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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
試験本番 ~賢者と聖女も現れたけど、気にせず受験する編~

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出発前

 仲間にそれぞれに役割があり、フルーファは私のペット、クロクマさんは私の護衛、ディアは残飯処理、ベスパは執事や雑務全般、ネアちゃんは医療、レクーは足だ。

 私が出来ることは皆に魔力を与え、強化するくらい。移動中も勉強ばかりの生活になるだろう。


「姉さん、夕食だよ」


 ライトは扉の奥から話しかけてきた。


「わかった。行くよ」


 私はトランクを閉じ、衣類は問題ないとして玄関に置いておく。


 居間のテーブル席にライトとシャイン、お父さん、お母さんがすでに座っていた。

 私も椅子に座り、夕食を得る。


「はぁー、明日からキララは三月末まで帰ってこないのか……」


 お父さんは寂しそうな表情を浮かべながら呟いた。


「姉さんは二月一八日のドラグニティ魔法学園の試験を受けた後、三月八日の合格発表を見て帰ってくるから早く合えたとしても三月の終わりごろ。でも一日会ったら家をすぐにたたないと、入学式がある四月八日に間に合わない。もう、今日からほぼ姉さんに会えなくなっちゃうわけだ」


 ライトは淡々としゃべりながらも、少々泣きそうな表情を浮かべていた。


「そうね……。ほんと、遠い場所ね。王都って」


 お母さんもしんみりした表情で呟いた。


「うう……。お姉ちゃんがいないと寂しいよ……」


 シャインはすでにぽろぽろと泣いていた。


「もう、シャイン、泣くなよ……。ぼ、僕だって泣きたいのを我慢してるんだ……」


 ライトは我慢していると言っているが、シャインが泣き始めたころから、涙を流していた。


「う、うう……」


 お父さんとお母さんも泣いている。両者共に学園に行ってほしいと言っていたのに、まだ受かってすらいない状況で泣いていた。私が学園全てに落ちたと言って帰って来たらどうなるのか見ものだが、その予定はない。


「皆、泣かないでよ。私も寂しいのは同じだよ。でも、ライトが作った観測魔法陣を見たら、私が王都にいることがわかるし、少し身近に感じられるはず。だから、安心して」


 一二歳の子供がバートンに乗って半月かかる場所に行き、三カ月も帰ってこないなんて自分自身が一番心配なはずだ。でも、私の精神年齢はざっと三四歳。もう、遠出するぐらいで泣きわめくほど子供ではない。でも、皆が泣いている姿を見るともらい泣きしてしまう体質なのか、ウルッと来てしまった。


「私は大丈夫から、皆、安心して。絶対に返ってくる。絶対に返ってくるよ」


「うう、姉さん……」

「ううう……、お姉ちゃん……」

「うううう……、キララ……」

「ううううう……、キララーっ!」


 ライト、シャイン、お母さん、お父さんの四名は私をぎゅっと抱きしめ、泣いていた。出発は明日なのに、少々行きづらい……。でも、行かないと間に合わないので、私は心を決める。


「じゃあ、皆。明日、私は王都に行くよ。また、三か月後に会おう」


「うん、姉さん。絶対だかね。たったの一日でもいいから、帰ってきて」


 ライトは中々見せない泣きじゃくった顔を浮かべながら私に言う。


「お姉ちゃんなら絶対に大丈夫だから、自信をもって試験を受けてきて。王都の貴族や権力者の子供達をぎゃふんって言わせてきてよ!」


 シャインは泣きながらも笑顔になり、私に活力をくれた。


「キララ、無理しないで何か困ったことがあったらルドラさんやほかの大人を頼りなさい。もし、どうしても帰ってきたくなったら無理せず家に帰ってきてもいいからね」


 お母さんは涙ぐみながら、私の肩を持ち、強く言う。


「キララ、もし誰かにいじめられたらお父さんに言いなさい。相手が貴族だろうが……、あー、貴族はちょっと無理かもな。医者の息子……、もちょっとな……」


 お父さんは父親の威厳が全くない発言をしながら、場を和ませてくれた。


「皆、心配してくれてありがとう。でも、私には仲間がいるから大丈夫。皆と力を合わせて何でも乗り切っちゃうよ!」


 私はフルーファに飛びつき、仲良しこよし良い感じを演出。


「そうね。キララにはたくさんの仲間がいるものね。なら、何も心配いらないわ」


 お母さんは目尻に溜まった涙を手の甲で拭い、微笑んだ。


「ベスパ、姉さんに何か怪我でもするようなことがあったら、叩きのめすっ!」


 ライトは瞳を黒く染め、ベスパに杖を向けながら言う。


「安心してください。この私が命を懸けてキララ様をお守りいたします」


 ベスパは胸に手を当て、軽くお辞儀をしながら言った。


「クロクマさん、お姉ちゃんを守ってあげてね」


 シャインはぬいぐるみのようなクロクマさんの手を握りながら言った。


「グラアアッツ」

(もちろんですっ!)


 クロクマさんは口を上げ、手を持ち上げながら吠える。


「よし、じゃあ、今日は盛大に盛り上がろう! 今年も皆で年が越せてお父さんは幸せだ!」


 お父さんは葡萄酒の蓋を開け、グラスに並々注ぐ。お母さんのグラスにも注ぎ、私達のグラスにはぶどうジュースを注いだ。


「そうね。今日は精一杯楽しみましょうっ! キララの学園合格を願って」


「乾杯っ!」


 私達はグラスを持ち、高らかに上げ、楽しい夕食を過ごした。

 二時間もすれば、お父さんとお母さんはよっぱらい、酔いつぶれる。私達が寝室に運び、食事を終えたテーブルを片付けたのち、子供会議が行われた。


「姉さん、王都に行って帰ってくるまで、絶対に油断しちゃ駄目だよ」


「わかってるよ。気持ちが緩んだ時が一番危ないことくらい知ってる」


「お姉ちゃんは気持ちが抜けると危なっかしいからなー」


「もう、シャインほどじゃないよ」


 私達はテーブルを囲み、話し合った。もう、子供のころの二名としっかりと話しをする機会なんて三カ月の間、無い。もしかしたら、この先も無いかもしれない。夏休み前にしっかりと話し合わないと、私の方が心配で気が気じゃないよ。


「ライト、仕事が辛くなったら他の大人や子供達に役割を変わってもらってもいい。無理せず、自分の出来ることを行うんだよ」


「うん。無理をしたら壊れちゃうのも知ってる。だから、大丈夫」


「シャイン。たとえ街の公演が失敗しても落ち込まないで、次につなげればいい。一つの思い出だと考えれば十分だからね」


「うんっ! 楽しんで行うことが一番大事なんでしょ。だったら、大丈夫、私、すっごい楽しみなの。失敗しても、私は私を貫き通すだけだよ!」


 シャインは瞳を輝かせながら、元気よく言う。


「シャインならどんなに大きな岩でも貫ける。その信念の強さはアイドルに大切な気持ちだから、忘れないでね」


「アイドル神様って本当に我が強いんだね……」


 ライトはぼそっと言った。まあ、わからなくもない。


「じゃあ、二人共、明日から私はいないけど、子供達と村の皆、ネード村の人達、街の皆をお願い。まあ、三カ月の間に何かあるとは思えないけど、臨機応変に対応して。最悪、ビーに叫べば、ベスパが気づくから。私も行くよ」


「姉さんの手を煩わせるまでも無く、僕達で解決するよ。僕は街の人とも顔見知りがいるし、シャインの腕っぷしで何とかする」


「はは……。力技で何でも解決しないようにね」


 私は苦笑いを浮かべ、子供会議を終了した。


 私は自室に戻り、机の椅子に座る。そのまま、勉強に取り組んだ。ライトが作った懐中時計を見ると、午後一〇時。ほんと、懐中時計様様だ。自分の寝たい時間や勉強時間までしっかりとわかる。ここまできっちりかっちりしたくなると、日本人の性格が残ってると感じてしまう。


「よし、勉強は終わり。持ち物を最終確認っと。一番大事なのは勉強道具でしょ、あと過去問が乗っている冊子。お金。大貴族の章。これだけあれば、何とかなる」


 私は一つ一つ確認しながら、トランクの中に入れていく。記章は自分で肌身離さず持ち、お金も転移魔法陣の中に入れておく。盗まれたら大変だ。

 試験費用が一つの学園に付き、金貨二枚。まあまあ高い。ただ試験を受けるだけなのにお金を取るんだから、学園側は儲かって仕方ないな。なんせ、ドラグニティ魔法学園は八万もの人々が受けるわけでしょ。一度試験を行うだけで大儲けだ。まあ、あっち側も色々準備があるし文句はないけどさ。


「さて、バレルさんから貰った手入れ道具で、武器の手入れもしておかないとな」


 私は革製の巻物を解き、木製の取っ手とバートンの毛を刈った時に出る毛を使用したブラシを手に取る。壁に横に掛けている鎖剣を手に取り、黒い柄を握って鞘から抜き出した。全て真っ黒。光を吸収しすぎて私の顔も反射しない。でも、ネアちゃんの糸が時おり光を反射し、きらりと輝いている。

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― 新着の感想 ―
王都の物価を考えたら受験料はめっちゃ安いな。 日本よりも良心的なのでは?
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