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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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神獣、フェニクス

 その後も、研究結果を照らし合わせたら間違いの問題が多く出題されている。それだけ、魔物に関してよくわかっていないのだろう。

 地球人も昔は世界が半円だと思っていたくらいだ。間違いを正すわけじゃないが、答えの横に可能性として別の答えを書いておく。こんなことをしても、点数が貰えるとは思えないが、まあいいか……。今の正解を書いておけば間違いにはならないはずだ。


 私はライトの論文を読まされていた経験をもとに、指摘箇所を八個くらい見つけて追記しておいた。

 魔物の件で間違ったことを知識として身に着けていたら最悪死に至る。

 ブラックベアーと出会った時、どのような行動をとるのが正解か。

 と言う問題で死んだふりなんて回答が正解なわけがない。自殺行為だ。

 木に登るとか、全力で逃げるも違う。何をしても逃げられない。不意に出会ってしまったら、相手の目を見ないで食べ物を捨ててからゆっくりと後ずさりするのが正解かな。


 ブラックベアーは賢いので、人間が怖いとクロクマさんも言っていた。だから、刺激せずにその場から離れるのが正しい。でも、ライトの研究した論文があっているのかもまだ怪しい。そんため、このような場合もあるのでは? と言う疑問などを書き連ねていると私の回答用紙は大量の文字で溢れ、白っぽかった回答用紙が真っ黒になる。


 心を折りに来る問題として魔物との戦闘を想像し、自分一人でブラックベアーに勝てと言うバカみたいな問題が出された。

 ブラックベアーは成体で、体長三メートル越え、番がいなかったり、食事がとれなくて空腹状態だったりすると襲い掛かってくるような獰猛な魔物だ。『魔法耐性』を持っているので生半可な魔法は効かない。腕っぷしはバートンの顔にびんたすると簡単に殺せるほど。なんなら、大木も突進で吹っ飛ばせる。

 この相手にどうやって勝てばいいか考えろとのことだ。しかも今の自分で、だ。

 普通、勝てるわけがない。


 私はスキルで落とし穴を作り、口の中に爆発物を突っ込んで爆ぜさせると言う鬼畜な方法を書いた。超巨大ブラックベアーを倒した時のことを書いてもよかったが、私一人の力ではないので却下した。


 午後六時四五分。フェニル先生が私の問題を覗き込んでいることに気づいた。


「き、キララちゃん、何をそんなに書くことがあるんだい……」


「え、ああ、えっと……。問題の答えを沢山書いていました。私の考えも書いておこうと思いまして」


「キララちゃんの考え……。ブラッディバードとの戦闘経験から考えたのかい?」


「まあ、それもありますね……」


「ブラッディバードと戦った一二歳児か……。明日の実技試験が楽しみだ」


 フェニル先生は腕を組み、にんまり笑顔を浮かべていた。何を考えているのかわからない。だが、いいことではないだろうと、優に想像できる。


 フェニル先生は問題冊子と回答用紙を回収し、封筒に入れた後、教室を出て行った。


 五分後、フェニル先生が教室に戻ってくる。


「では、早速だが、口頭質問に入らせてもらう」


「は、はい」


 私は椅子に座り、教卓の前に立っているフェニル先生を見る。美人新人教師と言うには堂々としすぎていた。でも、見かけからして若い。卒業を控えた大学生くらいの若い顔立ち。でも、苦労は経験しているのか、熟練冒険者の雰囲気も時折醸し出される。


「キララちゃんは魔法学科希望と資料で書かれているが学園に入って何がしたい?」


「私は魔法を学び、日ごろの生活を豊かにしたいと思っています」


「具体的にはどんなことして豊かにしたいんだ?」


「例えば、部屋を暖めたり、お湯を沸かしたり、洗濯物をしたり、そういったちょっとした時に、多くの者に使ってもらえるような低価格の魔法陣を売るとかですかね。経済と生活をどちらも豊かにすることができます」


「ふむふむ……。では、テイマーの資格を持っていると書かれているが、なぜ冒険者に成れない年齢にも拘わらず取得したんだ?」


「私はテイマーになりやすいスキルを持っていましたし、持っている状態と持っていない状態を考えて持っていた方が良いと判断しました。主な理由は身分証として使えたからと言うのが大きいです」


「なるほど、身分証ね……。キララちゃんの得意なことはなんだ?」


「得意なことは歌と踊りですかね」


「逆に苦手なことは?」


「苦手なことは……手芸です」


「手芸……。私も苦手だ。あんなこまごまとした仕事、よくできるよな。私はすぐに放り投げたくなる」


 ――見た目通り過ぎるな、この女の人。


「今まで一番頑張ったことを教えてくれ」


「一番頑張ったことは……、死線を潜ったことですかね……」


「死線を経験しているとは、だから他の者と風格が違う訳か……。一番楽しかったことは?」


「楽しかったことは……、聖典式で歌ったり踊ったりしたときですかね」


「はははっ、キララちゃんは案外、おちゃらけているんだね。いやはや、もう、スラスラと答えられすぎて質問することが無くなってしまうよ。本当に子供かい?」


「は、はい。本当に子供です」


「ま、そりゃそうか。じゃあ、ちょっと気になったことを聞かせてもらおう。キララちゃんはブラッディバードを倒したと思うが、どのようにして倒したんだ?」


「えっと、私がブラッディバードを倒したと言う訳ではなく、私と『妖精の騎士』の皆さんで一緒に倒したんです。一番頑張っていたのはニクスさんでした。私は補助役に徹し、攻撃役のニクスさんを強化させて戦ってもらっただけにすぎません」


「ニクスを強化させた……。それはおかしい。ニクスは付与魔法の類を受け付けないはずだ」


「はい。ニクスさんのスキルは『確定急所』と言う攻撃系のスキルです。ただ、ニクスさんに付与魔法が利かないと事前に知らされていました。なので、私は大量の魔力をニクスさんに渡し、身体能力を向上してもらったんです」


「大量の魔力を受け渡した……。魔法ではなく、魔力単体をそのまま……。いったい、どれだけの魔力を使えばそのようなことが可能なんだ……」


 フェニル先生は顎に手を置き、考え事をしていた。私の『女王の輝き(クイーンラビンス)』は超大量の魔力を無理やりねじ込み、魔力を体内に送り込む魔法……と言うか、力技と言うか。


「私の魔力は自然に近いそうです。なので、多くの者に魔力を渡せます。私の魔力は綺麗な水みたいなものですかね」


「なるほど……。そう言う理屈か……。それなら、合点がいくな。通常、魔力を他人に分け与えることは難しい。他人と魔力の質がほぼ合わないからな。きょうだいでやって成功するかしないか絶妙なくらいだ。でも、キララちゃんは多くの者に魔力を与えられる……。珍しい」


 フェニル先生は私の顔を覗き込み、真っ赤に燃える瞳を見せてくる。


「是非、私にも魔力を分け与えてくれないか。ニクスがブラッディバードを倒せるほどの力を私にも体験させてくれ」


「えっと……。フェニル先生はどれくらい強いですか。あんまり強いと上昇幅が膨大なので、魔力量の調整をしないといけません」


「そうだな。私は強いぞ。パーティーを組まず、Sランク冒険者だ」


「ええ……。そうなんですか。じゃあ、本当に強いんですね……」


 ――Sランクと言うことはフロックさん達と同じ。と言うか、フロックさんはカイリさんと一緒にパーティーを組んでSランク冒険者と言う訳だから、二人よりも強いの?


「じゃあ、軽く掛けますね。掛けられたらすぐに魔力を発散してください。危険なので」


「わかった」


 フェニル先生は両手を広げ、頷いた。


「では『女王の輝き(クイーンラビンス)』」


 私は指先に魔力を軽く溜め、フェニル先生に向ける。滝のようにど派手に渡すと印象が強すぎるので彼女に触れて分け与えた。


「おお、おおおおっ! これは凄い!」


 フェニル先生の肌艶が戻り、もとから若いのに、もっと若々しく見えた。体が軽くキラキラと輝いており、魔法は成功。


「では、すぐに魔力を発散するんだったな」


 フェニル先生は窓を開け、指笛を吹いた。すると上空が一気に明るくなる。暗い空が真っ赤に燃えると、目を疑う存在が現れた。


「こんな場所に呼び出すとは……、いったいどういう要件ですか……」


 綺麗な声が空から聞こえる。いや、空からではなくとある赤い物体から聞こえている。


「いやあ、すまない。魔力を発散しなくてはならなくてな」


 フェニル先生は窓際に座り、空を見上げながら言う。ここ、地上八階ですけど。下を覗くのも怖い高さですよ。そんな、部屋の窓際に座るなんて……。


「そのために、私を呼ぶなんて、バカなんですか……」


「いやあ、どうせなら本気を出そうかと」


「はぁ……」


 曇っていた空が突風により晴れると、でかでかと真っ赤な鳥が姿を現した。あまりにも神々しいので、炎の神かと思うほど、その存在感に圧倒される。


「ふぇ、フェニクス……」


「キララちゃんは物知りだね。そう、神獣、フェニクス。私の相棒だ」


 フェニル先生は窓から飛び出した。すると、暴風と共に攫われる。


 風魔法で上空に浮かび、巨大なフェニクスのもとに移動していた。


 フェニクスの見た目は真っ赤で、翼や尻尾の羽がクジャクのように煌びやかだ。一枚一枚の羽が真っ赤に燃えており、炎の鳥と称するのが一番手っ取り早い。


「私の魔力を食い、空に火を吹け」


「神獣使いが荒いですね、全く」


 フェニクスはフェニル先生を背に乗せ、魔力を受け取ると嘴の先を空に向けた。魔法陣が出現するや否や、空に真っ赤な炎の柱が現れ、王都中を照らした。


「は、はは……」


 私はとんでも無い先生に一日付いていてもらったようだ。


「んんんんんんんっ! 美味しいっ! フェニルさん、この魔力はあなたの魔力ではありませんね!」


 フェニクスは翼を羽ばたかせ、煌びやかに踊る。体長が翼を広げると八〇メートルほどあり、巨大なフェンリルとほぼ同じだった。神獣は図体がデカいのか……。


 そんなことを思っていたら、箒に乗っている用務員のおじさんが一人……。


「バカ者っ! 何をしとるかっ!」


「げっ、学園長……」


 フェニル先生はフェニクスに小さくなるよう命令し、八メートルほどの鳥にした。その背中に胡坐で座り、ドラグニティ学園長を待っていた。

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