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チーズを売りたい

ライトとシャインはいつもに増して瞳を輝かせ私の方を見つめる。


「お姉ちゃん! なにこれ! 凄いよ!」


「ほんと! 凄すぎてなんて言ったらいいか分からない!」


なんとも2人の語彙力の無さを痛感しながらもこれだけ喜んでくれたら、私の命を張った甲斐はあったというものだ。


「2人とも、一瞬でチーズを全部食べちゃったの…。それじゃあ…もう一回作る?」


「作る!!」×2


ライトとシャインは牛乳を保管している倉庫の方へと走っていく。


走っていったと思ったら、2人は牛乳パックを1本ずつ両手に持ちながら、すぐ戻ってきた。


合わせて計4本の牛乳パックを2人は、持ってきたのだ。


「そんなに食べられるの…」


「食べる! 食べる! もし食べれなくても、お父さんとお母さんに食べてもらったらいいし!」


――そうだな…さっき捨てちゃった液体も…確かホエーって言うんだっけ。あれで野菜スープとか作ったら美味しそうだよな…。味はしないけど…。まぁ野菜味にはなるか。


「よし! もう一回作ろう。次は2人にも初めから手伝ってもらうからね」


「うん!」×2


キラキラと輝いた瞳で頷くライトとシャインは、無邪気な子供そのものだった。


――あ~久しぶりに2人の子供っぽい顔を見たよ…。いつも子供とは思えない働きをするもんだから、つい忘れてたけど…まだ2人とも7歳なんだよね。丁度、好奇心旺盛な時期だから、初めて見たものには興奮しちゃうのかな…。


そして私達はもう一度カッテージチーズを作った。


今回はホエーも捨てることなく、他の鍋に移しておいた。


後でホエーを使ったスープを作って、皆で飲んでみようと思う。


机には出来立てのカッテージチーズが2つ並ぶ。


ライトの作ったチーズはしっかりと形まで整えられ、私の作ったチーズより美味しそう。


シャインの作ったチーズはさっきと同じように作ったのか疑問を抱いてしまうほど、別料理になっていた。


例えるならば…真っ白なチャーハン…になっている。


それでもきっと、味に変わりはないだろう。


味さえ同じならば見た目は、ほとんど気にすることはない。


自分達で食べる分には…だけど…。


2人ともいきなりむさぼりつくのかと、思いきや…。


「あれ…2人ともどうしたの? 食べないの…」


「…………」


――いったい何を考えているんだろうか…チーズを唯々見つめ、全く動かないなんて。


「姉さん…これ売れないかな…」


ライトからその言葉が出てきて、私は驚いた。


…だってまだ7歳だよ、普通そんなこと考えるかな…。

「え…売れるかどうかは分からないけど…。でも、チーズを作っている時間は無いし…」


今の私達は既に、ていっぱいなのだ。


牧場の手入れ、朝の配達、動物たちの世話…はっきり言って私たち家族とお爺ちゃんだけではどうにも手が回らない。


しかも最近私の勝手な一存で街に配達の計画まで立ててしまった。


そんな中でこのカッテージチーズを売る、ところまで手を回せないのだ。


「でも…これ売ったらきっと皆買うよ…僕だったら買いたいもん」

(いや…逆に考えて、牛乳を一緒にこのレモネを売れば…、家でも簡単にこのチーズとやらを作ることが出来る…ってことだよね。そうしたら、牛乳の売り上げも増えるかも…。)


ライトがブツブツと何か独り言を言っている。


「え…まぁ、確かに牛乳とレモネさえあれば簡単に作ることはできるけど…。牛乳だってただじゃないし…。牛乳を好きな人もいるだろうから…」


「そうだよ…好きなんだから牛乳と一緒に、レモネを買ってチーズ用の牛乳も買ってくれるかも…そうすれば牛乳は実質2倍の売り上げになるね。レモネの分を含めたらもっと増えるかも」


今度はシャインが喋り始めた…。


「そうすれば…もっと儲けられる…ってことだね。シャイン…」

「そうなれば、欲しい物が買える…ってことだね。ライト…」


――二人は7歳の子供の顔ではなく、既に40歳後半の社長の眼をしている…。もっと可愛げのある笑顔はできないの…。


「2人とも、今はそんなことを考えてないで、さっさと食べないと腐っちゃうよ。ただでさえ牛乳は腐りやすいんだから。このチーズだって空気に触れてるからどんどん腐って行っちゃうよ」


「それもそうだね、シャイン。僕達でボロボロになった汚いチーズを半分ずつ食べよう。残りの1つは父さんと母さん、デイジーさんに一度食べてもらって感想を聞こうか」


「そうだね…他の人の意見も聞いてみたいし。後、これワザとだから…」


――2人はまだ諦めていないんだ。…でも、考えることは良いことだよね。でもこの流れは…まずいな…。


「え? ああそうだったんだ。もしかしたらシャインが料理苦手なのかと思ったよ。このボロボロチーズはワザとだったんだ…」


「なに? 喧嘩売ってるのかな…ライト…。ライトが私に勝てるとでも思ってるの?」


「なに怒ってるのさ…、別にいいじゃないか。料理できなくても、シャインにもちゃんと女の子らしい所があったんだね」


「はぁ~? だからワザとだって…」


「まぁまぁまぁ…。落ち着いてよ、2人とも…。さっさとチーズを食べないと腐っちゃうって言ってるでしょ」


「はーい」×2


その後…何事も無かったように、ライトとシャインはボロボロのチーズをペロッと平らげた。


チーズを食べ終わったライトはもう一つのチーズ上に手を広げ、呪文を唱える。


『フリーズ』


青っぽい小さなドーム状の膜がチーズを包み込んでいった。


「ライト、また何か新しい魔法を考えたの?」


「違うよ、元々あった氷を作る魔法に、少し改良を加えてみただけ。これなら、腐りにくくなると思って」


「へ~」


――すご…簡易的な冷蔵庫作ってるじゃん…。やっぱり天才なのかな…。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


もし少しでも、面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、差支えなければブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


毎日更新できるように頑張っていきます。


よろしければ、他の作品も読んでいただけると嬉しいです。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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