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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
受験まであと半年 ~仕事ではなく勉強に本腰入れる編~

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オムツレ

「まったく、脱線しすぎだ。じゃあ、俺達の今後の方針を纏めるぞ」


「はい」


「俺達はひき続き、調査を続ける。主な調査先はフレイズ領の森の中にある特別区域だ。そこが調べ終わったら、他の箇所もしらみつぶしに調べる。魔物の討伐が難しくなりそうなんだよな……。その点はどうする?」


「考えがあるので、大丈夫です。フロックさんとカイリさんは調査に専念してください。ウォーウルフの数頭を付けたいところですけど、二名のスキルは割れてしまっていますし、魔物を連れて歩いていたら不自然すぎますよね」


「俺達にウォーウルフを付けても意味ないだろ。命令しても、言うことを簡単に聞かないんじゃないか?」


「この子達なら聞くんですけど……、フロックさん達には足手まといかもしれませんね」


 私はフルーファの頭を撫でる。フルーファは口を大きく開けてあくびした。


「じゃあ、魔物の討伐はキララに任せるとして俺とカイリは調査を続行。その前に、キララに手紙を一通書いてもらわないとな」


「そうですね。アレス王子に書きましょう」


 私はアレス王子にお願い文を書いた。説明は二名のSランク冒険者から聞いてもらうようにする。万が一、正教会の人間に読まれたらただ事ではない。

 魔力で文章を書き、私の魔力が注ぎ込まれた特効薬を掛けないと文字が浮かび上がらないようにする。

 村娘と言う名だが、アレス王子と面識が深くある村娘なんて私だけだろう。匿名にもなり、探される心配はないはずだ。


「ほんと器用な奴だな……。なにが書いてあるかまったく読めない」


「私の魔力に反応して文字が浮かぶようになっているので、アレス王子から謁見を了承されたらこの特効薬を紙に垂らしてください。あと、二名に特効薬入りの木製容器を八本ずつ渡しておきます。危険だと思ったら使ってください」


 私は聖水以上の効果を持つ、ライトと私が作った特効薬をフロックさんとカイリさんに渡した。


「一本いくらだよ……」


「そうですね。特濃凝縮ですから、お医者さん曰く、一つの容器に聖水と上級ポーションが八本分の効果があるらしいです。今、八本渡したのでざっと聖水が六四本、上級ポーションも六四本、合わせて一二八本分の品になります」


「ああ、あああ……。もう受け取ったからな。金は払わねえぞ!」


「安心してください、お金なんて取りませんよ。二人の命を守る品なので、見極めて使ってくださいね。決してエリクサー症候群にならないようお願いします」


「エリクサー症候群……、ああ。そうだな。使う時は使わせてもらう。遠慮なくな」


 私とライトが作った特効薬を持っていれば瘴気や病気、傷などを受けても死にはしないだろう。いきなり首ちょんぱとかされなかったらだけど……。


「俺達の方針は決まった。逆に、キララはどうなんだ?」


「私は来年の一月と二月、三月に学園の試験を受けます。受かれば王都で生活しますし、落ちたら……、仕事ですね。でも落ちる気はしないので、三学園のどこかには入る予定です」


「凄い自信だな……。逆に安心した」


「学園に入った後、学生の立場を利用して守ってもらいながら私も調査を進めます。生憎、私のスキルはお二人よりも調査に適正がありますからね」


「そうか……。あまり首を突っ込んで正教会に眼を付けられないようにな。ベスパ、キララをしっかりと守ってやってくれよ」


 フロックさんは私の頭上を見て言う。


「もちろん、私は何が何でもキララ様をお守りいたします。フロックさんの気持ちもしっかりと持って行きますよ」


 ベスパは頭上に顕現し、礼儀正しく頭を下げた。


「よし、これで大方の情報は交換出来たな。あとは、キララが言う、他の魔物をどうするかと言う点だけだ」


「えっと、その点はですね。新しい仲間を引き連れたので彼らに手伝ってもらうことにしました」


「と言うと……?」


 フロックさんは私の顔を見ながら首をかしげていた。


「じゃあ、お昼を終えたら近くのブレーブ平原まで行きましょう。そこに新しい仲間がいます。彼らに魔物との戦いをお願いする予定ですので、二名も彼らにご指導を願いします」


「ん?」


 フロックさんとカイリさんは私の言っている意味をちゃんと理解していないので、頭に疑問符を浮かべていた。

 

 先ほど一〇時のおやつを食べてもらったばかりだが、今後の鍛錬の運動量を考えて私は二名にお昼の食事を用意しようと思う。


「フロックさん、カイリさん。昼食はどうしますか?」


「もちろん、食べさせてもらう」


「ええ。いただきます。別に大量でなくてもいいので、パン程度でも構いません」


「わかりました。じゃあ、ちゃっちゃと作りますね」


 私は子供達に人気の昼食を作る。

 最近、エッグルが大量に取れるようになったので、卵料理が頻繁に作れるようになった。

 卵ほど栄養価が高い品も珍しいので、子供達にはふんだんに食べてもらっている。皆、美味しい美味しいと言いながら食べてくれるので、卵を産んでいる意味すら理解できていないブラッディバードたちも本望だろう。


「ベスパ。養ブラッディバード場からエッグルを六個持って来て。あと、子供達の分はベスパとビー達で作成をよろしく」


「了解いたしました」


 ベスパは私のもとに、木で作られた卵パックに入っているエッグルを六個持ってきた。加えて、業務員用に料理を自動で作っていく。私が作るよりも完璧なので、もう機械みたいだ。

 まあ、心を込めた方が料理は美味しくなるので、その点に関しては負けていない。


「さてと、じゃあ、作っていきますか!」


 私はエッグルを手に取り、木製のボウルに三個入れる。箸で卵白を切るように混ぜ、卵液を作った。先にミグルム(胡椒)で下味をつけ、さらに混ぜる。牛乳を一回し加えた。焼き上がりをふっくらとさせる隠し味だ。


 薪コンロに火を点け、フライパンに植物性油を入れて紙で引き延ばす。そこにバターを一欠けら加え、焦げないよう熱し、液状にする。

 熱せられたフライパンに卵液を一気に投入。じゅーっという美味しそうな音を上げ、白い水蒸気を発生させながら卵液が固まり、ボコボコと膨れ上がっていく。

 完全に固まる前にフライパンを動かしながら、卵液を箸でかき混ぜ、全体を固めていく。全体的に緩く固まったら、薪コンロから外し、箆で卵液の周りを整える。持ち手側から箆を使って卵を持ち上げ、オムレツの形にしていく。

 円の端がもう一方の端にくっ付いたころ、薪コンロの上に持って行き、形を固定。フライパンの持ち手をトントンと叩きながら、繋がっている端を上に持ってくる。見かけはオムレツをひっくり返したような形だ。ここまで来たら、手首のしなりと箆の動きでオムレツを手前側に転がす。すると、ツルツルぴっかぴかのオムレツが完成した。

 黄色のフォルムと楕円形の見た目が美しく。フレンチレストランで出てきてもおかしくない出来栄えだった。オムレツパンにして食べてもらおうと思ったが、ここまでうまく行くと別に普通に食べてもらってもいいなと言う気持ちになる。フライパンから木製の皿に移し替える。

 フランスパンのように硬い黒パンをナイフで切り『加熱(ヒート)』で柔らかくしたあと『ファイア』で表面を焼いて焦げ目を付けたら、オムレツの隣に添えた。ケチャップがあれば最高だったのだが、生憎無い。彩を考え、茹でたほくほくのトゥーベルと緑色のビーンズを少々。


「うん、いい感じ!」


 私は同じ作業を繰り返して二個目を作成したのち、フロックさんとカイリさんの前に出しだした。


「う、うわっ、うわっ。オムレツ……」


「フロック、オムレツではなくオムツレだよ」


「あ、ごめん。また間違えた。ややこしいんだよ」


「にしても、綺麗すぎますね……。正しく芸術……。ここまで綺麗なオムツレは見た覚えがない。レディーの家から王食が出てくるとは思わなかった。でも、ソラルムのソースは無いんだね」


「すみません。ソウルやウトサなんかの品も入っていません」


「いやいや、大丈夫。ここにあるから」


 カイリさんは魔法の袋から、木製の容器を取り出した。蓋を開けると真っ赤なソースが入っており、香りがすでにケチャップだった。


「バカ野郎! キララが作った料理に無駄なものを掛けるんじゃねえ!」


 フロックさんは物凄い剣幕を飛ばし、カイリさんに吠える。


「いや……、味を付けた方が美味しいだろう」


「キララの料理に無駄な味を加えるな。今まで、そんなことしなくても十分うまかっただろ」


「確かに……。では、今回はやめておこう」


 カイリさんはソラルムソースを魔法の袋に戻してしまった。


「えっと……、普通にソラルムソースを付けた方が美味しいと思いますよ」


「いや、俺はこのまま食べる! キララの作ったオムレツを食べるんだ!」


「だから、オムツレだってば……」


 カイリさんは料理にうるさい人らしく、名前を間違っているフロックさんに名前を修正させていた。別にオムレツでもオムツレでもどっちでもいいでしょ。レツとツレが違うだけじゃん。カレーライスとカリーライスくらいどうでもいい。


 フロックさんとカイリさんは両手を握り合わせ、神に祈った。

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― 新着の感想 ―
料理好きにしてはケチャップを使うのはセンスが無いよ! あれを使うと途端に陳腐な味になってしまう。 トマトの風味が全然しないからね。 ソラルムが収穫出来たら美味しいソースを自作出来そうだから楽しみ。
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