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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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フリジア学園長

「では、次の皆さん、行きましょうか」


 私は八列目なので、この次だ。まあ、一時間もしないうちに三列の面接が終わったと言うことは、相当多くの先生が面接を行っていることがわかる。きっと他の階でも多くの方が面接を行っているのだろう。何を聞きたいのだろうか。

 まあ、私は訊かれたことをある程度本気で返すだけだ。フルーファは置いていく。以前エルツ学園長に首輪に目を付けられ、少々ビビっているのだ。


 三時四八分ごろ、試験監督が戻って来た。


「では、残りの二列の皆さん。行きましょうか」


 私は女性の試験監督の背後を歩く。教室を出た後、長い廊下を歩き、教室が連なっている場所にやって来た。廊下に線が描かれており、人の立ち位置だとわかる。教室の数は八。つまり、八名の面接官がいるわけか。試験監督が適当に教室の前に立たせるのではなく、選考学科ごとに分けていく。

 私はどこの教室なのかなと思い、待っていると私はどこにも並べられなかった。


「えっと……」


「キララ・マンダリニアさん。あなたは魔術学科に入学希望ですよね?」


「あ、はい……」


 ――魔術学科なんて一般的だと思ったんだが、私一人だけ?


「では、付いて来てください」


 女性の試験監督は私を連れ、昇降機に乗ると最上階へと向かった。そのまま、巨大な門の前に立たされる。


「では、私はここで待っていますから、ぜひ、沢山お話してください。きっと大丈夫です!」


 試験監督は握り拳を作り、力強く言った。


「は、はあ……」


 私はよくわからなかったが、とりあえず高級な木材で作られた扉の前に立つ。私の二倍以上の高さがあり、近くによるだけでヒノキのような良い香りがする。

 いったん腹式呼吸をした後、扉を三回叩いた。


「入りたまえ」


 とても綺麗な声がした。だが、どこか幼い。私と同じくらいの声質だ。


 私は持ち手を握り、引く。すると、入口に誰かが立っていた。まあ、明らかに見覚えがある。なんせ、両耳が長いのに加え、超絶可愛い女の子だ。

 見間違えようがない。フリジア魔術学園の冊子の最後に肖像画が描かれていた。その絵とそっくりそのままだ。


「ふ、フリジア学園長……」


「うむ! いかにも! 私がフリジア。君がキララ・マンダリニアで間違いないね!」


 フリジア学園長は私が部屋に入っていないのに逆に近づいてきて距離八センチメートル付近に立つ。そのまま、私の眼を見てきた。身長はほぼ同じくらいのようだ。


「は、はい……」


 ――いや、近い。にしても、瞳が綺麗すぎないか。


「おっと、すまない。近づきすぎた。距離感がつかめなくてね。目がぼやけんるだ」


 ――老眼やんけ。


「む……。私は老けてなどいない。ちょいと長い間生きているだけだ」


「えっと……、心読んでます?」


「うむ。わかるぞ。まあ、長年生きていると相手の心が読めるようになるんだよ」


「嘘ですよね。どう見ても耳が光ってますし」


「はははっ! 失敬失敬。私のスキルだ」


 フリジア学園長は両耳を上下に動かし、満面の笑みを浮かべていた。

 口調が明るく、何とも乗りの良い女性……。芸人と話しているみたいだ。

 それにしても、心を読むスキルか。フリジア学園長の前で嘘は付けないらしい。でも、心の中を聞かれなければ良いだけだ。


「えっと、スキルを止めてもらえますか?」


「なにか、後ろめたいことでもあるのかな?」


 机のほうに向かっていたフリジア学園長は一度振り返り、訊いてくる。


「い、いえ……。特に無いですけど」


「なら、構わないだろう。ほらほら、早く入りなさい。あまり長い時間話すと試験が終わってしまう」


「どんだけ長話が好きなんですか……」


「そりゃあもう、一年間、ずっと話せるぞ」


「喉がからからになりそうですね」


「はははっ! 確かにな!」


 フリジア学園長は高笑いし、大口を開け、背中を反らせていた。

 少女の高笑いなんて見たくないが、まあ、きっと年寄りなんだろう。加えて人外。エルフかな? だとしたら経験豊富な女性なわけだ。話すこともたくさんあるし、ネタに困らない。


 私は部屋の中に入る。するとバタンッと言う大きめの音と金属製の錠が閉められる音が鳴り、扉が閉まる。


「さてさて……。何を話そうかな。会うまで決めていなかったんだよ」


 フリジア学園長は両手をすりすりと擦り合わせ、司祭服のような深緑色のローブを綺麗に直す。身長一四〇センチメートルほどで、成人している女性にしては小さい。顔は言わずもがな超絶美少女。

 綺麗な緑色の髪は腰まで伸び、櫛で梳かしたくなる。目がくりっと大きくエメラルドのような真緑色の瞳。さすがに、超綺麗な西洋人形が過ぎる……。お胸は私と同じくぺったんこ。お尻も小ぶりでとてもとても親近感が沸く。すでに彼女が大好きになりそうだ。


「よし! キララちゃん、君の特技はなんだい!」


 フリジア学園長は両手をパンッと叩くと私に聞いてきた。どうやら、面接開始らしい。


「はい。私の特技は歌って踊ることです」


「ほほう、面白い。なら私が歌うから、踊ってくれないか?」


「構いませんよ」


 フリジア学園長は民謡のようなおっとりした音程の曲を歌い出した。耳が幸せだとわかるほどべらぼうに上手い。耳が心地よすぎて寝そうだ。だが、ここで寝るわけにはいかない。

 私はバレリーナのように、水面を踊る妖精を想像し、空間を広く捕え、ゆったり動きクルクルと回りながら自由の豊かさを表現した。


 フリジア学園長が一曲歌い終わると、私も止まり、一礼する。


「おおー。素晴らしかった。もう、まさに妖精の舞そのものじゃないか!」


「フリジア学園長こそ、大変素晴らしい歌声でした。自国の民謡ですか?」


「はははっ! そうだろうそうだろう。私が一番歌い込んできた歌だ。私の生まれ故郷の歌で、子守歌の効果がある。相当眠くなっただろう」


「はは……。だから眠くなったんですね。歌を聞いてここまで眠たくなったのは初めてです。フリジア学園長の素晴らしい歌声のおかげで、初めての経験をしました」


「むむむぅ、キララちゃんは弁舌のようだね。年上を持ち上げるのが本当に上手だ」


「よく言われます。でも、本音を話しているだけですよ」


 私はにっこりと笑い、良い者の印象を付ける。


「なるほど。こりゃ困った。どう評価したものか……」


 フリジア学園長は大きな机の前で右往左往しながら、考え始める。


「じゃあ、魔法が使えるのなら一番得意な魔法を聞かせてくれ」


「わかりました。私が一番得意魔法は『ファイア』です」


「なるほど。誰かに教わったのかね?」


「母が使っている場面を見て覚えました」


「なるほど。なるほど。見せてもらえるかな?」


 私は指先に小さな魔法陣を出現させ、ロウソクの火程度の『ファイア』を見せる。


「こりゃ、驚いた……。そこまで精密な魔力操作ができる子供がいるとは……。いったいどれだけの間鍛錬を積んだのかね?」


「えっと……、七年くらいですかね」


「七年。つまるところ、キララちゃんは五歳のころから魔法を放つ練習をしていたということかな?」


「はい」


「五歳の子供が魔法に興味を持ったとしてそこまで長い間、練習するなんて……。貴族の子供なんて、魔法の練習が嫌で嫌で逃げ出す子が続出すると言うのに……」


「はは……。まあ、私は見よう見真似で行っていた似非魔法ですよ。でも、夢中になって練習しました。当時は練習しないと、死活問題だったので」


「死活問題……。じゃあ、聴こう。なぜ、そこまで魔法の練習に打ち込んだんだい?」


「えっと、ビーを倒したかったんです」


「ビー……」


 フリジア学園長は頭を傾げた。加えて、苦笑いを浮かべる。


「はい。私、この世の中でビーが一番嫌いなんです! もう、嫌いすぎて見るだけで体に発疹が出るくらいですからね! あの忌まわしきビーを焼き殺すために何としてでも魔法を覚えなければならないと決心したんです!」


「な、なるほど……。つまるところ、恐怖がキララちゃんを突き動かしたと言う訳か」


「まあ、そう言うことですね」


「だが……、この資料に書かれているスキルは『虫使い(ビー)』と言うスキルのはずだ。何とも、神は優しいな。ビーが大嫌いなキララちゃんにビーと友達にさせてくれるなんて」


「どこが優しいんですか。余計な迷惑ですよ。友達になれたとしても、私の恐怖心が消えるわけじゃなりませんからね。もう、本当に怖かったんですから!」


「確かに、怖い物は怖いか。気持ちを察するよ。まあ、スキルはゴミだが、キララちゃんの魔力操作と魔力には目を見張るものがある。あの脳筋バカであるエルツを気絶させるほどの魔法を放てるようだからね」


 フリジア学園長はにんまりと笑い、私を見つめた。エルツ学園長を罵れるほどの仲なのだろうか。


「な、何のことですか……。わ、私にはさっぱりわかりません……」


「ふっ、別に隠す必要はない。知っているのは仲間内だけさ。彼も驚いたと言っていたよ。その話を聞いて、私は君に興味を持ったわけだ」


 フリジア学園長は腰に手を当て、微笑みを浮かべる。


「なるほど……。三大学園同士、学園長との繋がりがあるわけですね」


「そう言うことだ。私はキララちゃんを見て、本当に素質があるかどうか知りたかった。すでに魔力操作の時点で才能にあふれていることは確か。ではでは、次の質問に移ろう! ああ、君となら一年間は語れそうだ!」


 フリジア学園長はテンションが上がり始め、じだんだを踏み出した。子供がウキウキしているようにしか見えないが、彼女と私の時間の流れ方はあまりにも違う。彼女と合わせていたら、私はいつの間にかお婆ちゃんになってしまうはずだ。

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