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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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諜報活動

「ベスパ、私の腰に付いている特効薬をフリジア学園長に飲ませて。魔造ウトサと同じなら効果があるはず」


「了解です」


 ベスパは試験管ホルダーから特効薬入りの試験管を取り出し、フリジア学園長の口の中に特効薬を入れた。


「ん、ん、んっ……。ぷはぁー。キララちゃんが入ったお風呂の味がする……、って、キララちゃん。え、何この状況。う、動けないよー」


 フリジア学園長は私に固められ、全く動けていない。でも、いつもの口調に戻った。


「フリジア学園長。私とキスしたいですか?」


「……い、いきなり何を言い出すのさ。ま、まぁ、キララちゃんがしたいと言うのなら、私は構わないけど。で、でもでも、女の子同士でそういうことをするのはまだ早いと言いうか、ちょっと考えないと駄目だよ」


 フリジア学園長は先ほどなら、確実に乗って来た質問を躱した。どうやら、今回の魔造ウトサもライトが作った特効薬でなんとかなるようだ。それだけでもわかってほっとした。


「はぁ……。とりあえず、離れますね」


 私はフリジア学園長から離れた。


「えっと、キララちゃん。私はいったい何をしていたんだい。なんか、恰好からして物凄く恥ずかしいのだけど」


 フリジア学園長はフリフリの可愛らしい衣装を見て、頬を赤らめている。


「フリジア学園長は私にキスをしようとしてきました」


「え……。わ、私がキララちゃんにキス……。確かにしたいが、思いとどまっていたのに。どれくらいの強さで……」


「そうですね、もう、したくてしたくてたまらないと言った感じです。覚えてませんか?」


「お、覚えていない。記憶の中にぽっかりと穴が開いているようだ……。いったい、何が起こっていたんだ。私は何か魅惑の魔法でも掛けられていたのか?」


「まだわかりません。ですが、フリジア学園長は私に発情していたのは確かです。同性に加え他種族。そんな相手に発情するのは普通あり得ませんよね」


「わ、私はキララちゃんとなら、濃厚なひと時を過ごしても……。へぶっ!」


 私はフリジア学園長の頭にチョップを決める。変な妄想は止めてもらいたい。


「フリジア学園長、普通はあり得ませんよね?」


「ううぅ、キララちゃん、酷い……。まあ、普通はあり得ないな。私のスキルは動物や魔物の声も聞ける。だから、そういうたぐいの話はよくわかる」


 フリジア学園長は頭を押さえ、涙目になりながら私の話を聞いていた。


「なるほど、となるとやはり何かしら外部の要因が拘わっている可能性が大いにあります」


「外部からの要因……」


「フリジア学園長は何を食べましたか?」


「えっと……、午前八時頃に軽い朝食。午前一〇時頃に一度目のお菓子と紅茶。正午に昼食を得て、午後三時におやつを食べた。どうだ、健康的だろう!」


 フリジア学園長は腰に手を当て、私との約束をしっかりと守っていた。


「じゃあ、だれかと接触したり、魔法を掛けられた可能性は?」


「学園の者と会ったくらいだ。誰も詠唱は言わなかったし、無詠唱を使える者もいない。たとえ使えたとしても私の耳は誤魔化せないよ。だから、魔法も使われていない。もちろん、罠にかかりもしなかった」


「そうなると、ますます食べ物が怪しくなってきました。フリジア学園長が食べたお菓子と料理はわかりますか?」


「うう……、なんだい? 私の頭がボケているのか試験を受けている気分だ。えーっと、えーっと。菓子はクッキーとケーキだった。料理はパンと肉類、野菜類だな。いたって普通だ」


「昼食は学食ですか?」


「ああ、生徒達と食べた。普通に美味しかったぞ。あの中に何かが入っているとでもいうのかい?」


「去年、フリジア魔術学園の購買で少々やっかいなウトサを使ったお菓子が売り出されていたんです。フリジア学園長も許可を出したはずのお菓子なんですけど……」


「え……、そ、そんなお菓子があったのか? 全く気付かなかった」


 フリジア学園長は気づいていなかった。あの時、止めていなかったらフリジア魔術学園は崩壊していたのは間違いない。


「以前、私は菓子職人に安いウトサを買わせないようにしました。ここ、マドロフ商会の方達にも言ってあります……」


「キララちゃんの話しが読めないんだが……、一体、何の話をしているんだい?」


「えっと、心を読まれたらすぐにわかると思いますし、フリジア学園長は信頼できる方なので、お話します。ちょっと、応接室に来てください」


 私はフリジア学園長の手を取り、応接室に移動した。彼女をソファーに座らせる。


「キララちゃんに部屋に連れ込まれちゃった……」


「張り倒しますよ」


「じょ、冗談だよ、冗談。で、話しって何?」


「ベスパ、ブラットディアで結界を作って」


「了解です」


 ベスパは光り、部屋の中をブラットディアで埋め尽くした。


「う、えぇ……。な、何この空間。気持ちわるぅ……」


 フリジア学園長は鳥肌を立たせ、身を縮めていた。まあ、至る所がブラットディアで敷き詰められているので無理もないか。


「フリジア学園長、今から話す内容は他言無用でお願いします」


「あ、ああ。わかった」


 私は正教会やドリミア教会、魔造ウトサについてフリジア学園長に話た。


「な……。ドリミア教会はルークス王国の者を金の亡者に変えようとしていた……。その教会が王都で強い権力を持つ正教会の配下……」


 フリジア学園長は目を見開いて驚いていた。


「はい。マドロフ商会は正教会の機嫌を損ね、大きな痛手を負いました。加えてフリジア学園長。あなたも、正教会と関わりがあるようですね」


「あ、ああ……。あるな。なんせ、私はルークス王国の女性の立場を押し上げようとしている張本人だ。正教会なんて男性主義社会の根源のような奴らだ。女性の権利は認めないと反発してくる厄介な老害どもしかいない……。そいつらと戦って来てようやくここまで来たんだ」


 フリジア学園長は握り拳を作り、どこか辛そうな表情を浮かべていた。


「フリジア学園長は正教会からの嫌がらせを受けているようですね。そのトバッチリがフリジア魔術学園の内部の者にも広がっている。由々しき事態です」


「ああ……、生徒の安全の確保が全く出来ていない。私の落ち度だ。そう考えれば、去年に体調不良を訴えていた学生たちが大勢いた。何が原因かわからず、今日まで生きてきたが……そういうことか。全部正教会の影響だったんだな」


「まあ、物的証拠がないので全て正教会のせいにすることはできません。あいつらはそう言う尻尾を隠すのが物凄く上手いです。多分、纏めている者の頭が相当切れる」


「教皇か……、確かにあのガキは昔から神童だったな。ほんと頭にくるガキだ」


 フリジア学園長にとってほとんどの人間はガキ扱いされるようだ。たとえ、王と同じくらいの権力を持つ正教会の教皇でも……。その方をガキ扱いは流石としか言いようがない。


「フリジア学園長は教皇についてどれくらい知っていますか? 情報が全然つかめなくて」


「教皇の素性は私もわからない。どこで生まれてどうやってその地位に付いたのか謎だ。本名もわからない。なんせ、ガキの頃から私のスキルでも心の声が聞こえなかったんだ」


「ええ……、心がないってことですか?」


「わからん。でも、会話はした。だが、その言葉がどうも気色が悪かった。大した情報は持っていないし、持っていたらこの世にいなかったかもしれん」


 フリジア学園長は息を整え、ソファーの背もたれにぐたーっと身を預ける。


「キララちゃんはこんな危険な話に首を突っ込んでいたのかい?」


「は、はい……。私が住んでいる村の近くにある街が実験に使われたんです。街を助けるために首を突っ込む羽目になりました」


「はは、そうか。確かにキララちゃんは正義感が強そうだ。首を突っ込むのも無理はない」


 フリジア学園長は腕を組み、耳をピコピコと動かして微笑んだ。


「フリジア学園長。あなたは心の声が聴ける。私は言葉は聞こえても心の声までは聞こえないんです。なので、情報を持ってそうな者がいたら片っ端から聞いてください」


「諜報活動か。何とも懐かしい……。昔はルークス王国を攻め落とすためによくやったなー」


 フリジア学園長は頭を縦に動かし、懐かしんでいた。


 ――いったいいつの話をしているのか。


「わかった。その話し、私も請け負う。その話しを知っているのは他に誰がいる?」


「王都だと私とドラグニティ学園長、アレス王子、ルドラさん、マルチスさんです」


「ほほう、良い仲間を集めたな。その者達とよく巡り合えたものだ」


 フリジア学園長は笑いながら、手を叩いて褒めてきた。


「心強い仲間がいて、とても戦いやすい。キララちゃん、その話があるのなら私の学園に来るのはお勧めしないな。君を守れるか正直自信がない。単純な戦闘力だけなら、ドラグニティのガキのもとにいた方が安全だ」


「フリジア学園長でもドラグニティ学園長の方が上なんですね」


「あいつは魔法の天才だからな。多少衰えても私より強い。ほんと、天才は嫌いだ」


 フリジア学園長は耳の裏を掻きながら、愚痴を言う。彼女もだいぶ天才のほうだと思うけれど。


「私も天才を知っているので気持ちがわかります。努力しても勝てそうにないって思っちゃいますよね……」


「弟君の話しか。まあ、姉弟なら仕方がない。私はあの男の全盛期を知っているからね。もう、笑ったよ。強すぎて……」


 フリジア学園長は胡坐をかき、頬杖をついてだらしない恰好をする。ドラグニティ学園長が相当嫌いなようだ。


「そんなに強かったんですか。まあ、彼の強さは知っているつもりですけど、例えるなら?」


「例えるならー、気づかない間に殺してくる男」


「はは……、笑えないじゃないですか……」


「笑えたんだって。魔物の大群が気づかないうちに全滅してるんだもん。体感一秒も経ってないよ。どうやって倒したのか目に追えなかった。スキルで時を止めるのは流石にやってるよ」

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