学園に『行くか』『行かないか』…
オリーザさんが経営しているパン屋へ行った日の夜…。
約5ヶ月ぶりの家族会議が行われた。
デイジーちゃんは既に、シャインの部屋で睡眠をとっている。
「お父さん、どうしたの?そんなに改まった顔をして…」
お父さんとお母さんは私の方を向いて、真剣なまなざしを向けていた。
「キララ…聞きたいんだが、この先どうしたいと思ってる?」
「え?そりゃあまぁ、牧場を手伝って…それなりにお金を溜めて…、『ウトサ』を買えるくらいお金が溜まったら、何かお菓子を作りたいな~って、思ってるけど?」
「学園に行ってこい」「学園に行きないさい」
「はい?」
それは唐突だった。
お父さんとお母さんは、私にいきなり『学園に行け』と言ってきたのだ。
「え…でもそんなお金、家には無いでしょ?今の現状から考えて、コツコツお金を溜めても…歳が入学年に合わないから、入学できないじゃん。確か…学園は12歳からでしょ。後1年半で入学金を金貨300枚溜めないと行けないんだよ。流石に…無理があるって。私よりシャインとライトの為に、お金を使ってよ。ライトとシャインは7歳だから、約5年間も猶予があるし。このまま順調にいけば、5年あれば金貨600枚くらい溜められると思う。その方が良いって。2人は私よりも才能で溢れているし、まだスキルを持ってないのがおかしいくらいだよ」
「姉さん!それはおかしいよ!何で姉さんがそんなことを言うのさ。僕とシャインは姉さんみたいになりたくて頑張ってきたのに!」
「い…いや、そう言う意味じゃなくって…。2人とも学園で勉強するだけで、どれだけお金が掛かるか知ってる? 1年間で金貨300枚だよ…。3年間だと金貨900枚…。確かに今牛乳の売れ行きはすごくいいけど…。この先もずっと売れるかは分からないし…」
「お父さん達は今、キララが学園に行きたいかどうかを聞いているんだ。お金の心配はしなくていい」
「いや…でも現実を…」
「キララ…こんなことを考えられるようになったのは貴方のお陰なのよ。数年前だったら考えられなかったわ。少し前まで、ただ毎日を生きてくだけで精一杯…でも、今はちゃんと未来を考えられる余裕が私たちに出てきたのよ」
「でも…」
「学園に『行くか』『行かないか』は、この国で大きな違いだ。行って卒業できれば今までの暮らしとは全く違った生活を送ることが出来る。給料のいい仕事について、それなりの家柄の人と結婚して幸せな家庭を築ける。お父さんとお母さんは学園に行けなかったからな…。才能のある、お前達には学園に行ってほしいんだ」
「私達みたいに、辛い生活を送ってほしくないのよ…」
「べ…別に私は…、今の生活嫌いじゃないし…社会のルールとか、すごく面倒くさいって言うか…」
「まぁ…キララは今10歳だ。学園の入学年まで、あと1年半の時間がある。考えて見なさい」
「は…はい」
私は自室のベッドに寝転がり、天井を見つめる。
「キララ様は学園に行きたくないのですか?」
「そりゃあまぁ、行きたいか行きたくないかと言われれば、行ってみたいけど…神父様が行ってたでしょ。この国の社会は『スキル重視』社会だって…」
「ああ…なるほど。って!それじゃあ、私がへっぽこっていう事ですか!!」
「まぁ…そうなるんじゃない。ベスパの能力は、私達が生活するうえで、すごく助けられてるけど…『虫使い(ビー)』って言うスキルが『スキル重視』社会でやって行けるとは思えないんだよね…。私はきっと、学園に行った時どうなるか不安なんだよ」
「た…確かに…我々には情報が少なすぎますね」
「学園に行けるのは、アイクみたいなすごいスキルを持った人ばかりなんだよきっと。ベスパも見たでしょ、フロックさんの攻撃…。あのデカブツの首を一撃で切り落とすんだよ。あんなのがうじゃうじゃいると考えたら…」
「そうですね…私達の最大火力でも、腕をはじき返すのがやっとでしたからね…」
「そうでしょ。あと1年半か…長いような…短いような…そんな時間だよね…。まぁ今、考えてても仕方ないし。私のやりたい事をやってみて、もし上手くいかなかったら、一つの選択肢として考えておけばいいか…」
私は固いベッドに寝述べったまま、深い眠りについた。
「そうですね…、難しい事は未来の私達に託しましょう…」
ベスパは声を弱めながら体にぴったりの木穴へ潜り込み、眠った。
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