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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
受験まであと半年 ~仕事ではなく勉強に本腰入れる編~

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時間の流れは速い

「そうですかね……。まあ、キララ様が付けたのなら、私は何も言いませんけど」


 ベスパはブンブン飛びながら、私の命名に賛成してくれるようだ。


「『キラー団』か。良いじゃねえか。俺は響が好きだぜ。しゃ、お前ら。俺達は今から『キラー団』だ。誰一人死なず、ここに戻ってくる。いいなっ!」


「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオっ!」


 八八名と言う中隊規模の冒険者軍団がここに生まれた。彼らの活躍を耳にするのはそう遠くないだろう。


「ハンスさん、皆さんにこのボタンを付けさせてください」


 私はハンスさんに観測魔法陣が書かれたボタンが入った袋を渡す。


「ああ。観測魔法陣ってやつか。これで、仲間を見つけられるんだろ。超便利だな」


「冒険者は死がつきものです。どれだけ警戒しても死ぬときは死にます。だから、なるべく警戒していてください。しないよりは確実に死を防げます」


「わかった。フロックたちも頑張っているんだ。俺も負けていられねえよ」


 ハンスさんはフロックさんをライバル視し、微笑みを浮かべていた。荒くれものだったのに、正義の心が芽生えた彼らはとても頼もしく見えた。


「皆さん! 死んだら、私の料理が食べられなくなりますからね! 超美味しい料理が食べたい人は絶対に死なないでください!」


「当たり前だっ! 死んでたまるか!」


「キララ嬢の料理が食べられなくなるなんて考えただけでも悪寒がするぜ!」


「うおおおおおおおおおおおおおっ! 俺は生涯美味い料理を食べたい!」


「キララ嬢の料理を食べるために生きているようなもんだ! 死んでたまるか!」


 『キラー団』の皆さんはとても生に執着している。素晴らしいことだ。彼らならきっと生き残れる。私はそう信じて鼓舞した。


「キララ女王様。我々もあなた様に力を貸します」


 ウォーウルフの親玉は私のもとに寄ってきて言う。


「うん。『キラー団』の皆をよろしくね。親玉なら、皆を助けられる。ウォーウルフだからって死ぬのは禁止だから。ちゃんと戻ってくるんだよ」


「はい。必ず生きて戻ってきます」


 体が一番大きな親玉は私に頬擦りをしながら呟いた。


 私は親玉の頬に軽くキスをして生還を祈る。すると、親玉がばたりと倒れ、意気消沈した。


 私が親玉にキスすると、大量のウォーウルフたちが私のもとに群がってくる。全員にキスする羽目になり、地面に真っ黒な毛皮のウォーウルフたちが八八体倒れると言う異様な光景が生まれる。


「お姉ちゃん、キスで魔物を倒せちゃうなんてすごーい」


 シャインははにかみながら私を弄って来た。


「勝手に倒れてるだけでしょ。まったく、うつつを抜かしている場合じゃない、皆、お座り!」


 私が大きな声を言うとウォーウルフたちが一斉に起き上がり、『キラー団』の相方の隣に座った。もう、団体行動ばっちり。


「よし、では『キラー団』の初任務の成功を祈りますっ!」


 私は敬礼をしながら『キラー団』の出発を見守る。


「はっ!」


 『キラー団』は大声を出し、準備をしていた道具をウォーウルフ達の腰に取り付けたサイドバックに入れ、背中にまたがる。手綱を握り、ハンスさんの命令の下、街に向けて出発していった。これから多くの魔物を駆除し、魔造ウトサの広がりを食い止めてくれるはずだ。


「行ったね……。はぁ、無事に帰って来てくれるといいけど……」


「大丈夫ですよ。彼らは強くなりました。きっと帰ってきます」


 バレルさんは自分達の弟子を見ながら、少々しんみりしていた。やはり教え子が旅立つのは寂しいのだろう。


「お土産買って来てねー」


 シャインだけ呑気なことを言っていた。それだけ、彼らに信頼を寄せていると言うことかな。


 九月はハンスさん達を見送り、勉強と鍛錬をしていたら終わった。もう、驚くくらい時の流れが早い。少ししたら一〇月になってしまう。

 私はその前にしておきたいことがあった。


 ☆☆☆☆


「そろそろ種まきを始めないと収穫できないな」


 私はお爺ちゃんから貰った、キャロータと言う野菜の種を誕生日に貰っていた。この野菜はバートンが大好きな野菜らしく、食べると物凄く喜ぶらしい。なので、作ってあげたかった。

 以前よりも規模が大きくなった畑に移動し、人参に似通った種のキャロータを植えていく。


 お爺ちゃんも言っていた通り、キャロータは育てるのがとても難しいらしい。

 私は人参だと思って育てるが全く別の野菜なら、失敗に終わってしまう。でも、育ててみないとわからない。なので、種まきをして生えてきた葉を見て判断しよう。


 人参の種は発芽率が低く、低温、高温、乾燥した環境では発芽しにくい。もう、種まきから発芽までが一番注意しないといけない野菜だ。集団で種まきすると発芽率がよくなるので、種を多めにパラパラと撒いていく。あとで間引きをすればいいので、しっかりと育ってくれと念じながら種まきをした。

 種の発芽には水分が必要なので、大量の水を土に含ませておくのが必要不可欠。

 二〇センチメートルから三〇センチメートルで溝を切り、種を一センチおきに撒いてある。被せる土は薄めに、でもしっかり鎮圧する。そうしないと種が乾燥して発芽しにくいのだ。だいたい五ミリメートルくらいがいい。不織布をキャロータの種を植えた土の上に被せ、乾燥を防ぐ。


 種まきを終え、一四日待った。すると、小さな細い葉が何本も生えており、発芽は成功したらしい。魔力を込めた水を上げていたのが良かったのかも……。土に大量の葉が現れているので、葉が二枚から三枚のころ、一回目の間引きをする。

 始めの間引きは葉と葉の間が指二本分くらいになるまで間引きをした。この間引きをした葉も食べられるので、スープに添えて食べてやった。


 私が勉強をして鍛錬をしている間もキャロータは成長していった。ざっと葉が五から六枚になったころ、二回目の間引きを行う。もう、この時点でキャロータは人参に似た野菜だと言うことがわかった。上に生えている葉が人参そのものなのだ。

 二回目の間引きは握り拳一個分くらい、約一〇センチメートルから一五センチメートルの間隔が開くように間引く。雑草は全てビー達に抜かせ、周りの土を解し、もう一度掛けると言う土寄せも行った。こうすれば、土の中に空気が送り込まれ、水の通り具合もよく発育が促進される。もちろん、魔力もふんだんに分け与えた。


 間引いたキャロータは油でカラッと揚げ、レモネで食した。なかなかに乙な味だった。

 キャロータは人参と同じく、種まきから三カ月半ほど、葉が茂ってくるころが収穫時期になる。加えて、私がエルツ工魔学園の受験を行っているころが収穫時期だ。


 一〇月と一一月は勉強と鍛錬に集中。もちろん、キャロータの成長過程もしっかりと見ながら一緒に成長していった。八月から学園の受験をするに辺り、本気になり始め、どれだけ成長したのか、自分じゃよくわからない。でも、確実に頭がよくなっていることはわかる。剣の腕前は……、バレルさんが鼻で笑うくらい。とても貧弱なようだ。


 一二月に入った。もう、ずっと寒い。でも、この寒さがキャロータの糖度を高め、美味しく育ってくれる要因にもなり得る。

 私は寒すぎて鍛錬しながら体を暖め、暖かい家の中で勉強していた。


「姉さん。エルツ工魔学園に志願する資料は送った?」


 ライトは足裏の魔法陣温まりもくもくと勉強している私の隣で訊いてくる。


「うん。冊子に付いていた紙に必要事項を書いて街のバルディアギルドに出してきたよ。もうすぐ受験票が届くころじゃないかな。フリジア魔術学園にも送ったし、ドラグニティ魔法学園にももちろん送ったよ」


「なら、問題ないね。三大学園のうち最初にやってくる受験が、エルツ工魔学園だ。えっと、今出ている第一志望者数がざっと一万八〇〇〇人くらい。合格者は全部で八〇〇人くらいだから、合格率はざっと二二倍だね」


「はは……。倍率たっか……」


「フリジア魔術学園は八〇〇〇人くらい。でも合格者数は全部で二八〇人くらいだから……、二八倍だね」


「はは……。女の子ばかりでも物凄い競争率……」


「ドラグニティ魔法学園は八万人くらい。全国から人々が集まるらしい。もう、こんな大量な人がいる中。受かるのは八〇〇人。合格率は一〇〇倍だね」


 ライトはははっと笑いながら言う。笑いごとじゃないんだよ……。


「八万人って多すぎじゃない? 今年は物凄い人気ってこと?」


「んー、そうなのかな。まあ、これは第一希望の話しであって多くの人がドラグニティ魔法学園を志願しているけど、実際はエルツ工魔学園やフリジア魔術学園を狙っている可能性も高い。だから、一概に全員がドラグニティ魔法学園に本気なわけじゃないと思う。記念に受けておこうかなって感じじゃないかな」


「じゃあ、エルツ工魔学園の受験に一万八〇〇〇人以上の志望者が来るかもしれないってこと?」


「そうなるね。第一志望じゃないけど、滑り止めに第二志望で受けるとか、第三志望で受けるみたいな受験者もたくさんいるよ。ま、姉さんみたいな人達が大勢いるってことだね。いや、姉さんは全て受かって学園長たちに選ばせるんだったね。さすが姉さん!」


 ライトは私の発言を真に受け、本気でそうなると信じていた。さすがにそこまで行くと恐怖なのだが……。


「あと、姉さん。今回の志望者数の大量から、ドラグニティ魔法学園の試験月が一ヶ月前倒しになるらしい。フリジア魔術学園の試験が終わったら、もうすぐドラグニティ魔法学園の試験がある。気持ちを切り替えて頑張ってね」


「そ、そうなんだ。うん。頑張るよ」


 どうやら、三月に試験を行っていたドラグニティ魔法学園は二月に試験を行うように変更になったらしい。そりゃ、八万人もの参加者がいたら、色々時間が掛かる。仕方がない。


「ああー、僕も姉さんの試験を応援しに行きたかったなー」


 ライトは私の机に落書きをしながら言う。その落書きも新しく考案した魔法陣で適当な落書きでさえ、彼の手に掛かれば、世界を変えかねない品になってしまう。

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