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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
受験まであと半年 ~仕事ではなく勉強に本腰入れる編~

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から揚げ

 私はビー達の視界と脳を使い、超速度で演算思考を回す。シャインの動きが少々ゆっくりに見え、なんなら、筋肉や視線の動きによる移動予測まで出来た。ただ、頭の中で理解していても体が動かなければ意味が無い。ギリギリ避けられそうな距離感だったので攻撃をしっかりと引き付けて一歩下がった。ブオンっという巨人がバットを振ったような大きな音が鳴り、私の体は空気の壁に押され、吹き飛ぶ。このまま地面に落ちたら怪我するので、すぐに対策を取った。


「ビー達、足場っ!」


 私が言うと、ビー達はネアちゃんの糸をピンと二本張り、空中に足場を作った。私は空中で足場に乗り、体勢を立て直す。


「あー、スキルを使った。ずるいずるいー。お姉ちゃんの負けー」


「私がスキルを使わなかったらシャインに瞬殺されちゃうでしょうが。肉はそんなに甘い品じゃないんだよ」


 私は魔力で弓を作り、同じように矢を生成。空中からシャインに目掛けて放つ。


「うわっ! 遠距離武器まで使うなんて、反則っ~!」


 シャインは黒い木剣を振り、魔力で作られた矢を弾いた。


「シャインの弱点は剣や魔法以外の武器と戦った経験が少ないこと。私はある程度弓を使えるようになったし、シャインの経験値を少しでも上げられると思ったんだよ」


「あー、なるほど。良いねっ! じゃあ、もっと撃って!」


「お望み通り」


 私は魔力の矢をシャインに目掛けて放つ。


「ふっ!」


 シャインは容易に矢を跳ね返した。やはり、一本では簡単に防がれてしまう。


「じゃあ、これはどうかな」


 私は魔力量を増やし、一本の魔力の矢を放つ。


「ベスパ、出口の転移魔法陣を八〇枚展開して」


「了解です」


 私が展開した入り口の転移魔法陣を通った一本の矢は八〇分割され、シャインに目掛けて八〇本撃ち込まれる。


「うわああああっ! 反則っ!」


 シャインは八〇本の矢に襲われ、回避と剣を使い、必死に対応していた。初見でも対応できるところが彼女の凄い所だ。


「はぁ、はぁ、はぁ……。お姉ちゃん、今の殺意高すぎ!」


「ごめん、でも、殺意を込めないとシャインも本気で戦えないでしょ。殺すつもりで戦ったほうが成長が早い」


「確かにっ! じゃあ、お姉ちゃん、もっともっと殺し合おうっ!」


「あの二人、なんか次元が違うと思ないか、兄弟」


「ああ……。俺もそう思うぜ、兄弟」


 フロックさんは地面に倒れ込んでいるハンスさんに手を差し伸ばしながら言った。どうやら、長い接戦を制したのはフロックさんらしい。


「あ、あの中に巻き込まれたら死ぬ自信しかない……」

「お、同じく……」


 私とシャインの殺し合いは回りにいた元盗賊たちを震え上がらせるものだったらしい。魔物のウォーウルフ達ですら耳をヘたらせ、前足で目を覆っていた。


「あははははははははははははっ!」

「はははははははははははははっ!」


 私とシャインは互いに攻撃し合い、成長を促す。私も良い刺激を何度も受けられたので、楽しかった。いや、別に本当に殺し合っているわけじゃないからね。


「ふぅー、運動したー」


 私は上空からの弓でシャインの足下をおろそかにさせた後、地面を高速で這うブラットディア達に彼女の足首をアラーネアの糸で拘束してもらってシャインを確保した。


「うわーん、お姉ちゃん。ずるいずるいー」


 シャインは天地をひっくり返されながら喚ていた。


「シャインは魔法を使えないんだから、私の糸に足下を取られたら負けちゃうよ」


「思いっきり引っ張れば千切れるもん」


「でも、シャインの手も傷着いちゃうでしょ。生活魔法の『火粉(メラ)』くらい使えたら簡単に千切れるからさ、たまには魔法も使って戦ってみた方が良いよ」


「むぅ……」


 シャインは戦いにまけ、お肉を食べられないと思っており、頬をパンパンに膨らませながら不貞腐れていた。


 すでに午後六時を回り、そろそろ夕食時だ。多くの者が地面に倒れており、息をするのもやっとの状態。皆、肉のために必死に頑張ったのだろう。


「じゃあ、頑張った皆さんにはご褒美としてお肉を上げます。しっかりと掃除して身なりを整えた者から並んでください」


「え……?」


 元盗賊たちは地面にはいつくばって涙を流していたのに、私の声を聞いた瞬間に目を丸くし、不意を突かれていた。


「皆さん、よく頑張りました。誰も、頑張った者にお肉を上げないなんて一言も言っていませんよ。見たところ、全員頑張っていたようなのでお肉を皆にあげます。さ、早く動かないと肉が貰えませんよ。動いた動いた」


「う、うおおおおおおおっ! キララ女王様っ!」


 元盗賊たちは鍛錬で散らかった森の中を超手際よく掃除していき、軍隊並の整列を完了させる。

 私は笹の葉のようなつるっとした大きな葉に冷凍されたブラッディバードの肉を包み、一人一人渡していく。肉を食べて元気になり、慕ってくれるのなら安いものだ。なんせ、肉の元値はほぼゼロなんでね。


「ハンスさん、炭コンロを置いておきますから使用後の後始末はお願いします」


「ああ。任せてくれ。にしても、よくこんなにブラッディバードの肉があるな。そんなに魔物が出るのか?」


 ハンスさんは四〇〇グラムほどの肉を持ち、呟いた。


「以前、大量に取れたんです。冷凍していた品ですから、まだ食べられます。そろそろ処理しないとと思っていたので気にせず食べてください。でも、ちゃんと火を通さないと駄目ですからね」


「わかった。そう言うことなら、ありがたく食べさせてもらう」


 ハンスさんは肉を大切に持ち、頭を下げて感謝してきた。前に比べたら大分礼儀正しくなったかな。バレルさんによる剣術指導のおかげだろう。


「じゃあ、ウォーウルフの皆にも、私の魔力とブラッディバードの肉を上げるね」


「ウオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」


 ウォーウルフ達は飛び跳ねて悦び、ブラッディバードの肉を咥えながら私に頬擦りしてくる。角が当たらないかヒヤヒヤしたが、上手いこと頬擦りしてくるので可愛くて仕方がない。


「おい、キララ。俺達にはないのか~? 結構頑張ったんだが」


 フロックさんは私の頭にボロボロの手を置きながら言う。顔が近いって……。


「あげないとは一言も言っていません。ですが、ここだと料理できないので村にいったん帰りましょう。今日はフロックさんとカイリさんの帰還を祝います」


「帰還を祝うって……。そんな大したことじゃないだろ。あと、七日後にキララの誕生日じゃないか。祝うのだって金がかかるだろ」


「私の誕生日、ちゃんと覚えていてくれたんですね……」


「フロックが女の子の誕生日を覚えられるなんて、奇跡だよ。さすがにレディーの誕生日は忘れていないみたいだ」


 カイリさんはフロックの肩に手を置き、微笑みながら言う。彼はいい汗を掻いているくらいで、まだまだ泥水を啜れそうだった。力の加減が本当に上手いんだな。


「な、ば、バカ野郎。俺は八月八日って言う覚えやすい誕生日だから覚えていただけだ。別にキララの誕生日だからって覚えていたわけじゃねえ」


「そうなんですか……。残念です……」


 私はフロックさんの前でしゃがみ込み、地面に八の字を書きながら露骨に落ち込む。


「あ、いや、き、キララの誕生日は語呂が良いって言うので覚えてるんだ」


 フロックさんはあたふたしながら話をころころ変える。周りからクスクスと笑われ、耳を赤くし、少年のように暴れた。子供っぽいがしゃきっとするところは凄く大人になると言うギャップが何とも、萌えそうな所である。


 私とフロックさん、カイリさん、バレルさん、シャイン、ガンマ君、セチアさんの七名は村に戻った。そのまま牧場に移動する。


「ベスパ。油と鉄製の鍋、小麦粉、ブラッディバードの肉を持って来て」


「了解です」


 ベスパは給食でも作るのかと言うほど大きな鍋を持ってきた。でも、底が薄いので油の量は比較的少なくて済みそう。薪コンロを土魔法で四個作り、薄っぺらい鍋を置いた。植物性油を鍋に入れ、火にかける。

 その間に大量のブラッディバードの肉をシャインに切ってもらい、一口で食べきれる程度の大きさになっていた。もう、ざっと八キログラムくらいの肉を小麦粉で塗す。小さな肉の塊に白い粉がくっ付き、お化粧をしたようになった。その中に、香辛料のミグルムを軽く振るい魔力を操って全体になじませる。皆は何をしているのかわかっていない様子だったが、フロックさんだけは泣きそうになっている。


「フロックさん、なんで泣きそうなんですか?」


「え? ああ、いや。何でもない。ちょっとな……」


 私はまあいいかと言うことで、大量のから揚げの元を油の中に入れる。魔力で動かし、万遍なく火が通るように広げた。


「うお、うおおお……。凄い凄い、じゅーって言ってる! バチバチって言ってる!」


「シャイン、危ないって!」


 シャインが鍋に近づき、油の危なさを知っているライトが抱き着きながら止める。子供達も見たいようだが、火傷すると危ないので離れさせ、少しの油跳ねも火事の元なので危険視させた。


 真っ白だった小麦粉塗れの肉はいつの間にかカラっと揚がりきつね色……いや、金貨のような黄金色へと変わっていく。水蒸気に乗って油と香辛料、小麦の香りが当たりに広がり、すでに美味しそうな匂いがぷんぷんしている。


「カイリさん、ソウルを持っていませんか?」


「もちろん、あるよ」


 カイリさんは存分に使ってくれと言わんばかりにソウルが入った袋を渡してきた。ざっと金貨五〇枚分くらいの量があり、さすがに安直に渡しすぎのような気がする。


 揚げたブラッディバードの肉を木製の皿に八個ずつ置いて行き、仕事してくれている皆の分を作った。荒熱で中央まで熱を通している間に、トゥーベルを細長く切り、油の中に投入。


「おおおおっ! おおおおおっ!」


 フロックさんはトゥーベルが揚げられている状況を見張り、泣いていた。


 私は魔力でトゥーベルを掻きまわし、表面がカリッと揚がったら油切りに乗せ、ソウルをまぶしていく。ソウル着きのフライドトゥーベルが完成した。もう、私とフロックさんは大歓喜。他の者は異質な茶色の料理に首をかしげている。だが、私の一家は皆、早く食べたくて仕方がないと言った表情をしていた。


 レモネを八等分に切り、一皿に一個置いて行く。パンを添え、から揚げとフライドポテトプレートが完成した。


 私は子供と大人全員分にとりわけ、牧場の広間に集まった仲間達皆で試食会並びにフロックさんとカイリさんの帰還祝いを行う。


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