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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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昼寝場所を探す

「ん、んんっ。あー、そこの君……」


 後方から私とミーナの話を聞いていた男。名をレオンという……。彼は、私に話しかけてきた。


「えっと……」


「ああ、わかっている、わかっているとも。私は君に話し掛けたくて話しかけているわけじゃない。たまたま、そこにいたのが君なだけであって……」


 後方にいる近衛騎士の方も目を細め、レオン王子のあまりにもこじつけな説明に呆れている。


「はぁ……。レオン王子、周りには多くの貴族の子供達がいるわけですよ。ただの平民に声を掛けるのはおかしいです……」


 私は口元に手を当てて小声で呟く。


「わ、わかっている。だから、身分の差をはっきりとわかるように私は上段に座っている。ここから、独り言のような、戯言のような……、まあ、そこで聞きたければ聞いていてくれ」


 どうやら、レオン王子はこの場で独り言をつぶやく際、私に話しかけて場所を移動するかしないかという問いを投げかけ、そのあと話し掛けるという方法を取った。


「んんっ。さっきの戦いは見事だった。あそこまで冷静に動ける少女はやっぱり見た覚えが無い。無駄な所が一つも無く、完璧な対処。御見それした」


 どうやら、レオン王子は私を褒めてくれているようだ。まあ、独り言なので返事は返さないが、会釈くらい返しておこう。


「そ、それだけだ。このような所で時間を使ってしまったな。いかんいかん」


 あまりにも似合っていない上級国民っぽい話し方に、少々笑いがこみ上げてくる。


「きゃーっ! レオン王子様よっ!」

「ああっ! ほんとだぁ。レオン王子様っ! 今日もお美しいですわっ!」

「レオン王子様、ぜひ、お茶会に参加してくださいましっ!」

「なんならレオン王子様、今からわたくしとお茶しませんかっ!」


 レオン王子が近くにいるとわかるや否や周りの女貴族たちが、白熱電球に集まる羽虫のごとく群がる。


「う、むぅ……」


 レオン王子は周りにいる貴族にもまれ、息苦しそうにしていた。


 ――王子も大変だな。にしても、もう体力が回復したのか。ポーションを飲んだのかな。


 私はお邪魔してはいけないと思い、すぐに場所を変える。


「あ、ちょ……」


 レオン王子は私の方に手を伸ばそうとするも、他の貴族が手を握り、目をハートにしている。それくらい、レオン王子がカッコいいと言うことだろう。


 リーダーシップがあり、勇気をもって動けるいい男だ。誰もが惹かれる王子様だし。だが、私にとってはただの子供。彼に靡くことはない。


「ふわぁー、ちょっと寝ようかな……」


「ふっ! はっ! おらああっ!」


 赤髪の少女が闘技場の広場でスパーリングしていた。相手は同じく赤い髪を持つ女性。どう見てもフェニル先生だ。


「わきが甘いっ! 魔力の使い方もまだまだっ! 動きを止めるな、そこを突かれるぞ!」


 フェニル先生は赤髪の少女の攻撃を片手で受け止め、すべて流している。


「は、はいっ!」


 赤髪の少女は先ほど倒れていたにも拘わらず、もう激しい運動をしている。さすがに頑張りすぎでは……。と思ったが、頑張れるのも才能だ。


「はぁ、はぁ、はぁ……。お姉ちゃん……。私、あの黒服の子に勝てるかな……」


「今のままじゃ無理だな。お前は実戦経験が無さすぎる。あのブラックベアーと対等に戦えたなんて驕るなよ。あれは牙や爪を抜かれ、食い物を少なめに抑えられたブラックベアーだ。本物はあの比じゃない。勝つか負けるかではなく、自分を高められればそれでいい。相手がだれであれ全力でぶつかっていけ」


「は、はい! もう一本、お願いします!」


「よし、こいっ!」


 フェニル先生は笑いながら、拳を構える。


「ひやぁ……、熱血一家……」


 私はここでも休めないと悟り、場所を変える。


「ここなら……」


「あぁ、なんで出ちゃったんだろう。特に何もできず、すぐに気絶しちゃったし……。ほんと、僕はなんでこんなところに来てしまったんだ。周りとの差が大き過ぎすぎるよ。もう、勝手に受験登録しちゃってくれて……」


 後方からブツブツと念仏のように喋る紫髪の眼鏡がいた。大きな魔導書を抱きしめながら、蹲っており、やばい研究者のような雰囲気を放っている。あまり近くにいると呪われそうだ。


 私は闘技場を出て、外で休憩しようと思った。そうすれば、他の人の声を聴かずに済むと思ったのだ。だが……。


「はぁ……。倒れちまったなぁ……」

「はぁ……。せっかく皆に応援してもらったのに、情けなく倒れてしまった……」


 橙色髪の少年と青髪の少年が小山座りしながら空を見ていた。可愛いかよ。


「パーズは良いじゃないか。寝たら全回復するんだからよ。俺なんて、スキルを使ったのに普通に吹き飛ばされて伸びちまったんだぞ。次の戦いでどうなるか目に見えてるぜ……」


「確かに体力なんかは全回復するけど、僕が強くなるわけじゃないし……。汎用性があるライアンの『シールド』の方が強いと思うよ」


「いやいや、パーズの『完全睡眠』の方が絶対に良いって。努力し放題じゃねえか」


「いやいやいや、努力しても限界が知れてるよ。ライアンの『シールド』の方が便利だって」


 橙色髪の少年と青色髪の少年は互いのスキルについて話し合っていた。


 ――『シールド』と『完全睡眠』か。何ともどちらもよさげなスキルだ。特に『完全睡眠』は気になる。私もそんなスキルがあるなら欲しい……。と言うか、二人共知り合いだったんだ。


「くっ! こんなところでくよくよしてられねえぜ! パーズ、さっさと鍛錬だ!」


「ええぇ……。い、今は休憩にしようよ……。さっきまで戦ってたんだからさ……」


「お前は『完全睡眠』で全回復しているだろうが。俺より調子がいいはずだぞ! そんなくよくよしてるんじゃねえ!」


 橙色髪の少年は熱く、青髪の少年に話しかける。


「うう……。わかったよ……、やればいいんでしょ、やれば……」


 青髪の少年はなよなよしく返事して立ち上がった。両者の性格が正反対すぎて見ていて面白い……。木陰からこっそりのぞいていると、ストーカーみたいだなと思い直し、場所を変える。


 闘技場からあまり離れ過ぎてもいけないと思い近くの泉へとやって来た。学園の中に泉があるとか……。まあ、溜め池みたいなものか。


「はぁ……。バタフライ、ごめんなさい。二匹も死なせてしまって……」


 黒髪の令嬢らしき人物が泉の近くで正座し、周りに飛ぶバタフライたちに話しかけていた。冬なのに、蝶が飛んでいるなんて……。と思うが、彼女も私と似たようなスキルを持っていると思われる。そのおかげで、バタフライが一年を超せるのだろう。


 ――いや、美女の周りに綺麗なバタフライがひらひらと舞っていて幻想的過ぎる……。ビーなんて、幻想的どころかブンブンうるさいのに……。バタフライは翅音が全然聞こえてこないんだ。


 バタフライはビーほど翅を早く動かさないので、音が全く鳴っていなかった。その分、早く飛べないようだ。戦闘面での活躍が凄かった印象がある。なんせ、あのブラックベアーを足止めしていたのだ。なんなら、操り、他のブラックベアーと戦わせていた。あの戦法は中々やっかいだと思われる。強い味方が操られたらもう、大変だ。


「はぁ……。私、この学園に入学できるのかしら……」


 黒髪の令嬢はため息をつき、人差し指にバタフライを乗せて心境を聞いてもらっている。周りに友達がいないのを見るに、知り合いの貴族がいなかったのだろう。そう考えると王都以外からやって来た貴族の可能性が高い。


 ――平民が貴族に話しかけるのは失敬に当たるってルドラさんは言っていたよな。話しかけられるのは同じくらいの人。だから、私は橙色髪と青色髪の少年、銀髪獣族のミーナくらいにしか話しかけられないわけか。


「ああ、もう、寝られる場所がないからフルーファの背中で寝る……」


 私はフルーファの背中に飛び乗る。モフモフの毛皮が暖かく、絨毯のようだ。


「たく……。魔物使いが荒い女王様だ……」


 フルーファは私を乗せたまま、泉の近くの日向に移動し、かがむ。フルーファの毛皮が黒いお陰で日の光を吸収し、ポカポカ陽気で最高の昼寝場になった。

 私は二〇分くらい昼寝したころ……。


「あ、あの……。起きてますか……」


 私の頬に何かしら触れられる。


「う、ううん……。ふぇ?」


 私は涎が垂れた口もとを拭い、目を開ける。


「え、えっと、さっき一緒に戦ってくれた方ですよね。先ほどは倒れてしまい、申し訳ありませんでした。あと、助けてくれてありがとうございました」


 目の前にいたのは黒髪の令嬢だった。彼女は頭をペコリと下げ、長い髪を耳に掛ける。ふわっと香る花の匂いが魅力的で、近寄って嗅ぎたくなるくらい良い匂いだった。ラベンダーっぽい香りがする。こりゃ、バタフライが寄り付くのもわかる……。


「い、いえ。私はただ、最善策を述べただけで、頑張ったのはあなたですよ。あと、私は貴族じゃないので、貴族の方が話かけてくるのは……」


「貴族の方じゃなかったんですか? どおりで社交界で見受けない方だと思いました。あなたほどカッコいい殿方がいれば多くの者の目に留まっているはずですもの」


 ――私、男に見られてるのか。まあ、仕方ない。こんな格好をしていたら、見間違えるのが普通だ。


「あはは……。えっと、私、女なんですよ……。ドレスだと動きにくいと思いまして……」


「え……。お、女の子……」


 黒髪の令嬢は目を丸くし、私の胸を見てきた。そのまま、ふっ……と鼻を鳴らしていた。


 ――あからさますぎるだろ! 


 まあ、彼女の胸は膨らみ、一二歳とは思えないほど女性らしく成長している。私が女だと聞いて、驚くのも無理はない。


「す、すみません。無礼なことを言ってしまいました」


 黒髪の令嬢は頭を何度も何度も下げ、謝って来た。

 悪い方じゃないと思われる。なんせ、平民の私にも敬語を使い普通に話しかけてくれるのだ。それだけでも私を対等に見えてくれていることがわかる。


「別に気にしないでください。慣れているので……。えっと、初めまして。キララ・マンダリニアと言います。よろしくお願いします」


 私は胸に手を当て、軽く会釈をする。

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