再度、街へ向かおう
「ふ~、もうお昼か、やっぱり時間が過ぎるのは早いな。それにしても、今日は凄くいい天気。洗濯ものが、よく乾きそう」
私が午前の仕事を終え、一旦家に帰ろうと思っていた頃、ベスパが上空から飛んできた。
別れてからどれくらいだろうか、体感…10分も経っていないだろう。
「キララ様、注文通りに作れているか、一度見てもらえませんか。だいたいは完成したのですが」
「え、もうできたの?やっぱり早いな」
ベスパについて行くと…そこには、牛乳瓶と全く同じ色の箱が地面に置かれている。
「完成したと言うか、こういう箱になりましたけど…。よろしかったでしょうか?」
「お、箱だ…色はいつも通り茶色っぽいけど」
その箱は、ビックリ箱にそっくりで、開けたら中から蜂が飛び出してくるのではないかと、思ってしまうほどのクオリティだった。
びっくり箱についている上蓋を開けると、しっかり二重構造になっている…。
ーーこれで氷が溶けにくいはず。見かけは、悪いけど。とりあえずクーラーボックス第1号の完成かな。
「うん…即興作品にしては、いい出来だと思う」
――この素材…本当にプラスチックみたい…、ちょうどよい耐久性と軽さ…。ほんと、よくこんな物を作れるよな。ベスパの友達。多分『ビー』達なんだろうけど…。
私は、牛乳パックをクーラーボックスに10本詰める。
丁度、少し隙間が空いているので、この隙間にライトの魔法で出してもらった氷を入れる。
「これで良し…これなら街までは持つでしょ。それじゃあ、お爺ちゃん荷台借りるね」
「ああ、それは良いが…街に何しに行くんだ?」
「牛乳の試し売りに行ってくる。もしかしたら常連さんに、なってくれるかもしれないし」
「街での販売許可は得たのか?大体的に売るとなったら必須になってくるぞ」
「販売許可書…は貰ってないけど、1人だけに持ってくだけだから。大丈夫、大丈夫!」
「そうだと良いが…」
レクーには、酷使してしまった分、目一杯休んでもらうことにした。
今日は、変わりに舎弟君が私と荷台を引いてくれるようだ。
「舎弟君、大丈夫?重くない?」
「はい、大丈夫っす。これ位なら全然余裕ですよ。まぁ、久々に荷台引くんで、ガタつくかもしれないっすけど」
「全然大丈夫、揺られるのは、慣れてるから」
――牛乳パックの入っている箱も多少の揺れなら、ビクともしないだろうし。
私は、先日までとは違い、ただの1本道を時の流れがゆっくり感じるほど…まったりと移動している。
空を見上げながら、天気のいい日の風を受けとても心地がいい、こんな時に昼寝ができたら最高なんだろうな…と思いつつも、今は手綱を引いているため眠ることはできない。
「やっと見えてきた…街の門」
私はいつも怒鳴られている兵士さんと目が合った。
できれば目を合わせたくなかったが…入るためにはちょっとした手続きが居るんだよな。
「今回は控えめのバートン何だな、それにスピードも出しすぎず大人しい。いいバートンじゃないか。いつもこうだと有難いんだがね」
「す…すみません」
「まぁいい、入っていいよ」
「ありがとうございます」
私は、街の中に入り、速攻でオリーザさんのパン屋へ向った。
――大分待たせてしまったから…謝らないと。
昼時を少し過ぎているが、まだパンの香ばしい香りが大通まで広がっている。
――パン屋さんのある通りは…まぁ、お昼時も過ぎてるし丁度空いてきたころかな。
舎弟君を、道の端へ止めて置き、パン屋さんに向かう。
「すみません…キララですけど…」
恐る恐るパン屋さんの中に入って行く。
すると中から、顔色の悪い男の人が出てきた。
「あ…あの、キララです。今日は、前約束していた牛乳を持ってきました。えっと遅れてしまって申し訳ありません。お金は今回要りませんのでどうか貰ってください…て、あれ?」
半目になりながら、その男性の表情を見る…とオリーザさんだった
「あの…大丈夫ですか?顔色悪いですけど、体調は大丈夫ですか?」
「あ…ああ、最近ちゃんと寝れてないんだ…って、誰かと思ったら嬢ちゃんか…」
そう言ってオリーザさんは倒れた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
もし少しでも、面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、差支えなければブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。
毎日更新できるように頑張っていきます。
よろしければ、他の作品も読んでいただけると嬉しいです。
これからもどうぞよろしくお願いします。