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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
受験まであと半年 ~仕事ではなく勉強に本腰入れる編~

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厳しい事実

「物的証拠が見つかれば、正教会も黙ってはいられない。最近は魔物の被害も増えている。その原因が魔造ウトサであり、正教会の思惑だと言う証拠を見つければ、正教会の規模拡大を防げるはずだ」


「フレイズ領の森の中に正教会が何かを隠している可能性は大いにありますよね。だって魔物が暴走しても止められちゃうくらい強い人たちが集まっていて、不届き者が集まろうとせず、義理堅い者達が領民を守っている。まあ、適当に探していても証拠なんて簡単に見つかるわけありませんし、可能性がある場所を探した方が効率は良いかもしれませんね」


「そう言うことだ。まあ、キララがフレイズ家に話を通したとしても応じてくれるとは思わないがな……」


 フロックさんは頬杖を突きながら呟いた。


「なら、王族の力も借りましょうか」


「はぁ……、王族?」


 私は菱形が重なり、星のように見える金の記章を手に取り、フロックさんとカイリさんに見せた。


「どわっ!」


 フロックさんとカイリさんは記章を見た瞬間に後方に倒れ込み、目を回していた。


「えっと……、大丈夫ですか?」


「き、キララ、なんて品を見せてるんだ……。と言うか、なんで村娘のキララがそんなものを……」


 フロックさんは椅子に座り直し、身を震わせながら訊いてきた。


「えっと、ルークス王の息子のアレス王子に、私が牛乳を売っていると知られてしまいました。ルークス王とアレス王子は牛乳が大好きらしくて……。売っている者に死なれると困るらしく、これをくれました」


「ルークス王とアレス王子は牛乳が好きなのか……。初めて知った。まあ、あんな美味い品は滅多にないからな。牛乳が無くなると困るから、記章で後ろ盾を……、頭いいな」


「そりゃあ、アレス王子だからね。頭の切れは父親譲りだ。でも、よくレディーに記章を渡す決断をしたものだ……。父上はいただいていたが、私は未だに貰っていないのに」


 カイリさんはもう、笑うしかなく、両手を上げていた。


「フロックさんとカイリさんは私の知り合いですし、Sランク冒険者と言う箔もついています。あと、アレス王子は正教会のことを知っていますから、話は円滑に進むはずです」


「キララはアレス王子とどこまで親密なんだ……」


「まあ、親密と言うか、暗殺を阻止したと言うか……」


「…………もういい。何となくわかった。お前の容量の良さとぶっ飛び具合でお腹一杯だ」


 フロックさんは額に手を当て、首を振っている。


「すみません……。さっき話した、学園の見学の時に色々ありまして。その時にアレス王子とドラグニティさん、ルドラさんと祖父であるマルチスさんに正教会関連の話しを通しました」


「おいおい……、重鎮ばかりだな。なんでそこが繋がったのかわからないが、キララの伝手でアレス王子と謁見し、フレイズ家に一文書いてもらえばいいってわけだな」


「理解が早くて助かります。出来るだけ気づかれたくないので、アレス王子に色々ともみ消してもらう必要はありますが、二人でフレイズ領にある森の区域に行って調べてきてください」


「そうだな。色々調べ回ってやっと見つけた研究施設がフレイズ領の森だけだった。あそこは特段強い魔物が多いからな、冒険者も滅多に寄り付かない場所だ。そもそも研究施設も魔物に襲われたから破棄されたっぽいし……、行ってみないと何もわからないな」


 フロックさんは伸びをしながら呟いた。


「えっと、二人に言っておかないといけないことがあります」


「なんだ?」

「なんでしょうか?」


 私は立てかけていた鎖剣をテーブルの上に置いた。


「木剣? にしても黒いな……。魔樹か?」


「この木剣はルークス王国の王都から帰るさい、多くの魔物を引き連れて私の魔力を食おうとしてきた魔物の素材から作りました」


「魔物の素材……。トロント系から作ったのか?」


「この魔物はアルラウネとマンドラゴラの両方の力を兼ね備えた魔物でした」


「は? なんだそりゃ……。そんな魔物がいるわけないだろ。そりゃ、新種の魔物だ」


「えっと、説明しにくいんですけど、アルラウネの人の体とマンドラゴラの魔法、両方兼ね備えていたんです。バレルさんも一緒にいたので、後で話を聞いてもらえればもっと詳しくわかると思います。この点と私の村にいるブラッディバードの小さな個体の情報から、新たな問題を見つけました」


「新たな問題……」


 フロックさんとカイリさんは固唾を飲んだのか、のどぼとけを動かし緊張した雰囲気を醸し出していた。


「新種の魔物の増大です」


「……やばいな」


 フロックさんは腕を組み、顎に手を置いた。


「ほんとにやばいね……。新種の魔物となると初見殺しの可能性も多々ある。そもそも二種類の魔物が合わさったと言うだけでも恐ろしい」


「実際、この魔物は超硬いうえに超再生までしてきました。バレルさんが放った『千手抜刀』で魔力を削り、首を落としましたが……、元剣神でやっと対処できる相手だったんです」


「元剣神と言ってもバレルさんは俺の師匠(現剣神)も認める剣士だぞ。それでやっと対処できる魔物って……。討伐難易度がS級の魔物じゃねえか。どうせキララの身体強化魔法を付与していたんだろ」


「その通りです。多分、あの時のバレルさんは現役の強さでした」


「現役のバレルさんがやっと倒した魔物……。はは、今のバレルさんにすら剣が届かねえのに、俺達が勝てるのか……」


 フロックさんは珍しく弱気になっていた。まあ、一度も勝った覚えが無い相手が苦戦する敵なんて考えたくもないだろう。


「ふぅ……、フロック。レディーが教えてくれたことで、新種の魔物に初見で出会わなくてよかったと考えよう。あと、新種の魔物が出没する可能性が増えたとも知れた。知っているのと知らないのとでは生き残れる確率が全く違う。ここは冷静になって正解だよ。いつもみたく、暴走しなくてよかった」


「当たり前だ。バレルさんの強さはよく知ってる。だから、冷静になってるんだろうが」


「えっと、レディー。この木剣はレディーのかい?」


「はい。学園で剣術の講義が必修であるらしくて、そのために作りました」


「ああー、あるな。剣術の講義。キララには苦悩だろうが、講義に出席してある程度鍛錬を積めば単位は貰えるはずだ。気にしすぎる必要はない」


「フロックさんが言っても全然信用ならないんですよね……。私にとっては超難しいかもしれないじゃないですか。なので、今でも毎日剣を振って鍛錬をしているんです」


 私は鎖剣の柄を持ち、一度振る。音が鳴らずに振れたが、まだ鎖剣の重さに振られている気がする。


「おお、中々綺麗な太刀筋じゃないか。バレルさんに教えてもらったのか?」


「もちろんです。まあ、縦にしか振れませんけど、この一本を極めておこうと思いまして」


「はは……、バレルさんがやりそうな鍛錬だな。まあ、キララには丁度いいだろう。俺も見てやるよ」


 フロックさんは立ち上がり、私の体に抱き着くようにして剣の持ち手や姿勢のブレを修正してくれた。


 ――ち、近い。な、なんか、フロックさんが近くに来ただけで心臓の鼓動が早くなっちゃってる……。


 私は落ち着きを取り戻すため、息を吐き、剣を振る。先ほどよりも少し振りやすくなった。やはり指導を受けると言うのは良いな。正しい道に進めている気がする。


「ありがとうございます、フロックさん。また少し強くなれそうな気がします」


「キララは十分強いと思うが、剣術も手に入れたらますます戦いの幅が広がるな。頑張れよ」


 フロックさんは私の頭に手を置き、微笑みながら言った。ばっくんばっくんと鳴り響く心臓の音があまりにもうるさくて、外で鳴り響く夏の虫達の音が全く聞こえない。心臓の鼓動が限界を越えそうなころ、彼が死んでしまったらどうしようと思う気が、襲ってくる。血の気が引き、夏なのに寒気を得た。


「フロックさん……、死なないでくださいね。私、結構悲しんじゃいますから……」


「キララ……。ふっ、バカだな。俺を誰だと思ってる。Sランク冒険者のフロックだぞ。超巨大なブラックベアーすら狩れちまう男だ。ぽっと出の魔物に負けるほどやわじゃない。心配するな。来年はキララも学園にいることだし、頻繁に会えるかもしれないだろ。カイリもついてる。奴は天才らしいからな。俺も天才だが、天才同士が合わされば怖い者無しだ!」


 フロックさんは私が不安がらないよう、珍しく元気溌剌に話してくれた。


「フロックさんは私と同じで真の天才ではないと思いますから思い上がらないようにしてください。カイリさん、気に食いませんがフロックさんのお守りをお願いします」


 私はカイリさんに頭を下げる。彼のスキルはものすごく有能だ。超巨大なブラックベアーの攻撃すら防いでいた。それなら初見の魔物の攻撃もある程度防げるはず。


「俺はお前の子供じゃねぞ」


「はは……、私はレディーにとって気に食わない存在なのか……」


 フロックさんとカイリさんは私に言葉で突っ込んできた。私がぼけに回ることは少ない。やはり、彼らといると楽しかった。波長が合うのか、元の年齢と近しいからか。若い二人はどこか後輩っぽいんだよな。

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