表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
受験まであと半年 ~仕事ではなく勉強に本腰入れる編~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

770/1172

ピザ

「ソラルムをぐっちゃぐちゃに潰して鍋に投入。水に浸してアクを抜いたメロンゲーナをすりおろし、同じ鍋に入れる。軽くミグルムを入れてスパイシーな香りを出して火にかける」


 私はソラルムとメロンゲーナがどろどろに溶けるまで煮込んだ。すでにいい香りがしている。水分が抜け、ソラルムのうま味がギュッと凝縮されたソラルムソースが完成したら、料理の幅がぐんっと広がるぞ。


 ソラルムソースが焦げ付かないよう、ベスパに木製のヘラを持って適度に混ぜながら煮詰めてもらう。

 私は魔力を吸って膨らんだパン生地を器から取り出して、ベスパが作ったクッキングシートを敷いた鉄製の板に乗せる。

 パン生地をヘラで切りながら形を整え、くっ付かないよう距離を離しながら並べて行った。もう、パン屋さんの香りがして美味しそうだ。

 パン生地の表面にバターを塗り、綺麗な色目が付くように心掛ける。オーブンレンジなど家にはないため、家の外にベスパ達が作った竈でパンを焼いていく。パンが焼けるまで、私は具材の準備を始めた。


「さて、今回作っているハンバーガーの具材はこちらです。牧場産エッグルにブラッディバードの肉、ネード村産のソラルムにククーミス、牧場産チーズ、バター、になります」


 私は三分クッキングのようなノリで、一人ごとを言いながら、作業していた。その方が効率が良くなるのだ。


「今回の料理名はブラッディバード肉のソラルムソースとチーズ入りハンバーガーですから、主役はもちろんブラッディバード肉になります。この肉を引き立たせるためにソラルムを使用し、夏感をたっぷり味わっていきましょう。まず、綺麗なまな板の上で野菜から切っていきましょうね」


 私はソラルムを輪切りにしていく。すでに水洗いしており、とても新鮮でみずみずしい。加えてククーミスも輪切りにしていく。これはピクルスの代わりだ。食感がいいので、みずみずしさと爽やかさが集まり良い味わいになってくれる。


「野菜から切ることによってブラッディバードの肉についている瘴気がナイフに付き他の食材にも伝染するのを防げるんですよ。なので、肉を調理するときは最後に行うようにしてくださいね。では野菜を切り終わったので、肉を切っていきます」


 私はすでに羽毛を抜き、下処理が完了しているブラッディバードの肉を切り、ざっと一八〇グラムくらい取った。木製のフォークで肉に小さな穴をいくつも空け、硬くなりにくくするのに加え味をしみこみやすく火の通りまで良くする。


「油を薄く敷いたフライパンを熱し、十分に熱せられたら、ブラッディバードの肉を入れていきます。焼く時は皮の面を下にして焼くことで皮がパリッと焼き上がりますよ。下味にミグルムを軽く振り、肉の臭みを取ってあげてもいいですね。では、先ほどまで温めていたミグルムソースをフライパンの中に入れていきます」


 私は肉を焼いている最中にベスパが煮込んでどろどろになっていたソラルムソースをお玉でいっぱい掬い、フライパンの中に入れる。肉をぐつぐつと煮るために蓋を乗せ、焦げないように気を付けながら味をしみこませる。ざっと八分ほど煮込んだあと、ひっくり返し、再度蓋を締める。もう八分ほど経った頃、蓋を開けてしっかりと煮えているブラッディバードの肉が姿を現した。

 あまりにも真っ赤で血塗られているようだが、ソラルムの香りが料理場いっぱいに広がり、あまりにも美味しそうだ。箸を肉に差し込み、中までしっかりと火が通っているか確認したのち、フライパンを薪コンロから外す。布の上にのせ、荒熱を冷ます。その間に、肉は余熱で内部までジューシーに仕上がるのだ。


 私はパンの様子を見に行った。先ほどから三八分ほど経っており、丁度膨らみ綺麗な黄金色になった品が見たので、魔力で鉄製の板を引き寄せ、浮かせながら家の中に戻り、台所に置く。


「よし、良い具合に膨らんでる。これで、半分に切ってと」


 私はドーム型のパンを真横に切り、間に品が挟めるようにした。

 表面にバターを塗り、香りをよくした後、チーズ、ブラッディバードの煮込み肉、その上から一緒に煮込んだソースを掛け、ソラルム、ククーミスを乗せ、パンで挟む。


「出来た……、ハンバーガー。ベスパ、私が食べたらお腹一杯になっちゃうから、一回食べてみて」


「了解です!」


 ベスパはハンバーガーの前に立ち、体に合っていない人間用のナイフを使って上手く切った。内部構造をしっかりと見た後。鼠の如く齧り付く。ベスパの体が小さいので、横幅一二センチ、縦一〇センチの大きなハンバーガーを丸ごと食べられない。そのため、単体の味しかわからないのではないかと思うが、半分を食い尽くし、ブンブンと飛び回った。


「キララ様。単体の味はものすごく美味しいです。丸ごと食べた時の味がわからないのでフルーファに一気に食べさせて、味の感想を聞いてください」


「わかった。フルーファ。おやつだよ」


 私は広間で寝ころびながらだらけているフルーファを呼び、半分に切られたハンバーガーを見せる。


「うっわ、うまそう。食べていいのか……?」


「もちろん。一気にがぶっと食べて感想を言って」


 私は大口を開けているフルーファの口内にハンバーガーを入れた。


「ん、んんんっ! 美味い! ソラルムの味が際立っていてチーズのまろやかさと生のソラルムのみずみずしさ。パンの柔らかさに小麦の香り。肉にいたってはソラルムの味がしみこんでうま味が増して滅茶苦茶柔らかくてうまいっ!」


 フルーファは常に美味しい品を食べているせいか、すでに美食家のような舌を持っているにもかかわらず大絶賛だった。


「よし、ハンバーガーは上手くいきそう。じゃあ、余ったパン生地を使ってピザも作ろう」


 私はジャンクフードの代名詞ともいえるハンバーガーに並ぶほどの人気料理、ピザを作る。もう、アメリカ料理とイタリア料理を一緒に食べるなんてさすが誕生日。贅沢すぎるよね。なんなら、ハンバーガーよりもうまく行く気がしている。


「パン生地を薄く延ばして円形にする。直径は三〇センチメートルくらいかな。フォークで生地に穴をあけ、膨らみすぎを防止。作ったソラルムソースを塗り真っ赤に染め上げる」


 私はクッキングシートの上に小麦粉を撒き、生地がくっ付かないように配慮しているため、手際よく作れている。こんな料理が作れるようになってしまうなんて、五歳児の時は思いもしなかったな。


 私はブラッディバードの肉を細かく切り、ちりばめる。先ほど切った生のソラルムとククーミス、メロンゲーナをちりばめた後、チーズをふんだんに使い、夏野菜ピザを作った。うん、絶対に美味しい。焼き加減さえ間違えなければ、美味いのは確実だ。


 私は先ほど温めた竈にピザを投入。焼き加減を見ながら、魔力でクルクルと回し、全体を綺麗に焼いて行った。

 するともうピザの香りが漂ってくる。小麦の美味しいそうな香ばしい匂いとミグルムの爽やかな香りが混ざり合い、食欲をそそる。

 一八分ほど焼いたころ、取り出した。パン生地の表面はカリッと焼き上がり、チーズは蕩け、肉は中心まで火がしっかりと通っている。水分の多い野菜たちはしんなりと焼き上がり、うま味を凝縮させていた。


「う、うわぁ……。美味そう……」


 私はナイフで八等分に切り、ピザをベスパに与える。


「はむ……。んーっ!」


 ベスパはチーズを伸ばし、目を見開いていた。イーリスさんが作ったソラルムの味が濃すぎて水分を飛ばせばほぼケチャップだ。なので無駄な味を付けなくてもしっかりとうま味を感じられていた。


「キララ様、これ、凄い美味しいです! もう、美味しすぎて止まりませんっ!」


 ベスパはピザをもぐモグモグと食していた。食べても食べても食べたり無いと言った具合に口の中にピザを入れていく。そこまで美味しそうに食べてくれるなら、私も食したくなり、一枚手に取って口に運ぶ。

 しっかりとしたピザ生地にソラルムソースのがっつりとしたうま味。焼かれているからその分水分が抜け、ほぼソラルムの美味さだけがの凝っていた。口の中に入ってくる具材全て美味すぎてこんなピザを日本で売ったらざっと四八〇〇円くらいするんじゃなかろうか。さすがに言い過ぎか……。でも、それくらい美味しい。


「こりゃ、皆喜んで食べてくれるぞ。よし、ベスパ。今日の料理はハンバーガーとピザね。でも、ピザは人数分作らなくていい。無くなったらその都度足していく方式にして。あと、以前ショウさんのお店で作った簡単なスポンジケーキと生クリームを塗ったお手軽ケーキも用意しておいてくれると助かる」


「了解しました。準備を進めていきます」


 ベスパは私の作った料理を再現するべく、ビー達を命令し、せっせと作って行った。さすがの再現度に私は驚く。一度行ってしまえばあとは全て同じ工程を繰り返すだけなので、食材が無くなるまで半永久的に作り出せる。


 ベスパが準備を始めて一時間後、私は家を出て牧場に向かった。


 私の誕生日会は午後五時から始まる。結構早めの夕食だ。まあ、こっちの人は寝るのが早いので、夕方に夕食を済ませる場合が多いのだ。


 私はコロッケや唐揚げなども夕食で出すと言っているので、今日は大盤振る舞いをする。ビー達は大忙し。だが、私の命令を聞けて嬉しいのか、翅をブンブンと大きく鳴らして飛び回っている。


 ☆☆☆☆

 

 私は耳を塞ぎながら牧場に向かうと、先ほどまでライブ会場だったのに、いつの間にか私の誕生日会場になっていた。舞台に「誕生日おめでとう」と書かれた垂れ幕が掛かっており、少々泣きそうだ。


「姉さん、早く早くっ!」


 ライトは私の手を取り、舞台に上がらせる。もう、歌って踊る気力はない。でも、皆は歌や踊りを期待しているわけではなかった。


「えっと、誕生日会を開いていただき、誠にありがとうございます。私は精霊歴九〇〇年八月八日、朝八時八分八秒を持ちまして一二歳になりました。私がここまで生きてこれたのは皆さんのおかげです。本当にありがとうございます」


 私は代表者挨拶のような言葉を連ね、頭を下げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ