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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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思いっきり

「試験官さん。そこから早く逃げないと、負けちゃいますよ。魔力切れを狙っているかもしれませんが、私は魔力量が、なまじ多いので作戦を変えた方が得策です」


「はは……。見るはずだった私の方が見られている……。前言撤回だ。スキルを使用する。私のスキルは『先制攻撃』だ。私の技は相手よりも遅くとも先制になる」


「へえ、戦いに便利なスキルですね」


「ふっ!」


 試験官は高速移動かと思うほどの速度で『ファイア』の罠から抜け出し、私の背後に一瞬で移動した。どうやら『先制攻撃』のスキルは相手の近くに瞬間移動できるくらいの圃場効果もあるらしい。


「はあっ!」


 大人が子供に負けるなんてあってはならないと言いたげな力強い声が耳もとで響く。


「『先制攻撃』が出来たとしても、糸に捕まったらどうなるんですかね」


 私は試験官の横なぎ攻撃を、小さな体をより一層屈めて回避し、ネアちゃんの糸が仕組まれている黒いグローブが入っている服のポケットに手を入れた。ポケットから手を出すと、黒いグローブはすでに嵌っている。

 右手の黒いグローブの甲に付いているリングを左手の人差し指と中指で引っ張り、ネアちゃんの糸を引き出す。

 そのまま、試験官の手首に巻き付け、軽く浮かせて魔力操作で体を回転させながらスパムでも作るかの如く糸で拘束した。もう、手慣れたものだ。


「な、なんだこの糸……。全然切れる気がしない……」


「なるほど、拘束は攻撃に含まれないんですね。試験官さん、よかったですね。ダンジョンに潜った時、拘束系の罠に嵌ってはいけないことがわかりましたね」


 私はローブからサバイバルナイフを取り出し、地面に転がっている試験官の顔の横に突き刺す。すると、試合記録用紙に九つ目の黒星が付いた。


「驚いた……。ドラグニティから聞いていたがまさか、ここまでとは……」


 特等席で多くの受験者の戦いを見ていたエルツ学園長がドワーフ特有のもさもさした毛を撫でていた。ドガっと言う鈍い音が響いたと思ったら私の近くに大きな岩が振ってくる。

 いや、岩じゃなくて体をかがませて着地したエルツ学園長だった。

 短い脚を伸ばし、私の前に歩いてくる。


「えっと、これはその……。試合ですし、死なないと思っているからできることで……。実践ではビビりまくっていて……」


 私は回りの雰囲気を見て察した。この中で私は完全に浮いている……。

 だが、エルツ学園長は私のことを知っていたのか、周りの唖然とした表情と違い、何とも微笑ましい表情を浮かべていた。

 可愛らしい女の子を見る厭らしい顏ではなく、磨く前の原石を見つけたような顔だ。


 ――なんか、目を付けられた。面倒臭そう。あと一勝、だれかと試合をして完遂しないと。


「では、最後にわしと一戦しようか」


 エルツ学園長は羽織っていた紳士服の上着を脱ぎ、白いカッターシャツ姿になる。何なら、その白いカッターシャツすら脱ぎ、上裸になった。年老いているとは思えない肉体美。

 髭もさもさのお爺ちゃんなのに肉体が若い男の人よりもバッキバキなのを見るに、やはりドワーフ族なのだなと確認する。


「お主の全力をわしにぶつけてくれ。わしが倒れたら一〇勝目の黒星が付く」


「ええ……。全力ですか……。エルツ学園長が無事じゃすまないと思うんですけど……」


「ハハハハハっ! わしの体はそこまで軟じゃない。ドンッとぶつかってくるのだ!」


 エルツ学園長は意外と熱血系なのか、肉体に魔法をぶつけてこいと言って来た。

 これでもし、彼の上半身がぶっ飛んでしまったらどうすればいいのだろう。

 私はエルツ学園長を殺した大罪人として処刑されるのではないか。そう思った。


 ――ベスパ、エルツ学園長が丁度倒れそうな火力ってどれくらいかわかる?


「そうですね。エルツ学園長の肉体に込められている魔力量からするに『ファイア』を八〇個分の魔力を放てば丁度吹っ飛びます。肉体は強靭なので無傷で済むはずです」


 ――了解。じゃあ、私は七九個分の魔力で一発の『ファイア』を作るよ。ギリギリ倒れないくらいがエルツ学園長の面子を守れるし、特待生にぐっと近づけそう。


 私は指先に魔力を溜めていく。『ファイア』を七九個作れるだけの魔力を溜め終わると指先がチラチラと光っている。

 エルツ学園長はその光を見て、太い首の中央にある喉仏を大きく動かした。


「一応聞いておくが、貫通系のスキルなどを持っているのか?」


「いえ、私はそんな攻撃特化のスキルじゃありません。これはただただんに魔力を溜めまくっている証拠です。では、放ちます」


「よしっ! どんとこいっ!」


 エルツ学園長は相撲でも取るのかと言うくらい脚幅を広げ、全身に力を籠める。もともと盛り上がっていた筋肉がさらに膨らみ、厚みが増した。

 私は筋肉だるまと称したくなるその肉に照準をあわせる。


「『ファイア』」


 私は詠唱と共に指先に展開した『ファイア』の魔法陣に魔力を入れ込む。すると『ファイア』七九個分の一撃が放たれた。

 大玉転がしの時に使う真っ赤な玉と同等の大きさが魔法陣から出現する。

 大太鼓をバチで思いっきり叩いたような『ドンっ!』と言う鈍い音を発しながら撃ち出された『ファイア』は地面を抉りながら、エルツ学園長の体に向って行く。


 エルツ学園長の体に『ファイア』が当たると、巨大な爆弾が爆発したような鈍い破裂音と、何かが燃えた影響で現れる黒煙が突風によって吹きあがった。

 突風は私の髪を大きくなびかせ、周りの者が大きく叫ぶほどの威力を目の当たりにして、彼が死んでいないか心配になる。


「ごふっ……。こ、これは……。なかなか……。効いた……」


 エルツ学園長のズボンや髭がチリチリになり、全身すす塗れ。小さな火傷を少々負っている様子。


「はは……。この子は中々磨きがいのある……」


 多くの者が何が起こっているのか理解できず、息を飲んでいた。わーとか、きゃー、などの黄色い声援は無く、ただたんにあの子は誰だとか、怖いとか言う声が上がる。

 私はなるべく目立ちたくなかったのにと思いながら、エルツ学園長自ら目立たせようとしてきてイラっとした感情が乗っていたのかもしれない。


「が、学園長……」


 先ほど、糸でぐるぐる巻きにされていた試験官の先生がエルツ学園長に駆け寄る。糸は先ほど、私が魔力で切っておいた。


「……き、気絶してる」


 試験官の先生は目を一度擦り、何度も疑いながらエルツ学園長を見て言う。

 周りはエルツ学園長が一撃で気絶したことを知り、一瞬混乱の渦になった。


「あ、あはは……。学園長、眠かったのかな……。じゃ、じゃあ。私はこれで失礼します……」


 私は試合記録用紙を見る。すると黒星が一〇個もついてしまった。

 当初は五個か八個くらいで良いかなと言っていたのに、結局戦いに夢中になってしまっていたようだ。

 このままじゃ、私まで戦闘狂になってしまう。

 私は頭脳派なのだ。シャインたちのように、脳筋戦法を行うほど、バカじゃない。今すぐこの場から逃げないと何を訊かれるかわからない。


 私は試合記録用紙を近くにいた別の試験官の方に渡し、闘技場から逃げるようにして走る。


「や、やっちゃった。やっちゃった……。一〇連勝もしちゃったよ」


「キララ様の負けず嫌いな点が出てしまいましたね」


 ベスパは私の頭上を飛び、にこにこと笑う。この場で笑っていられるほど私に余裕はない。


「もう、なんで笑ってるの。エルツ学園長に目を付けられた。まあ、悪くないけど、なんかこういう形で目を付けられるとは思わなかったよ」


 私は筆記試験の方で何か言われると思っていた。だが、実技試験の方で何か興味を持たれてしまっては面倒なことになるのは間違いない。


「はぁ……。でも、こうなってしまったことは仕方がない。次のフリジア魔術学園の試験に全力で取り組もう」


 私は二月八日に行われる試験を目標にした。今日は一月一八日。つまり、あと一ヶ月も無い。ざっと二○日くらい。でも、まだ二〇日もあると考えると、長いな。


「キララ様、結局剣を一度も使いませんでしたね」


「相手が剣ばかりだったから、魔法を使ったほうが有利でしょ。まあ、次のフリジア魔術学園の方は魔法使いが多いと思うから、剣を使ってみようかな」


「フリジア魔術学園の方でも同じ試験とは限りませんよ。別の試験が用意されていると考えた方が普通です」


「確かに。エルツ工魔学園と違った試験の方が新しくて面白いかもね」


 私は次の試験を楽しみにしながら、レクーがいる厩舎に戻る。現在の時刻は午後六時三八分。もう、二時間以上も戦っていたようだ。今から、もっと長い間戦う者もいるのだろうか。


「さてと、さっさと帰って夕食にしてお風呂入る。そのまま寝ちゃうぞ! 今日は頑張ったんだ、寝たもん勝ち!」


 私はレクーを厩舎から出し、手綱を握りながら鐙に靴裏を乗せ、一気に背中にまたがる。


「レクー、ルドラさんの屋敷に返るよ!」


「わかりました。その元気の良さから見るに、今日は上手く行ったようですね」


「まあ……。ぼちぼちかな。でも、手ごたえは感じたから、きっといい結果が帰ってくるよ」


 私が結果を見るよりも先に家に結果が届くのかな。学園にも張り出されるか。それを見て合否を見ればいいよね。


 エルツ工魔学園の合格発表は二月二八日。今日から一ヶ月後だ。受験番号が張り出され、合格者が決まるらしい。

 入るか入らないかは後で決められるので今は気にしなくてもいいだろう。

 今、気にするべきなのはフリジア魔術学園の試験の方だ。女子ばかりと言うことは武術系の試験が簡略化されていると考えた方がいい。実際の試験を見た覚えが無いので、クレアさんの話しを信じるしかなかった。

 クレアさんが受けた試験は筆記試験、面接試験、実技試験と言っていた。まあ、今回と同じだ。だが内容は違うと思われる。どう変わるかはわからない。

 ただ、女子が多いと言う点で何か変わってくるのだろう。


「ううん。もっと具体的な試験内容を教えてほしいな。こんな抽象的な内容じゃ、対策方法がわからないよ」


 私はレクーの背中に乗り、トランクから取り出したフリジア魔術学園の冊子を見ていた。


「君っ! そこの君っ!」


 後方から質の良いバートンに乗った質の高い服を着ている金髪のイケメンがやってくる。先ほど、私が気絶させた少年だ。

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