表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

859/1189

依頼料ゼロ

「ブラットディア、整列!」


「はいっ!」


 ディアはブラットディアと共に完璧な正方形の隊列を作る。


「皆、ディアの命令をよく聞いて掃除を完遂するように。掃除に掛かれ!」


「わかりました!」


 ブラットディアはゴブリンの巣に流れ込んでいく。黒い津波が村を塗りつぶしていくようだ。

 まあ、高さ一センチ程度の浅い津波だけど……。でも、その威力は絶大。地面に転がっていたゴブリンの死骸は黒い血や内臓、骨、その他諸々全てブラットディアに食いつくされる。

 魔石と討伐した証拠の耳は残し、黒い血液が一滴もない綺麗な谷に戻った。多くの冒険者たちがブラットディアに恐怖し、身を震わせていたが害がないとわかると、目を瞑ってやり過ごしていた。


「ぎゃああああああああああああっ! ブラットディアっ!」


 奥のほうから大きな声が聞こえた。白いローブに金髪ロングの美女だ。その服装からしてチャリルさんだとわかる。どうやら彼女もブラットディアが苦手らしい。


「おいおい、チャリル。そんなに抱き着くなよ」


 イチノロさんはチャリルさんに抱き着かれ、まんざらでもない表情を浮かべている。鼻の下が伸びているのを見るに、変態のサルのようだ。


「まったく、ブラットディアごときで怖がらないでよね」


 ロールさんは強がっているが、指先がプルプルと震えている。


「ま、お前はそう言うよな」


 タングスさんはロールさんの肩を抱き、支えてあげていた。やはり、案外紳士だ。


「も、もぅ……。バカ……」


 ロールさんはタングスさんに身をよせる。


 ――なんか、バカップルの冒険者パーティーになっちゃった。


「まあ、良いんじゃないですか。昨日より連携がうまくっていたように見えますし、生き生きしています」


 ベスパは手を腰に当て、翅をブンブン鳴らしながら飛んでいた。


「そうだね。ディアたち、地下にいるゴブリンも今頃眠ってるから食べちゃって」


 私はディアに声を掛ける。『ハルシオン』で眠っている間に体が食われるなんてあまりにも恐怖だが、人に害があり頭が悪い大きなゴブリンを放っておけない。


「わかりました!」


 ディアは口をもごもごさせながら大きな声で返事してきた。彼らの食欲はブラックホールのようで、永遠に尽きない。


 私の姿を見た『聖者の騎士』は瞳を輝かせ、勢いよく駆け寄って来た。


「キララっ!」

「キララちゃん!」

「キララ」

「キララさんっ!」


 私はタングスさんとロールさん、イチノロさん、チャリルさんに囲まれた。


「な、なんですか……」


「「「「仲間になって!」」」」


 四名は満面の笑みのまま、まだ成人していない私に大声で言う。


「な、なりません! 私、冒険者に興味がないので!」


 私は『フロウ』で宙に浮き、包囲網を脱出。そのまま、ベスパとビーが作るネアちゃんの糸ブランコに座った。


「あ、私が死にそうなときに見た天使……キララさんだったんだ」


 チャリルさんは口をぽかんと開けながら私の姿を見ていた。


「私は攫われていた人々を近くの村に運びます。皆さんは王都に帰って今回の騒動を報告してください」


 私はビーに頼んで眠っている女性たちを近くの村に運んでもらった。


「す、すごい……。あの数を一気に運んでる……。キララちゃんって天才なんじゃ」


 ロールさんはフワフワ浮いているように見える女性たちを見て苦笑いしていた。


「天才というか。賢すぎるよな。今日、俺たちは魔物と一戦しただけだぞ」


 イチノロさんも表情を引きつらせながら言う。


「駒扱いってやつか。だが、頭が悪い俺は滅茶苦茶助かった」


 タングスさんは腕を組み、頷いていた。


「キララさん、冒険者に興味がないんですか……。はぁー、残念です」


 チャリルさんは露骨に落ち込み、イチノロさんに慰められていた。


「ディア、綺麗に食べ終わったら村に来て。脅かさないようにね」


「わかりました! 跡形もなく食い尽くしてキララ女王様のもとに帰還します!」


 ディアは大きな返事を私の脳内にしてきた。大きな鐘の中に立ち、音を無理やり聞かされている感覚を味わう。


 ☆☆☆☆


 私は空を飛び、ビーたちが女性を運んで行った村に向かった。

 森の切れ目と言うか、他の領土に向かうための通路に隣接した村を発見。一階建ての小さな家がポツポツと集まっている。柵が村の周りに二重に作られており、補強したように見える。上空に移動すると、今にも戦いに行こうとしている村人をが見えた。


 女性たちが空から降りてきたら怖がられると思うのでビーたちに地面近くに下りてもらう。そのまま、入口に移動させた。


 意識がある女性たちが地に下りた瞬間に走りだし、村の出入り口付近にいる若い男性たちと泣きながら抱き合っていた。

 どうやら、皆さん、この村から攫われた人々だったようだ。巣の近くに村があったせいでゴブリンたちの被害を受けたと考えるのが自然だな。


「……ん? 襲撃にあったにしては柵が壊されてない。すぐに直したのかな?」


 私は攫われた人数にしては柵の壊れてない具合に疑問を持った。


「ベスパ、あの木材はいつ頃切られたかわかる?」


「もちろんです。木の劣化具合を見ればすぐにわかりますよ」


 ベスパは村の周りをぐるっと回り、柵の点検をすぐに追えた。


「キララ様、柵は八ヶ月ほど前に補強されています」


「八ヶ月前……。攫われた人達が八ヶ月も生きているわけないし……」


 私は話が訊ける村人に質問した。女性はいつ攫われたのか、ゴブリンの襲撃はあったのかと。


「村の外に出て山菜を積んでいた女子が攫われたのは三日前だ。村の者総出で探したら驚くほどデカいゴブリンがいる巣を見つけた。男は戻って来たが女は、いつの間にか捕らわれていた。冒険者に頼む金もなく……ゴブリンの巣に攻め込もうとしていたんだが。皆、無事に……帰って来た……」


 男性は泣きながら震える手を口元に持って行く。女性が戻って来て相当嬉しいらしい。まあ、そりゃそうか。


「皆さんが無事で本当によかったです。女性たちを助けてくれた冒険者がゴブリンの巣の後始末を行っています。もう、心配しなくていいですよ」


「ああ……、何と言ってお礼をしたらいいか。でも、この村に冒険者に渡すお金なんて……」


「気にしないでください。誰も、お金がどうとか言っていませんでした。普通に困っている相手を助けたかっただけなんです。冒険者の方達は悪い人もいますがいい人もいます。今回は良い人達ばかりなので、村に酷い請求してくるわけありません」


 私は発言するのを一瞬迷ったが「まあ……、男に女をあてがっておけばある程度許してくれると思いますよ……」と呟いた。

 助けたのに報酬が無いと言うのも少々問題になると思った。だから、冒険者の方が女性に手を出せばお金の件と打ち消し合えるだけの軽い犯罪になる。

 相手がお金の話しをして来たら村は女性の話しを持ち出せば示談で済むと考えたのだ。われながら子供っぽくない。


「確かに……、今出来る感謝はそれくらいしかないかもしれませんね。相手がいない子を集めてお願いしましょうか……」


 さっきまで捕まっていた女性が考え込んでいた。肝が据わりすぎている。


「や、やっぱり、やめておいた方が良いと思います。冒険者は自分で行動しただけなので皆さんが不徳を得る必要はありません。傷心しているのに男の相手をしろなんて無理な話です。どれだけ可愛い子でも病んでいたら可愛さは半減以下になってしまいますからね。仕方がないので、私が説明してきましょう」


「え……、いや、そんな悪いですよ」


 男性が引き留めて来た。冒険者の怒りを買うのが怖いらしい。


「冒険者たちは新種のゴブリンの魔石を手に入れてウハウハ状態です。今は気分が良いはずなので文句を言う者は少ない。その間に交渉すれば皆さんは何も支払うことなく、普通の生活が戻ってきます。ここは私に任せてください」


 私はゴブリンの被害にあった村をあとにした。空中ブランコ状態で、移動する。


「ベスパ、何かわかった?」


「村に異常はありませんでした。あの村がゴブリンと関係しているわけではないようです」


「そう……。じゃあ、本当にただの大量発生だったのかな……」


 私は空中ブランコに座ってゴブリンの巣があった場所まで移動し、冒険者たちを纏めている『聖者の騎士』のもとに降りる。


「女性たちを村に返してきました。皆、近くの村から攫われた者達だったようです」


「そうか。無事返せてよかった」


 タングスさんは腰に手を当てる。


「村の方達は報酬を支払うだけの貯えが無いとのことで、今回は感謝の気持ちだけ私が貰っておきました」


「まあー、俺たちが追っていた依頼じゃないし、勝手に首を突っ込んだだけだ。別に構わん」


 タングスさんは腕を組み、はっきりと言う。ベスパに音声を録音してもらったので、後でそんなことを言っていないと言われても問題ない。


「ありがとうございます。『聖者の騎士』が報酬をもらっていないのだから、他の冒険者たちが貰えるわけありませんよね」


 私は全冒険者の依頼料をゼロにしてやった。恨むなら『聖者の騎士』を恨んでもらおう。


「……キララ、本当に賢いな。偉い偉い」


 タングスさんは苦笑いを浮かべ、私の頭をがしがしと撫でて来た。私の頭を簡単につかめてしまうほど大きな手はお父さんや私が知っている男性の誰よりも大きかった。まあ、図体や態度も大きいけど。


「で、タングスさん達が行っていた依頼って何ですか?」


「ん? ああ。調査依頼だ。ここら辺の魔物が多いうえに新種が見つかりやすいって言うからギルドマスターに調べてこいと命令……、じゃなくて、依頼されてな。案の定、新種のゴブリンと鉢合わせた」


「じゃあ、ギルドマスターもここら辺が危険だと認知しているんですね」


「そうだろうな。実際、新種が多数出現している。王都の近辺なのに珍しい。新種の魔物なんて一年に一体、多くて二、三体だ。辺境とか未開拓の場所に行けば新種なんて何体もいるだろうが開拓されつくした王都の周りと言うのがおかしい点だな」


 タングスさんは腕を組みながら考えていた。脳筋が考えても仕方ないと思うが、勉強と戦いで脳内で使う場所が違う。だから、いつもはおバカなタングスさんも戦いの時になれば意外と思考速度が増すのもわかる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ