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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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残り二〇分

「ぐぬぬぬぬ……。あの犬ころ、私もキララ様の熱いキッスを受けたいですっ!」


 ベスパは翅をブンブンと鳴らしながら、ヘロヘロになっている獣族の少女を私の後方に置く。


「ベスパは無理。生理的に受け付けないから。ま、ペットの頬にキスするくらい普通だし、それでやる気をみなぎらせてくれるのなら、安いもんだよね」


「むきー! フルーファだけズルいですぅー!」


 ベスパは空中で乱舞していた。


「仕方ないでしょ。無理なものは無理なんだから。そもそも、ベスパは私だし、自分同士でキスなんてできないでしょ」


「確かに……」


 ベスパはやけに納得しながら冷静になった。


「さて、北側と西側がどうなっているかな……」


 私は北側にいるレオン王子と橙色髪の少年を見た。


「はぁ、はぁ、はぁ……。レオン王子……、この化け物にどうやったら勝てるんだ?」


「はぁ、はぁ、はぁ。首を落とすか、魔石を壊すかのどちらかしか魔物を倒す方法はないよ」


「こいつの首、何センチメートルあるんだよ……。骨だって俺の頭くらいの太さがあるんじゃねえか……。筋肉は俺達の八倍以上はあるぞ……」


「つまるところ、今の私たちにあの魔物を倒すことは不可能……。えっと、君のスキルは攻撃特化型?」


「いや、そうじゃない……。防御特化型だ」


「なるほど……。私のスキルは援助型だ。だから、あの魔物に攻撃を与えるために物理火力がいるわけだけど……、どう考えても無理だ」


 レオン王子と橙色髪の少年はブラックベアーの猛攻に苦しんでいた。午前中の実技試験終了まであと二〇分だが、両者共に疲労が溜まっているのか脚がガクガクだ。

 レオン王子は剣すら握れない状態で、顔から汗を掻きまくっている。


「もう、体力が無い……。このままだと、じり貧だ……」


「あと二〇分、どうやって逃げるか……。もう、全力疾走も出来ない……」


「俺がスキルを使って時間を稼ぐのもありだが、魔力量が少ないせいで今だと何分持つか、わからねえ……」


「このブラックベアーを私たちが引き付けないと他の者のもとに向ってしまう。すでに三名が倒れた。今、一人でブラックベアーを引き留めているのはキラ……、じゃなくて、あの黒服の少女だけだ」


「と言うか、なんで、ブラックベアーを拘束して一人で相手できる余裕がまだあるんだよ!」


「私たちと経験の差が違うんだよ……多分」


 橙色髪の少年とレオン王子は私の方を向いて、目を細める。魔物から視線を放したら駄目だって言ってるのに……。私は視線を外していてもベスパが見ているから問題ない。


「あはは……。が、がんばってまーす」


 私は頑張っているアピールを見せる。実際に頑張っているのはフルーファの方だが、仕事してます感を出す。

 女子が頑張っているのだから、自分達も頑張らなくてはと男子は思う者だ。いつの時代も女子に負けると男は悔しいって思うだろう。その気持ちを活力にしてほしい。


「はぁ、あんな可憐な少女が頑張っているんだ。私たちも頑張らないと……」


「レオン王子、あの子は男か女かわかるのか?」


「……君、案外失礼だね」


「いや、ここからじゃ、どっちかわからねえだろ」


 ブラックベアーはちんたら話し合っている橙色髪の少年とレオン王子に向って走る。


「くっ! あと二〇分、王族として……、一人の男としての意地を見せる!」


「ああっ! こんなところでへばっていたら、親父に笑われる!」


 レオン王子と橙色髪の少年はやる気に満ち溢れた表情で、ブラックベアーに立ち向かった。


 どうやら両者共に逃げるのではなく、攻撃を躱しながら戦うらしい。近距離で躱して行けば、その分体力の消耗は減ると考えたのだろう。でも、ブラックベアーに近距離戦を挑むなんて……、中々の自殺行為だ。


 ブラックベアーの攻撃は暴走機関車のようなもの。動き続け、簡単に止まらない。


「くっ! 本当に早いなっ!」


 レオン王子は攻撃を躱しきれず、ブラックベアーの平手打ちをくらい、吹っ飛んだ。もうゴルフボールかと思うくらいぼっかーんと吹っ飛ばされ、石製の壁にぶつかる。


「レオン王子っ! ちっ、このデカブツ! 『ロックスタンプ』」


 橙色髪の少年は土属性魔法で生み出した巨大な岩のハンマーで、ブラックベアーの頭部に打ち込む。ヘルメットが凹んだような破壊音が聞こえると、ハンマーの方が粉々になっていた。

 平然としているブラックベアーは目の前にいる橙色髪の少年に向って一瞬で突進をかます。


「ぐっ! 『シールド』」


 ブラックベアーの突進が橙色髪の少年に当たらず、光る透明な壁に当たり、止まる。


 ――あ、スキルだ。


 この戦いの中でスキルを使うのはあまりよろしくない。別に実技試験の点数が減るわけではなく、午後の実技試合で戦う場合、相手にスキルを知られているのと知られていないのとでは勝利が傾くからだ。なので、今までほとんどの者がスキルを使っていなかった。

 でも、橙色髪の少年は土壇場でスキルを使い、ブラックベアーの攻撃を防ぐ。


 ――あの壁。カイリさんの『バリア』に似てるな。ほぼ同じな気もする。良いスキルだけど、魔力消費が激しいって言う弱点があるんだよね。


 ブラックベアーは『シールド』に突進した後、身を引き、もう一度突進した。


「くっ、出し惜しみしてられねえ。『シールド』」


 またしても橙色髪の少年の前に透明な壁が生まれる。


「グラアアアッツ!」


 ブラックベアーは透明な光る壁を見た瞬間、身をスケート選手のように回転させ、壁を回避する。


「つっ! 対応早すぎるだろ! ぐはっ!」


 橙色髪の少年はブラックベアーの突進をもろに受け、トラックに衝突された自転車の如く、吹っ飛ぶ。

 普通なら全身骨折、内臓破裂の即死だが、防御魔法が張られているため、死なない。だが、普通に身が軋むほどの痛みがあるのか、橙色髪の少年は倒れたまま身動きが取れなくなっていた。


「はぁ、はぁ、はぁ……くっそ、私が伸びている間に……すまない」


 壁に衝突して気を失っていたレオン王子は目を覚まし、座り込んでいた。目を覚ましただけで、動けるわけではなさそうだ。


「グラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」


 北側のブラックベアーものさばらしになり、制御するものがいなくなった。


「んー、厳しい状況だ……。ベスパ、とりあえず橙色の少年を壁ぎわに非難させて」


「了解です」


 ベスパは倒れ込んでいる橙色の少年の襟首を持ち、壁際に寄せる。


「じゃあ、私がブラックベアーを止めるとするか」


 私は弓を構え、矢筒から矢を一本取り出す。


「グッと引いてぱっと!」


 私は弓に矢を掛けて弦を引き、すぐに放つ。

 何の魔法も付与されていない矢は北側のブラックベアーに向って山なりに飛んで行く。真っ直ぐ放つと、百メートル以上離れているため届かずに地面に当たってしまうと思った。

 弦の力と落ちる時の重力が合わさった矢がブラックベアーの体にぽてっと当たる。

 遠くからただ打っただけの矢では分厚い皮膚に当たりすらしない。だが、私の方に意識を向けさせることはできた。


「グラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」


 巨大なブラックベアーが私に気づき、地面を抉りながら猛追してくる。


「さて、どうやって相手をしようか。鎖剣で剣舞でも披露する? って、私は剣術使えないし」


「お、おい。あの受験者にブラックベアーが突っ込んでくぞ」


「ああ、どうするんだ。さっきも一体拘束してるし、また拘束するのか……」


「男か女かわからないな。あれだけ動けたら男だろう」


「は? あんな綺麗な顔している男はいないだろ、女だって」


 周りの観客席から、残っている私に対する声が聞こえてくる。

 私は女なのに、中性的な服装のせいでわかってもらえなかった。


「んー、まあ、剣で戦えるのか一回やってみるか!」


 私はシャインがコクヨと一緒に鍛錬している姿を長い間見てきた。その情報は脳内に残っている。私の貧弱な体ではシャインの動きを完全に模倣することはできない。でも、ブラックベアーの動きは大概わかる。

 動きが予測できるのなら、躱せない攻撃はない。


「死なないのなら、こんな良い戦闘経験はない! しっかり次につなげさせてもらうよ!」


「キララ様、やる気満々ですね」


 ベスパは頭上から話かけてきた。


 ――ベスパ、三六〇度八包囲からビーで映像を撮って。私とブラックベアーの動きを解析。


「了解です」


 ベスパは光り、ビーを八匹用意した。空間をビーの視界で認識し、動きを予測すると言うバレルさんに勝った時の戦い方で剣術を使う。

 以前は拳だったので、今回は日ごろの成果を確認し、足らない部分を補う実践練習だ。


「じゃあ、行こうか」


 私は左腰から鎖剣を鞘から引き抜く。真っ黒な剣身が異質を放ち、私の微笑みにブラックベアーが一瞬たじろいだ。


「グラッ……」


 ブラックベアーは頭がいい魔物だ。私の殺意を一瞬で感じ取り、脅威と思う相手に対して無暗に戦いを挑んだりしない。

 私の前からすぐに移動し、西側にいる赤髪の少女と黒髪の令嬢のもとに移動した。


「ちょっ! なんで避けるのっ!」


「キララ様の顔が怖かったからですよ」


 ベスパは私の方に手鏡を向ける。


「うわ、ちょ。怖い顔……」


 私は殺意に満ちた表情を浮かべており、すぐに顔をぐりぐりとマッサージして笑顔を保つ。


「くっ! こっちに来やがった!」


 赤髪の少女はバタフライと共に一頭のブラックベアーを引き付けていた。それでもギリギリの戦いなのに、もう一頭増えたら、さすがに賄いきれない。


「わ、私が……」


「無理だっ! サキアは魔法しかできないでしょ。私が何とかするっ!」


 赤髪の少女は引き着けていたブラックベアーと私に怖気づいて逃げたブラックベアーの両方を相手に肉弾戦に入った。そんな荒業が出来る子供はシャインくらいだけかと思っていたが、赤髪の少女は歯を食いしばりながら、こなしていた。

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