表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

782/1188

新種の魔物……。

 ガアアアアアアアアアアアアッ! と言う身に響く大声が聞こえた。クロクマさんの声ではない。

 私は飛び起き、右脚に付けた杖ホルスターから、白光する細長い杖を手に取る。まさか、こんなすぐ使う羽目になるとは思わなかった。


「『ライトボール』」


 私は杖先から蛍光灯より何倍も明るい光の球を出現させ、視界を確保する。その後、そっと動き、帆の隙間から顔をのぞかせた。

 暗すぎて何も見えない……。『ライトボール』を帆の隙間から外に出し、辺りを警戒。光を反射する白い雪ばかりが見える。


 ――ベスパ、今の声は何?


「キララ様、最悪の事態です。どうやら、新種と思われる魔物が出現しました」


 ベスパは私が一番言ってほしくなかった言葉を口にする。『新種の魔物』もう、この言葉を聞くだけで、過去のトラウマがよみがえる。


「はぁ……。出会ったら即死の可能性がある……。バレルさんの教えの通り、逃げたいけど……、ここで逃げたら王都に間に合わない。ベスパ、何体いる?」


「ざっと八体います。今、人々を襲い、食事中です。視覚共有でご覧になられますか?」


「食事中の光景を見させられるのは最悪だから、魔物の姿形、特徴だけ話して」


「了解しました。姿の面影はフルーファが言った通り、ホーンラビットです。ただ、ホーンラビットには似ても似つかない顏をしており、タルピドゥらしいゴツイ爪と尻尾が生えています。どうやら、ホーンラビットとタルピドゥが混ざり合った魔物のようです。大きさはタルピドゥそのもので全長三から五メートル弱。地面から突き出し、強靭な顎でバートン達を捕食しています」


「ホーンラビットとタルピドゥ……。なるほど、今まで土の中にいたのか。土の中に逃げ込まれると厄介だ。ベスパ、ネアちゃんの糸で魔物を捕獲。すぐさま駆除するよ。夜中、地面から突き出してくるとかごめんこうむりたい」


「了解しました」


 私は現状の把握を行うため、レクーに荷台を引いてもらい、惨事の現場へと向かう。


「ベスパは地面の中の探知をお願い、私の荷台も最悪突き破られる」


「了解です。地上は他のビーに任せます」


 ベスパは地面にスーッと入り、私達の荷台の下にもぐる。そうしておけば、地面からの攻撃は怖がる必要ない。

 タルピドゥと言うのはモグラのような魔物で、地面からロケットのように飛び出して攻撃し、狩りをする。跳躍力のあるホーンラビットと合わさっているのなら、どれだけ飛び上がるのだろうか……。


 私はレクーの頭上に『ライトボール』を移動させ、視界を確保。もう、街灯が無い真っ暗闇の山道を車で走っているようで恐ろしい。加えて地面が雪で湿っており安定しない。

 『ライトボール』の光が届かない場所は暗すぎて深淵……、息が詰まる。


 夜一二時過ぎ、私は悲惨な現場を目撃した。真っ白な地面が真っ赤に染まり、白い毛皮に覆われた巨大な魔物が肉を食い漁っている。

 生きている人間は八名ほど。

 荷台を護衛していた冒険者は地面からいきなり飛び出してきたと思われる魔物になすすべなくやられたのか、千切れた腕と冷たそうな剣が転がっている。

 吐きそうになりながら、喉元に力を入れて虫唾を堪えて無理やり飲み込んだ。

 この世界は地球じゃない。たとえ地球でも人や家畜が食い荒らされるような惨事があるのも確かだ。

 私はのほほんとした安全すぎる日本と言う国にいたから、悲惨な光景に見慣れていないだけ。そうこじつけながら心の奥底で、この世界の常識を受け入れつつ、右手に持っている白い杖をさらに光らせる。


「ネアちゃん。魔力を送りこむから糸の強度は最大でお願い。出し惜しみ無し」


「了解です!」


 アラーネアのネアちゃんは私の前髪から飛び、杖先に移動。


 私はネアちゃんに膨大な魔力を送り込み、輝かせる。そのまま釣り竿を振りかぶるように腕を引き、目一杯力を込めて振りかぶる。

 するとネアちゃんは疑似餌(ルアー)のように飛び、釣り糸のような細い糸を杖の先端に付けて離れていく。空中でビーに捕まれ、高速移動。


「ガアアアアアアアアアアアアッ!」


 ホーンラビットとタルピドゥが混ざった魔物はネアちゃんとビーによって手足を一瞬で縛られ身動きが取れなくなった。

 ネアちゃんたちはそれだけでとどまらず、魔物の全体を蚕の繭みたく、糸でぐるぐる巻きにして確実に捕獲。

 私は魔法で魔物の体を軽くしたのち、杖を持ち上げて釣り上げる。同じようにネアちゃんは六頭の新種の魔物を捕獲した。だが……。


「ガアアアアアアアアアアアアッ!」


 一頭が雪原を四足歩行で走り、雪を粉塵のようにまき散らしながら、私目掛けて襲い掛かってくる。兎のような可愛らしい見た目なら倒しずらかったが、生憎、見た目がモグラでホーンラビットの要素は白い毛くらい。大口を開けると真っ赤に染まった歯と口内が丸見えになっていた。


 私は杖先を魔物の大口に向けた。すると、地面にいたベスパが口内に飛び込む。すでに光輝いており爆ぜる気満々。


「『ファイア』」


 私は黄金に光り輝くファイアを放ち、ベスパを着火。だが、魔物の巨大な口が閉じておらず、このままだと私とレクーまで被害を受けると思った。

 その瞬間、背中が頼もしい真っ黒な巨体がレクーの前に飛び出し、短い腕をアッパーカットのように振り上げて魔物の口を閉じさせる。同時、巨大な爆発が起こり、私の長い茶髪が勢いよく靡く。

 レクーの前の黒い巨体は無傷、だが、一体のホーンラビットは肉塊に変わってしまった。


「ありがとう、クロクマさん。助かりました」


「いえ、頑丈な私はキララさんの盾にもなりますよ!」


 クロクマさんはドスドスと二足歩行で歩き、仁王立ちして私を覗き込む。さすがにデカすぎて身が縮こまる。


「いやー、やっぱりキララ様の爆発は気持ちが良い……、じゃなかった。威力がすさまじいですね」


 復活したベスパは私の頭上に戻って来た。クロクマさんがいた場所は真っ白な地面が真っ黒に染まり、新種の魔物は跡形も無くなっている。

 少々焼けた血なまぐさい臭いが平野の緩く寒い風に乗り、鼻腔を擽った。あまりの異臭に鼻が曲がる。


 地面に魔物の魔石が転がっており、無事だった。爆風で弾けとんで天然の雪のクッションに守られたのだろう。


「大きさは……、ゴンリより大きいくらいか。まあまあの魔物だ。ホーンラビット以上だな」


 魔物の強さはだいたい魔石で分かる。まあ、図体がデカいかどうかと言うのもある。

 新種の魔物は四足歩行型の三から五メートルの大きさ。それにしては魔石が小さめだ。

 ほぼ同じ体長のブラックベアーなら、魔石が巨玉スイカくらいある。そう考えると、新種の魔物の討伐難易度はCランクか、Bランクくらいだろう。

 相対するならば、ブラックベアーほど危険視する魔物じゃないが、夜中に地面から飛び出してくると言うのはあまりにも害悪すぎる。

 夜行性のホーンラビットと地中から飛び出して獲物を捕獲するタルピドゥが合わさり、害悪な魔物が生まれてしまった。これもまた、魔造ウトサの影響だろうか……。はたまた人的な影響があるのか……。どちらにしろ、夜中の移動は危険極まりないと言うことがわかった。


 私はクロクマさんを転移魔法陣に入れ、ぬいぐるみ程度にした後、首輪をつける。その後、新種の魔物に襲われていた者達の保護を行う。

 大概が商人で商品と移動手段のバートンを奪われていた。可愛そうとしか言いようがないが、私にできることは亡くなった方が腐らないよう凍らせるくらい。

 新種の魔物と会話してみたが、知能があまりに低く、食を求めていただけであり、倒すほかない。

 ただ、新種の魔物は誰かが報告しないと新種のままだ。

 私が冒険者ギルドに報告する義務がある。以前はバレルさんにお願いしたが、今回は私一人。やむなく、私が報告せざるを得ない。


 魔物は一体いれば十分なので、残りは鎖剣で首をすっぱりと切り、まずそうな肉はディアたちの食事にする。七個の魔石を回収し、ホーンラビットよりも大きな角を七本得る。多少のお金になれば、王都の生活も楽になるだろう。


 ようやく安心して睡眠がとれる。もうすでに宿は開いておらず、私は野宿する羽目になった。ビーとブラットディアの釜倉に荷台ごと入り、フルーファで温まりながら眠る。


 一月一〇日。私は朝八時に目が覚めた。昨晩は寝る時間が正午を過ぎてしまい、寝過ぎたようだ。外を見ると、快晴。視界がよく見える。ただ、よく見えすぎて真っ黒な雪と真っ赤な雪がはっきりとわかってしまった……。


「昨晩はどうもありがとうございました。まさか、少女に助けられるとは……」


 昨晩助けた商人の男性が頭を下げながら感謝してきた。


「いえ、逆に多くの方を助けられず、すみません。もっと早く気づいていれば……」


「いやいや、あなたがいなかったら、私達も死んでいましたし、新種の魔物に迅速に対応できるなんて、普通出来ません。全滅してもおかしくなかったんです。ほんと、ありがとうございます」


 私は生き残った商人や運よく生きていた冒険者の方々に何度もお礼を言われた。

 私は先を急いでいるため、報酬やらなんやらは受け取らず、感謝の気持ちだけを貰って先を急ぐ。王都まで距離が半分以上残っているのに、エルツ工魔学園の試験日まで後八日しかない。


 私は生きた新種の魔物を荷台で引き釣りながら、急いで移動している。人を殺した魔物に同情する必要はなく、少し積もった雪の上なのでほぼ滑っている状態と変わらない。この方が浮いて運ぶより自然なはずだ。


 ☆☆☆☆


 レクーは地面に多少の雪が積もっている状態でも問題なく走り、家を出発して一七日目でルークス王国の門前に到着した。どうやら、ギリギリ間にあった。レクー様様だよ。

 王都の近くは相変わらず、大量のバートン車が行き来しており、ここら辺の雪はすでに除雪されていた。やはり、ルークス王国の首都なだけある。交通の便が田舎とはけた違いに良かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ