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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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大門が開く

「キララです」


「キララか。ふっ、面白い。われをここまで満たす人間は稀だ。覚えておいてやろう」


「はは……。まあ、別に覚えてもらわなくても結構ですけど。他の人が怖がるので、もっと小さくなってあげてください。そうしたら、皆さん助かります」


「うむ……、そうか。あいわかった」


 フェンリルは巨体からざっと大型犬ほどの大きさになった。フルーファと同じくらいで、こちらの方が毛並みが真っ白に近く、ふわふわとしている。やはり神獣と言うだけあって顏がカッコいい。


「き、キララさん……。何をしたんですか? フェンリルが小さく……」


 ギルドマスターのキアズさんはフェンリルと私の方を何度も見回しながら呟いた。


「フェンリルに小さくなってくださいとお願いしたら了承してくれました。これで、大きな通路も使えるようになりましたね」


「は、はは……。神獣がスキルに関係なく人の言うことを聞いた…………」


 キアズさんは苦笑いを浮かべながら、平常心を保とうと腹式呼吸を続ける。そのまま、私のもとに歩いてくる。フェンリルの視線と合うよう、膝を地面につけ話し始めた。


「もう、長い付き合いですが、現ウルフィリアギルド、ギルドマスターのキアズと言います。ウルフィリアギルドを長い間、守っていただきありがとうございます」


「グルルルル」

(うむ、くるしゅうない)


「えっと……、私にフェンリルの言葉はわかりません。ですので、何と言っているかわかりませんが、キララさんの言葉が通じていると言うことは私の言葉も通じているのでしょう。あなたの気が済むまで、ここにいてもらって構いませんが、他の者に迷惑が掛からないよう、お願いいたします」


 キアズさんは手の平をフェンリルの前に出す。


「グルルルッル」

(キララがいる間は多めに見てやろう。今、われは機嫌が良いんだ)


 フェンリルは右前足をキアズさんの手の上に置いた。


「ありがとうございます。えっと、一応この紋章を付けさせてもらいます」


 キアズさんは王家の記章とそっくりのアクセサリーを取り出した。どうやら王都で魔物などを連れ歩くために必要な許可書のような物だろう。フルーファにも付けられた品と同じだ。


「まったく、われがこのようなものを付けなければならないとは……。時代も時代だな」


 フェンリルは胸もとに掛けられた記章を前足で突きながら呟いた。どうやら、昔はもっと自由に出歩きで来たらしい。まあ、問題があったからこういう規則が出来たんだろうけど。


「グルルル」

(われは寝る)


 フェンリルは巨大な広場に寝そべり、眠りについた。先ほどの八〇〇分の一程度の大きさしかないので、あまりにも可愛らしい見た目になっている。


「ほっ……。これで通行が楽になる。キララさん、ありがとうございます。理由は聞きませんが、キララさんとフェンリルの間に何かが生まれたようですね」


「はは……。食事を与える代わりに少々言うことを聞いてもらえるようになりました。やっぱり、空腹は辛いんですよ。お腹が膨れているので安全な良い子になったと思います」


「確かに、空腹は辛いですよね。あれだけの肉を食しても空腹だったとは……。でも、キララさんがいる限り、フェンリルは満腹でいられるんですか?」


「そうなります。まあ、私が生きている限り、フェンリルはお腹いっぱいになり続けますから、今度からは量よりも質を重視した肉を与えてあげてください」


「わかりました。一二歳児の話をまともに聞いているなんておかしいと思いますが、キララさんの話は自然と信憑性が持てます。何とも不思議ですね」


「まあ、真実しか言ってないのでそうなるのは当たり前だと思いますよ」


「そうですね。ジークの娘さんですもんね。やっぱり、親子は似るのですね……」


 キアズさんは肉の料金が相当高くついていたのか、料金が安くなり気分がよさげだ。


「大門を開けなさい」


 キアズさんが大門付近まで歩き、声を掛けた。すると、門番らしき人が動き出し、巨大な門が動く。今まで、小門からしか行き来出来なかったのが、大門から移動できるようになり、行き来しやすさが一気に改善された。


「おおおおっ、なんか、見栄えが良くなりましたね!」


 大門が開かれると、ウルフィリアギルドの綺麗な建物がありありと見えるようになり、見栄えがとてもよくなった。

 欠陥建築かと思ったら、大門を開けてフェンリルを連れ出す想定で作られた建築物だったらしい。

 長い間閉じられていた大門が開き、冒険者達が騒いだから王都の中で結構な騒ぎに広まってしまったとベスパに聞かされる……。


 私はちょっとやばいかな……と思いながら、そーと歩き、キアズさんの元から逃走。すぐさま、厩舎にやって来た。


「キララ様、魔力量が少ない状態なんですから逃げなくてもよかったのでは?」


 ベスパは私に聞いてきた。


「い、いやいや、キアズさんの近くにいたら怪しまれるでしょ。人々が一気に集まるとは思ってなかったし、そもそもお金を貰いに来るのが目的だったし、ここに居続ける必要もなかった」


 キアズさんなら口が堅いと思う。仕事人ほど口は堅い。あの人は情報をペラペラと喋るような人じゃないとわかるから、色々一部始終を見せてしまった。

 まあ、お父さんの知り合いだし、問題ないか。


 私はレクーを厩舎から出した。


「うおーっ! すげーっ! 門が開いてるぜ!」

「ほんとだ! 初めて見たよ!」

「神獣様が小さくなってくださったそうだよ」

「あの巨大なフェンリルって小さくなれたんだね」


 王都の人々はウルフィリアギルドの状態を見て、表情から察するに感動していた。長年鳴らなかった教会の鐘が鳴ったかのような盛り上がりで人々が、ウルフィリアギルドに集まってくる。

 大門を通れば、そのままウルフィリアギルドの入り口に到達するため冒険者さん達が物凄く喜んでいた。今まで、何個かある小門から出入りしていたがこれからは大門から通るようになるだろう。その方が断然楽だ。


「さっさと帰ろ……」


 私はレクーにまたがり、ビーナビを使用してルドラさんの屋敷まで帰った。


 屋敷に到着すると……。


「ねえ、聞いた? ウルフィリアギルドの大門が開いたらしいわよ」


「ええ、聞いた聞いた。もう、何十年ぶりって言うくらい前から閉まりっぱなしだったんでしょ。王都中大騒ぎじゃない」


「私も早く見に行きたい。そもそも、なんでフェンリルが小さくなったのかな?」


 メイドたちが掃除をしながら会話しており、私は普通にぎょっとしてしまった。


 ――じょ、情報が回るの早すぎない? おしゃべりだけで、私が帰ってくる間に広まる?


「キララ様、このような号外が出ているようです」


 ベスパはB8サイズの小さな紙を持ち、私に見せてきた。紙は結構貴重だから小さいのかな……。裏表に文字がびっしり印字されている。


『ウルフィリアギルドの大門開かれる。魔王軍とルークス王国軍の交戦以来、実に八八年ぶりに全体像を見せたウルフィリアギルドは必見。色褪せない外装に実現不可能な精密構造。大昔の天才が作り上げた建築物の迫力は今を生きる我々にも突き刺さること間違いなし!』


「な、なにこれ……こんな紙がもう出回っているの……。こりゃ、噂話が広がるのが速い訳だ……」


 私は当時の日本でもここまで号外がすぐに配られることは無いだろうなと思った。この国にとって情報のやり取りがとても速く行われている理由の一つだろう。情報社会の地球と同じようにこの国も情報による力が国を大きくしたのかもしれない。


「まあ、国の歴史は学園で学べばいいか……」


 私は紙をディアに食べさせ、手洗いうがいをすませる。

 現在の時刻は午後一二時三〇分ごろ。お腹が空いてきたな……と思っていたら、部屋の扉が叩かれる。


「キララさん、料理をお持ちいたしました。昼食になさいますか?」


 メイド長の声が扉の奥から聞こえた。


「はい、食べたいです」


「かしこまりました。では、お運びさせていただきますね」


 メイド長は扉を開け、カートのような台座を押しながら、部屋の中に入れる。

 カートに置かれた料理は私のいる机まで持ってきてもらった。パンと魔物の肉、スープ、サラダと言った具合の良い昼食だ。

 メイド長は紅茶まで入れてくれた。


「今回の紅茶は古くないですよね」


「あの時は大変申し訳ございませんでした。もちろん、新しい品を使っておりますゆえ、味は抜群でございます」


 メイド長はあの時の失態を再び犯さないようねん入りに調べているようだ。


「じゃあ、いただきますっ!」


 私は神に感謝したあと、パンに手を伸ばし美味しい昼食を楽しんだ。たくさん食べて紅茶をズズっと飲む。


「えっと、メイド長さん。これをルドラさんに渡して皆さんで分けてください」


 私は中金貨が一四枚入った革袋をメイド長に渡した。


「これは?」


「私の宿泊費と食費です。まあ、どれくらいが的確な値段かわからなかったので、とりあえず渡しておきます。今は大変な時期だと思いますし、少しでも足しにしてください」


「え、えっと……。と、とりあえず、預からせていただきます。ルドラ様がお戻り次第、お渡しして、話しを窺いたく思います」


 メイド長は食器を片付け、頭を深々と下げた後部屋を出て行った。


 私は昼食後、勉強していた。まあ、休もうとも思ったが、あと一カ月もしないうちに次の試験がやってくるのだ。そう、何度も休んでなんていられない。

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