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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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フリジア学園長の体

「キララちゃんが入ったお風呂はお湯が魔力でまろやかになって気持ちよすぎるからねー。私もキララちゃんと一緒に入るお風呂じゃないと満足できない体になっちゃったよー」


 フリジア学園長は私に頬擦りしてくる。


「フリジア学園長は今でも若々しいじゃないですか。私と入る必要が無いと思いますけど」


「いやいや、肌のうるおいと張りが全然違うよ。首だって皴が目立ってきてたのにキララちゃんと入ったらつるつるになっちゃってー」


 フリジア学園長は両頬に手を当て、ルンルン気分で食堂に向かう。


「はぁ……。美容を気にしている女性たち……、面倒臭い。まあ、私も本来はああなる運命なんだろうな。スキルのせいで老けなくなっちゃってるけど……」


 私もフリジア学園長の後ろについていき、食堂に移動した。


「ん……。おおっ! キララ、無事だったか!」


 マルチスさんは椅子から立ち、私のもとに駆け寄って来た。そのまま、頬を両手で挟み、無事だと知ると安堵するように息を吐く。


「よかった……。何かあったのかと心配したぞ」


 マルチスさんは正教会について知っているので私の身に何かあったと考えていたようだ。


「安心してください。私はこの通り元気です。会社を立ち上げて新種の魔物を倒してきただけですから」


「…………」


 ルドラさん以外、この場にいた者の目が点になった。


「はははっ! そうか、そうかっ! キララも商売の頭を持っていたか!」


 マルチスさんは豪快に笑い、私の頭を撫でて来た。そのまま、椅子に戻り、気分良く葡萄酒が入ったグラスに口をつける。


「キララちゃん、新種の魔物と戦ってきたの! どんなやつらだったの!」


 フリジア学園長も私の話しに食い気味で、緑色の瞳を輝かせながらずいずいと近寄ってくる。


「まあ、大きなゴブリンですよ。背丈はフリジア学園長の二倍以上ありましたね」


「うげぇ……」


 フリジア学園長はゴブリンが嫌いなのか、ものすごーく嫌そうな顔を浮かべ私から離れた。別に、私がゴブリンなわけじゃないのだが。


「そんなに引かないでくださいよ。あと、ゴブリンと言ってもオークと混ざり合ったような個体なので、ほぼゴブリンとはいいがたい大きさでして」


「ううぅ……。ご、ゴブリンとオークが混ざり合うとか、最悪……」


 フリジア学園長は口を押え、耳をほぼ真下に向けるほど嫌がっていた。


「森の民はゴブリン達が嫌いなんですか?」


「嫌いも嫌い、大嫌い。オークも嫌いだし、あいつら、分をわきまえず私達に襲い掛かってくるんだもん。臭いし、倒しても食べられないし。最悪な魔物だよ」


 フリジア学園長は過去に何かあったのか、トラウマがゴブリンやオークらしい。言葉を聞くだけで体がぞわぞわしている。相当嫌いなんだろうな。


「まあ、安心してください。全部駆除してきました。王都に流れ込んでくるような事態になりません」


 私は椅子に座り、夕食の料理をたしなむ。


「にしても、その年で新種の魔物を倒せるなんてやっぱりすごいね」


 フリジア学園長も椅子に座り、食事を始めた。


「魔物を倒すなんて、首か魔石を狙えば倒せます。無理なら逃げて対処を考えるだけです」


「新種の魔物と出会ってその判断が取れるのがすごいよ。普通の冒険者なら玉砕するか、逃げ惑うかのどちらかだ。もう、冷静さが熟練冒険者並だね」


 フリジア学園長はパンを千切り、口に頬り込みながら私を見てくる。


「まあ、冷静に俯瞰するのは得意なので」


 私は皿に乗せられた前菜をフォークで刺し、口に入れる。ほど良い塩味が効いており、野菜の味がそのまま感じられた。


「キララ、どんな会社を設立したんだ?」


 マルチスさんは私の新事業が気になるらしく、お金のにおいを嗅ぎつけてウハウハした様子で訊いてくる。


「ウルフィリアギルドが受けていたFランクとDランクの依頼の中に、多くの雑用があるとわかりました。その雑用を私が請け負う会社を作ったんです」


「なるほど。大量の雑用をこなせれば、儲けられると言う話か」


「はい。生憎、私は従業員を雇う必要がありません。経費がほぼ掛からないので、報酬はほぼ丸々私の物になります。還元率が高いですね」


「キララちゃんのスキル、戦闘以外は案外便利だね」


 フリジア学園長は花瓶の入れられている綺麗な花に乗っているベスパを見る。彼女は目に魔力を溜める卓越した魔力操作で、ベスパが普通に見えていた。まあ、魔力に敏感な森の民だからと言うのもあるか。


「案外便利なのではなく、とっても便利なのですよ」


 ベスパは前髪を掻き揚げ、キラキラとした魔力を放った。うざい。


「なんか、面倒臭いスキルだね」


 フリジア学園長はベスパから視線を反らし、苦笑いを浮かべていた。


「はは……。まあ、面倒臭いですが、便利なスキルに変わりありません。今回も助けてもらいましたし、もう、私の生活に無くてはならない存在です」


 悔しいが、私の生活はベスパたちに支えられている。彼がいなかったら私は今でも田舎で辛い生活を送っていた。このスキルがあったから今、ここにいられる。そう思うと、感謝せざるを得ない。


 私たちは夕食を終え、お風呂場に向かった。


 メイドたちは仕事を終わらせ、お風呂に入る準備万端。

 フリジア学園長も服を脱ぎ捨て、私こそが妖精だと言わしめる子供体型を堂々と見せびらかす。もう、私と入る気満々だ。


 私は皆の視線を受けながら、服を脱ぐ羽目になる。フリジア学園長とためを張れるくらい子供体型……。色気が一切無いので見世物にすらならないのに、なにが楽しいんだか。

 服を脱ぎ、長めの布で前側をほんのり隠しながら扉を開けてお風呂場に入る。

 桶を持ってお湯を体に掛け、汗や皮脂などの汚れを落としたあと大きな石風呂に入ったお湯に足先をゆっくりと入れた。

 お湯の温度は三八度から四〇度前後、熱すぎずぬる過ぎず、丁度いい湯加減で身と心が解れる。


「はぁわぁ……。やっぱり、お風呂は良いなぁ……」


「はは、キララちゃんがスライムみたいに溶けているよ」


 フリジア学園長は石風呂の縁に座り、飛び降りるようにお湯に入った。キラキラとした緑色の髪がお湯に浸かり、イルカのように頭を水面から出して顎をあげると、濡れた髪先が綺麗な半円を描き、水上花火のような水しぶきが生まれる。それだけで芸術のようだった。


「はぁー。キララちゃんと久しぶりにお風呂に入った気がする」


「そうですかね。まあ、女子同士ですし一緒に入って何ら問題ないのでいつでも入りに来てください。二ヶ月後に私はこの家にいないと思いますけどね」


「ああー、そうかぁ。キララちゃんも学生になるんだよね。もちろん、フリジア魔術学園に入るよね?」


 フリジア学園長は私に威圧するような質問をして来た。おっきな瞳にも感情が乗っており、少々怖い。


「えー、ど、どうしようかなー」


 私は返答に困り、苦笑いを浮かべる。


「エルツ工魔学園は男ばっかりだし、ドラグニティ魔法学園は学園長が変態だからやめておいた方がいいよ。うん、絶対、フリジア魔術学園の方がいい!」


 フリジア学園長は私の肩を持って大きな声を上げた。


「と、とりあえず、学園の合格が決まったら……、私が選びますし……」


「キララちゃん、フリジア魔術学園に入ったらもう、特別待遇で歓迎するよっ! 学費免除! 学食食べ放題! 個室完備!」


 フリジア学園長は私が相当ほしいのか、私が提示しようとしていた条件をそのまま私にしてくる。心を完全に読まれていた。彼女のスキルのせいだ。


「ちょ、心を読むのは止めてください」


「ふふふっ、私は交渉が得意なんだよ。何たって、相手の心が読めるからねー」


 フリジア学園長は悪い顏をしながら、手をにぎにぎさせていた。私の体に揉めるような場所なんて無いのだが……。


「駄目押しに、お菓子も食べ放題にしようかなー」


「く……、なんて魅力的な言葉。で、でも、他の学園長の話しも聞かないと」


「キララちゃんのところに来ないってことはそれだけ、キララちゃんが必要じゃないってことだよー。私はキララちゃんが欲しいからこうやって交友を深めているんだ。いいだろう、私達の仲じゃないか」


 フリジア学園長は私の手を握りながら笑う。ナンパ師のよう……。


「フリジア学園長、私は公平に決めたいのでそう言うお話は三名そろってお願いします」


「むぅー、キララちゃんは釣れないな。他の子ならホイホイついてくるのに」


 フリジア学園長は頬を膨らませ、むくれる。一体何人の女の子を落としてきたのだろうか。年齢が三桁行っていると思うから、恐らく指の数じゃ足らないだろう。


 一八分ほど、お湯に浸かり体がしっかりと温まったころ、お湯は黄金に輝いている。魔力が溢れだした結果だ。


「じゃあ、体を洗わせてもらいます」


 私はベスパの失態をもみ消すために、フリジア学園長の体を洗う。


「お願いしまーす」


 フリジア学園長は風呂椅子に座り、笑った。

 ほんと、子供体型で童話に出てくる蝶の翅が生えた妖精のようだ。

 他の者が言う妖精は褒め言葉だと思いたい。

 平らな胸に小さな尻、子供のような体型……。これがこちらの世界でとても神秘的な存在なようで、憧れている者も少なくないとか。

 現世で言うお人形さんみたいと言う言葉に近い感性だろう。


 私はフリジア学園長の髪を櫛で梳き、滑らかにした後、桶に溜めたお湯につける。石鹸で優しく揉み洗いし、頭皮も爪を立てずに指圧しながら揉みこんでいく。


「あぁ……、気持ちぃ……。キララちゃん、洗うのが上手だねぇ……」


 フリジア学園長は微笑み顔で呟いた。他人に髪を洗ってもらうと気持ちいいのは自分じゃ触らないような部分にいつもと違う力加減で洗われるからだ。

 実際、上手いか上手くないかなんてわからない。でも、相手が気持ちいいと思っているのなら、それでいい。


「ありがとうございます。フリジア学園長の髪、すごく綺麗ですね。艶やかで滑らかで、私より何倍も年を取ってるのに、全然衰えてない……」


「そりゃあ、森の民だからね。私たちは魔力さえあれば不老なんだよ。だから、髪も衰えないの。髪は伸びるのに、この体は成長しないのが不思議だよね」


 フリジア学園長はぺったんこな胸に手を当てながら苦笑いを浮かべる。彼女もやはり少々気にしているようだ。


 私は新しいお湯で石鹸を流し、髪の水分を絞って布を纏わせる。頭にターバンを巻くような感じだ。そうしないと、髪に石鹸が付いてしまう。

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ビー達なら植物から美容成分を抽出して美容商品を作れるのでは? 莫大な資産築けそう
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