篭絡するの!」


 ミーナは満面の笑みを浮かべながら飛び跳ね、子供っぽくない発言をした。動きや見た目は子供そのものなんだけどな……。


 私達は荷物を整え、借宿を出た。村に置かれている荷台とレクーを縄でつなぎ、お世話になった村をあとにする。魔物の素材は『転移魔法陣』に入れても問題ないので、大きなワイルドボワの毛皮や牙、骨、魔石類を全て突っ込んでおいた。やはりライトが作った魔法は便利だな。


 私達は村を出て、昨日走っていた道に戻って来た。そのまま、南下していく。


 ☆☆☆☆


 王都を出て八日目、私達はレクーとベスパの移動でいつもより三倍も早く移動し、栄えている街にやって来た。まあ、ここは以前まで廃れていた街なのだが、多くの者が来るようになって繁盛し、見違えるくらい栄えていた。王都と比べたらまだまだだが、政令指定都市くらいの活気がある。


「キララ、私はここからもっと南に行くよ。ここまで送ってくれてありがとう」


 ミーナとこの街で分かれることになった。南門まで送り、彼女は地面に飛び降りる。


「ううん。気にしないで。えっと、よかったらまたこの街で待ち合わせして一緒に王都に行こう。その方がミーナも楽でしょ」


「ほんと! うん! キララと行く! 約束だよ!」


 ミーナは琥珀色の瞳を輝かせ、尻尾を盛大に振った。とても可愛らしい。

 今日は三月一六日。王都から街までレクーとベスパを連続で使っていけば八日で移動できた。全力を出せばもっと早いが、安全を考慮するとこれが限界だ。


「この街から王都まで八日かかる。えっと、ドラグニティ魔法学園の入学式が四月八日でしょ。私は一日前に王都についてないといけないから、三月三〇日に街に集合しよう。それまでにミーナは両親と話をして、お金をどうするか決めて。最悪、私が貸してあげるから、遠慮せずに言ってね」


「キララ……。本当にありがとう! 獣族にここまで親切にしてくれる人間はハンスさんくらいしかいなかった。同級生にキララがいて本当にうれしい!」


 ミーナは私に飛びついてきて、尻尾を振る。


「はは……、私もミーナがいてくれて凄く安心してる。学園で一人にならずに済むし、楽しく過ごせる予感しかない」


「私も! じゃあ、三月三〇日にこの街の冒険者ギルドで会おう!」


 ミーナは私に手を振り、南門から全速力で走って行った。もう、見えない。スキルを使って八倍の速度で走っているようだ。お腹が空いて倒れないといいけど……。


「スキルの使い過ぎに気を付けてねっ!」


 私は届くかわからないが、大きな声を出し、ミーナに伝えた。

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