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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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自信を持ったもの勝ち

「はぁ。ミーナ、荷台で待っていて。私は学園長と話してくる」


「え、ええ、キララ。ドラグニティ学園長と話せるの! なんで、なんで!」


 ミーナは肉なら何でも食いつくような好奇心旺盛な獣族で私の話に何でも食いついてきた。


「まあ、ちょっと色々あるんだよ。ともかく、ここで大人しく待っていてね」


「うう……、気になるなー。私も行きたかった……」


 ミーナはふさぎ込み、耳と尻尾をヘたらせる。


「ミーナ、受験に受かったみたいだけど、これからどうするか考えているの?」


「え? あーっと、村に戻って学園に受かったと知らせて入学届と入学金を払わないといけない」


 ミーナは指先を頭に当て、うーんと考えながら言う。


「正解。えっと、ミーナは入学金が払えるだけのたくわえがあるの?」


 ミーナはあほずらを私に見せながら首をかしげる。


「お金はあるの?」


 ミーナは短パンの中に手を突っ込み、ルークス王国の銅貨八枚を出した。


「これだけしかない……」


 ミーナは泣きそうになりながら呟く。


 私は苦笑いしか出来なかった。王都で銅貨八枚はないも同然だ。


「と、とりあえず、ミーナはここで待っていて。いい、どこかにフラフラッと歩いて行ったら駄目だよ。そうしないとまた轢かれるかもしれないからね」


「わ、わかった。ここで待ってる」


 ミーナは正座をしながらきちんと止まる。待てできる子のようだ。


「よし。じゃあ、また後でね」


 私はミーナを荷台に置き、そのままドラグニティ魔法学園の園舎に入った。学園長室に向かい、小走りになる。


「ミーナ、お金持ってなかったよ」


「彼女が住んでいる村にあるんじゃないですか?」


 ベスパはブーンと飛びながら私についてきた。


「そんな余裕がある表情じゃなかった。普通にお金がないか、お金を使っちゃったかのどっちかだよ」


「お腹が空いていたと言っていましたし、食費に消えてしまったのかもしれませんね」


「あり得るね……。はぁ、仕方ない。出世払いでもしてもらおうか。せっかく倍率八〇〇倍超の学園に受かったのに入学金が払えなくて入学できないのは可哀そうだ」


「生憎、キララ様は沢山稼いでますもんね。一人の入学金を払うくらい痛手にならなさそうです」


 ベスパは厭味ったらしく呟く。


「確かに稼いでいるけど、友達関係でお金の貸し借りはしない方が良いんだよ。仲が悪くなるからね。でも、私は単純にミーナに学園に入ってもらいたいからお金を出そうと思う」


「キララ様が稼いだお金なのですから、キララ様が好きに使って良いと思われます。私達にとってお金は無価値ですからね。キララ様の命と魔力、子孫繁栄だけにしか興味がありません」


 ベスパの思考はちゃんと昆虫だった。


「はは……。まあ、そうだね」


 私は学園長室に来る間に悶々とした気持ちを晴らした。その後、ベスパに案内され高級な木材が使われた扉の前に来る。扉を三回叩き、名前を言った。


「すみません。キララ・マンダリニアです」


「開いている」


 扉の奥から渋い声がひびいた。

 私は扉の取っ手を握り、引く。


 部屋の中にいたのは用務員のおじさん……ではなく漆黒のローブを身にまとったドラグニティ学園長だった。


「やあ、キララ君。学園に飾られた垂れ幕は気に入ってくれたかな?」


 ドラグニティ学園長は子供っぽい無邪気な笑顔を浮かべ、私に訊いてきた。


「気に入るも何も驚きました……。まさか、特待生とは……。特待生にしてもあの垂れ幕の大きさは流石にやりすぎですよ」


「だが、学園が創設されてから初の特待生だ。あれくらいやらなければもったいないだろう」


「だからって……。はぁ、まあ、もう垂れ幕が飾られている現状で言っても仕方がないですね。でも、なんで私が特待生なんですか?」


「何で? 説明する必要があるのかね?」


 ドラグニティ学園長は私が筆記試験で解いていた問題を出した。


「キララ君が受けた筆記試験は数学とルークス語、外国語、魔法学、魔術学、錬金術学、薬草学、魔物学だ。点数は多くの者が平均六〇点のところ、君は九〇点以上。加えて解かせる気がない問題を本気で解こうとしていた。なんなら、半分はあっているんじゃないかとすら思える答えばかりだ」


 ドラグニティ学園長は回答用紙を開き、大問八の問題を杖先で示す。


「キララ君、念のために訊くが、この答えがわかっているわけではないな?」


「な、なにを言っているんですか……。わ、わかるわけないじゃないですか……」


 私は首を横に振り、未解決問題の回答を知っていると言う事実を隠す。


「そうか……。だが、君なら学園に通っている三年の内に解けてしまうかもしれないな」


 ドラグニティ学園長は回答用紙を閉じ、茶封筒に入れる。


「は、はは……。そうかもしれませんね」


 ――すでに回答がわかっているとは言えない。そもそも、私が解いたわけじゃなくてライトが解いた問題を私が丸暗記しているだけの姑息な奴なんです。今思うとものすごーく、悪いことをしている気分なんだけど……。


「筆記試験の結果は特待生に申し分ない。次に実技だ。三種類の魔物を倒してもらったわけだが……。キララ君は全ての魔物を倒さずに捕獲した。捕獲することは倒すことよりも難しい。多くの冒険者や騎士が敵を倒すために努力しているのにもかかわらず、キララ君は完璧に捕獲していた。その点を評価しないわけにはいかない!」


 ドラグニティ学園長は興奮しながら話している。あまり興奮しすぎると脳の血管が切れそうなのでやめてもらいたい。


「えっと……。それはただ、私が魔物を倒すより捕獲する方が楽だったからで……」


「言っちゃなんだが魔物を倒すことは剣術や魔法を学び、攻撃すれば誰でも出来る。だが、拘束することはそれ相応の技術と経験がいる。Sランク冒険者ですら魔物を捕獲するのは至難の業だ。まあ、わしぐらいになると杖を振ればチョチョイのチョイだがな」


 ドラグニティ学園長は私の体に魔力を纏わせてきた。

 私はセクハラされている感覚に陥り、反射的に鎖剣を持ち、抜剣。魔力が纏わりつく前に相殺した。


「ふっ、やはりわしの目に狂いはないようだ。キララ君、魔力が相当はっきりと見えているな」


「よくおわかりで……」


「魔力がはっきりと見えるようになるためにはそれ相応の訓練がいる。眼に魔力を溜めるなんて並大抵な魔力操作じゃない。それをキララ君はすでに習得している。特待生に申し分ないほどの技量を持っていると判断した」


「はぁ……。ため息ばっかりですよ。平民の田舎育ちが王族や大貴族を差し置いて特待生なんて……。どんな仕打ちが待っているか……」


「キララ君の実力でねじ伏せればいいだけだ。ドラグニティ魔法学園はそう言う場所だ」


「はは、脳筋ですね」


 私は鎖剣を鞘に納めながらドラグニティ学園長を皮肉る。


「脳筋で何が悪い? 強ければ話が曲がり通る。とてもわかりやすい学園だろう」


「まあ、わかりやすいですけど……。わかりやすすぎて、悪い話も曲がり通るんじゃないですか?」


「そうだな。曲り通ることもたくさんある。だが、上には上がいる。それが世界の面白いところだ。どの学生もわしに勝つことが出来ん。まあー。今の『勇者』や『剣聖』が相手でもわしは負けない自信がある」


 ドラグニティ学園長はひげを撫でながら貫禄たっぷりに言い放った。


「す、すごいですね……。そんな自信はいったいどこから……」


「自信なんて言ったもの勝ちだ。わしは勝つ自信があると言っただけで実際に勝てるかどうかは戦ってみないとわからない。実際、キララ君にも負けそうになったからな」


 ドラグニティ学園長は私の胸元に付いているディアを指さした。


「はは……。そうですね。私はドラグニティ学園長に勝てる弱点を知っているので物凄く有利です。今の私にどうやって勝ちますか?」


「むむむ……。ブラットディアを仕向けられるだけで、わしはすってんコロリンだからな」


 ドラグニティ学園長はゴキブリを見ただけで泣きわめく女子くらい頼りない表情を浮かべた。この方が『勇者』や『剣聖』に勝てるのかはわからない。でも、勝てないわけじゃないと言うのはわかる。


「えっと、じゃあ悪魔に勝てますか?」


「戦ってみないと、わからんなぁ。だが、勝てる自信はある」


 ドラグニティ学園長は自信にあふれていた。すでに八〇歳を超えている老体なのに、まだまだ血気盛んな性格で、手を焼きそうだ。ドラグニティ学園長を支える者達は大変だなと頭が上がらない。


「では、私を学園で守ってもらえますか?」


「ふっ、愚問だな。可愛いおなごを守るのが男の使命。ドラグニティ魔法学園がキララ君をしっかりと守ろう。安心して入学してこればいい」


 ドラグニティ学園長は包容力がある大人で物凄く頼りになった。


 ――これが大人の余裕。中身は物凄く変態なお爺さんなのが惜しい。


「こうなると、通う学園は迷う必要が無さそうですね……。来月から三年間、よろしくお願いします」


 私はドラグニティ魔法学園の安全性を考慮し、ドラグニティ学園長に守ってもらうと言う作戦が一番安全だと考え、頭を下げた。


「うむ。合格通知と入学するための書類はすでにキララ君の実家に送ってある。入学届は学園にそのまま出してもいいし、騎士団や冒険者ギルドに出してもらっても構わん。ただ、今月中に出してもらわなければならないから気を付けるように」


「わかりました。では、実家に戻ってすぐに書いてきます。えっと、入学金は……」


「キララ君は特待生だからな。入学金を払う必要はない。加えて三年分の学費も免除しよう」


「そ、そこまで……。ものすごい額が浮くじゃないですか」


「キララ君はそれほどの価値があると言うことだ。気にする必要はない。一つ聞くが、特待生と言うことを学園の者に知らせるか否か。どうする?」


「ぜ、絶対にやめてください。私は特待生じゃなくて普通に合格した生徒と言うふうにしてください。じゃないと、私は入学しません」


「わ、わかった。特待生だと言うことは伏せよう。では、四月八日の入学式を楽しみにしている。正教会の動きは今のところ穏やかだ。王の動きで大分動きにくそうだからな、今の時期は安心して動いてもいい。何かあれば、すぐに逃げ込める場所を探しておくように。ああ、言い忘れていたが、制服や必要な冊子類の購入も免除される。ただ、学園に来てもらわなければならないから四月七日までに学園まで来てくれ」


「わかりました。では、四月七日までに学園に来ます」


 私はドラグニティ学園長に頭を下げ、学園長室を出た。


「なんか、今まで貯めていたお金を使わなくてもよくなっちゃった……。まあ、他の子達に回せるから問題ないか」


 私はお金が浮いて、足取りが軽い。ルンルン気分でレクーとミーナが待つ厩舎に向かった。私って現金な子供だな。

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― 新着の感想 ―
特待生を全力で狙って努力して来てライトでもまだ成し得てない快挙かもしれないってワクワクしてたのに、いざ特待生となったらまるで予想してなかったみたいな反応するのは違和感
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