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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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獣族の身体能力

「ベスパ、荷台を浮かばせているビー達が過労死しない程度に私の魔力を与えて」


「ご安心ください。すでに選りすぐりのビー達を集めておりますので問題ありません」


「そう、まあエネルギー補給は随時行うように」


 私はベスパと軽く通信しながら、命令した。


「キララ……、な、なんか体がふわふわするんだけど……。あと、振動が全然ないよ」


 ミーナはソワソワしながら私に話しかけてくる。


「はは、気にしない気にしない。快適だからいいでしょ」


「まあ、そうだけど……。今、どこにいるの?」


「空」


 私は軽く言った。隠す必要もない。


「空?」


 ミーナは目を丸くした。獣族が空を飛ぶことは滅多にないので疑問を感じたのかな。


「うん、空を飛んでるの。安心して。落ちないようになってるから」


「今、空を飛んでいるの……。ええ、見たい、見たい!」


 ミーナは外を見たがった。でも、落ちたらさすがの獣族でも、死ぬ高さだ。


「今は危ないからダメ。空が見たいなら、後で見せてあげるから、それまで待ってて」


「はーいっ!」


 ミーナは潔く待った。この点は潔い。

 事前に用意してあったビーの子を二人で食べ、水を飲んで体を潤わせる。


「はぁ……。キララがいてよかったぁ。空腹状態だったら走って帰れなかったよ」


「王都まで走っていくなんて……。本当に身体能力お化けだね」


「あははー。それほどでもないよ。私なんてまだまだ。ビースト共和国に行けばもっともっとすごい者達が一杯いるよ!」


 ミーナは両手を上げ、拳を振るう。髪が靡くほどの突風が吹いた。私の気のせいであってほしい。


「たとえば?」


「巨大な岩を拳で粉砕したり、川の上を走ったり、一度の跳躍で木を飛び越えたり」


「ほぇー。人間技じゃない。さすが身体能力で生き延びてる種族……。魔法が無かったら人間なんて余裕で倒せそうだね」


「そりゃあ、そうだよ。でも、魔法は身体能力を陵駕するらしいし、ちょっと悔しい」


 ミーナは両手を握り合わせて、ぐぬぬーっと震えていた。


「でも、ミーナのスキルは『身体能力が八倍』になるんでしょ。もう、普通の魔法使いじゃ歯が立たないよ」


 獣族の身体能力が八倍になったらどうなるんだろうか?

 通常の人間の身体能力が八倍になってもやばい。ちょっと考えると握力が五〇キログラムの人がいるとしたら、単純計算、四〇〇キログラムになる。ゴリラかな?

 時速二〇キロメートルで走ったら、時速一六〇キロメートルで走れることになる。ハヤブサかな?


 人間でもぶっ飛んでるのに、獣族のミーナが『身体能力が八倍』になる力を持っている。そりゃ、危なすぎる。だから、ドラグニティ学園長はミーナをドラグニティ魔法学園に入れたと思われる。

 あの学園はスキルを使いこなすための場所でもあるのだ。つまるところ、ドラグニティ魔法学園はミーナにこの力を完全に使えるようにさせる気だ。どんな化け物が生まれるのだろうか。


「ミーナ、力は正義のために使わないと駄目だよ」


「もちろん! 私は正しいことに力を使うよ! 悪人を倒したり、悪い魔物をぶっ飛ばすの!」


 ミーナは拳を振り、笑っていた。


 ――お腹が減ると言う弱点が無かったら強すぎたな。その点をどうやって補うのだろうか。


 私はミーナと話しながら考えるも、ぱっと思い浮かばない。

 私とミーナが話している間に、一時間などあっと言う間に過ぎた。やはり、話し相手がいるのはとても楽しい。


「レクー、体調はどう?」


「はい、もう回復しました。いつでも走れます」


 レクーの体力が回復し、地上を移動できるようになった。ビーに頼めばずっと空を移動し続けられるかもしれないが、レクーがすねるのでやめておこう。


「ベスパ。区切りが良い所でおろして」


「了解しました」


 ベスパが答えると、高度が少しずつ下がり、車輪が地面に振れる。


「おっと……」


 一度跳ねた後、もう一度ゆっくりと着地した。


「ただいまから、荷台の点検を行います。そのままお待ちください」


 ベスパは整備士のような仕事に移った。荷台が走っている間に壊れたら危ないので点検は必須だ。ルドラさんも移動してから一時間から二時間後に荷台を点検した方がいいと言っていた。


「キララ様、問題有りませんでした。すぐに移動を開始できます」


「ありがとう。じゃあ、ビー達に魔力を与えて。あと、翅を休めるように伝えて」


「了解です」


 ベスパは体を光らせ、私達を運んでくれた、ビー達に魔力を送る。

 私は帆を開け、荷台の前座席に座り、レクーの手綱を握る。


「ここはどこだろうか……」


「さっきの位置からざっと八〇キロメートル移動した場所です」


「もう、八〇キロメートルも移動したの……」


 ――自動運転の車で高速道路を走った気分。


 まだまだ日は落ちていないので、レクーとビーの移動方法で着実に距離を稼いだ。

 それでも一日でたどり着けるほど、私の住んでいた村は近くない。安全に移動してあと七日、全力で三日と言ったところか。あまり急ぐ理由もないので安全に移動しよう。


「ふわぁー。眠くなってきた……。ずっと荷台に乗っているのも大変だね……」


 ミーナは外が暗くなり始めたら眠気を催していた。体内時計が完全に獣だ。昼間移動している動物は夜になれば寝る。肉食獣っぽいし、こんな時間から眠れるのも納得できる。


「ミーナの生活習慣ってどんな感じなの?」


「私の生活習慣……。えぇー、考えたこともなかったな……。えっと、日が出たら起きて沈んだら寝てるだけだよ」


「物凄く健康的だね。食べ物は?」


「木の実とか……、魚かな。肉が取れたら運がいい。最悪雑草」


「へぇー。凄く健康的……。だから、身体つきが綺麗なのかな?」


 ミーナの体は獣のようにしっかりとした筋肉が付き、脂肪がほとんどない。お腹を触れば腹筋があるのもわかる。ただ胸がぺったんこなのでその部分はやはり遺伝と考えるべきか。いや、まだ成長中ってこともあり得るな。


「ビースト共和国に太った者はほとんどいないよ。いるとしても運動しなかった草食族くらいかな。まあ、大量に食べすぎているのが問題だと思うけどね……」


 ミーナは私と喋っている間に入眠した。あまりにも寝つきが良すぎる。ほぼ気絶同然だ。一気に入眠し、身体と脳の疲労を除去。朝から活発に動く。獣族の生活習慣は人間も見習ったほうがいいな。

 私達は頑張りすぎちゃってるんだよ。うん、そうに違いない。


 私は前世で睡眠に気を使っていたが、仕事が忙しすぎて夜遅くまで起きていた。寝れない日もあった。

 あれは夜まで働いていくのが当たり前とか言う社会の風潮が悪い。

 私達はお金稼ぎの道具じゃなくて一人の人間なんだから、夜は起きていられない。同じ業界にいた子に、辛い生活をし過ぎて鬱になった子もいた。辛すぎて芸能界を止める子も後を絶たない。


 私もずっと辞めたいと思っていたが、ずるずると続けていたな……。まあ、後悔はしていない。やりたいこととやりたくないことをしっかりと把握するのが大事だ。


「って、死んだ私が言うのもなんだけど……」


 私は商人御用達の宿に移動し、一部屋借りる。

 ベスパにミーナを運んでもらい、同室で眠った。ベッドが二台ついているのでとてもありがたい。


 ――ミーナは一人だったら野宿してたのかな。こんな寒い夜で寝たら凍死しちゃいそうだ。


 私は『ヒート』の魔法陣を部屋に張り付け、空気を暖める。薪代がもったいないので魔法で代用だ。私の体は半永久的に使える電池みたいな存在なので、魔力で動く魔法陣と相性がすこぶるいい。


「ハンスさん……、チュッチュ……」


 ミーナは寝ぼけながら唇を尖らせていた。とても可愛らしく、私がハンスさんなら容易にチュッチュしてあげたくなってしまう。


「はぁ、フルーファもこれくらい可愛げがあればなー」


「悪かったな。可愛げがなくて……」


 フルーファは不貞腐れ、そっぽを向いた。


「うそだよ。ほら、チュッチュしてあげるから」


 私はフルーファを抱きあげ、頬に軽くキスしてあげた。過去を見てもこれだけ好待遇の相手はいない。


「フルーファは世界で一番幸せなウォーウルフなんだよ」


「訳が分からん……。なんでそうなるんだよ」


「だって、世界で一番可愛らしいご主人様がいるウォーウルフなんてフルーファしかいないでしょ」


「自画自賛しすぎだろ……。まあ、確かに可愛いが……、性格がな……」


「なにか?」


「い、いえ……。最高の性格です……」


 フルーファは毛を逆立てるほど恐怖し、私の顔を舐めてくる。


 私はブラシを取り、フルーファの体を綺麗にしてあげた。それだけで尻尾を振るのだから、甘い奴だ。その後、食事を与え、勉強する。まあ、日課なのでやらないと気持ちが悪くなってしまうのだ。

 一時間ほど勉強を終え、寝る準備をさっとすまし、ベッドに寝転がる。

 フルーファがベッドに飛び込んできた。

 私はフルーファを抱き枕にしてすやすやと眠りにつく。魔物を抱いて眠る少女なんて滅多にいないだろう。まあ、トップアイドルと寝られる犬なんてどんな善行を積んだんだろうか。

 超セレブのペットたちは普通の人間よりも各段に良い生活をしている。高級ドックフードにデカい家。何もかも普通の人より好待遇だ。そんな家の犬が他の犬と違うかと言われたらわからない。まあ、いえるのは超運がいい犬と言うことかな。


 フルーファも、運がいい魔物だったわけだ。


「うう……。こき使われる……。魔力過多で息苦しい……」


 フルーファは眠りながらうなされていた。せっかく私が抱き着いて眠ってあげていると言うのに。


 私達は宿泊施設で一泊した。朝、目が覚めると日が昇っており、ミーナはすでに起きていた。


「あ、キララ。おはよう! なんか、今日はやけに体の調子が良いんだけど、なんでなんだろう! 食べ物を食べたからかな! 一杯寝たからかな!」


 ミーナは両手を回し、足踏みしている。もう、出発する前の機関車か何かかなと思うくらい元気だ。昨日は大怪我をしたと言うのに、一日で治るのは流石に早すぎる。


 ――十中八九、私の魔力の影響だろうな。


 私は魔力過多で疲れているフルーファを放し、起き上がって日の光を浴びた。


「ふー。あ、ミーナ、朝食のパンが貰えるから受付まで行こう」


「やったー! パン大好き!」


 ミーナは飛び跳ね、部屋の中でバク転をしながら、出口に移動。扉を開けて部屋を出て行った。と思ったら、すぐに戻ってくる。


「受付がどこかわからない……」

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― 新着の感想 ―
正義に盲目になるのも危険な気がする。 悪も正義となり得るってことを考えないと。 ミーナのスキルは1〜8倍で自由に倍率変えられるようになりそうじゃない?
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