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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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神獣に好かれる

「ぐがー、すぴぃー、ぐがー、すぴぃー」


 部屋のカーペット、お腹を出しながら眠っていたのはウォーウルフのフルーファだった。


「はぁ、フルーファ。ご主人様が帰ってきましたよー」


「ふがっ……。ああ、なんだ、キララ様か……」


 フルーファは私が帰って来たと言うのに寝返りを打ち、あくびをしたあと、また眠りについた。ほんと、躾けのなっていない駄犬だ。


 私はフルーファに抱き着き、ただいまのキスをするとフルーファもやる気になったのか、お座りして私に頬擦りして来た。

 私の方からキスしてしまったのは飼い主として失格だが、まあいいだろう。


 私が部屋に到着してから料理がすぐに運ばれてきた。

 私はルドラさんから借りた黒色の服を脱ぎ、部屋着に着替える。

 パリッとした服じゃなくなり、気分が落ち着いた。その状態で食事がとれるありがたみも感じる。


「では、こちらの服を洗濯してまいります」


 メイド長は料理を運んだあと私が着ていた服を取り、部屋を出て行った。


「あ、ありがとうございます……」


 私が感謝する前にメイド長はスタスタと出て行ってしまった。

 少々気が早すぎる。


 とりあえず、私は遅めの夕食を得た。

 料理数は少なく、軽い食事だった。夕食にしては物足りなかったが、夜中に大量に食べるのも体に悪いので配慮してくれたのかもしれない。

 明日の朝、沢山食べて体力を付けよう。


「明日は実技試験だし、早く寝ないとな。今日は勉強せずに、お風呂にしっかりと使って疲れを癒そう」


 私はお風呂場に向かった。すでにメイドたちがにこにこ笑顔を浮かべながら入浴の準備をしており、今か今かと待ちわびている。


「えっと……。皆さん、美容に大切なのは睡眠なので、無駄に夜更かししたらもったいないですよ」


「いえいえ、私達はキララさんのお世話をする係りですから、気にしないでください」


 メイドたちはにっこり笑って私の服を脱がせたあと、自分達も服を脱ぎ共にお風呂に入った。

 まあ、女性同士だから良いのだけど……。少々窮屈だ。何が一番窮屈かって……そりゃ胸だろうよ。皆、デカすぎる……。


 私はメイドたちの乳に包まれながら入浴し、髪や体を丁寧に洗われて貴族になったような気分に陥った。

 だが、何でも自分でやりたい私は結構疲れた。髪を洗われる程度ならいいが、体を洗われるのはくすぐったすぎて敵わない……。


 私が入った出汁風呂は多くのメイドたちを癒し、美貌を与えた。

 赤ちゃんのようにスベスベな肌に潤った髪、軽く飲んでいる者までいる。

 私はそこまでして美容に気を使いたくないなと思いながら、風呂場を出た。


 まあ、メイドたちも乙女なわけでカッコいい殿方と結ばれたいと言う気持ちが少なからずあるのだろう。

 ルドラさんの家で働いているメイドたちも家に帰れば貴族の三女だったりするのだろうか。

 調べていないからわからないが、貴族が多い王都だ。きっと小貴族の者たちに一般常識を教える教育方針とかあるのだろう。って、色々考えても仕方ないか。


 私は脱衣所に戻り、体を布で拭いた後、体に布を巻き着けて牛乳を一杯飲む。


「ぷはあーっ! しみるぅうっ!」


 冷えた牛乳がカラカラの体に沁み渡り、私の疲労を溶かしていった。


「よし、明日も頑張るぞ」


 私はショーツを穿き、キャミソールを着る。バスローブに似た寝間着を羽織り、寒さ対策した後、部屋に戻った。


 私の上着に入っていた杖が机の上に置かれており、洗濯中にメイド長が気づいたのだと、理解する。杖をローブの内側に入れ、しっかりと保管。


 懐中時計を見るとざっと午後一〇時三〇分。少々遅くなったが問題ない。

 日課の魔法陣一〇枚を描き、明日使うであろう武器類の手入れをこなして眠気が来るのを待つ。


 フルーファの体をコームでブラッシングし、毛並みを綺麗に整えてあげる。今日、ぐーたらした分、明日に沢山戦ってもらわないとね。


「ふふふっ……。フルーファ、明日は頑張るんだよ……」


「な、なんか怖いんだが……」


 フルーファは真っ黒な毛が生えた尻尾を丸め、委縮する。


 私は寝る準備を整え、ベッドに入った。フカフカの羽毛布団を被り、目を瞑る。


「ふぅ……。明日も頑張るぞ……」


 私はぐっすりと眠りに付き、明日の実技試験を戦い抜くための英気を養った。


 ☆☆☆☆


 二月一九日。ドラグニティ魔法学園の試験二日目。


「ふわぁー、よく眠った……。今の時刻は午前五時……。ちょっと早めの起床だな」


 私が目を覚ますと窓ガラスをコンコンとつつく真っ赤な存在がいると気づいた。まだ、外は薄暗い。そのため、炎の明りがよく映える。窓際にいる真っ赤な神々しい輝きは太陽を思わせた……。


「なんか……。聖なる鳥がいるんですが……」


「キララさん、キララさん……。私、あなたの魔力が食べたいのです……」


 インコほどの聖なる燃え盛る鳥が嘴で窓をつついている。


「はぁ……。私の魔力は神獣を魅了する力でもあるんだろうか……」


 私は魔力を込めた水をコップに移した。

 すると、頭の中におっさんの声が聞こえてくる。


「キララ、われも腹が減ったぞ」


 どうやら、もう一匹の神獣もお腹が減ったらしい。


「いいよ、丁度魔力を与えるところだったし」


 私が許可を出すと、私の横から真っ白いモフモフした存在が飛びついてきた。いつの間に、部屋の中に移動したのか全くわからない。


 真っ白いわんこの頭を撫でて宥めた後、窓を開ける。すると、神々しい真っ赤な鳥が、部屋の中に入って来た。そのまま、わんこの頭の上に止まる。


「おい、フェニクス。われの頭はお前の止まり木ではない」


「あら、フェンリル。主がいないあなたは私以下の存在でしょう。控えなさい」


「ふっ、われが恐怖するわけがなかろう。ここで食いあってもよいのだぞ」


「主がない状態で、力が使えるのかしら?」


「ちっ……。うざい鳥だ……」


 どうやら、フェンリルとフェニクスの仲はあまりよくないらしい。口喧嘩が勃発し、軽いいざこざが起きている。


「えっと、フェニクスはフェニル先生から離れても良いの?」


「はい。おおむね自由行動ですから、問題ありません」


「へぇ……。えっと、魔物とかルークス王国の法律で記章を付けないといけないんじゃ……」


「記章はついていますよ」


 フェニクスは翼を広げ、右翼に二つの菱形が重なったような記章を見せてくる。


「あ、本当だ。なら、いいね」


 私はフェンリル用の器に魔力をふんだんに込めた魔力水を入れ、コップと器を差し出して神獣たちに水を飲ませる。


「ぷはあーっ! うめええええええええっ!」


「あああ、体に沁み渡ります…………」


 フェンリルとフェニクスは両者共に毛並みが良くなった。


 私は両者が食事をしている間、服を着替える。

 すでに洗濯が完了しており、部屋の中に洗濯された服が置いてあった。昨晩、忍び込んだ者が置いて行ったのだろう。鍵をかけた気もするけど……。

 ベスパが反応しなかったし、悪い者が来たわけじゃないからいいか。


 私は燕尾服のような男の正装を身に纏い、髪をポニーテールにして準備完了。


 魔法の杖と鎖剣、特効薬が入った試験管ホルダー、弓、矢、その他諸々見直し、問題はない。


 神獣たちは食事を終えたのか、ふと見た時には消えていた。もう、ほぼ食い逃げだが、魔力は無料なので別に構わないか。


「今日の天気は曇り……。どんよりしてるな……」


 開いている窓を閉める時、空を見ると少々曇っていた。雨が降りそうな予感がするので、雨具を持って行こう。


「キララ様、おはようございます……」


 ベスパは眼元を擦り、あくびをしながら目を覚ましたようだ。


「うん、おはよう。さて、今日は実技試験。どんな人がいるか結構楽しみなんだよね」


「どのような実技試験が行われるのか楽しみです。私も出番があるでしょうか」


「さあ、わからない。相手が強ければ強いほど、ベスパが相手した方が油断してくれるから、不意打ちは出来そうだね」


「弱いことを逆手に取るわけですね。相手は不意を突かれてキララ様に捕まる。愚かですね」


 ベスパは微笑みながら、服装を正していた。

 私に似たスーツっぽい服の襟をぴっしりと直し、蝶ネクタイをグイグイと引っ張れば、ベスパの眠気も冷め、いつものうざったい決め顔を浮かべる。


「ふわぁぁぁぁ……。ねむたぁい……。もっと寝たい……」


 フルーファはニートにまっしぐらの発言をしながら、体を床にこすりつけている。体が痒いのかな。


「ほら、フルーファ、起きて。クロクマさんに叩き起こしてもらう方が良い?」


「今、しゃっきりと起きました!」


 フルーファはピシッと背筋を伸ばしながらお座りする。


「クロクマさんが怖いんだね……」


 私達は朝っぱらから食堂に向かわず、軽く運動する。いきなり戦ってくださいと言われたらさすがに厳しいので、体を温めておくのだ。


 フルーファにボールや骨を投げて取って来てもらう。


「お、俺ばっかりが走ってる気がする……」


「そんなことないよ。私も軽く動いてるし」


 私は飛び跳ねながら軽快に言う。


「くっ……。この主、俺しか動かさない気だ……」


 フルーファが真実に気づきそうになった時、ボールを投げる。


「うわーい、球っ!」


 フルーファは何も考えず、木製のボールを追いかけた。やはり、犬みたいな性格だな。


 私は体を軽く動かしたあと午前六時に食堂に向かった。

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