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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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越えさせる気が無い壁

 ここら辺から多くの生徒が喋る気力など無くなり、不健康そうな青い表情を浮かべながら仮眠を取り始めていた。


 仮眠を取り終えた私は多くの貴族は大金を払い裏口入学でもするんだろうなと考え、辺りを見渡す。

 あくびをしながら金色ロール髪を弄り、爪を見ているザ貴族のお嬢様は楽勝とでも言いたそうに微笑んでいた。ただの天才か、はたまた裏口入学者か……。まあ、どっちでもいいか。


 私は私の全力をぶつけるだけだ。

 フルーファを抱きしめて不安を解消した後、筆記試験の最後の教科を受ける。


 一一時三五分ごろ、試験監督が戻ってきて問題冊子と回答用紙を配り始める。また同じ光景。その光景が恐怖に変わっているのか、もう、試験を受けたくないと言う気持ちを持っている者のように息を荒げる受験者が多い。

 それだけ、難しい問題と言うことだ。でもここは、ルークス王国三大学園の一つ、フリジア魔術学園なのだから仕方ないと言えば、仕方ない。

 ただ、ここでも一番難しいと言われているドラグニティ魔法学園よりも簡単だと言うことが信じられない。ドラグニティ魔法学園の試験でいったいどんな問題が出てくるんだ……。

 私は苦笑いを浮かべながら、魔法学の試験を受ける。


「では、今日、最後の筆記試験です。最後まで集中力を保ち、全力で取り組んでください。ここが、受かるか受からないかの瀬戸際です。最後まで突っ走った者が勝ちます!」


 試験監督は私達を激励し、気分を上げさせてくれた。

 問題冊子が配られるとエルツ工魔学園よりも薄い。問題傾向からして、簡単な問題が六割、難しい問題が四割……。時間を有効に使うために簡単な問題をすぐに解く。


「午後一一時四五分になりました。試験を始めてください」


 ルークス王国全土で一斉に問題冊子がめくられる。ページ数が一〇しかない。どうやら、大問に一種類の問題しかないようだ。長くも短くもない文章量の問題が大問四まで続く。

 やはり、六割までは簡単だった。

 魔法陣を書かせる問題や書かれている内容を読み取るだけだったので、二〇分も掛かっていない。

 大問五から明らかに問題の難易度が跳ねあがった。こんなのさっきまで四段や五段の跳び箱をしていたのに、いきなり二〇段の跳び箱が出てきたようなものだ。気を抜いていたら必ずぶち当たる。

 大問五はトランポリンのような救済措置があり、飛び越えられるが、大問六になると救済措置が無くなり、自力で解かせられる。

 大問七になると跳び箱の段数が四〇段になった。ああ、ここで皆が後ろを振り返り、飛ぶのを諦めるのだろうと問題を解きながら思う。

 だが私は悠々と飛び越える。大問八。誰も見たことが無い超高い壁。もう、跳び箱ですらなく、飛び越えさせる気が無い。


 私が壁をボーっと眺めてると空のかなたから『ねーさーん、とけたー』と言う美声が聞こえてくる。

 私の背中にビーのような翅が生え、その声に引っ張られるように飛び、壁の頂上付近にいるライトを見た後、中央付近でいったん休憩。このまま飛び越えられるが、飛び越えるのも面倒なのでこのまま落下。死んだビーのように地面にぽてっと倒れ込み、死んだふりをする。


「では、それまで。冊子と回答用紙を回収します」


 試験監督の女性と他の先生が生徒たちから問題冊子と回答用紙を回収し、集合。順番通りに積み上げ、一人の試験監督が扉から通路に出て行く。


「皆さん。お疲れさまでした。これで筆記試験は終了です。この後、お昼休憩となります。すぐに面接が始まりますから心の準備をしておいてください。一時四五分から始めますから、五分前に着席して待っていてください」


 試験監督の女性は部屋を出て行き、私達は休憩となる。


「はぁー、本当に疲れましたわ」

「もう、あんな難しい問題、見るだけで頭が溶けちゃいます」

「私なんて大問八は見ませんでした。見たら、頭がどうにかなっちゃいますもの」

「私も、私もー」


 貴族の女子達は大問八を見ることすらなかったようだ。まあ、解けないとわかっていたら、見る必要も無いか。


「ねえ……。さっき、大問八を解いてなかった……」


 私の肩をツンツンと叩くガリ勉少女は充血しそうなほど目を見開き物凄い眼力で見つめてくる。


「あ、い、やぁ……。解いていたと言うか、死んだふりをしていたと言うか……」


 ガリ勉少女は何を言っているのかわからないと言った表情で、首を傾げた。


「と、とにかく。本当に適当に書いてたの。本当だよ。あ、この子触る? モフモフだよ」


 私は小さくなったフルーファをがり勉少女の前に出し、撫でさせる。


「うわ、本当にモフモフだ。気持ちぃい」


 疲れ切っていたガリ勉少女の顔から疲労が抜けていく。やはり生き物に触れると心が休まるようだ。


 ディアとか、ネアちゃんもさし出そうと一瞬考えたが、こちらの世界でもこの二体は嫌われているので、やめておいた。代わりに私が撫でてあげる。


 昼にパンを食していると貴族の執事と思われる者達が少女たちの前に食事を提供していく。

 真っ白な布を机の上に敷き、こってこてのソースが掛かった肉に真っ赤な葡萄ジュースっぽい飲み物。サンドイッチ。クリーミーなスープ。などなど、平民とは考えられないほど豪華な食事が並んだ。

 まあ、一番凄い料理を食していたのは一番気楽そうにしていた金色ロール髪の少女。もう、目の前でシェフが料理を作り、超少ない料理を指先のように使い慣れたナイフとフォークでお上品に食している。何ともカオスな現場を目撃し、こんな世界があるんだ……と思わざるをえなかった。


 多くの平民が貴族の食事を見てパンを握りつぶし、硬いパンになった品を食す。まあ、私は柔らかい白パンを食しているのだけれど。


 こんな時に自分たちの方が位が上だとか、身分が低いだとか、気にしなくてもいいのにと思ったが、そいう訳にもいかないだろう。ここにきている平民の少女たちは自分の人生を変えに来ているのだ。貴族の少女たちよりも闘志が熱くて当然と言えば当然か。


「キララ様……。お腹が……」


 私の隣を見ると、あら、真っ白なお犬様が……。私はすぐさまパンに魔力を込め、お犬様の口にねじ込み、窓から投げ捨てる。


「はぁ、はぁ、はぁ……。あのバカ犬……」


 周りは私の方を見ながら唖然としていた。


「お、おほほ、ごきべんあそばせ……。空気の入れ替えをしようと思いましたよのー」


 私はどこのご令嬢も言わないそうな発言をして乗り切る。皆、首を縦に振り、なるほど。と言った表情で食事を進めた。


 ――はぁ……。フェンリル。どういうつもり?


「いやぁ。わしも駄目だと思ったよ。だめだと思ったけどさぁ。お腹減りすぎて我慢できなかった。ごめんちゃい」


 おっさんの声が頭の中で響き、とってもいらだつ。


 ――どうして、そんなに魔力を消費するの? 朝もあげたよね。


「キララの魔力が美味すぎて体がすぐに消費しちまうんだ。どうも、魔力の循環が良すぎる。自然の魔力をそのまま使っているみたいだ。だから、気分が良すぎて切れると欲しくなっちまう……」


 私の魔力が癖になってしまったフェンリルはとても危ない薬をやっているおっさんのような声を出し、パンを食べ終えて気分を良くしていた。


「んー、私の魔力とフェンリルの魔力がいい具合に循環しちゃっているわけか」


「ま、キララ様は自然界の魔力を大量に扱っていますからね。神獣であるフェンリルと相性が良いのは必然ですよ。虫や魔物も自然界の地脈から湧き出る魔力を使うことがあります。逆に人族は体内のマナで魔力を生み出して使うことが多いですから、根本から違う訳ですね」


 ベスパは巡回を終えたのか、開けた窓からぶーんと入ってきて、私の前にやって来た。


「じゃあ、私のマナが生み出した魔力をフェンリルに与えれば、腹持ちが良くなるの?」


「その可能性は高いです。今はキララ様の魔力一割、自然界の魔力九割りくらいの感覚だと思われます。キララ様の魔力を一〇割り絞り出せばフェンリルも満腹になって簡単にお腹が減ることは無いでしょう」


「私の魔力を絞り出すね……。どうやって?」


「いつも作っている魔力体を与えれば良いと言うことですよ」


「なるほど。そう言うことね」


 私は両手の平を重ね合わせ、全身の魔力を手の平に集めていく。しぼりたてほやほやの超高密度な魔力体が生成された。


「フェンリルの口の中に飛んで行って」


 私が魔力体に命令すると開けた窓からぶーんと飛んで行く。


 八〇秒後。


「グワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


 何かの断末魔が聞こえた。野良犬が吠えたのかな。空に見える雲に穴が開き、とてもとても強い空気砲を放ったようだ。誰が放ったかは知らないが知ろうともしてない。知りたくない。


 私は試験に集中するため、瞑想をして時間を過ごす。


 懐中時計を見ると午後一時四〇分。もうすぐ、口頭質問面接の時間だ。


「では、皆さん。三名の試験監督が列の前に立ちますから八名ずつ部屋を出て、試験監督の後ろに付いて来てください」


 八列あるうちの三列に試験監督が立つ。生徒たちは椅子を降り、試験監督の背後に着いた。

 そのまま、二四人の子供達が部屋を出て行く。一〇分後。ちらほらと生徒が戻って来た。どうやら、一人一人と口頭質問するようだ。

 一人五分程度。なんなら、五分もないかもしれない。どういう基準かは知らないが、貴族の方が一瞬で面接が終わっている気がする。まあ、お金払っているし、だいたいどんな子共か書類でわかるか。

 代わりに平民の子は長かった。一〇分とか、二〇分くらいかかっている子もいた。貴族は全員返って来たあと、数分待って平民が帰ってくる。

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