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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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道草食っている

「一つの依頼にビー一匹じゃ辛いと思うから、八匹から八〇匹体勢くらいで」


「了解です。ただのビーが依頼書を持って来たら恐怖ですから、依頼書に達成完了の印を貰う時は今日見て覚えた冒険者達の姿を光属性魔法で映し出します」


「うん。いいと思う」


 私は窓の方を見ていたら依頼書と金貨一枚を持って戻って来たビーが部屋の中に入って来た。どうやら、もう依頼を達成してきたらしい。


 私は机の上に置かれた依頼書を見る。

 依頼内容は手紙の配達だった。他の配達業者に頼めよと思ったが、あまりにも簡単な仕事で金貨一枚を儲けてしまった。


 ――昔のお父さんの半月分の給料。おっと、禁句だった。


 依頼主は貴族で子供だった。もう、お小遣い感覚で金貨を貰っているらしい。恐ろしい国だ。

 ビー達が部屋の中にゾクゾクと帰ってくる。そのたび、私の体がゾクゾクするのだが、仕方ない。仕事なのだから、大目にみる。

 私が座っている椅子の前に置かれた仕事机の上に金貨一〇〇枚の柱が八本並んだ。


「ああ、ものの八〇分……。二時間も経っていないのにすべての依頼を終えてしまった。こりゃ、やばそうな匂いがするぞ」


 私は苦笑いをうかべながら、目の前に立つキンキラキンに輝く金貨の柱を見て震えていた。くすみの無い輝きを見るに、純度一〇〇パーセントのルークス金貨で間違いなさそうだ。


「えっと……、金貨八〇〇枚の内、二割の一六〇枚はキアズさんの分。残りの六四〇枚は私の分。でも、税金があるからな……。いくらくらい取られるんだろう?」


「資料を見たところ、王都だと年間で稼いだ金額が金貨一八〇枚までが納税しなくてもいい金額だそうです。キララ様は一瞬で高額納税者になってしまいましたね」


「まあ、わかってたけどさ……。一番上はいくら?」


「年間金貨八〇〇〇枚を稼いでいる者が納税額、四八パーセント。これが最大だそうです」


「なるほど……。このままだと一四日もしない間に一番上の納税者になってしまいそうだ」


「キララ様、お忘れですか? 今の依頼はFランクの依頼のみですよ。こちらもあります」


 ベスパはDランクの依頼書を見せて来た。さっき見せとけよと言いたかったが普通に枚数が多い。

 こちらは金貨二枚から五枚の間で報酬が払われる。もう、考えたくないんだよな。なんで、最低ランクでも金貨が支払われるのか謎だ。どれだけ金持ちの国なんだよ、ここ……。


「こちらは少々面倒な仕事が多いですね。でも、私たちからすれば、掃除と何ら変わりありません。ゴミ掃除が主な仕事内容なのでディアに任せた方が一瞬かと思われます」


「確かに。ディア、この広大な国は深刻なゴミ問題を抱えているらしい。君たちの出番だよ」


 ディアは私の胸から飛び出し、机の上を駆けまわる。八〇回くらいクルクル回りながら走ったあと、ぴたりと止まる。


「やらせてください!」


 ディアは前足を持ち上げて、やる気満々の様子を見せてくる。


「わかった。じゃあ、ベスパ。ブラットディアたちは食事に夢中になると周りが見えなくなるかもしれないから、ビー達も同行させて共同で仕事をこなして」


「了解しました」


 私はDランクの依頼も同じように窓の外に投げる。ビー達が受け取り、ディアは王都の中にいるブラットディアをかき集めながら仕事をこなしていく。


「はぁ……。私は命令するだけ。こんな仕事で良いのだろうか」


「キララ様。女王とはそう言う存在ですよ」


 ベスパは金貨の上に座り、前髪を掻き揚げながら言う。

 ものすごくうざい。


 私は汗水たらしてお金を稼いできた。今も昔もそうだ。でも、企業主が手下を動かしてここまでお金を稼げると知り、感覚がおかしくなりそう。

 自分でちまちま働いていたころがバカらしくなってくる。

 でも、その気持ちを振り払い、自分が王都のために貢献していると思えたらお金を稼ぐことが悪いことじゃないような気がして来た。

 逆にお金を沢山稼いで自分の時間が沢山出来る、加えて王都が綺麗になり豊かになる。とても素晴らしい仕事じゃないか。


「はははははっ! 私は何一つ悪い仕事していないのに、お金が増える! 魔力も増える! でも、私がしたかったのってこういうのじゃなくないか!」


 私は窓際に立って叫んだ。地上二八メートル付近。聞いている人はほぼいないだろう。空にぴゅーっと吹く二月の冷たい風が私の声を攫っていった。


「キララ様、女王たるものどっしりと構えて足先で部下の顎を撫でながら動かせばいいんですよ。私たちはそうされるたびに喜びを感じているのですから」


 ベスパは鼻息を荒げながら踏まれたそうに言う。


「はぁ……。お金があって嫌なわけないけど、仕事がうまく行きすぎるのも恐怖だ……。キアズさんに会社の情報を隠蔽してもらわないとな。納税はするから犯罪じゃない」


 Fランクの依頼を行ってから一八○分が立ち、Dランクの雑用依頼もおわったようだ。

 私の目の前に金貨一〇〇枚のタワーが一〇本。つまり金貨一〇〇〇枚。二割はキアズさんのもとに行くので、残りは金貨八〇〇枚。

 このまま行くと納税額が五割くらいになるので手取り金貨四〇〇枚。

 時給金貨一三○枚くらい……。少々稼ぎすぎかな? いや、地球に時給九憶円を稼ぐ化け物がいたから私なんてまだまだだな。


 私は大金を見つめながら、椅子に座っていた。

 まるで金メッキの手法で作った玩具のような金貨が自分たちの存在を主張するために照明の明りをチラチラと反射させている。


「キララさん、会社の申請が終わりました……。へ?」


 私の部屋にキアズさんが入って来た。すると、私の机の上に並んでいる大量の金貨を見て目を丸くしていた。


「キアズさん、どうぞ」


 私はカジノでチップを渡すかの如く、金貨二〇〇枚をキアズさんに差し出す。


「……えっと、どういう過程があってこの状況になったんですか?」


 キアズさんは苦笑いを浮かべ、何が起こっているのか全く理解できていなかった。そりゃ、三時間経って部屋に来たら金貨二〇〇枚を渡されるなんて普通経験しない。


「さっき分けたFランクとDランクの雑用依頼をこなしました。そうしたら、一日でこれだけの売り上げが出たようです。全部で金貨一〇〇〇枚くらいの報酬が得られたので、金貨二〇〇枚がキアズさんの取り分になりますね」


「ちょ、え……。えっと、会社を設立してまだ三時間しか経ってませんよ」


「キアズさんが会社の請求してくれていたので、その間に依頼を片付けたまでです。明日やろうが、今日やろうが一緒なので、気にしないでください。あ、脱税したら捕まりますからね」


「し、しませんよ。ちゃんと納税します!」


 キアズさんは税金をちょろまかしてお金をだまし取ろうとする小物ではないようだ。


「本当に受け取って良いんですか?」


 キアズさんは金貨二〇〇枚が入った革袋を持ち、恐る恐る訊いてくる。


「構いません。私は依頼をこなして社会貢献したまでです。まだ子供の私にこれだけ仕事ができるんですから、この世の中は捨てたものじゃないですね」


「いや……、子供に仕事をさせる世の中は終わっているでしょう……。私もほどほどに頑張らないといけませんね」


 キアズさんは私に突っ込んできた。確かにそうとも言える。


「では、キララさんの手腕に感謝し、この金貨二〇〇枚は受け取らせていただきます。この金貨は今まで頑張って残業してくれたギルド職員の手当てにさせてもらいます」


「おおー、それはいい考えですね。ぜひ、そうしてください。ブラック企業からグレー企業くらいになるんじゃないですかね」


「ブラック企業……、グレー企業……?」


 キアズさんは私の発言を聞き、首をかしげていた。


「いえ、特に意味はないのでお構いなく。そろそろ『聖者の騎士』の方達が来る時間ですかね?」


 私は懐中時計を見て午後五時頃だと知る。


「そうですね、順調にいけばこの時間帯に帰ってくるはずです。まあ、道草を食っていなければですけど……」


 キアズさんは遠い目をしながら言う。おそらく、もう少し遅れる見込みだ。


「まあ、食堂で待っていれば、帰ってきた時の周りの雰囲気でわかると思います。今日のところは先に帰らせていただきます。お疲れさまでした」


 キアズさんは他のギルド職員に後の仕事を任せたのか先に帰宅した。まあ、今まで社畜同然の仕事量をこなして来たのだから誰も文句は言わない。


 私は稼いだ金貨を『転移魔法陣』に入れ、収納。税金分は別の『転移魔法陣』に入れて保管しておく。受付に向かい『聖者の騎士』を待った。


「…………来ない」


 私は仁王立ちをしながら『聖者の騎士』を待ったのだが、午後七時を過ぎても彼らは帰ってこなかった。ちょーっと道草食いすぎじゃないか? さすがに待たされ過ぎてイライラが募る。


「Sランク冒険者なら、ただの依頼で失敗するわけないし……。飲み歩いているのかな。メークルみたいに道草でも食ってるのかも。まあ、試験が終わったから別にいいけどさ……」


 私は夜遅くまでやっているウルフィリアギルドの食堂に足を運ぶ。


「キララ、腹が減ったぞ」


 ウルフィリアギルドの看板犬こと真っ白な毛並みのフェンリルが私の脚の間をグルグル回りながら擦り寄ってくる。モフモフとした毛が脚に擦れてくすぐったい。


「はいはい。じゃあ、一緒に夕食にしよう。ベスパ、ルドラさんの家に今日は夕食はいらないと連絡しておいて」


「了解しました」


 ベスパは空を飛び、ルドラさんの家まで私の発言を届けた。


 ――こんな時間帯まで冒険者ギルドの中に残った覚えはないな。皆、お酒を飲みまくってる。私だけ子供って、変な感じ。


 私は冒険者達がお酒を飲みながらどんちゃん騒ぎをしている中をフェンリルと共に移動した。

 そんなことしたら、無駄に目立つ。でも、多くの者が酒を飲み、頭脳指数が八以下のおバカになっているので気にしすぎる必要はない。


「すみません。パンとステーキ肉を一枚ください」


「はいよ。パンは一個銀貨一枚、ステーキ肉は銀貨五枚だ」


 食堂の受付にいた給食のおばちゃんみたいな女性は私に言う。メニューの名前は木板に書かれているが、お金の表記が見当たらなかったので少し心配だったが、手持ちで問題なく買える値段だった。


「へぇー、案外普通の値段なんですね……」


「ここは冒険者ギルドだからね。食事は冒険者にとって数少ない娯楽の一つだ。毎晩毎晩大金を取るわけにはいかないさ。ルークス王はそう言うところもちゃんとわかってるから、足りない金額は税金で賄っているのさ」


 おばちゃんは私の注文を用意しながら、微笑みを浮かべて簡単に説明してくれた。


 ――王様はとことん気が利く人なんだな。そりゃあ、あのアレス王子が自分に才能がないとか言うくらいだもんな。


「はい、おまちどう。パンとステーキ肉だ」


 お盆の上に白パンと木製の容器に乗ったステーキ肉が置かれた。ナイフとフォークも置かれており、親切心を感じる。

 ただ、冒険者の食事だからか、皿の上に置かれている焼かれた分厚い肉がワイルドに見えた。キャンプ飯みたいだな。

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