表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

826/1191

四対八

「はああああっ!」


 獣族の少女は三頭目の頭を思いっきり殴りつけた。

 ブラックベアーは弾き飛び、転がって方向を変える。


「ああ、来た……」


 青髪の少年は手を震わせながら、剣の柄を握る。


「はわわ……。こ、こっちに来てますよ……、本当に大丈夫なのか……、絶対に死なないんだよな……」


 紫髪の眼鏡も身を震わし、青髪の少年とくっ付いている。すでに仲良しになっているようだ。


「「「「グラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」」」」


 四頭のブラックベアーが四方向に吠えた。

 北、西、東、南の壁際に二人ずつ……、私の相方である獣族の少女は中央にいるけど……。とにもかくにも、二人組で助け合いながら一時間耐えきるしかない。


「おらああああああっ!」


 一回目二回目共に実技試験に出ていなかった獣族の少女は元気があり余っているらしく、勢いよく踏み込むと激しい轟音が響きわたる。十分な加速が乗った拳がブラックベアーの腹に打ち込まれた。

 だが、ブラックベアーは後ろ足で地面を擦るように後方にずれただけで、顔色は涼しい。ダメージが全く入っていないようだ。


 魔法耐性があると言うのに物理耐性も普通に高いと言うぶっ飛んだ魔物……。普通の冒険者でも倒すのが難しいのに戦う技術を本格的に教わっていない学生の実技試験に出す? あのジジイ、頭がおかしいんじゃないの。


 殴られたブラックベアーは獣族の少女に向って吠えた。空気圧で少女の体が押されるほどの咆哮が放たれる。


「くっつうううう!」


 獣族の少女は地面に這いつくばり、耳を塞ぎながら咆哮を耐えていた。

 獣族の耳は人の何倍もいいらしいので、苦しい状況だろう。なんせ、遠くにいる私ですら鼓膜が大きく震え、頭の中がガンガンする。


「でも、丁度良い。そのまま、しゃがんでて……『ウィンド』」


 私は弓と矢を持ち、弧に掛ける。矢先に止まっているベスパの前に魔法陣を展開した。緑色っぽい光を発する魔法陣が出現したと左手の指先で指差し確認したら、弦を放した。


「ひゃっほーっ!」


 矢先に止まっていたベスパは魔法陣に入る。彼は魔力体なので、魔法陣は彼が入っても発動する。矢とベスパが『ウィンド』を纏い、風を巻き込み矢が勢いよく飛んだ。


 魔法の風を纏い、貫通力が増した矢は獣族の少女に食いつこうとしていたブラックベアーの耳を突き抜け、北側の石壁に刺さる。

 その際、高い石壁に突き刺さった矢を中心に巨大な蜘蛛の巣状のひび割れを作ってしまう。


 私は威力を制御したつもりだったのだが、少々やりすぎたか。


「な、何が……」


「硬い石壁に木製の矢が突き刺さってる……」


 北側にいるレオン王子と橙色髪の少年が石壁の方を向いてしまい、ブラックベアーから目を反らしていた。戦いの途中は敵から視線をそらしてはいけないのに……。


「二人共! ブラックベアーに集中!」


 私は通る声で叫び、レオン王子と橙色髪の少年に迫りくる恐怖を伝えた。


「なっ!」


 両者が振り返ると、恐怖の権化と言っても過言じゃない真っ黒なブラックベアーが波を模しているように走っている。

 相手に攻撃を読ませないための走法で、蛇行運転のようだ。

 実際、あの巨体なら二トンは軽く超えていると思うし、速度も八〇キロメートルくらい出ている。

 高速道路で蛇行運転している普通自動車が一二歳の少年たちに襲いかかっている状態を考えてもらえば、やばい状況だとわかるだろう。


 肺活量が化け物のブラックベアーは蛇行しながら叫び、レオン王子と橙色髪の少年を盛大に威嚇していた。


「別れろっ!」


 レオン王子が叫び、橙色髪の少年と反対方向に移動する。


 髪色が目立つレオン王子の方にブラックベアーが突進した。あのままだと逃げられる訳がないが、どうか無事でいてくれ。


 私の視界に映っている耳を貫かれたブラックベアーの方に視線を戻すと、頭を振り、もがていた。

 感覚の鈍い耳たぶにピアス穴を開けられるより痛いだろう。と言うか、いきなり耳を裂かれるような音に恐怖したのかもしれない。


「モフモフちゃん! 立てる!」


「も、もちろん……! って、モフモフちゃんってなに!」


 獣族の少女は顔や手足は人間だが、耳と尻尾が狼に似ており、モフモフしていたので私が勝手につけたあだ名だ。


「名前がわからないから、そう言っただけ。今、ブラックベアーに畳みかけてっ!」


「わ、わかった!」


 獣族の少女は走り、悶えているブラックベアーの顔面に飛び蹴りを叩き込む。先ほどよりも威力の高い攻撃が斜め四十五度で地面に突き刺さるように放たれたのでブラックベアーの後頭部が地面に打ち付けられた。

 激しい打撃音が闘技場に響くと地面が半球状に抉れており、顔を地面に突っ込んだブラックベアーが見える。地面からブラックベアーが生えているかのようだ。


 獣族の少女は、立ち膝になり息を荒げていた。


 頭が埋もれているブラックベアーの手先がピクリと動く。


「モフモフちゃんっ! そのブラックベアー、まだ、生きてるよっ!」


「なっ!」


 獣族の少女が離れると、ブラックベアーは脚を振り上げ、手の平を地面に付ける。三点倒立のようになった状態で脚が後方に移動すると遠心力によって頭が地面から抜けた。


 あいつら、あの見た目で体操選手くらい運動神経が良い。本当に魔界の方々、強すぎる魔物を作っちゃ駄目だって……。


 ブラックベアーは咆哮を放ち、自分の強さをいもしない雌に向って呼びかけている。

 耳から出ていた黒い血液は止まり、真っ赤な舌が口からまみえた。地面が陥没するほどの蹴りを頭に受けてもほぼ無傷なんて頑丈すぎる。


「な、なんでこんなに硬いの……。でも、こいつにだけは負けたくない! 村の皆を脅かしやがって……、私がぶっ殺す!」


 獣族の少女はブラックベアーに恨みがあるらしく、気を荒くしていた。だが魔物討伐で大切なのは落ち着くことであり、冷静な状況判断が求められる。そうしなければ、死ぬのはもともと弱い人間の方だ。


「モフモフちゃん、落ちついて。倒す必要はないんだよ、逃げ伸びれば良いの!」


「でも……」


「今、本気で戦っても勝ててないでしょ。体力が満タンの状態で戦ってブラックベアーはほぼ無傷。自分の実力を知るのも戦いの内だよ。このまま戦っていても体力が減るのは目に見えている。対するブラックベアーは欲求を活力に動いている半永久機関だから長い間動き続ける。今のままじゃ倒されるよ!」


「く……」


 ブラックベアーは叫び、地面を蹴ってすぐに時速六〇キロメートル近くで走る。


「はやっ! くっ!」


 獣族の少女はブラックベアーの攻撃を紙一重で躱した。そのまま長い、回避と攻撃の連鎖が繰り広げられる。今は彼女に任せても問題なさそうだ。


 私は南にいるのだが、全体が円状なので北、西、東側も良く見える。


「うわあああああああっ!」


 レオン王子は半泣きになりながらブラックベアーと追いかけっこしていた。


「おらああああああっ!」


 橙色髪の少年が遠方から、土属性魔法で作ったブラックベアーの体に槍を打ち込み、隙を作っていた。


「こっちだっ! 掛かってきやがれ、デカブツ!」


 橙色髪の少年が叫び、ブラックベアーをおびき寄せている。


 ――北側の方は連携が取れてる。男二人組だし、どちらも体育系、問題なさそうだ。


 私は西側にいる女子二人を見た。


「おらあああっ! おらあっ! おらあああっ!」


 赤髪の少女がブラックベアーの顔面を殴り、蹴りを繰り返した。だが、魔法の類が全く効かないブラックベアーに熱々の炎は効果が無い。

 ほぼ魔法の出力だけで戦っているような状態だ。だが、ブラックベアーが叫んだり吠えている様子はない。


「どうか、そのまま眠っていて」


 どうやら、後方にいる黒髪のご令嬢が原因らしい。


 ――ブラックベアーは魔法の類が効かないのに、どうやって眠らせているんだ?


 私はブラックベアーの上空に目をやった。すると、一匹の青紫色のバタフライが飛んでいた。

 まあ、見かけはとても美しい蝶だ。アオムラサキと言う日本の国蝶に見えなくもない。

 その蝶がブラックベアーの上でひらひらと舞っていた。そのまま、紫色の鱗粉を落としており、嗅いだ魔物の眠気を誘っているのかもしれない。


 よく見れば、バタフライの体が光っており黒髪のご令嬢のスキルだとわかる。


「はああああっ! おらああああああっ!」


 赤髪の少女は寝ぼけているブラックベアーをサンドバックのように何度も何度も殴り蹴りを繰り返し、倒そうとしている。ただ、無駄に攻撃する必要が無いと思う。だって眠らせておけば逃げ切れるわけだし。


 ――それともなんだ、倒した方が得点が良いからとか、攻撃した方が良いと思っているのだろうか。普通、魔物に拘わらないのが一番適切な対処方法なのに……。


「グラ……」


 ブラックベアーは瞼をゆっくりと上げ、赤髪の少女の攻撃を軽々と躱した。


「くっ! もう、眠りから覚めたの……」


 赤髪の少女はいったん下がり、体勢を立て直す。だが、初速が六〇キロメートルを超える化け物が目の前にいるのだ。ちんけな後退は相手の攻め入る間になってしまう。


 ブラックベアーは巨大な体を使った一番合理的な攻撃、突進を繰り出した。

 赤髪の少女の前に死の壁が迫っていた。


「くっ!」


 赤髪の少女は腕を顔の前に重ね、防御体勢に入っている。

 普通なら死んでいるが、今は魔法が付与されているので、死なない。まあ、恐怖は植え付けられるだろうが……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ