デカブツの後処理
「彼はいったい誰なんだ…、すまんな。冒険者には疎くての…」
聖職者さんのリーダーっぽい人が、顎髭を触りながらリーズさんに尋ねている。
「えっと…彼が大剣使いのフロック…。確か…Aランク冒険者ですね。主に、ブラックベアーの討伐を専門としている冒険者です。なぜそこまでしてブラックベアーに固執するのかは分かりませんが、今回は彼に助けられましたね…」
「そうだな、後であいさつに行かなくては…」
「それより今は、この状況を改善することに、集中しなければなりませんよ」
――確かに…デカブツの突進と瘴気の発生は止まったけど、今なお…瘴気を纏ったデカい図体は残っているし、空気中にもまだ大量の瘴気が蔓延している。
「聖職者の諸君、奇跡をさらに高めるのだ。今、ここですべての瘴気を消滅させる。儂の合図で一気に消し去るぞ!」
「はい!」×聖職者さん達
先ほどは、瘴気をどれだけ消滅させても、根源であるブラックベアーが瘴気を発生させ続けていた。
その為、全く減っていなかったのだが…、瘴気の発生が止まったとたん、一気にどす黒く染まった空気が消えていく。
――奇跡ってこんなにすごかったんだ…。
「冒険者の者と村人に聖水を飲ませろ、少しの瘴気も逃してはならん!瘴気は微量でも体内に残っていれば、増殖していく可能性がある。バートン達にもすぐさま飲ませよ!」
聖職者さん達が、駆け足で聖水を冒険者さん達に手渡していく。
――私も、早く聖水飲まないと…。
何とか、今いる場から移動し…、聖水を貰えないか、辺りを見回していると。
「あ!いたいた、キララちゃん。はいこれ、聖水です」
私の知っている聖職者さんが、試験管に入った聖水を持ってきてくれた。
「ありがとうございます」
試験管のコルクを抜き、無色透明でガラスよりも透き通った液体を渇き切った喉に、流し込む。
味はしない…、しないのだが…。
「うううう…うぉいしい…」
――ただの水かと思いきや…何ともまぁ、乾いた体に染み渡る。何この水、美味しすぎるでしょ…。見た目は、ただの水なのに…。
「ははは…、大事に飲んでよ。その聖水、金貨50枚はするから」
「は!!!金…金貨50枚…そんな馬鹿な…」
――この試験官1本の水が金貨50枚とか…。どうしよう、そんなお金…貯金を崩すか…。いや…ここは。
「わ…私、そんなお金…持ってないです!」
「そんなこと分かってるよ。大丈夫、聖水の金額は全て政府に払ってもらうから。キララちゃん達は被害者だから金貨を払う必要は無いよ。元々こうなったのも、政府がちゃんとした調査をしなかったからだし。そう考えたら僕の判断も間違ってなかったかも…。それに…、多少聖水の本数を誤魔化しても、これだけ使ったんだ…1本くらい、くすねても…」
「馬鹿垂れ!そんなことが許されるか!」
この話を聞かれていたのか、何ともまぁ怖いリーダーさんに話しかけられる。
「し…司教様!こ、これはじょ…ジョークですよ。ハハハッ」
――この人、絶対に何本かちょろまかしてるな…。
「それにしても、君があの瘴気を見つけ、報告し…さらには瘴気を食い止めていたというのは本当か?」
「え…いや、まあ本当ですけど…う、運が良かっただけです」
「運が良かったにしても、この村の人々は君に救われたのだ。誇ってもいい、それにこの村の探索を怠った政府にも落ち度がある。今一度瘴気の発見に力を入れるよう、申請を行える。この村を救ってくれてありがとう。政府の関係者の代表としてお礼を言いたい」
「い…いえいえ、別に対したことは、特にしてないですし…私まだ10歳の少女ですし…」
――あまり偉い人から目を付けられるのは…、これからの人生において得策では無い…はず…。こうなったら意地でも無能な少女役を演じ…。
「10歳の少女にしては…、まぁ~大層な魔法をぶち込んでたけどな!」
私達の話に割り込んでくるのは、いつも間が悪い…真っ黒な服装をしたヒーローだった。
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