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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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しぶといマドロフ家

「おはようございます。三カ月間、お世話になります」


 私はルドラさんの実家に三カ月間お世話になる。

 ルドラさんが村に来た頃、私の宿をどうしようかと相談したさい、ぜひ使ってほしいとのお願いで、ここに来た。

 まあ、王都の宿代を払わなくて済むのは大きい。食事、広い部屋、お風呂付の家で生活させてもらえるなんてありがたいにも程がある。

 私は生粋の日本人。そんなうまい話しがあるとは思っていないし、ただで泊めてもらう訳にもいかない。


「こちら、つまらない物ですが」


 私はバターと生クリーム、牛乳など、梱包された状態で種類別に詰められた木箱をベスパに運ばせ、メイド長の前に置く。


「なんと……。ありがとうございます。皆、喜びます!」


 メイド長は笑みを浮かべ、木製の木箱を他のメイドたちに運ばせていく。レクーと荷台はメイドが厩舎に送り、私の荷物はメイド長が持っている。何とも至れり尽くせりな場所に来てしまったな……。


 私は手洗いうがいをすませ、以前、借りていた部屋に移動する。やはり、数日間住んでいただけあり、多少は心が解れた。すでに暖炉が付いており、温めておいてくれたようだ。


「今のマドロフ商会の状況って言えますか?」


「詳しい話はできませんが、今、この場でキララ様をお出迎えすることが出来ていると言う時点で多少はお察しいただけるかと」


「まあ、確かに……」


 どうやら、マドロフ商会はほぼ一年、正教会からの嫌がらせを乗り切り、今の地位を守り続けているようだ。

 やはり頭がいい人達が集まるとなかなか潰せないんだな。きっと正教会の上層部も奥歯が破壊されるくらい悔しい思いをしているだろう。


「明日はエルツ工魔学園の試験日ですが、準備の方は問題ありませんか? 何か必要なものがありましたら、何なりとお申し付けください」


「ありがとうございます。でも、ほぼ完ぺきに準備してきたので、抜け目はありません。今日は暖かいお風呂に入ってぐっすり眠ろうと思います」


「わかりました。では、何かありましたら、またお声掛けください」


 メイド長は私がいる部屋から出て行った。

 私はいの一番に布団一式を大きなベッドの上に敷く。シングル用の布団一式なので、キングベッドぐらいの大きさがあるベッドに合わなかったが、寝られるので問題は無い。


「ふぅ……。良し明日の試験を頑張るぞいっ!」


 私はトランクから冊子を取り出して丸テーブルの上に開き、勉強を開始しようとした。


「ラッキーさんっ! って、あれ? 誰ですか……」


 部屋の扉を勢いよく開けたのはルドラさんの弟であるマルティさんだった。白馬の王子様のような真っ白な衣装に身を包み、長くも短くもない髪が綺麗に整えられ、丸っこい眼鏡をかけている頭が良さそうな子だ。

 彼はドラグニティ魔法学園に通っているはずなのに、なぜ家にいるのだろうか。


「ま、マルティさん。どうして家にいるんですか?」


「ん? 女の子……。なんで? え、あの超カッコいい白いバートンはどう考えてもレクティタだ。なのに何で女の子……」


 私はマルティさんに男装した姿しか見せていなかった。レクーが知られているため、もう誤魔化せないな。


「えっと、初めまして。じゃないんだけど、私の名前はキララ・マンダリニアと言います。ラッキーと私は同一人物です」


「ええええええええっ! そ、そうだったの……。き、気づけなかった……」


「はは……。まあ、だましていてすみません。あの時はああするしか無くて。でも、本当の私はこっちなんです」


「ま、まあ。理由はわからないけど、キララさんとラッキーさんは同一人物と言うことはわかった。うん、そう言うことにしておくよ」


 マルティさんはルドラさんの弟らしく理解力がしっかりとあった。あと、場の空気を読む力もあるらしい。


「僕が家にいる理由だけど、明日、エルツ工魔学園の試験があるでしょ。ドラグニティ魔法学園も使われるから今日は準備があってお休みなんだ。さっき、真っ白なバートンを見て、一瞬でレクティタだって気づいた。だから、ラッキーさんが来たんだって思って、メイドに聞いてここを教えてもらったんだ」


 マルティさんは早口で喋り、興奮冷めやらぬ状態だった。


「えっと、なんで、そんなに興奮しているんですか?」


「そりゃあ、レクティタが来たからさ。少しで良いからレクティタのお世話をしてもいいかな!」


 マルティさんはバートンが大変お好きらしく、他のバートンよりもカッコいいレクーのお世話をしたいといってきた。


「別に構いませんけど……。マルティさんの愛バートンが嫉妬してしまいますよ」


「大丈夫、大丈夫。じゃあ、それだけを言いに来ただけだから、明日、試験を頑張ってね!」


 マルティさんは部屋から出て行き、颯爽と去って行った。元気なことは良いことだ。


「私がドラグニティ魔法学園に入ったら彼が先輩になるわけか……。まあ、嫌じゃないけど、面倒臭そうではあるな」


 私は再度集中し、勉強に取り掛かろうとした。


「おおっ! キララ! よく来たよく来た!」


 私が勉強しようとしていたら、またもや扉が開き、ルドラさんのお爺ちゃんである、マルチスさんが私の部屋に入って来た。

 服装は貴族っぽくなく、街中でよく見かけるお洒落なお爺ちゃんと言う感じがした。ピシッとしていないゆったりとした茶色っぽい紳士服を身に纏い、手を広げている。飛びこまないよ……。


「マルチスさん、ご無沙汰しております。ご健康そうで何よりです」


「いやー、窮地に立たされると若返るんだ。去年はほんと楽しい一年だったぞ」


 彼の感性は少々ねじが外れているのか、本来辛いと思う事態だったはずなのに、楽しいだなんて……。まあ、一代で中級貴族にまで押し上げる男性だ。肝の座り具合が違う。


「キララが家に来ると聞いて待ち遠しかった。その……、門番は元気でやっているようだな」


 マルチスさんはバレルさんのことを心配しており、小声で聞いてきた。


「はい。元気ですよ。とても楽しそうに生活しています。その方から、武器の手入れ用具をいただきました」


 私はトランクを開け、巻物状の手入れ用具入れを見せる。


「おおっ! 懐かしい。あいつが良く使っていた品とほぼ同じじゃないか」


 マルチスさんはバレルさんの話をした後、他国の検問の話をして来た。


「わしの話しを信じてくれた国はいなかったが、検問の職員は危険視してくれた。加えて同僚もまた、話しを聞いてくれた。魔造ウトサなる、危険な物質が出回る可能性がると話し、危険視させることはできたが……、すでに他国内部に持ち込まれている可能性は十分ある」


「でも、危険視しているのと、していないのとでは広がり具合が全然違います。お手柄ですね、マルチスさん」


「いやはや、だが、これっぽっちで終わる気は無い。何としてでも正教会の思惑を阻止しなければな。まあ、キララは試験の方を頑張りなさい」


 マルチスさんは私の頭を撫でまくり、部屋を出て行った。


「はあぁ、これでやっと……」


「きゃーっ! キララ様っ!」


 部屋の入り口に多くのメイドたちが現れ、キャーキャー言いながら私のプニプニの頬を突いてくる。人気者なのは嬉しいが、あまりにもうっとうし。

 メイド長が怒号を飛ばし、全員を静かにさせた後、ようやく私は勉強に集中できた。


「はいよっ! はいよっ! はいよっ!」


 勉強中に庭園からマルティさんの掛け声が聞こえてきた。黒いバートンに乗り、華麗に乗りこなしている。あの黒いバートンは私が知るところのイカロスだ。黒い鬣がとても雄雄しく、筋肉質でカッコいい。

 レクーを王子様系とするなら、イカロスはロックバンド系だ。パンクバンドかもしれないけど……。


 私は勉強に集中するために周りの音を魔法で遮断。一点集中し、昼頃までずっと勉強し続けた。


「よし。あとは運動した後に見直しと復習をちょっとすればいい」


 今の私は中学校の入試を頑張っているような状態だ。きっと日本の中学受験の方が圧倒的に難しいと思うが、この世界も侮るなかれ、数学は比較的簡単なものの、魔法学や生物学などは初めて見る学問で初見から勉強しなければいけないこともあり、以前の知識を組み合わせられない。

 大概は暗記系なのでもう覚えている。やはり子供の頭は覚えるのが早い。だから、受験勉強を頑張れた。まあ、誘惑になる娯楽が少なかったと言うのも大きいかな。


「よし、私も外で運動しよう」


 私は鎖剣を持ちながら、外に出た。庭園の開いている場所を借り、鎖剣の素振りを行う。

 一年前よりは大分マシになったはずだ。バレルさんの献身的な指導のもと、毎日毎日努力してきたかいがある。まともに出来ることなんてたかが知れているが、受け流しと面打ちさえできれば入試は何とかなるはずなので、適当にせず、誠心誠意を込めて一本一本本気で剣を振る。


「はあっ! はあああっ! はあああああっ!」


 私は気合いだけは十分あり、発声練習も兼ねてお腹の底から大きな声を出し、全身に力を込めてから一振り。


 寒さ故、周りの花々は散り、もう枝だけになっている。だからか、巻き起こった突風もただだた隙間を抜けていくだけで、何の迫力も無い。


「ふぅ……。良い感じ」


「はわわ……。き、キララさん。なに、今の剣。腰を抜かしちゃったよ……」


 私の後方にいたマルティさんが腰を抜かし、座り込んでいた。


「ただの、素振りですよ。剣が上手い方に教えてもらいました」


「そ、そうなんだ。僕、剣がからっきしだから、そんなに綺麗に剣を振れるなんて羨ましいよ」


 マルティさんはずれた眼鏡を掛け直し、立ち上がった。


「私も下手くそですよ。下手くそなりに、努力しているだけです。マルティさんは剣の鍛錬をしていないんですか?」

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― 新着の感想 ―
他国に話を通すなら、ビースト共和国の近くの大森林の異常のことを話したら信憑性が上がりそうだし情報共有すると良さそう。 キララって対正教会の仲間に対しても情報共有不足なところあるからちゃんとしてほしいな…
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