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チーズを作ります

(…これ…食べれるの?)


(…まぁ…食べれるよ。僕は一気に齧り付いちゃったけど、こうやって薄く輪切りにしたら結構食べられる。すごく酸っぱいけど…)


レモネの輪切りを受け取ったシャインは口に放り込む。


舌の裏側をギューと締め付けられる感覚を覚え、唾液が止まらなくなってしまった。


(な…なにこれ、酸っぱすぎない。毒なんじゃないの…)


(大丈夫、毒ではないはずだよ。だって僕は未だに倒れてない。体のどこにも異常はみられないから多分安全な食べ物だと思う…)


(だと思うって…)


――あの2人…何を話してるんだろ。レモネを気に入ってくれたのかな…。


キララは竈の火を眼で確かめ、石炭を少しずつ崩し威力を調節する。


「よし、火の準備良し」


鉄製の鍋に牛乳パック2本分の牛乳を、注ぎ入れる。


牛乳の入った鍋を竈の上に移動させていく。


「牛乳の入った鍋を火にかけて…、牛乳が沸騰する直前まで温めるっと…。あ、お玉…忘れてた」


キララは木製のお玉を食器入れから急いで取り出した。


お玉で牛乳を静かにかき混ぜ状態を絶え間なく確認し続ける。


――焦げないように気を付けて…丁寧に丁寧に~


「そろそろ良いかな…。これ以上温めたら沸騰しちゃう…早くどかさないと…」


アツアツになった鍋の両端を濡れた布で持ち、キララは机まで運ぶ。


「2人とも危ないからちょっと、どいてね」


ライトとシャインは、椅子から立ち上がり、キララに場所を譲る。


2人は牛乳の状態を知るためにキララの持ってきた鍋へ顔を寄せあった。


しかし…鍋内の牛乳に映るのは、反射した自分たちの顔…。


牛乳は液体のままで全く変化していなかった。


「お姉ちゃん…。これじゃあ…ただの温めた牛乳だけど…」


「姉さん…。これで終わりなの?」


2人は少し残念そうな表情でキララを見詰めた。


『その言葉を待っていました!』と言わんばかりにキララは、右手の人差し指を振る。


「ノンノンノン。それではお待ちかね、レモネの出番です! そしてこちらに用意してあるのは、レモネを絞ったレモネ汁になりま~す」


キララは料理番組並みのテンポで事を進めていき、絞っておいたレモネ汁を温めた牛乳の中に、少しずつ加えていく。


「そして~ すぐさま木ベラで混ぜます! すると…」


レモネ汁を加え、木ベラで混ぜ始めると…牛乳は少しずつ、変化し初めました。


「え…見てライト…なんか白いの、固まってきたよ…なにこれ」


「ほんとだ。さっきまで液体だったのに少しずつ、固まってきてる…」


牛乳の変化を不思議そうに眺める2人。


「2人もやってみる?」


「いいの?」×2


「もちろん、それじゃあ…ゆっくり混ぜていってね」


キララは場所を交代し、ライトとシャインに木ベラを渡す。


仲良く2人で木ベラを掴みゆっくりと牛乳を混ぜていく。


すると…牛乳は液体と固体へ完全に分かれた。


「もうそろそろ良いかな…鍋も手で持てるくらいには冷えてるし。よっと」


取っ手を布で挟み込むようにして持ち、キララは急いで外へ向う。


あらかじめ用意しておいた小さな木机の上に、キララは鍋をドシッと置いた。


ライトとシャインに綺麗な布を敷いてある笊を持ってもらい、その場でしっかりと固定してもらう。


キララは鍋の中身を一気に笊目掛けて移し替える。


液体は布と笊をすり抜けていき、地面に流れていく。


固形物は布をすり抜けること無く笊に残った。


固形物からレモネ特有の柑橘系の匂いと、牛乳の優しい匂いを感じる。


「す…凄い…なにこれ。こんな白い塊、見たことないよ…」


「私も…初めて見た」


ライトとシャインは眼を丸め、固形物をマジマジと見つめる。


「やった…出来た…、出来たよ初めてのチーズ。ここまで来るのに3回死にかけた…。それでもようやく…作れた…」


ガラにもなく大粒の涙を流し、キララの視界は歪む。


「あとは布を持って、もう少し水気を絞れば…」


キララは布をしっかりと持ち思いっきり絞り、出来るだけチーズから水分を出した。


これ以上、絞り出せないと思ったところでキララは布上からチーズの形を整える。


「よし、後は…。広げるだけ…」


布を広げると、綺麗な白色のチーズはその姿を現した。


「この白い塊…牛乳だったなんて、全く信じられない」


「うん…ホントに」


ライトとシャインは更に目を丸くして、チーズを見詰めた。


「2人とも、食べてみる。多分…味はあんまりしないと思うけど。味わったことのない触感だと思うよ」


木製スプーンでチーズを掬い取り3人それぞれ口に運ぶ。


「あ、チーズだ。ちゃんとチーズになってるよ。レモネの酸味はちょうどいいアクセントになってる。やっぱり塩味はないから、物足りない感じするけど…まぁ、60点くらいかな…」


キララは大分辛口評価だったが…チーズを初めて食べた2人は、むしゃぶりつく様にしてチーズを食べている。


――確か今回作ったチーズの名前は、カッテージチーズ…。だったかな。


「これで食事にも少しバリエーション増えるぞ…って! …もう無い」


キララは再度、チーズを食べようと思い、チーズの置いてあった場所を見るも…。


既にチーズは、なくなっていた。


最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


もし少しでも、面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、差支えなければブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


毎日更新できるように頑張っていきます。


よろしければ、他の作品も読んでいただけると嬉しいです。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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