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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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冒険者ギルドからの封筒

「はぁ……。ふぐぐー。おはよう……世界」


 私は小さな棚に置いてある懐中時計を手に取り、上蓋を持ち上げる。時刻は午前五時。これもまた習慣の力か、どこにいようとも早起きができていた。昨日は思ったよりも遅起きで、内心焦っていたと思えば体がすでに順応したと思われる。


「さて、勉強勉強」


 私はフリジア魔術学園の入学試験問題を解き、朝から脳を活性化させる。

二時間勉強したら朝食に向かう。


 食堂にいたのはマルチスさん、ケイオスさん、テーゼルさん、ルドラさん、マルティさんの五名だ。

 ルドラさんとマルティさんが仲良く話しながら食事を取り、マルチスさんは無言で食事を楽しんでいる。

 ケイオスさんとテーゼルさんは仕事に行きたいがため、チャカチャカと動きながら食事を済ませ、私とすれ違う。


「ケイオスさん、テーゼルさん、おはようございます!」


 私はルドラさんのご両親に元気よく挨拶しながら頭を下げる。


「ああ、おはよう。今日も元気が良くて気持ちが良い挨拶だね」


「おはよう、キララさん。朝から元気をありがとう」


 ケイオスさんとテーゼルさんは私の頭を撫で、そのまま仕事に向かった。


「キララさん、やっぱりすごい。父さんと母さんが朝から嫌な顔せず、仕事に向かったよ」


 マルティさんは私の方を向き、微笑んでいた。


「マルティさん。おはようございます! 今日も、良い一日にしましょうね!」


 私はマルティさんに元気のおすそ分けと言うことで、気持ちが良い挨拶をする。


「は、はい! おはようございます! 今日も、頑張ります! って、ええ、凄い……。ものすごく元気になった」


 マルティさんは自分のことがよくわからないと言いたそうに驚いている。


「挨拶は朝一番に出す大きな声です。加えて、相手と会話する最初でもあります。この時に元気よく挨拶をすれば、それだけで周りからの評価が上がり、相手も自分も気持ちが良い朝になるんですよ。だから、挨拶をする時は元気よく笑顔で、心を込めて言いましょう!」


 私は一二〇点の笑顔でマルティさんに言う。


「はは……、皆、キララさんみたいになったらどうなっちゃうんだろう……」


「そりゃあ、キラキラした元気いっぱいの良い仕事場になるに決まっておろう」


 マルチスさんは食事を行いながら言う。


「マルチスさん。おはようございます! 今日も朝から、びしっと決まっていてカッコいいですね!」


「はははっ! そうだろう、今日の朝、おろしたての服なんだ。誰も気付いてくれなくて困っていたんだよ」


 マルチスさんは昨日とほぼ同じ茶色のタキシードを着ており、誰が見ても同じ品にしか見えない。そのため、誰も気付かなかったのだろう。


「とてもお似合いですよ。もう、三〇年以上若返って見えます」


「はははっ! そうだろう、そうだろう! いやー、キララと話していると気分が良いな!」


 マルチスさんは懐から金貨一枚を手に取り、私に渡してきた。


「今日のお小遣いだ。好きに使いなさい。さてっ! わしも仕事に行ってくるかな!」


 マルチスさんは意気揚々と杖をこしらえ、侍女から受け取ったハットをかぶりながら部屋を出て行く。あの調子だと、大分仕事が捗るだろう。


「キララさん……。ほんと凄い……」


 ルドラさんとマルティさんは目を丸くしながら言う。


「別に凄くないですよ。褒めてあげたら誰だって喜びます。ルドラさんも髪が綺麗に整えられていて素敵です。マルティさんも服装がびしっととしていてカッコいいですよ」


「そ、そうですかねー」


 両者は似た反応を示した。やはり、兄弟なだけあってよく似ている。


「相手の心を掴むために必要なことは第一に褒めること、褒め千切り、良い気にさせてから、こっちの話しに持ち込むのが、営業の基本です。初めから、商品を買ってくださいと言っても誰も買ってくれませんよ」


「べ、勉強になります」


 ルドラさんは頭を下げていた。


「キララさん、商人に絶対向いてるよ! どう考えても商人が天職だよ!」


 マルティさんは食事そっちのけで私に言う。


「私は商人になる気が無いです。逆に、マルティさんはなりたいのですか?」


「ぼ、僕? そ、そりゃ……。僕もルドラ兄さんみたいなカッコいい商人になりたい気持ちはあるよ。でも、僕に才能は無いし……」


 マルティさんはまた落ち込んでいた。


「マルティ。私にも商人の才能は一切無い。ただ、楽しんでやっているだけだ。マルティも何か楽しみながら仕事できる職業を見つけなさい。そうすれば天職だ。じゃあ、行ってくる」


 ルドラさんは立ち上がり、仕事に向かう。


「あ、そうそう。キララさん。これを今朝、預かりました」


 ルドラさんは綺麗な封筒を私に渡してきた。差出人はウルフィリアギルドと書かれており、何となく内容を察した。


「キララさん、あまりことを荒立てないようにしてくださいよ。昨日も、とある絶世の美少女が試験監督を見た覚えのない魔法陣で圧倒し、エルツ学園長をファイア一発で気絶させたとか言う話しが巷で噂になっています。この国では噂なんて一瞬で広がりますからね。良いですか、気を付けてくださいね! もう一度言います、気を付けてくださいね!」


 ルドラさんは誰がとは言わなかったが、どう考えても私だと気づいているようで、両手を頬に当て、挟みながら言い聞かせてくる。


「は、はぃ。き、気を付けます……」


 私は昨日の行いを反省し、肝に銘じる。


 ルドラさんは食堂をあとにして出て行った。


「はぁ……。エルツ学園長を気絶させたなんて誰が広めるんだ?」


「キララさん、エルツ学園長を知らないの?」


 マルティさんは私に言ってくる。


「知ってますよ。昨日も面接のときに話しました」


「エルツ学園長は名工の鍛冶師であり、大斧を使う者で最強の称号。斧豪を持っていた者だよ。戦士エルツって言ったら過去の戦争で大活躍した有名な方なんだから! ドラグニティ学園長と戦ってもいい勝負をするよ!」


 マルティさんは滅茶苦茶嬉しそうに話す。どうやら、エルツ学園長は相当凄い方らしい。


「そ、そうなんですかー。あ、あははー、ぜ、全然知らなかったです……」


 ――あぁー、面倒臭いことになっちゃってるぅ……。エルツ学園長って、結構強い方だったんだ。そりゃ、ファイアで気絶したら噂にもなるよね。学園は秘密主義だから他の誰にも情報を校外しないと思うけど、どこでどう漏れるかわからないからな。


 私は一層気を付けて行動しなければならないなと肝に銘じる。学園に入っていない私は学園と言う施設で守ってもらえない。今は一人の女の子なのだ。学園と言う巨大な防御区域に入るために何としても合格しなければならない。


「じゃあ、僕はドラグニティ魔法学園に返るよ。もう、学生寮に戻るから、今日から会えない。でも、今度のフリジア魔術学園の試験の前日と当日は実家に帰ってくる。何か聞きたいことがあったら遠慮せずに聞いて」


 マルティさんは学生服を身に纏い、イカロスに乗りながらドラグティ魔法学園に向かった。

 私はまた一人寂しく朝食を得る。


「キララさん、どうぞ」


 メイド長が封筒ナイフを私に渡してきた。ありがたく受け取り、封筒を閉じている蝋印を切る。


 封筒の中身を取り出すと、手紙が入っていた。


「寒い季節ですがどうお過ごしでしょうか。一月一七日、騎士から新種の魔物の素材を見せてもらい査定が終了いたしましたので、ウルフィリアギルドの受付窓口までお越しください。その際、軽い面談があるとお考えの上、時間の都合を合わせ、お越しください。ウルフィリアギルド:ギルドマスター、キアズ・リーブン」


「はぁ……。面倒だ」


 手紙のほかに、騎士が書いた書類らしき文字がびっしりと埋っていた。もう、読むのもおっくうだが、取次の関係から面倒な書類を全て記入したことを報告してあるようだ。


「この紙を受付に出せば、信頼してもらえると言うことか。じゃあ、行くしかないな」


 私はあとに回すと面倒だと思い、さっさと話しを聞いて勉強に集中しようと考える。


「ごちそうさまでした」


 私は朝食を完食し、両手を合わせ神に感謝を伝える。

 部屋に戻り、出発の準備を進めた。


「護身用のナイフと剣、ローブの中に杖と杖ホルダー。試験管ホルダーも小さい奴で良いよな」


 私は出来るだけ軽装備で準備した。


「フルーファ。ちょっと、ウルフィリアギルドと言う場所に行ってくるから、他の人に迷惑を掛けないようね」


 私はフルーファの頭を撫でながら伝えた。


「わかった……。俺はこのぬくぬくしたした部屋で寝てる……」


 フルーファは巨大なぬいぐるみみたく、暖炉の前で寝転がりながら言う。


 私は部屋をあとにしてレクーがいる厩舎に向かった。


「キャー、レクーさんカッコいいっ! 交尾してっ!」


「もうだめーっ、レクーさんカッコよすぎて、我慢できないっ!」


 多くの雌バートンが厩舎の中でレクーに叫んでいた。レクーは無視を決め込み、干し草をもしゃもしゃと食している。

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