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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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マドロフ邸に帰宅

「ベスパ、この液体の成分は魔造ウトサとちょっと違うっぽいよね」


「そうですね。従来の性質であれば魔物同士が引っ付き合う効果など無かったはずです。なんせ、コクヨが含んでいた魔造ウトサが同じならばクロクマさんやクマタロウを殺そうとしなかったはずです。従来と別の効果がある可能性が高いですね」


「だよね。じゃあ、この試験管と手紙をスグルさんのもとに送って」


 私はブーンと飛んでいる警ビーに渡した。見たくないが仕事してもらっている手前、仕方ない。

 警ビーたちは通常のビーよりも強く、持久力があるので少ない交代で街にいるスグルさんに運べる。


「ふぅー。これでちょっとは安心できるかな」


 私は椅子の背もたれに体を押し付ける。


「安心ばかりしていたら危険ですから、危機感は持っておきましょう」


「わかってるよ。仕事しながら王都の悪い所をかたっぱしから探していく気だし、正教会やドリミア教会の尻尾も掴みたい。少しでもボロを出してくれたらいいんだけど……」


「なかなか手ごわい相手ですからね。上手く隠れているようです」


 ベスパは腕を組み、机の上をてちてちと歩く。一歩があまりにも短い。


「まあ、気長に探して行こうよ」


「そうですね。まだ、急ぐときじゃありません。時間はありますから慎重に行動しましょう」


 私たちは昼食を得に食堂に向かった。

 食堂のおばさんに金貨一枚を支払い、よさげな定食をいただく。

 白パンとスープ、肉の煮物、サラダと言う、金貨一枚とは思えない食事で驚きが隠せない。

 どうも、冒険者は割安で食事がとれるらしい。

 そんなことは梅雨知らず、王都の冒険者は高い値段を払って食事していると思っていた。冒険者ギルドも冒険者のために色々と考えているようだ。


 冒険者になったら、この健康的な食事が金貨一枚からとれるのだから、頑張って仕事しようと言う気になれる。まあ、田舎からすると金貨一枚でも高いけど……。


 私は白パンを食し、肉の煮込みを口に入れる。魔物の肉だと思うが、十分美味しい。塩味が強いので、ソウルが使われている模様。なんて贅沢……。


「うん、美味しい……」


 私は朝食が絶妙な品々だったので、昼食をがっつりと得られて良い気分。デザートも食したかったが紅茶で我慢する。

 昼食を得てから四時間以上経ち、そろそろ午後五時だ。

 もう、会社から帰宅する時間帯なわけだが『聖者の騎士』はまだ書類を書いているのか、中々来ない。


「ううーん。何をしているのやら……」


「どうも、仕事より色気の方が強いようです」


 ベスパは腕を組みながら少々怒っていた。


「まさか……」


 私はキアズさんにお願いして『聖者の騎士』が使っている部屋に突撃してもらった。


「何してんだお前らああああああああああああああああああああああああああああっ!」


 ウルフィリアギルド全体に聞こえるほど大きな声が響き、フェンリルも尻尾を股の間に入れて怯えていた。

 午後五時半ごろ、ボロボロになった『聖者の騎士』が私の仕事部屋にやってくる。


「うう……、ギルドマスター怒りすぎだろ……」

「ちょっと、イチャイチャしてただけなのに……」

「仕事はちゃんとやったのになぁ……」

「若い姿は今しかないのに……」


 『聖者の騎士』の四名は私の仕事部屋に入ると、床にへたり込んだ。キアズさんのお説教が大分堪えたと思われる。


「皆さん、相手をずっと待たせるのは悪いことですよ。わかっていますか?」


「うう……、キララも説教か……」

「キララちゃんの方がギルドマスターよりも威圧感があるのはなぜ……」

「キララって大人に見えるよな……」

「なんなら、私達より大人なんじゃ……」


 『聖者の騎士』の四名が口々に呟く。


「皆さん、私はずっと待っていたんですよ。何か言うことがあるんじゃないですか?」


「「「「ご、ごめんなさい……」」」」


 『聖者の騎士』の四名は頭をしっかりと下げて謝って来た。子供相手に謝れるだけ真面か。


「はぁー、今日は居候させてもらっている家に帰らないと皆さんが心配しているようなのでこれ以上いられません。話したいことがあるのなら明日。伝えられることがあるなら、今、聞きますが」


「えっと、キララに会えてよかった。また、父親の話しが訊きたくなったらいつでも訊いてくれ」


 タングスさんは腕を組みながら笑う。


「なにか困ったことがあったらいつでも相談して。助けてもらった恩があるし、また一緒にお風呂に入りたいし……」


 ロールさんは最後の言葉が一番の利益だと言いたそうだ。


「あー、なんだ。ジークの娘と話が出来て楽しかった。あと、色々感謝してる。あいつの借金の話しでもしようと思ったが帳消しにする。剣のことが訊きたければいつでもこい」


 イチノロさんは後頭部に手を当てながら、苦笑いを浮かべた。


 ――お父さん、『聖者の騎士』にも借金してたのか。全く……。


「キララさんは女神様が好きそうな魔力してるし、よかったらカトリック教会に……もごご」


 チャリルさんが宗教勧誘して来ようとしたので、イチノロさんが口を塞ぐ。


「ごほごほっ。えっとえっと。また、ゆっくりとお話ししましょう。美味しいお菓子でも食べながら」


 チャリルさんは微笑み、聖職者らしい聖なる雰囲気を醸し出していた。


「はい。私もまた皆さんと話せることを楽しみにしています。では、お疲れ様でした」


 私は『聖者の騎士』の間を通り、仕事部屋を出る。

 何か見られて不味い品は無いので、鍵を閉める必要もない。というか、警ビーが見張っているので不審者が現れればすぐに気づく。


 ウルフィリアギルドを出てフェンリルの頭を撫でまわしたあと、レクーが待つ厩舎に移動。

 レクーを厩舎から出して、暗くなり始めている空の下を走る。


「帰って大きなお風呂に入るぞー」


 私は小さな風呂よりも大きなお風呂の方が断然気持ちが良いと気づき、ルドラさん宅のお風呂目当てで帰る。


 ☆☆☆☆


「ああー、キララちゃん。やっと帰って来たー」


 長い耳が特徴的な森の民……、いや、フリジア魔術学園学園長のフリジアさんがルドラさん宅の入り口で立って待っていた。


「えっと……。フリジア学園長、こんな時間からさぼりですか?」


「さ、さぼりじゃないよ。交友だよ交友。キララちゃんと私の仲じゃないか」


 フリジア学園長は苦笑いを浮かべ、私は彼女が仕事の業務から逃げて来たと察した。


「はぁ……。フリジア学園長がいないと学園は回りませんよ。自分で作った学園なんですから、面倒をしっかりと見てください」


「うう……。キララちゃん、手厳しいよぉー」


 フリジア学園長は子供のようにくしゃくしゃな顔で泣く。私に抱き着いてきて耳をぴこぴこと動かしていた。


「フリジア学園長がそこまで気を落とすなんて……、なにかあったんですか?」


「ううー、私のお菓子が無くなってた。金貨八枚と入れ替わってたんだよー」


 私は無言でベスパの方を見た。


「ひゅーひゅー」


 ベスパは後頭部で下手な口笛を吹きながらブンブンと飛んでいた。


「フリジア学園長、一緒に夕食にしてお風呂に入りましょう。今日は私が体を洗いますよ」


「えっ! ほんと!」


 フリジア学園長は機嫌を直し、耳をピコピコと大きく動かしていた。


「ベスパは燃えてね」


 私はベスパに指先を向け容赦なく『ファイア』を放った。


「ギャワーッ! すみませーんっ!」


 ベスパは燃えカスとなり風に吹き飛ばされた。八秒後、何事もなく頭上に現れる。


「うう……。キララ様が好む丁度良いお菓子があれしかなかったのです……」


「なら、無理と言って帰ってこればよかったでしょうが。盗むのは犯罪だよ」


「お金と交換したじゃないですか」


「だとしても相手の了承が無かったら駄目なの。わかった?」


「はい……」


 ベスパは珍しく反省し、しゅんとしていた。


「キララちゃんとお風呂、キララちゃんとお風呂。キララちゃんとお風呂」


 フリジア学園長はお菓子が無くなったことなど気に留めず、私とお風呂に入れる状況に嬉しがっていた。


「ああっ! キララさん!」


 メイドたちも私の帰宅に気づき、てんやわんや。皆、自分の肌や髪が気になって仕方がないのか綺麗に磨かれたガラスや鏡を見てウンウン唸っていた。


「キララさんのお風呂に入らなかっただけで髪の艶が落ちたような気がしてっ!」

「肌の潤いが一瞬でカサカサに……」

「い、一気に老けて……」


「「「「い、いやぁあああああっ!」」」」


 メイドたちは普段の顔に戻っているだけなのに、私と一緒に入った後の姿が本当の自分と言いたそうな雰囲気を放っていた。


「えっと……、皆さん。今が素の自分です。受け入れてください」


「「「「そ、そんな……」」」」


 メイドたちはたちまち崩れ、お嬢様のようにしくしくと泣いていた。


「そこまで……」


 ――まあ、女性はいつまででも綺麗でいたいと思ってるし、普通か。


「皆さん、今まで留守にしてすみませんでした。今日は一緒に入りましょう」


「「「「良いんですか!」」」」


 メイドたちはあっという間に精気を取り戻し、難なく立ち上がった。


「その代わり、仕事はちゃんと終わらせてくださいね」


「「「「わかりましたっ!」」」」


 メイドたちは今まで集中できていなかったのか、仕事が終わっていなかった。普通なら掃除は終わらせ、食事の準備が始まっているころ。私が言うと皆、働きバチのようにせっせと動く。

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