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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
受験まであと半年 ~仕事ではなく勉強に本腰入れる編~

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握手会

「もう一回っ! もう一回っ! もう一回っ! もう一回っ!」


 ライトが声を開け、シャインも乗っかる。すると、クレアさん、バレルさん、ハンスさんにフルーファ。会場にいる私の知り合いたち、皆が大声を上げながら会場を盛り上げる。


「はは……、もう……、ほんとに、最高だっ!」


 私は叫び、辺り一面光り輝く。会場のレーザポイントかという光の道がわかるほど粒子量の多い輝きをビー達が発し、きらっきらに輝いている私が最後に歌った曲のサビからもう一度歌って踊った。いつの間にか空は晴れ、虹が掛かり、会場の熱気で湯気がたつ。


「キララっ! キララっ! キララっ! キララっ! キララっ! 最高っ!」


 多くの人達が私の名前を叫び、楽しさを爆発させていた。笑顔爆発、感情爆発、子供やお年寄りなんて関係なく、この場にいる者皆、全員が思っていただろう。今が最高に幸せなんだと。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……。はぁー、最高っ……、たのしぃいっ!」


 私は両手を広げ、とても暖かい日の光を全身に受けながら言う。

 会場の興奮が冷めるには本当に長い時間が掛かった。去年は疲れすぎてすぐに倒れたが、今日は神様たちのおかげ体力が残っており、握手会も開催される。村中の人達が一列に並び、ライトとシャインが管理する中、皆と手を握って笑顔を見せる。


「キララ、やっぱり最高だった。こりゃ、なにがなんでも生き続けないとな」


 フロックさんは律儀に並び、私と手を繋いで言う。眼元が真っ赤で、何度も泣いていたのだろう。そこまで楽しんでくれていると思うと、私も心が弾んだ。


「フロックさんが楽しんでくれてよかったです。また、絶対に見に来てくださいね」


「ああ。じゃあ、キララの熱いキスでも貰おうか」


 フロックさんは頬に指を当て、かがんだ。


「そ、そんな好待遇をするつもりはありません! あ、あれは愛犬だからやっただけです!」


 私は首を振りながら拒否した。


「そうか、ちょっと残念だ」


「……ま、まあ、今まで何度も助けていただきましたし、そのお礼はまだ返せていませんから、ちょっとしたお返しと言うか、おまじないと言うか、そんな意味合いで良いなら」


「ああ、構わない」


 フロックさんはかがんで頬を見せてきた。


 ――ちょ、ちょっとした地下アイドルなら頬にキスするくらい普通にやるし、だ、大丈夫。これはおまじない。フロックさんが生きて戻ってくると言うおまじないだ。


 私はフロックさんのつるつるの頬に軽くキスをした。周りは壁で覆われているので他の人には見られていない。まあ、シャインにばっちり見られてしまっているのが、少々痛い所だ。


「ありがとう、キララ。これで仕事も頑張れそうだ」


 フロックさんは私の頬にもキスしてきた。そのまま出口に向かい出て行く。


「へぇ?」


 私の頬が熱くなったような気がする。きっと疲れからだろう。あれだ、貴族のたしなみみたいなやつだ。欧米の人達で言う挨拶代わり。そうに決まっている。

 左頬を摩りながら、高鳴る心臓の音を右手で感じ、衣装を握りしめる。首に付けられたフロックさんの母親の形見も熱を帯びているように熱かった。


「キララ様、心拍数が一八八を越えました」


 ベスパは私の心音を測り、言ってくる。


「ちょ、ちょっと鳴りやまなくて……、すぐに、静めるから……。ちょっと待って」


 私は腹式呼吸をして、心拍を整えた。次に来たのは……。


「ああ、レディー、素晴らしかった。是非とも王都の劇場でも披露してほしいくらいだ」


「…………」


 後からやって来たカイリさんのおかげで心拍数が一瞬で戻り、通常運転になった。彼のうざさも時には役に立つのだと知り、心の中で軽く感謝する。


「キララさんっ! すごかった! 超超超超超超超超かわいかった!」


 もう元気八〇〇倍になったクレアさんが私の両手を握りしめ、最終的には抱き着いてきた。大きな胸が苦しい……。


「あ、ありがとうございます。楽しんでくれましたか?」


「もちろんだよ! ルドラ様が何も言わず、ここに連れてきた時は何が起こるのかって思ってたけど、人生で一番二番を争うくらい最高の時間だった!」


「そこまで行ってくれると、私も頑張った甲斐があります。来年の公演は……」


「絶対見に来るよ! もう、ここは私の第二の故郷だし! 王都のしがらみより大好き! 歳を取ったら絶対ここに移住するもん!」


 クレアさんはとんでもなく未来の話しをした。


「はは……、ま、まあ。楽しんでくれてよかったです」


 クレアさんは今日の思い出が欲しいと言うことなので、私は木板に私のサインと八月八日、クレア・マドロフさんへと書き、手渡した。


 私はルークス語でサインを書けるようにちょっと練習していたのだ。まあ、この世界にサインを書くなんて言うアイドルや俳優は聞いた覚えがない。こっちの世界で言うスターは冒険者とかかな。劇場にスターがいるのかもしれないけど……。


「す、すごい。キララちゃん。これ、本当にずっと残るじゃん」


「今日、クレアさんが私の公演を楽しんでくれた証拠です。見返せば、今日の楽しさを思い出せますから、何か辛い時があったらその色板を見て、心を燃やしてください」


「うんっ! ありがとう!」


 クレアさんは木の板を抱きしめるようにして持ち、出口に向かった。


「いやはや……、本当に生まれて初めて、ここまで興奮しました。心が燃え上がる感覚、忘れていた感情を思い出させてくれてありがとうございます」


 バレルさんは私の手を握り、何度も感謝してきた。


「いえいえ、私はバレルさんに人生は楽しいと言う気持ちを思い出してほしかったので、成功してほっとしています。きっと亡くなった奥さんとお子さんも暗いバレルさんなんて見たくないはずです。キラキラの笑顔で、これからの時間を大切に生きてください」


「はい。本当に、本当にありがとうざいます。私の命に代えても、この村は必ず守ります」


「もう、何を言ってるんですか。私達で守るんですよ。バレルさんは一人じゃありません。皆、バレルさんを敵だなんて思いませんし、恨んでません。幸せになったらいけない人なんていませんから、私達と一緒にこれからも生きていきましょう」


 私は手を広げた。クレアさんにもハグしたのだから構わないだろう。


「うう……、キララさん……」


 バレルさんは私をぎゅっと抱きしめてきた。とても力強く、本当の娘を抱きしめているような印象を受ける。

 八秒ほど抱きしめた後、バレルさんは離れ、部屋を出て行った。


「いやー、凄かったな。あれがキララの本当の姿か。キララはいったい何人の人格があるんだよ」


 元盗賊のハンスさんは私の手を握りながら言う。


「まあ、たくさん持っていますよ。その方が色々便利ですからね」


「おー、怖い怖い。さっきのキララなら世界転覆すら狙えそうなくらいの可愛さをしていたぜ。あんな魅了魔法使ったら危ないだろ」


 ハンスさんは私の力量を魔法だと誤認していた。


「残念ながら、さっきの盛上りようは魅了ではありません。私の実力です」


「な……。あの盛上りようは魔法の力じゃないのか……。あまりにも自然すぎて確かにおかしいとは思ったが……、なら、本当に全世界の人間を魅了しちまうことができるじゃないか」


「はは……言い過ぎですよ。でも、ありがとうございます。バレルさんとの修行が終わって旅立った後、私の誕生日までには一度この村に返って来てくださいね。死んだら駄目ですよ」


「ああ、そんな簡単に死なねえよ」


 ハンスさんは微笑み、手を軽く振って部屋を出て行く。


「キララ女王様! キララ女王様!」


 律儀に並んでいたフルーファが私に飛びついてきた。そのまま頬をぺろぺろ舐めだし、尻尾をブンブンと振っている。ほんと、一回甘やかしただけでこれだ。


「フルーファ、お座り」


「はいっ!」


 フルーファはピシッとお座りした。だが、口から舌を出し、尻尾を振りまくっている。私の目の前には体調二メートルを超える大型な狼系の魔物がいるのだが、恐怖心を全く感じない。それどころか愛らしく見える。


「お手」


 私は右手を出す。


「はいっ!」


 フルーファは私の右手に右前足を上げ、置いてきた。


「握手握手。フルーファも楽しんでくれたんだね」


「はい、凄く楽しかった。もう、心がぶわーってなって、色々景色がキラキラで!」


 フルーファはいつも眠たそうな顔をしているのに、今日はとてもばっちりと冴えていた。眠たそうな垂れ目がグワっと開かれていることで美形なのが明らかになり、とてもカッコいい顏をしている。

 この状態ならきっとどんな雌にもモテるだろう。ずぼらな性格さえ直せばすぐにつがいが見つかりそうだ。


 私はフルーファと言う最後の握手者に抱き着き、頭をわしゃわしゃと掻いた後、外に出る。

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