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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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思考力と忍耐力

「はぁー、疲れた……。水、水……」


「どうぞ」


 ベスパは気を聞かせ、牛乳瓶に入った水を渡してきた。


「ありがとう」


 私は蓋を開け、冷えた美味しい水を飲む。故郷の味がして良い気分だった。


「キララ様、調子が良い感じでしたね。他の人はそうでもなかったですよ」


「と言うと?」


「他の方達はもっとうんうん唸っていましたから、結構難しかったようです」


「そうなんだ。いや、結構時間がかかったし、考えたから良い問題だったと思うよ。エルツ工魔学園でこの問題の難易度だと、ドラグニティ魔法学園の問題内容が怖いよ……」


「キララ様なら問題ありませんよ。今、ドラグニティ魔法学園を受ける生徒もこの試験を受けているわけです。キララ様が試験に集中している間、さっと他の会場を見てきましたが、スラスラ解いている人間は数名足らずでした。今年は例年よりも難しい内容のようです」


「いつの間に……。でも、なんか、ちょっと不安が消えた。ありがとう」


「いえいえ、私にできることなんて、これくらいですから」


 ベスパは軽くお辞儀して頭上をぶーんと飛ぶ。


 私はフルーファに抱き着き、仮眠した。もう、教室だろうが関係ない。脳内がパンクしそうなのだ。フルーファを抱き枕にすると、いつもと同じような気分になれるため、大分リラックスできた。


「き、キララ様……、く、苦しい……」


 フルーファは私に抱き着かれ、息が上手く出来なくなっているらしい。だが、今は我慢してもらおう。

 一五分ほど経った後、フルーファを放す。


「ふぅ……。ありがとう、フルーファ。だいぶ気分が楽になった」


 私はフルーファの頭を撫で、感謝した後、椅子に座る。もう、次の試験が始まるのだ。


「では、今から魔法学の問題冊子と回答用紙を配ります」


 午前一一時四四分ごろ、問題冊子と回答用紙が配られた。明らかに分厚い……。問題の量が半端ではなさそうだ。


「最後の筆記試験となります。全力で取り組むように。始めてください」


 午前一一時四五分ごろ、皆、一斉に冊子を開いた。


 大問の数は変わらず大問八まで。でも、大問一から七までの問題数が多すぎる……。


 ――こりゃ、脳の処理速度が落ち切っている最後に持ってきていい問題量じゃないでしょ……。


 多くの者の脳内はすでに問題を解きすぎて爆発寸前だ。それにも拘わらず、圧力で押しつぶすような問題の量。

 ライトのように、問題を見た瞬間、答えがわかるような特殊能力でもなければ、全問を解くことは不可能だと思われる。九〇分間、永遠に問題を解かせ、最後までたどり着けないのが想定だろうが……、舐めるなよ。

 私とて大人の意地がある。精々一二歳が解く問題だ。私に掛かれば容易い容易い……と言いたいが、言えないのが現状だ。


「こりゃ、ライトに教えてもらっていなかったら詰んでるな」


 魔法学、大問一の多くは基本属性魔法の初級魔法の呪文を書けと言う問題だ。これは余裕。

 大問二は魔法陣が出てきてどのような魔法陣かを書いていく。この問題がざっと三〇問。正気の沙汰ではない。一分で解いたとしても、三〇分かかる。つまり、一瞬で見て内容を理解し、回答を書きこまなければならないのだ。選択問題にしてくれよ。


 だが、私はライトに死ぬほど鍛えられた。パッと見て内容を理解し、答えを書く。ありがたいことに問題数が多いことで、一枚一枚とても有名な魔法陣ばかりだった。なので特徴があり、それを一瞬で見抜けば解くことが可能。

 私は二〇分で大問二を終えた。


 大問三。呪文が書かれており、この魔法陣を書けと言う問題だった。ざっと八問。


「ほんと、ふざけやがて……」


 魔法陣を一枚描くのにどれだけかかるかわかっているのだろうか。苦手な人なら、一枚描くのに一時間掛かる。ライトは単純な魔法陣なら八秒も掛からない。まあ、ライトを並べるのは違うか。


 今回、描いていく魔法陣は簡単と言えば簡単。私も一分あれば描ける。でも、毎日毎日練習してやっと一分で描けるのに、まだ魔法をしっかりと習っていない新入生にやらせる問題か? 


 私は学園側の大量の受験者を振るい落とすための問題なんじゃないかとか、意地悪な教師たちがあざ笑うために入れた問題じゃないかとか考える。でも真実を導き出しているような時間はない。


 大問四は魔法陣同士を組み合わせるとどうなるのかといった文章問題。


 大問五は大きな魔法陣の中にどれだけの呪文が組み込まれているのか探る問題。


 大問六は魔法が発動した後、どのようになるのか答える問題。


 大問七は魔法陣の中に書き込めるだけ、呪文を書き、新しい魔法を生み出せと言う問題。


 最後の大問八が一番簡単なんじゃないかと思ってしまった。なんせ、答えを知っているからね。私は半分だけ答えを書き、もう半分は成功に見せかけた偽の回答を加える。


「う、うう……。死ぬ……」


 もう、頭の中がパンパン。すでに爆発寸前だ。見直しなんてしている余裕はないが、しないともったいない。

 たとえ、日本のものすごい有名大学の生徒でも中学生の問題集八冊分を九〇分内にやり切れと言われたらさすがに疲れるだろう。


 ――が、頑張れ、私……。ここでへばったらドラグニティ魔法学園なんて夢のまた夢だぞ……。


 私はドラグニティ魔法学園の問題に恐怖しながら、見直しを繰り返す。見返してみれば問題が多いだけで、疲れていない頭で解けばそこまで難しくない問題ばかりだった。


 ――なるほど……。一瞬の思考力と忍耐力を試す問題達か……。でも、酷すぎる……。


 私は苦笑いを浮かべ、間違えている問題を八カ所訂正し、書き換えた。そのところで……。


「ペンを置いてください。では、問題冊子と回答用紙を回収します」


 試験監督は教室を回り、問題冊子と回答用紙を回収した。


「お疲れ様でした。今から、昼休憩となります。一時四五分までに、この場に待機していてください。では、休憩にしてください」


 試験監督は教室から出て行った。


「はぁ……。つ、疲れた……」


 今の時刻は午後一時一五分。もう、動く気力がわかない。


「キララ様、何か食さないと午後に力が出ませんよ」


「そ、そうだね。フルーファ、購買まで連れて行って……」


 私はフルーファの広い背中に乗り、移動する。フルーファの大きさは魔力の量で調節し、私が移動できる程度の大きさまで戻す。


「キララ様、購買ってどこにあるんだ?」


「ベスパに聞いて……。私は休む……」


「はぁ……。身勝手な女王様だな……」


 フルーファは移動を始めた。どうやら、ベスパが誘導しているらしい。

 私はハンモックに揺られているような感覚で仮眠をとる。ざっと一〇分経った頃、フルーファが吠えた。


「あ、着いた?」


 私は一瞬で眠りに落ちたらしく、結構脳内がすっきりしていた。


「フグぐ……。はぁー、良い感じ。ありがとう、フルーファ」


 私の目の前には購買があった。だが……。


「本日試験のため、休み……。じゃ、じゃあ、食堂は?」


「キララ様、食堂の方も休みでした。私が急いでマドロフ家からパンを持ってきましょうか」


「そうだね。今回は仕方ないか」


 私はベスパに銀貨三枚程度を渡し、パンを持ってきてもらう。


 教室に戻り、ベスパがバスケットをもって戻って来た。ベスパがいなかったら普通にやばかった。やはり一番頼りになる社畜だ。


「ありがとう、ベスパ。お腹がすきすぎて死にそうだよ」


 バスケットを開けるとパンが詰まっていた。こんなに要らないが、食せるだけありがたい。そう思っていると……。


「ジィ……」


 多くの子供達がバスケットを眺めながら沈黙していた。どうやら、食事を持ってきていないらしい。高くて買えなかったのかもしれない。


「えっと……、よかったらどうぞ」


 私はバスケットの中身を他の子供達に分けた。どうせ、食べられない量を持って来てしまったのだ。あと、お腹が減りすぎていたら午後の試験にも問題が起こる。そんな状態で挑んで、落ちたらやるせない気持ちになる。だから、渡した。


「あ、ありがとう!」


 子供達は皆悦び、パンを一個取って喜んだ。どうやら、ベスパは他の子供達の分も考慮してパンを持ってきたらしく昼食を持ってきていない子供達にパンを分けたら、バスケットの中身がピッタリなくなった。


 私は昼食を得たあと、もう一度一五分程度の仮眠をとり、あっと言う間に一時四五分。試験監督の先生が教室に戻って来た。


「では、今から別室にて八名ずつ口頭質問して行きます。くれぐれも粗相のないよう、学生になると言う気持ちで受け答えするように。では、右の縦列の八名は私に付いて来てください」


 廊下側の窓ぎわに座っていた子供達が椅子から立ち、試験監督の先生の後ろについていく。そう考えると、私は四列目。あと二回子供達を見送らないといけないわけだ。

 他の教室でも、同じように面接が行われているのだろう。今、多くの先生が子供達に質問を投げかけていると思うと、何とも変な気分になる。八人が出て行ってざっと二〇分後、先生が戻って来た。

 良い顏をしている子供もいれば、終わったと言うような絶望している子供もいる。まあ、受かる確率は一〇〇倍だ。そう簡単に受かるわけがない。


 このエルツ工魔学園は努力すれば入れる。そう言う学園なので、多くの生徒を取るかもしれない。たとえ、先ほどの筆記試験が駄目でも、面接や実技で取り返せばいいのだ。まだ諦める必要はないと思うけど、一度ダメだと思うとその先の気力が沸かないと言うのもわからなくない。


「はぁ……。暇だ。勉強くらいしかすることがないよ」


 私は四列目なので、後四〇分は待っていないといけない。


「仕方ない、フリジア魔術学園の受験勉強でもするか」


 私はトランクから別の学園の冊子を取り出し、軽く勉強する。もう、頭を使う勉強はしたくないのでただ読むだけの長文読解を行った。小説を読んでいるような感覚になり、気分が落ち着く。

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