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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
受験まであと半年 ~仕事ではなく勉強に本腰入れる編~

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八月の初日

「ベスパ、牧場の販売所でトゥーベルを売りだすけど、一個で銅貨一枚って高いかな」


「そうですね……。牛乳瓶でも銅貨二枚ですし、高いと思われるかもしれません。二個で銅貨一枚なら許容範囲だと思いますよ」


「二個で銅貨一枚。うん、いけそうだね。まあ、子供達が買ってくれる可能性もあるし、美味しいと広まれば、皆買ってくれると思うから、販売所にトゥーベルを売る場所も作っておいて」


「了解しました」


 ベスパは牛乳の販売所に八百屋のような出店を作り、トゥーベルを並べて行った。トゥーベル二個で銅貨一枚と書かれた板を台の上に置き、木製の集金箱を設置してもらう。もう、無人販売所くらいの低能施設だが、逆に使いやすいかもしれない。トゥーベルが盗まれたところで大した損害にはならないから、人件費削減のためにも簡易施設にした。完成したころに実際に見に行く。


「うん、良い感じ。毎日一〇〇個くらいのトゥーベルを置いておけば、最大で銅貨五〇枚。人気が出ようがでまいが、勝手にお金を稼いでくれればそれでいいや」


 ビー達がせっせと働いてくれたおかげで、午後三時頃にはすべてのトゥーベルを六カ月保存できる状態にして、売り出せる準備まで整った。ほんと、こういう所は良いスキルだよな。

 私は仕事を早く終わらせ、あいた時間に勉強と運動が出来る。時間を作り出すスキルだと言っても過言じゃない。


「ディア、大量の毒草を食べてくれる」


 トゥーベルを作るさい、大量の葉が残る。でも、ディアたちに食べさせれば、完全に消滅し、糞をして良い土壌にしてくれる。

 通常、作物を育てると土の中の栄養がなくなってしまうので、同じ場所で育てるのなら一年以上開けるのが良い。でも、私のスキルと大量の魔力があれば、何度でも使いまわせる。お金にならない部分が出たとしてもディア達のお腹を満たせるので、無駄が一切無い。


「わかりました!」


 ブローチに擬態していたディアは仲間のブラットディアを集め、トゥーベルの葉を食い漁っていく。もう、毒々しい緑色の土地に黒い絨毯が引かれているようだ。


「よし、ズミちゃんに畑を耕してもらって収穫した八分の一の種イモを植える。もう、この勢いだとトゥーベルだけでも生計が立てられるな。そうすれば、最悪牧場に何かあっても、皆の命を繋げられるはずだ」


 私が農業をやっている理由に趣味と言うのがある。だが、他にもあり、保険と言う効果もある。

 牧場経営が失敗したら農業の方に変え、負債を返済するという作戦だ。すでに小さなブラッディバードのエッグルを回収する場所も順調に増えている。魔物が病気にかかるのかわからないが、鳥インフルエンザに掛からないよう細心の注意を払い、増殖中だ。

 エッグルだけでも生計が立てられれば、お金を生み出す木が三本になり、一本が枯れても生活が保てる。危険を分散しているのだ。


「もっともっと安心して暮らせる村にするぞ。酪農業は一つの職でも十分稼げることがわかった。まあ、私のスキルありきだけど……。でも、人員を割り当てて仕事を回せば何とかなる。村の子供達が全員学園に通える日も近かったりするのかな。なんて壮大な夢。って、その前に私が学園に受からないとな」


 私は食い散らかされていく畑を見ながら呟いた。

 その後……。私が適当に始めた無人販売は案外好評になり、朝、牛乳を買いに来た人がついでにトゥーベルも買って行くという相乗効果を発揮した。トゥーベルが思ったよりも好評で、皆、美味しいと言ってくれた。農家さんの気持ちがまた一つわかった気がする。


 ☆☆☆☆


 七月が過ぎ、私の誕生日がある八月に入った。

 八月の一日、村にある人達がやって来た。


「はあああああああああああああああっ!」


「ふっ!」


「な、なにしているんですか!」


 今朝、私は爆音と共に目を覚ました。ベッドから飛び起き、窓を開けて外を見ると黒い煙が立ち上っていた。火事かと思い、目を凝らすと人がいると気づく。何者がやって来たんだと思い、裸の状態からすぐに服を着て村の入り口まで走った。

 そうしたら、バレルさんと大剣を持ったイケメン……って言いたくないけど、言わざるを得ない黒色の短い髪を靡かせた黒服男性が戦っていた。


「おいおい、なんでここにバレルさんがいるんだ。王都でルドラの家に寄って姿が無いから、ルドラ本人に話しを聴いたら、死んだって……。あんた、偽物か?」


「フロック君、言いにくいが、私は本物だ」


 Sランク冒険者のフロックさんがバレルさんに攻撃を仕掛けたらしい。フロックさんとバレルさんに共通点があったのかと思ったが、バレルさんはフロックさんとカイリさんの同級生であるルドラさんの家の執事だったので、知り合いでもおかしくないか。


「偽物じゃないというのなら、あんたの実力を試させてもらおうか」


 フロックさんは大剣を構え、なぜか笑顔で走り出した。すでに気づいている様子だが、何かと理由を付けて戦いたがっているように見える。


「ほんと、その血気盛んな性格は昔と変わらないな……」


 バレルさんは木剣を構え、相手をする気らしい。面倒臭そうにしながら、彼も微笑みを浮かべており、心の底で感じていると思われる悦びを雰囲気から醸し出していた。もう、二人共バカなんだから……。


「ふっ! おらあああっ!」


 フロックさんは大剣を思いっきり頭上から振り下げた。

 バレルさんは後方に軽やかに飛ぶ。

 地面に大剣がぶつかると、八メートル以上の土柱が立つほどの威力があり、近くにいただけで吹き飛ばされそうな一撃だった。あの一撃が爆発音のような音を発し、私の眼を覚まさせたと思われる。土柱が上がった影響で生まれた粉塵が火事の煙と勘違いするって、私も寝ぼけていたんだな。


「昔以上の力。やはり鍛錬は怠っていない。小さい体を上手く連動させている……」


 バレルさんはフロックさんの成長を見極め、攻めに転じた。木剣があたかも初めから頭上にあったのかと認識させるほど軽やかに頭上に掲げ、フロックさんに切りかかる。洗礼された一撃一撃が、必殺となり、フロックさんでも必死になって躱している。ただ、バレルさんの攻撃を回避できるだけでもさすがとしか言いようがない。


「おいおい、おいぼれさんよ。本物の剣神はそんな剣速じゃないはずだぜ。やっぱり、偽物か~?」


「ふっ、言うようになったじゃないか。フロック君」


 バレルさんは微笑み、戦いを楽しんでいた。なんなら、挑発しているフロックさんの方も楽しそうだ。


「はぁ、またやっているよ……」


 夏の暖かい風に鼻につく香水の匂いを漂わせながら、全身ピカピカの鎧を見に纏い、二頭のバートンを連れているカイリさんが今更やって来た。私すら羨むほどキラキラと輝いている金色の長髪と言うのが彼のうざさを掻き立てている。


「えっと、カイリさん。お久しぶりです」


「おや、村に咲く綺麗な一凛のレディーじゃないか。久しぶりだね。前よりもずいぶんと綺麗になっている」


 カイリさんは膝をつき、私の手の甲にキスをする。あら、気持ちが悪い。


「あの二人、なんで戦っているんですか?」


「バカって戦うのが好きなんだよ。特に戦闘狂の部類はね……」


「カイリ君、私をフロック君と同じ扱いにしないでもらいたいのだが……」


「いやいや、バレルさんも戦闘狂の部類ですよ」


 カイリさんは笑顔で言った。まあ、確かに、バレルさんも戦闘狂の部類かもしれない。


「カイリさんはバレルさんが偽物だと疑わないんですね」


「疑う余地もない。なんせ、木剣でフロックの大剣を綺麗に受け流している。あんな剣さばき、普通じゃ見れないでしょ。今の剣神の方は力でごり押しするような戦法が多いけど、バレルさんの剣は洗礼され切った無駄がない剣技。いつ見ていて惚れ惚れするよ」


 カイリさんは死んだと聞いているはずなのにバレルさんを本物だと決めつけているようだ。言われればバレルさんほどの剣技を持つご老人に出会った覚えがない。


「バレルさんはその……、死んだことになってるはずです。ルドラさんに聞きましたか?」


「ええ、聞きました。詳細は不明ですが、王都でも軽い噂になっていましたよ。どうも、仕事を首になって暴走して勇者に殺されたと……」


「ああ、そう言うふうに報道されたんですね。まあ、間違ってないですけど」


「じゃあ、あそこにいるバレルさんは一体誰なのだとなるわけだけど……、どう見ても本物だ。レディーはこの状況を私に説明してくれるのかな?」


「はい。説明します」


 私はカイリさんにバレルさんの境遇を放した。

 マルチス商会を潰しすのが目的だったバレルさんは正教会と手を組み、悪事を働いた。でも、失敗に終わり、王都で被害を出し、正教会の出しに使われ、殺されかけてたところを私が助けた。そのまま、死んだ人間にされたバレルさんを村で引き取ったと簡単に話す。


「なるほど……、そう言う経緯か。フロック、そのバレルさんは本物だ。下手すると死ぬよ。いや、顎に一撃食らっただけで死ぬよ」


 カイリさんはフロックさんに伝えた。


「初撃でわかってるっつーの! たく、何だよその軽い身のこなし! 七〇歳を超えた爺の動きじゃねえだろ!」


「フロック君、私はまだ六八ですよ。間違えないように」


「変わらねえだろ!」


 フロックさんはバレルさんの剣戟に押されていた。鋼製の大剣と木剣じゃ、やはり速度に差が出てしまうか……。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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